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黎明の氷炎  作者: 雨宮麗
魔天月蝕編 序

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46「幻覚の再来と混乱」

 

 京月が目を覚ます。

 そこは何も無い真っ白な空間。


「…………ここは……」


 辺りを見渡すも、やはり何もない。

 そして、つい先程斬られたはずの傷口が無いことに気付いて立ち上がる。


「氷上達は……」


 翠蓮や不破の状況が分からず若干の焦りを滲ませた時、聞き覚えのある声がした。


「やぁやぁ、お目覚めのようですねぇ。京月さぁん」


 すぐに声のした方を振り向き、京月はその名を口にする。


「ジェイド…………!ここはお前の幻覚世界か……」


 京月がそう言えば、ジェイドは笑みを深めて言葉を続けた。


「えぇ。あなたのお兄様からの指示でお守りさせて頂きました~。まさかあなたがあんな攻撃に気付かないとは思いもしませんでしたけどねぇ。まぁ神の力による攻撃なんて慣れていなければ分からないのも無理は無いですが、随分焦っていたようですね?氷上翠蓮に対して」


 ジェイドの口から零された言葉に京月は表情を強ばらせる。


「どうしてお前は兄………総司と共にいる。なぜあいつが俺を助ける?一体何が目的だ」

「ちょっとちょっと、一つずつにして下さいよ〜。えーっと、ならまずは私と総司さんが何故一緒にいるのか、ですね。簡単なことですよ、私達は相思相……」

「斬り殺されてぇのか」

「わわ!怒り方まで一緒ですねぇ。まぁ冗談はさておき、私が総司さんと一緒にいるのは、私がそうしたいと思ったから、以外に説明のしようがありませんね。一緒にいるとまあ楽しいので彼の目的を一緒に果たすべく動いているところです」


 ジェイドの言う、総司の目的とは一体なんなのか。京月は兄である総司が突然姿を消した理由、そして何を目的として魔天にいるのか、更に深まる謎を前にその表情に影を差した。


「……そんなに暗い顔をするものではありませんよ」


 京月の暗い表情を見たジェイドは一瞬だけ、京月さえ気付かないうちに困ったような笑みを浮かべてそう口を開く。そして、何かを思い返しながらも言葉を続ける。


「これ、私が話したことは秘密ですよ」

「なんだ」

「誓って、京月総司は貴方との約束を忘れていませんし、京月家に仇なすような行いなど一度としてしておりませんよ」


 ジェイドの言葉に京月は目を瞬いた。そうしてまだ総司が失踪する前にした、兄弟の約束を思い出す。


 "京月家の剣術は誰かを守るためのものなんだ。亜良也が危ない時は兄ちゃんが絶対守ってやるから"


 いつだったか兄から向けられたことのあるその言葉。そんな約束を思い出して、京月は自分の感情が分からなくなっていた。兄がどんな思いで、今なにをしようとしてあの場にいるのか。何をどう信じればいいのかも分からない。


「魔天で、何をしようとしている?」

「残念ながらこれ以上のことは私の口からは話せないんですよぉ〜。これ以上話すと最高神に気付かれ総司さんが不利な状況を作りかねない。……神とは、こうも恐ろしいものなのでしょうかね?私の知る限り、魔天は常に悲鳴をあげている」

「おい、お前は何を知ってる、……ッ、兄貴も、お前も……!魔天はどうなってる!」

「これ以上は言えないと言っているじゃありませんか……。まあ実の兄がこんなトンデモ宗教のような組織にいれば妥当な反応でしょうか。ただ、一つ忠告差し上げますとね、手を引くべきかと。総司さんはきっと貴方に理解など求めていない。ただ、貴方を守って死のうとしているだけですから」


 理解が追いつかないほどに、混乱する情報の多さ。京月は頭を抱えたくなるが、総司が自分を守って死のうとしているという言葉が胸にひっかかりその表情には苦しみが宿る。それ以上口を開こうにも、ジェイドはこれ以上はお互いに危ないのだと一言告げて、それと同時にその場からジェイドの姿と魔力が消滅していく。


 そうして、京月は一番隊隊舎の自室で目を覚ました。

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