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若さと責任

 抗議で判定が覆る訳もなく、エリオ選手は退場しFWが下げられ代わりのGKが交代出場する事となった。当然、第2GKのグリン選手はここまでウォーミングアップなどしておらず、慌ただしく準備を始める。

 プレシーズンマッチではこちらのGKが負傷交代し、今日の試合ではドワーフが退場で交代する。アウェイではスローインから物議を醸すゴールをあげ、ホームでは疑惑のプレイからPKをゲットする。とかくエルドワクラシコは一筋縄ではいかないものだ。

「てまだPKをゲットしただけだよな」

 俺はそう呟きながら、今日のPKキッカー担当であるポリンさんの姿を探した。レイさんと同じくまだ学生の身分のデイエルフは、ゴルルグ族のアカリスカウトとフェリダエ族のニャイアーコーチに囲まれ何かを見せられていた。恐らくキックの方向のアドバイスを受けているのだろう。

「全て問題ないであります!」

 戻ってきたナリンさんが俺にそう囁く。予想通りレイさんは仮病、というかシミュレーションでポリンさんはPKキッカーを勤めるのに何の不安もない様子、とのことだ。

 この重要なエルドワクラシコで『決めて当然』と言われるPKを蹴る。よく考えたら凄いプレッシャーだ。だがナリンさんは自信をもって従姉妹をキッカーに推薦し、今もその判断を変えようとしない。ポリンさんへのアドバイスを終え戻ってきたアカリさんとニャイアーコーチも同様だ。

 ならば俺も彼女たちを信じるとしよう。例え自分がどんなに不安でも。

「ピ!」

 審判さんは全選手と副審の位置を確認した後、笛を短く吹いてスタジアム上段の聖火台へ戻った。ドラゴンの巨体がフィールドに残ったままだと邪魔で仕方ないからだ。

「「ブーブー!!」」

 その移動の最中からゴール裏が騒ぎ出す。GKグリン選手の背後は鈴生りとなったドワーフサポーター達だ。彼か彼女らは大声を上げ旗を振り回しキッカーの集中を何としてでも乱そうとする。

 先ほどはこの騒音がレイさんの気配を隠し結果としてPKをアローズに与えた。そして今はポリンさんの邪魔をしている。物事には裏表があるものだ。

「ポリン……」

 ナリンさんはそう呟いて唇を咬んだ。先程の態度がコーチとしての表のものであれば、今の表情が親戚としての裏の気持ちであろう。

「大丈夫ですよ」

 今度は逆に俺が彼女を勇気づける言葉を吐いた。言いつつ、デイエルフの肩をポンポンと叩く。その手に手を重ねられた直後にポリンさんが短い助走からボールをキックし、あっさりとシュートをゴール右上隅に沈めた。

『ゴオオオオル!』

 ノゾノゾさんの絶叫が再び響く! 前半の9分、アローズの追加点で2-0だ!


『レイちゃん! ナリンちゃん!』

 ペナルティキックを決めたポリンさんは親友と従姉妹の名を叫びながらこちらへ向かって走ってくる。

『よう決めたで!』

『偉いわ!』

 幸い、形だけの治療を受けていたレイさんも俺の手を握っていたナリンさんもベンチ近くにいた。両者とも同時に駆けだして殊勲のMFを抱き留めに行く。

「やりましたね!」

 残された俺はアカリさんとニャイアーコーチにハイタッチをした。今のシュートのコースは彼女たちの分析によるものだ。いやまあ背の低いドワーフのGK相手に、利き腕と逆の高い場所へのシュートを撃つというのは普通である。普通ではあるが、このスカウトとGKコーチにお墨付きを受ければ勇気百倍だろう。

『あの子のキック精度あってのものさ! 彼女は本当にすごいよ!』

「ポリンちゃんのキック様々ですよ~。ニャイアーさんもデレデレ」

 猫人族のエルフ語を蛇人族が日本語に訳して言った。状況は複雑だが、ニャイアーコーチの心境はシンプルだ。彼女はナリンさんを溺愛しており、しかるに彼女に似ていて若い従姉妹についても好感を持っていない訳がない。実際、ポリンさんがFKの練習をする時は進んでゴールマウスに立ち手伝いをするくらいだ。

 とは言え今のはFKではなくPKだったけどね。


 ポリンさんはレイさんよりずっと真面目で、他の選手達も最年少のデイエルフに手荒な祝福をする訳にもいかなかった。彼女達は審判さんに注意されるより先にセレブレーションを終え、自陣へ戻り試合再開に備える。

「まだ2点だ! もっと狙っていこう!」

 俺もテクニカルエリアの中程まで出て、とにかく大声で叫ぶ。とりあえず、自チームが油断しないように声をかける監督の雰囲気で、だ。こんな事はポーズでしかない。本当の狙いは、ドワーフチームとベンチがどんな反応をしているか横目で観察する為だ。

 この辺りのやり方は監督それぞれと言うか流派みたいなもので、基本的に自分たちを重視し自分たちが力を発揮する事を考える監督もいれば、相手を見て臨機応変に戦う事をモットーとする監督もいる。

 俺は圧倒的に後者だ。常に相手の様子を伺う。一方でエルフやドワーフは前者といって問題ないだろう。彼ら彼女らは大陸の種族全体を見渡しても長命で、自分たちの文化や歴史の尊大と言っても良い自信をもっている。自分たちが自分たちであれば負けることはない、みたいな。

 そういった自信は勝負ごとではある意味、必要なものではある。だがそれだけでは勝てない勝負もある。僭越ながら、俺と一部の選手が他の部分を補うことで、今のアローズはかなり良い状態になっていると言えよう。 ではドワーフの方はどうなのか? 前半早々に2失点でしかもGKが退場。そんな状況で彼女らが発揮するドワーフ魂はどんなものなのか? とくと見せて頂くとしよう……。

総合ポイント1000を越えました! ありがとうございます!

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宜しくお願いします。

╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ

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