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休まない夫婦と休めない監督

 数分後。スワッグの取りなしによってどうにか事態が収まり、俺の身を案じて飛んできたグリフォンライダー達は森の駐屯地へ、ターカオとシンディの夫婦はベッドの中へ帰って行った。詳しい話は翌朝クラブハウスで、という風にまとまったのだ。

「スワッグ、本当に助かったよ……」

 一方の俺は窮地を救ってくれたヒーローの背に跨がり、一足先にクラブハウスへ向かっている。アリスさんのご両親――そう、あのエルフ男女は間違えなくアリスさんの父と母だ――があそこに寝泊まりする以上、俺も同じ家にはいられないからだ。

 彼らは例の件でクラブハウスに怒鳴り込み、それをステフがなんとか宥めて俺の家へ追いやり休ませていた。あちらにも選手の関係者向け宿泊施設はあるがあの夫婦は選手関係者ではないし、アリスさんも両親とは距離を取りたいといった所で、その判断は間違いではない。

 まあ、今となってはターカオさんとシンディさんが本当に休んでいたかは疑問だが。ほら、ご休憩何時間とか言って実際に休み人が殆どいない特殊なホテルとかさ?

「気にするなぴよ。あの場にいたのはみんな俺のトモダチぴい!」

 グリフォンなのは仮の姿、実際はトモダチを何万人だか作るまで実家へは帰れない、風の眷属だかなんだかなスワッグは前足の親指を立てながら言った。

「おーもしかしてアリスさんのご両親も既にトモダチ? 流石に手が早いなあ」

 俺は感心してそう言いつつ、ふとある事実に思い当たる。

「ってスワッグさ。俺が呼んだグリフォン部隊と一緒に飛んで来た訳だよね? もしかしてあの中のグリフォンと……」

「まあ、そういうことぴい!」

 スワッグはそう言いながらさっき立てた親指を逆の足で隠し何かのジェスチャーをした。

「そうか……。邪魔して悪かったね」

「なあに、夜はこれからぴよ」

 グリフォンという種族、伝説によっては雄しかおらず普通の雌の馬と交わって子を成したりするが、この世界には雌のグリフォンもいるしスワッグの性的嗜好は同族からエルフからハーピィまで多彩だ。

 つまりスワッグはお楽しみの最中だったという事だろう。だから運良く、あの部隊と一緒に来てくれたのだ。

「あの夫婦も今頃、お楽しみかもしれないぴよ?」

「マジか! 帰ったらシーツをランドリーに出そう……」

 スワッグやステフには脳内の考えを読まれるのも、少々下品な話をするのも日常である。まして先程はスワッグの取りなしで危機的事態を脱したのだ。文句など言えまい。

「そうそう! 鳥である俺が入ったのに『鳥なし』とはこれいかに! ぴい!」

 殊勲のグリフォンはそう言って下降飛行へ入った。見るとクラブハウスはもう目の前だ。

「そ、そうだね……」

 俺は諸々の気持ち悪さを押し殺して答える。何かこう、無理くり自分の決め台詞でオチをつけようとする所さえ無ければ良いヤツなんだけどなあ……。


 深夜のクラブハウスは静まりかえっており、入り口にいた夜警のロビーさんを除いては誰にも会わず監督室へ着いた。例の来賓様宿泊室や視聴覚室の控え部屋を使う手もあったが、最も落ち着く部屋で少し資料を見てから眠りにつきたいと思ったのだ。

「誰も……いないよな?」

 監督室と廊下を挟んで向こうは事務室であり、普段は会計や庶務のムルトさんやシノメさんが仕事をしている場所である。チーム運営だけでなく美容ヨガ教室やらグッズ展開やら色々と手を出す監督――つまり俺だ――のせいで業務量はかなりのモノであり、よく残業している姿をみかけたものだが……流石に今はいない。

 因みにお金を扱うだけあってそちらのドアは鍵がかかっていて、監督室にはかかっていない。なんでやねん! と言いたくもなるが実際こちらには貴重品が無いから仕方ない。

「これこれ、と」

 監督室へ入って灯りを点け早速、目当ての資料を手にする。次節ドワーフ戦へ向けてのジノリコーチ渾身のレポートだ。



 ジノリコーチを失ったドワーフチームは、それでもBクラスの実力――フェリダエ、トロール、ミノタウロスのトップ3に次ぐ位置だ――をかろうじてキープしていた。

 その原動力は、見よう見まねで行われているドワーフ独自のラインDFと例の空調システムである。

 アローズでコーチを始めた時にジノリコーチは

「ドワーフならもっと簡単に修得できる!」

とエルフ達を煽ったが、それはあながち嘘ではなかった。ドワーフDFの意思統一は非常に高くラインの上げ下げで乱れることがほぼない。

 一方で個の守備範囲はエルフほど広くないのだがその分ラインブレイクの判断が早く、ゾーンを諦めてマンマークへ移行するのがスムーズだ。そして一度、責任を受け持ったら土の種族らしい粘り強さで徹底的に守り抜く。

 このラインコントロールが優れているのにマンマークも併用しそれがまた強い! というのは一時のセリエA――DFの達人が揃うイタリアリーグ――の中位から下位チームを思わせる。俺たちのサッキミラン式ゾーンプレスを受けての反応と考えればしごく妥当だろう。

 逆にもう一つのストロングポイント、例のエアコンを使った作戦については、これは地球のサッカーの歴史ではありえないモノだ。地下に存在するスタジアムであることを生かし、空調装置で自チームに有利な風を発生させる戦法……うん、たぶんないだろう。そもそも地下のスタジアムなんて東京ドーム地下の闇闘技場以外、聞かないし。

 冗談はさておき。俺たちとのプレシーズンマッチではまだぎこちなかったエアコントロールは、アレからかなり洗練された。まだセットプレー時が中心の様だが、ラインを上げる時は向かい風にして相手ボールが流れるように、引きこもって守る時は追い風にしてクリアボールが遠くへ飛ぶように、と小細工も効くようになっている。

 しかも目下の所、それに気づいているのは俺達だけのようだ。巧みに利用するだけでなく隠蔽も上手くやっているんだな。ドワーフ、やはり侮れない相手だ。

 ま、今回はウチのホームなので関係ないんだけどね……。

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宜しくお願いします。

╭( ・ㅂ・)و ̑̑ グッ

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