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ビッシャピッシャ

 サッカーで一人の選手が3点穫るのは……ハットトリックとして有名である。では2点は何だろう?

 マニアが言いがちなのは

「ドッピエッタ」

唐突にイタリア語である。普通に『2』を表す言葉から来てるって。

 もちろんドイツ語やスペイン語にもそれを表す言葉はあるのだが、ドッピエッタが好んで使われるのはその語感の面白さと『通っぽさ』が理由ではないかと推測している。

 なぜ急にそんな事に言及しているのかと言うと、一日に二度もシャワー室で選手から襲われる経験も広い意味ではドッピエッタかな? と考えていたからだ。

「ちょっとレイさん危ないですよ! 足下がまだ濡れていますし!」

「確かに怪我させたらあかんね。ほなこけんように座ろっか!」

 そう話す間にもレイさんはこちら壁へ追い詰め、俺の両肩に手を置いてそっと床へ座らせた。両手に服を抱え、彼女の足下も気にしている俺に抗う術はない。そのまま濡れたフロアに尻餅をつく。

「ああ、せっかく服を着替えたのにまた濡れた……」

「へっへっへ。濡れるのは服だけやないかもしれんで?」

「なんやそれエロ親父か! むーっ!」

 あまりにオッサン臭い言い方に俺も思わずツッコミを入れる。その隙を逃さず、レイさんは唇を重ね舌をねじ込んできた!


「ぴちゃぴちゃ」

 という音がシャワー室に響く。もちろん、いやらしい方の音ではなく水滴が天井から落ちる音だ。それが聞こえる程の静寂に包まれているのである。

「ぷはーっ!」

 しばらくしてその静けさを破るように、口を離したレイさんが大きく息をついた。まるで仕事あがりのビールを一気飲みして一息つく親父のようだ。てかいちいち行動がオッサンっぽいね!?

「ううっ……」

 一方の俺は哀れな子犬のような濡れ落ちていた。別にレイさんから無理矢理ディープキスされた事を嘆いている訳ではない。それは慣れているし、どちらかというと気持ちの良い――今回は特に情熱的だったような気がする――行為でもあるし。

 俺が悲しんでいるのはまだ乾いてない床や壁に押しつけられ、濡れそぼっている事についてだ。

「あらあらショーキチにいさん、女の子みたいな声を出してどうしたん?」

 そんな俺を見てレイさんがおかしそうに笑った。

「それはこういう文脈で使う台詞ではありません!」

 それに対しては思わず突っ込んでしまう。レイさんがオッサン化するのは自由だが、俺はオネショタにはウルサいのだ。

「ほな、正しい文脈で使う?」

 実年齢で言えばお姉さんと言っても過言ではないナイトエルフは、言いながら俺のジャージをさっと上にたくし上げ、露わになった臍の付近をペロっと舐めた。

「ひゃん!」

 床は冷たいが彼女の舌は暖かく、俺は女の子の様な悲鳴を上げる。そうそうこれがオネショタにおける正しい文脈……だけど正しい行為ではない! 本能のままにツッコミをして事態を悪化させる癖、いい加減に直さないと!

「レイさん駄目です!」

 俺は今の今まで大事に抱えていた服の類を投げ捨て、両手で彼女の顔を掴んだ。腹を舐められるだけならまだ良い。だがその舌が下に行っても上に行っても、かなりエッチな行為を彷彿させる動きになってしまう!

「ちょ、頑張らないで!」

 そして痛くないように気をつけながら俺の身体から引き離そうとするが、レイさんは蛇の様に舌を伸ばし最後の瞬間まで俺の腹を舌先をツツき続ける。

 冷静に考えると、とんでもない格好してるね!?

「んー! もうちょっと舐めてたかったけど、まあ今日はこれくらいにしといたるわ」

 しかしレイさんは意外とあっさりと俺の抗議を受け入れ、俺の両手を上から掴んで一気に引き起こしてくれた。

「あ、ありがとうございます……」

 少し拍子抜けしたがこれ以上、余計な事を言うとまた藪から蛇を出してしまうかもしれない。というか蛇には大人しくしていて貰おう。俺は礼を言いつつ、床に落ちて湿り気が増えたであろう衣類を拾う。

「ウチの為に髪まで切ってくれたんやもんね」

「へっ!?」

 ちょうど腰を屈めた瞬間を捉えてレイさんは俺の頭部を両手で掴んだ。先程、俺が彼女を引き離した時と逆の状態だ。

「だからショーキチにいさんの意向にはなるべく答えたいけど、ウチの方は受け入れる準備はもうできてるで。何時でも言うてな?」

 ナイトエルフの少女はそう言うと俺の頭部を自分の下腹部へ押し当てた。水の匂いに混じって彼女の体臭が鼻孔を直撃し、俺は頭がくらくらとする。

「ほな。ちょっとだけやけどクールダウンに入ってくるわ」

 それからレイさんは俺の頭部を離し、そんな言葉を残してこの場を去った。

 俺はずっと混乱したまま下を向いていたので、彼女がどんな表情をしていたかは分からない。だが自分が今の状態でここを出て行ったら駄目なのは分かる。

 俺はそっと壁のボタンを押し、服を来たままお湯を頭から被った。気持ちを落ち着かせる為に。



 シャワーを浴びるのに1分。濡れたまま監督室へ行くのに2分。最後の予備の服に着替えるのに1分。手拭いを手に俺が濡らした廊下を拭きながらシャワー室まで逆行するのに5分。ギリギリだった。

「あれ? 監督どうしたの?」

「これからみんなシャワーよ。遠くへ行きなさいよ!」

 整理運動を終えた選手たちがぞろぞろと向こうからやってきて、先頭のユイノさんとリーシャさんが声をかけてきた。

「ごめん、先に俺が使って濡れたから拭いていたんだよ。じゃあ、どうぞ」

 俺は親友コンビにそう弁明し、さっさとその場を去る。良かった、彼女たちは俺の服がまた変わっている事に気づかなかったらしい。

「若いだけあってそういうところは鈍いんだよな。助かるけど」

 廊下の角を曲がってから安心して呟く。そんな安堵からか、俺は俺で失くしたブツについてはついぞ気づかないのであった……。

総合ポイント1000を越えました! ありがとうございます!

引き続き、評価やブックマークを頂けると作者が喜びます! 

宜しくお願いします。

╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ

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