女王様と奴隷のゲーム
「なんすか、それ?」
「くじびきに決まってんじゃん!」
「いつでも王様ゲームできるように、常に持ち歩いているのさ!」
王様ゲームっていつでもできるようにしなきゃいけないものなんだろうか? とかギャルと王様ゲームの組み合わせってなんかエッチだな、とか思う所は色々あったが、俺は取りあえずごくごく普通のツッコミをする事にしよう。
「いや、こんな大事なことをくじびきなんかで……」
「やります!」
「一番、引いた子から場所かノゾノゾさんブヒキュアを選ぶ感じで!」
「それいいね!」
しかし、意外な事に選手たちの方からくじびきへの賛同の声が挙がった。
「オーケー! ノリの良い子はあーしらも好きだよ!」
「くじの端が赤い子が王様……いや、女王様だぁ!」
おいそれだと場所決めじゃなくて本当に王様ゲームだぞ?
「よーし、じゃあさっそくはじめよー! 僕が司会進行するから監督、メモして行ってね!」
「あ、はい」
ノゾノゾさんが元気良く宣言し、選手たちが一斉にブヒキュアの前に並ぶ。その勢いに飲まれ俺は記録係を引き受けてしまった。
「こいこい!」
「うわー! これ駄目なやつだー!」
さっそく最初にくじをひいた選手から悲鳴をだす。こうして、考慮に考慮を重ねた俺の割り振りは粉砕され、その場のノリで普及活動の行き先とメンバーが決まる事となった……。
大興奮の王様ゲーム……じゃないや、くじびき会が終わった頃にはすっかり夜も更けていた。縁もゆかりもない地方へ行く選手もいれば、ノゾノゾさんを従えて王都付近でイベントを行う事になった選手もいた。
かなりギャンブル要素の高い決定方法及び結果ではあったが、選手たちの満足度は高かったようだ。くじの結果や選択の宣言ごとに大きな歓声や罵声が上がった。
なんだろう、やはりプロスポーツの選手って一般人よりもギャンブル的なモノに燃え上がり易いのかなあ。アドレナリンが出やすい? みたいな。エルフの身体もそうなのか知らんけど。
ともかく普及活動への参加者は多く彼女らのモチベーションも高そうだ。ただ思惑と異なる経過でそうなったのとなんとなく自分だけ盛り上がりに乗れなかった寂しさから、俺は用具室に籠もってボールを磨いていた。
「幸せになるんやで~」
冷静に考えてみれば夜中の用具室の床に座り込み一人、ボールに話しかける怪しい人物である。だが今、綺麗にしているのは普及活動先へ寄付する中古のボールだ。少しでも良い状態にし、真心を込めてプレゼントしたい。
「これでよし、と。後はアレだな」
俺はポケットからメモを取り出し、魔法のペンでその紙に書かれた文字をボールに書き写して行く。
「あれってこう書くのか。どの単語が夢なんだろうなあ」
そこにはエルフ語で『夢を諦めるな』と書いてある。俺がナリンさんに頼んで教えて貰ったものだ。今の俺には謎の文字の羅列でしかないが、右から左へコピーする分には問題ない。
「言葉はそのまま過ぎるけど、誰も元ネタを知らないからいっか」
俺が今ボールにサインしている語句は、あるサッカー選手がある団体にボールをプレゼントした際に記したとされているモノと同じである。なんか200個くらい送ったけど、全部自分で書いたんだって。
ま、そのエピソードが本当かどうかは知らないが、こっそり異世界で真似する分には害はあるまい。
「しかしなんだ、ボールに同じ文字ばっか書いてるのを見てるとゲシュたんとか崩壊を起こしそうだなあ」
俺は大量に積まれたボールとその文字を眺めながらつぶやく。しかし正確にはなんだっけ? ゲルトでもケディラでもなくて……あ! ゲシュタルト崩壊だ!
「ゲシュタルト・ホーカイ、80年代から90年代に活躍したドイツ代表のDFにいそう。でもホーカイって名前でDFは縁起が悪いな、うしゃっしゃ」
俺は一人で妄想して一人で笑っていた。どちらかと言うと崩壊しているのは俺のテンションらしい。
「そこにいるのは、監督?」
「ちょっと怖いっすよ!」
ふと、用具室の外から声がした。それはちょっと珍しい重量級コンビからの問いかけだった。





