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キャラ変とポジ変

 水曜日の午後は本来であれば前節の試合を振り返り、修正点を話し合ったり動きの中で確認したりする日である。しかし今回はマンデーナイトマッチの後で一日づつ後ろにズレている。昨日がオフで今日はコンディション調整だ。選手達はザックコーチの指導のもとストレッチや簡単なジョグをこなしていた。

「あれ? あんな子、いたっけ?」

 そんな中、シャトルランの順番待ちの列に見慣れないエルフを見かけ、俺は思わず声に出す。

「どうしたでありますか?」

 ナリンさんがその言葉を耳聡く聞きつけ、内緒話用の日本語で話しかけてきた。

「あの地雷系の……では通じないか。黒いマスクとピンクの上着の子です」

 そのエルフは俺が少し口走ってしまった通り、いわゆる地雷系ファッション――正確な定義は知らないが、黒髪でツインテールでピンクの入ったゴスロリを着ているくらいと認識している――で、実際の地雷ほどではないが他のエルフの影に隠れるように立っていた。

「ああ、アレはアガサであります」

「えっ!?」

 ナリンさんが告げた名前を聞いて俺は口をあんぐりと開ける。

「これはまた……ここに来てキャラ変ですか?」

 アガサさんはデイエルフとは思えない緩慢な動きとアローズ屈指のパス能力を持つMFだ。そしてその本職は哲学者。俺たち一般人が哲学者に持つイメージの通り、非常に難解な思考と言葉を操る。

 故に普段から掴み所が無いと言うか、緩い服と空気をまとってボーッとしているなーと思ったら急に現れ謎の言葉を吐き、また急に消える。言葉で表せば凄く変から存在感が無いの間、みたいな感じ。

 そのプレイスタイルについても同様で、完全にゲームから消えているなと思えば味方DFラインの手前でボールを持ち、前線のFWへ絶妙のパスを送る。その唯一無二の個性は非常に価値があると、俺は思っているのだ。

 そんな彼女が急に目立つ格好をするとは……。

「キャラ変とは?」

 一方のナリンさんは当然、持つであろう疑問を口にする。

「自分の個性をガラっと変えちゃう事なんですけど、あー女性だったらファッションの好みが変わっちゃうのが分かり易いかな? 例えば落ち着いた衣装を好むシノメさんがツンカさんみたいな派手な服を着出す、とか」 

 俺は真面目な事務員とアメリカンギャルの名を上げて説明する。エルフも女性の方がファッションやメイクに興味があるようで、雑談などに耳を澄ましているとやはりそういう系の話題が多いのだ。

 アガサさんの場合、森ガール――緩い色と緩いラインを好むファッションの事だ。エルフに言うとそのまま過ぎて笑ちゃうけどね。地球でもまだ生き残っているジャンルだろうか?――から地雷系への転身という事になるだろう。

「なるほど、そういう意味でありましたか」

「何かプライベートであったんですかね? 彼女はあまり他者に相談できるタイプでも無さそうですし、さりげなく探って貰えますか?」

 日本語なので他のエルフに聞かれる心配はないが、俺は更に小声でそう告げる。

「了解であります! ショーキチ殿は本当に選手想いでありますね」

「べっ別に! 彼女は次の試合のキーウーマンだから、気にしているだけなんだからね!」

 例によってすぐ俺を褒めるナリンさんへ、俺は古典的なツンデレで返した。クラマ殿の教育かこのムーブはデイエルフにも通じて、彼女はクスクスと愉快そうに笑う。

「そう言えばもう一人のキーウーマンはどんな感じでした?」

 美人の笑顔は何時まででも観ていたいが、残念ながら今回は仕事が多い。俺がそう問うとナリンさんは少し困った顔になった。

「ニャイアーが頑張っていますが……ちょっと観に行くでありますか?」

「あーやはり苦戦していますか。そうですね、行きましょう」

 何度か言っているが困り顔の美人も好きなんだよな、というのを隠して俺は真面目に答え、彼女を誘ってグランドの一角へ向かった。


「だからボールを破壊したら駄目と言ってるだろニャー!」

 ニャイアーコーチがそう叫んで頭を抱え、叱られたエルフは申し訳なさそうに頭を下げた。俺達は付近に散らばる破裂したボールの残骸を避けて歩きながら、近くで休憩している他の2名に声をかけた。

「ボナザさんユイノさんお疲れさまです。どうですか、タッキさんのGK練習の方は?」

「おー監督! おつかれー」

「どうも。なかなか苦戦しそうだよ、アレは」

 セカンドGKとファーストGKはそれぞれの反応を返す。ここはGKチームのエリアで、特殊なポジションである彼女らは先にフィジカルメニューを終え、既にGKとしてのトレーニングを初めている。

 そしてどうやら今はサードGK、タッキさんが集中講義を受けている最中のようなのだ。

「そうですか。素質はあると思うんですけどねー」

「自分はちょっとニャイアーを手伝ってきます」

 俺がため息をつくとナリンさんがこちらに断ってフェリダエ族の親友の方へ向かった。それを見届けてユイノさんが口を開く。

「それはそう。正直、『シュートを止める』だけだったら私より才能あるみたいだよ? いっそタッキがスタメンでも良いんじゃない?」

「そんな事はない。ユイノの技術は既にかなりのモノだよ」

 冗談混じりに自分を卑下する後輩を先輩が窘めた。ユイノさんは今シーズン開始の少し前にFWからGKへコンバートされた選手だ、まだ自分に自信が無いのだろう。

 それでも急造のGKであるタッキさんよりはずっと上の筈だ。ボナザさんが言う通りね。

「そうですよ。しかもユイノさんには足下の技術というアドバンテージもありますし。あとそもそも、ユイノさんが守りきってくれればタッキさんの出番はありませんし」

 俺がそう言うと、後のエルフ達は何とも言えない表情になった。

総合ポイント1000を越えました! ありがとうございます!

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宜しくお願いします。

╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ

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