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飛ばされたでガンス

 vsガンスチーム戦は、それまでの準備も含めて非常に恙無く終わった。一つにはホーム二戦目で日々に馴れたという事があり、二つにはガンスチームがあまり強くなかったという事がある。

 そして三つには……ブヒキュアの二人との接触を避けるべく、俺が全ての物事を事務的にささっと終わらせていたという事もある。

 魔法の変身を解き、本来のギャール族の姿になったナギサさんとホノカさんはそれくらい危険な存在だった。派手ではあるが本来の美人さを損なわないメイク、あざと過ぎないが十分にアピールされているボディライン、気さくな性格……。数多のオタクを瞬殺してきた

「オタクに優しいギャル」

が具現化したようなふたり。しかもサンダー監督から俺の子種を狙うよう命を受けている。危険だ。

 女性を食べ物に例えるのは本当に失礼だが、今まで上品だけど食べ応えの薄いオーガニックな野菜や果物を食べてきた日々に急に現れた肉汁溢れるステーキのようなものである。

 もちろん、この仕事を引き受けた時にそのような煩悩とはオサラバした。したつもりである。してたらいいなあ。まあちょっとだけ覚悟はしておけ。

 何を言っているのだ俺は。覚悟? そう、まだ覚悟ができていないのだ。もう少し見慣れたらまた畑に並ぶキャベツのように思える筈である。 


 いやなんか本当に失礼だね、今の俺。ともかくそんな理由で俺は監督というよりますます総監督の位置に引っ込み、チケット問題――例の砂かぶり席の交換などだ。好きな選手が砂かぶり席に座るので自分の持つメイン席のと交換したいとかなんとか。ちなみに今回は行けるとのことなのでルーナさんも砂かぶり席でサポーターと同席し、一緒に観戦した。何を話したんだろう?――の解決やこの後のアウェイ二連戦――インセクター戦とゴブリン戦――の準備や控え選手達のモチベーション維持に勤しみ、練習や試合中の采配までかなりナリンさん達に投げていた。

 それがあまりに徹底していたので、試合後の記者会見のそっけない喋りを評して

『だがショーキチ監督の声は少しも嬉しそうでなかった。二連勝で沸き上がったチームの雰囲気を引き締めようとしたのであろう』

と書いたメディアまでいたくらいである。物は言い様やな。

 なんにせよそんな感じでガンス族戦は終わった。まさか回想シーン的に飛ばされるとはケビン監督も選手も思っていなかっただろう。でも実際、印象に残らないほど弱かったし初のクリーンシート(無失点)も達成したし。

 それに俺はこれからの二試合で頭がいっぱいであった。インセクター、ゴブリンという叩いておくべき残留争いの相手、というのもあるが実はシーズン前半唯一のアウェイ連戦で、インセクター戦後も国に帰らず相手国に連泊する日程なのである。

 いわばずっと旅行、あるいは合宿をしているようなもので、何が起きるか分からない。まあその分、エルヴィレッジから離れていられるのでナギサさんとホノカさんの問題は棚上げにできるが。

 でも旅行先は旅行先で絶対に何かやらかしそうな連中が数名いるんだよなあ……。俺は監督室の椅子に座り仮の遠征帯同組と居残り組のメンバー表を眺め、深いため息をつくのであった。


「はぁ~」

「どーしたのショーちゃん、凄いため息」

 俺の目の前で、そのため息の元凶の一部なエルフ代表のキャプテン、シャマーさんが心配そうに声をかけた。

「遠征帯同メンバーに悩んでましてね」

 時刻は月曜の22時。例の『マンデー・ナイト・フットボール』を見終わった――ちなみに対戦カードはトロールvsノートリアスで、ゴム肌巨漢のお姉さんたちが種族混成チームを一蹴していた――後だが、ぶっちゃけ俺は週末のガンス族でそれほど働いてないので疲れておらず、もう少し仕事するつもりでいた。

 そしてそれを目ざとくみつけたシャマーさんも監督室に居座り、魔法の端末で前の試合の映像などを眺めて手伝っているフリをしていたのである。

「そうなの? レイちゃんとポリンちゃんが抜けて、リーシャとエルエルを入れるだけじゃないの?」

「そうと言えばそうなんですけど。ゴブリンまで連戦でずっと外じゃないですか? 何かあった時とっさに呼び寄せるのも負担だから、できるだけ色んな戦術に対応できる選手を連れていっておきたいし、旅行先でトラブルを起こしそうな子は注意が必要だし……」

 因みに『色んな戦術に対応できる選手』をポリバレントな選手、と呼ぶのが前に流行ったが、今はそうでもない。言葉の、特に人間の使うものの流行り廃りというのは無常である。エルフなら20年くらいは使いそうだが。

「そう? みんないい子だよー」

 シャマーさんはそう言いながら監督室の窓からグランドを見る。こんな時間だが自主練習している選手が何名かいる。

「みんなはいい子だけど、その親分が悪さを唆すんですよ」

「えっひっどーい」

 俺はシャマーさんの隣まで行って同じくグランドを見下ろす。美しい芝生は明るく照らされ、練習には何の障害も無い。エルヴィレッジはナイター設備も充実しているのだ! 

 と、言いたい所だがアレである。エルフ特有の夜間視力に加えて光の精霊ウィスプを操る魔法、それらは昔からあって夜でもトレーニングできる状態にあり、ずっと彼女たちの練習量を支えていた。

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