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もち賭け

「おおう。あ、サンダー監督!? どうもです」

 振り返ったすぐそこにはオーク代表の女性監督、サンダーさんの姿があった。

「あのむかつくドワーフのオッサンのチームをよぉ。ギャフンと言わせたみたいじゃねーか! やるねえ!」

 やるねえやるねえ! と連呼しながらサンダーさんは俺の背に抱きついたまま体を揺する。

「いや、たまたまですよ。それより、何か用ですか?」

 揺らされてちょっと気分が悪くなりながらも問う。因みに気分が悪いのは純粋に揺れてるからで、サンダー監督その人……というかそのオークは別に嫌いではない。いろいろと複雑なこの世界において彼女のような分かりやすい性格は、むしろ好ましいとも言える。

「さきにウチの悪ガキどものリーダーを紹介しておこうと思ってな! こいよペイトーン!」

 サンダーさんはようやく俺から身を離し、後ろにそのぶっとい腕を振った。そこには彼女と同じくらい大柄な赤いオークの姿があった。

「初めましてショーキチ監督。キャプテンのペイトーンです。あとリーシャちゃん、久しぶり……」

 そう言って進み出たのが例のペイトーン選手だった。赤い、でかい、強そう……といったのが第一印象か。オークは様々な種族と交配可能だが、彼女の父親は確かオーガ――しばしば食人鬼と称されるが実際は何でも喰う、巨人のもっとも小さい種族だ――だった筈だ。

「あ、どうも」

「ふん。アンタも変わらないわね」

 散々、話を聞いていたせいか選手としてよりも「リックさんの奥さん」という感じで見てしまう。と言うかリックさん、よく結婚したな……。異世界の愛の形って何というか凄い。

「アンタ……ね。まだ『お義姉さん』って呼んでくれないのね。悲しいな」

 ペイトーン選手は伏せ目がちになってそう呟いた。本当に悲しそうだ。引き続きリックさんの奥さん、という視点で見てると悲しみにくれる人妻としてなんだか少し色っぽい。

 ……って何言ってんだ俺!?

「何言ってんのよ。リックがアンタと結婚した事は勝手だけど、それと私には何の関係も無いんだから!」

「そんなぁ……」

 リーシャさんの冷たい物言いにペイトーン選手は大きく肩を落とした。完全に「夫の妹に塩対応される気弱な人妻」だ。サッカードウのプレイ中に見せる獰猛さは微塵も無い。

 まあアレかな。Jリーグのイエローカード王、何とか久保(大か中か小)選手みたいに、ピッチに入ると人格と言うかオーク格が変わるタイプなのかな?

「おいおい、エルフのエースさんよぉ。試合中はともかく、外でそんなキツクせんでやってくれ。にいちゃんも何か言ってくれないか?」

 その何とも言えない空気にサンダー監督が口を挟んだ。かなり砕けた言い方ではあるがさすが一軍の長、貫禄がある。

「そうですね。リーシャさん、強く当たるのは試合中だけで良いでしょう。ピッチの外ではフレンドリーに、ね?」

 俺は『試合中』という部分で軽くウインクを送りながら、リーシャさんにそう告げた。

「分かったわよ……。冷たくしてごめんなさい。でも試合の中では、こんな程度じゃ済まないから」

 リーシャさんは俺の言葉を受けて、謝罪を口にする。それで幾分かペイトーン選手の表情も和らぎ、サンダー監督も嬉しそうに頷いた。

「いいねえいいねえ! 随分な自信じゃないか! ……あ! 閃いた!」 ザンダー監督は左の手の平を右の拳で叩く古典的なジェスチャーをしながら続ける。

「そんなに自信があるなら、賭をしないか?」

「賭、ですか?」

「ああ。開幕戦でオーク代表がエルフ代表に勝ったら、リーシャ選手はウチのペイトーンの事を『お義姉ちゃん』って呼ぶとかさ?」

「「「ええっ!」」」

 これには俺、リーシャさん、ペイトーン選手が三者三様に驚きの声を上げた。

「え? やだ、でも、そんな……」

「嫌よ。私がそんな賭を受けて、どんな得があるのよ!?」

「へー。賭ですか」

 言われてみて少々、思い出す。オーク族が最も愛するものはいくさだが、彼ら彼女らは同じくらい享楽的(悪そう)なもの、酒やエッチや……賭博を愛しているのだ。

「面白いですね。受けましょうよ、リーシャさん」

「ええっ!?」

 俺がそう提案すると、リーシャさんは先ほどよりも大きく驚き、俺の手を引いて少し離れた所まで引っ張り、小声で言った。

「(ちょっと監督! 『逆アジジ作戦』はどうするのよ!?)」

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