撥雲見天 第11章 見えない未来 水平線の彼方へ
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
米英独伊4ヵ国連合軍の帰還兵を乗船させた、輸送船団の第1陣が、ハワイを出港する前日。
石垣は、久し振りに菊水総隊旗艦である指揮艦[くらま]の甲板に、足を付けた。
「久し振りだな、石垣2尉」
石垣を出迎えてくれたのは、総隊司令官付特殊作戦チーム主任の、坂下亜門1等空佐だった。
「ご無沙汰しています。坂下1佐」
挙手の敬礼をして、石垣は坂下に挨拶をする。
「・・・顔付きが変わったな。以前とは別人の様だ。もちろん、褒め言葉だぞ」
答礼をしながら、坂下が言う。
「顔付きが、変わったとは?」
「君のお兄さんのような、貫禄が出てきたという事だ」
「はぁ・・・ありがとうございます」
坂下に、悪気が無いのは、わかっているが・・・
どうしても比較対象として、兄である石垣達彦1等陸佐の名が、出てくる。
正直、複雑な気持ちになるが、それは、仕方がないのかもしれない。
「氷室2佐。山縣司令官が、お待ちかねだ」
石垣と同じく、[くらま]に出向を命じられた氷室に、坂下が声を掛ける。
「わかりました」
何となく、氷室は自分たちが[くらま]に呼び出された理由を、知っているような気がする。
気のせいかもしれないが。
坂下に案内されて、2人は司令官室に足を運ぶ。
「氷室2佐、石垣2尉。よく来てくれた」
司令官室では、菊水総隊司令官である山縣が、両手を広げて出迎えてくれた。
互いに敬礼を交わした後、山縣は2人の肩をポンポンと叩く。
「停戦会談の時は、ゆっくりと話す時間も、無かったからね・・・」
「はい」
「そうですね」
テロリストの襲撃、その後の、ニミッツの随行員だった法務士官の拘束と連行、その後の後始末等々、大幅に予定を変更せざるを得ない事態になった。
何とか、山本とニミッツによって停戦会談の合意は成されたが、予定していた新世界連合側の主要人物と、ニミッツの個別会談は、後日に改めて設ける事と、なってしまったのだった。
「貴官たちを呼んだのは、他でもない」
軽く挨拶をした後、山縣は本題に入った。
「4ヵ国連合軍の帰還兵を乗船させた輸送船団の護衛のために、混成派遣艦隊を編成したという事は、聞いているだろう」
「はい」
「そして、講和交渉のために、軍民から編成された特使団も同行する。軍の代表として自衛官からも数名の選抜を新世界連合軍連合総軍から打診されたが、私は君たちを推薦しておいた。それと、山本総長にも許可を取っている」
「・・・それは・・・?」
山縣の言葉に、思わず石垣は、身を乗り出した。
「氷室2佐、石垣2尉。君たちには派遣特使団の一員として、連合国アメリカ合衆国への派遣を命ず」
「命令、謹んでお受けいたします」
「微力を尽くします」
姿勢を正し、挙手の敬礼をして石垣と氷室は、山縣の命令を受領した。
「先日のテロ事件で、予想が付いているだろうが、連合国アメリカ合衆国国内は、今、大きく2つに分かれている。講和を望む者、反対し戦争の継続を望む者。現在、アメリカ国内においても、反戦派、徹底抗戦派の市民によるデモや暴動等が、各地で発生しているとの情報が入ってきている。停戦の条件の1つとして、派遣する特使団の安全保障を約束させているが、恐らく様々な妨害等が予想される。今回のテロなどと比べ物にならないような事態が、起こるかもしれない。それでも、それらの艱難を乗り越えて、講和への足掛かりとなるよう、期待している」
「「はい」」
厳しい表情で、訓示を述べていた山縣だが、ここで表情を和らげた。
「氷室君、石垣君。君たちを特使に推薦したのは、ただ、特使としての経験を積んでもらうだけでは無い、今の時代というものを、色々な視点から見て、感じて来て欲しい・・・これは、私の個人的な意見だがね。次代を担う若者たちに、色々な事を経験し、学んで欲しいのだ」
山縣は、2人の肩を叩きながら、思いの籠った言葉を告げた。
「そうですか。テロのニュースは、ラジオで聞きましたが・・・まさか、カズマが・・・」
レイモンドは、パールハーバー・ヒッカム統合軍基地内の病院に入院している、第1海兵師団で、以前からキリュウを何かと気遣っていた、軍曹の見舞いに訪れた際、テロ事件の顛末と、昨日のキリュウとの面会に付いて、話をした。
「俺たちが、生きているという事を、もっと早く、カズマに伝えられていたら・・・」
軍曹は、悔しそうに首を振った。
「・・・あの件は、色々と裏があるようで・・・詳しい事は僕もまだ、わかっていませんが・・・NISが動いたという事は、相当複雑な事情が、あるようです。まだ、何もわかっていないので、何とも言えないのですが・・・カズマは、結局それに巻き込まれてしまった・・・」
「・・・・・・」
例の(元)法務官は、何か思惑があるのか、未だに黙秘を続けているらしい。
彼の処遇に付いては、法に委ねるしか無いが、レイモンドは自分に出来る範囲で、次の事を考えている。
「カズマの弁護士には、必要なら裁判で僕が、弁護側証人として証言台に立つと、伝えています。僕が出来る事は、何でもやるつもりです。カズマの刑が、少しでも軽くなるように・・・」
「・・・俺にも、出来る事があれば、何でも言って下さい。協力します。そうだ!隊の連中とも相談して、嘆願書を出そう!少佐、その弁護士の連絡先を、教えて下さい!」
「・・・ありがとう」
[インディアナポリス]の料理長や、カズマの同僚たちも、揃って嘆願書を出すと主張してくれている。
もちろん、それで量刑を左右出来る訳では無いが・・・それでも、それだけ応援してくれる者たちがいるという事が、カズマを元気付けるだろう。
「・・・!?あっ、ちょっと失礼!!」
何かを言いかけた軍曹だったが、急に乗っていた車椅子の方向転換をすると、物凄いスピードで、何処かへ向かって行く。
「えっ!?ちょ・・・ちょっと、待って下さい!!?」
少し前まで、重傷だったとは思えない勢いで、レイモンドを置いて車椅子を駆って飛ばしていく様は、傍から見れば、ドコが悪いの?と、思われるだろう。
「やあドクター。ご機嫌は、いかがかな?」
結構離れた場所にいた、白衣の女性医官と、彼女と会話していたらしいスーツ姿の人物の間に割り込むような形で、車椅子を急停車させた軍曹は、にこやかに医官に挨拶した後、その話し相手に、鋭い視線を送る。
「なんだ、子供か・・・」
かっちりとしたスーツを着ていたので、てっきり男かと勘違いしてしまったが、相手は小柄な少年にしか見えない人物だった。
軍曹は、自分の早とちりに、少々バツの悪い表情を浮かべる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
いきなり自分たちの前に、ぶっ飛んで来た車椅子に、医官とスーツ姿の人物は、唖然としている。
「・・・マークルさん、今日は体調が良いようですね・・・」
「ええ、ミス・イシガキの姿を拝見すれば、身体の痛みなんて、あっという間に飛んでいきますよ」
やっと口を開いた医官に、軍曹ことマークルは、「これでもか!!」と、言わんばかりに極上の笑みを披露する。
「そ・・・それは、良かったです。経過も順調ですし、近いうちに母国へ、帰国出来ますよ」
女性医官は、微妙に引き攣った笑みを浮かべている。
「ハア・・・ハア・・・やっと、追い付いた・・・」
突然のマークルの行動に、訳もわからず追い駆けたレイモンドが、息を切らせている。
「少佐。こちらが俺を、天国行の階段から蹴り落としてくれた、白衣の天使。ミス・アズサ・イシガキです」
満面の笑みで、石垣梓1等陸尉を紹介するマークルだが・・・感謝の気持ちや、後・・・色々な思いがある事は伝わるが・・・
言い方!と、突っ込みたくはなる。
「ちょっと!白衣の天使なんて・・・嬉しいけれど、お世辞としても、言い過ぎですよ・・・」
ペチッと、石垣がマークルの肩を叩く。
「イタタタタ・・・」
「あっ!ごめんなさい!」
なる程・・・と、レイモンドは思った。
いわゆる、戦場での恋・・・と、いうヤツだ。
戦場で負傷した兵士が、親身になって自分の世話をしてくれる、従軍看護婦(今回は、医官だが)に、恋をする。
戦争映画でも時折使われて、殺伐とした雰囲気を和ませるシーンで、よくあるヤツである。
例にもれず、マークルも、その恋の魔法に、かかってしまったらしい・・・
しかし・・・マークルの「天国行の階段から蹴り落とされた」という言葉から想像出来るのは・・・
「退却クソくらえ!」と、海兵隊のモットーを叫びつつ、天国行の階段を駆け上っていたマークルを、絵画でよく見る、白いフワッとした感じのローブに身を包んだ石垣が、ローブの裾を捲り上げてマークルを蹴り落とすという・・・ロマンスのロの字も無い、コメディーに、なってしまうのだが・・・
双方に対して、かなり失礼な情景しか浮かばない。
「・・・イシガキ・・・という事は、タツヤ・イシガキ中尉の・・・?」
痛がりながらも、ヘラヘラとニヤケているマークルは、放っておく。
その女性医官の姓から連想される人物は、レイモンドの中では1人しかいない。
「あら?弟を、ご存じなのですか?」
どうやら、アタリのようだ。
「ええ。弟さんには、友人の事で色々と、助けて頂いたので・・・」
人の繋がりとは、本当に不思議なものだ。
自分が石垣に助けられたように、マークルは、石垣の姉に助けられた・・・これが巡り巡って、キリュウに希望を与える切掛けの1つになった。
誰も、そんな意図はしていなかったはずなのに、それが1つの輪になって、繋がっていく・・・本当に、不思議なものだ。
事実は小説より奇なりとは、本当にこの事だろう。
「では私は、これで失礼します」
「あっ、お疲れ様でした」
先ほどまで、石垣と話していたスーツ姿の人物は、石垣に声を掛け、レイモンドとマークルに会釈をして立ち去って行く。
「あっ!?」
その人物が何者であるのかに、やっと気が付いたレイモンドは、石垣と楽しそうに会話を続けるマークルに声を掛けると、慌ててその後を追った。
昨日は警察官の制服だったから、雰囲気が違って、すぐには気付けなかった。
「キリュウさん!」
「・・・・・・」
身長差から考えても、歩幅はレイモンドの方が広いはずなのに、桐生の歩く速度は速く、
追い付くのに、走らなくてはならなかった。
「あの、こんにちは。昨日は、本当にありがとうございました。おかげで、カズマに面会する事が出来ました。お礼を申し上げます」
ペコリと頭を下げるレイモンドに、桐生は微笑を浮かべた。
「いいえ。私は、ほんの少し手伝っただけですよ。お礼を言われる程の事をした訳では無いです。それに、お礼を申し上げるのは、むしろ私の方です」
「え?何故ですか?」
意外な言葉に、レイモンドは瞬きした。
「貴方がカズマ氏の、ご友人で、いて下さったことです」
「いや・・・その・・・別に、それって大した事では・・・」
「いいえ。あの襲撃事件の時、山本総長の命を奪おうと迫っていた彼は、貴方の制止で踏み止まりました。その時彼は、自分の命すら捨てる覚悟していたはずです。すべてを捨てた者の行動を止めるのは、容易ならざる事です。貴方の存在が、彼の中で、とても大きかった・・・だからこそ、瀬戸際で踏み止まる事が出来た・・・私は、そう思っています」
「・・・いや・・・その・・・まあ・・・何というか・・・」
改めて、そう面と向かって言われると、照れる。
レイモンドは、どんな表情をしていいのか、わからず、ポリポリと頬を指で掻いていた。
「でも、貴方に会えたのは、ちょうど良かったです。[インディアナポリス]まで、出向こうかと思っていたのですが・・・面会の手続きが面倒そうなので、どうしたものかと思っていました」
「へっ?」
「少し、お時間を頂けます?」
驚いた表情を浮かべるレイモンドに、桐生は柔らかい微笑を返す。
立ち話を続けるのも、どうかと思われるため、レイモンドと桐生は、病院内に併設されている喫茶店に足を運んだ。
(こういった所に女性と来るなんて、スグリ大佐以来かな・・・)
つくづく女性と、縁が無い。
「ラッセルさん?」
「ふぇ?・・・いや、はい」
女性を目の前にして、別の女性の事を思い出すのは、少々失礼なのかもしれない。
「これを・・・」
コーヒーが運ばれて来たのを機に、桐生は持参していた黒い鞄から、細長い袋に入った物を取り出した。
袋といっても、厚地の布で作られ、金糸や銀糸等が織り込まれた重厚感のあるものだ。
「これは?」
「・・・・・・」
桐生は、その袋から15インチ(約38センチ)よりも少し長い、刀を取り出した。
「これは、カズマ氏の祖父が産まれた時に、彼の双子の兄と揃いで拵えた懐剣です。まあ、わかりやすく説明するなら、キリスト教の人が、十字架を肌身離さず持っているような、御守のように、護身用として常に持っている物と、言えばいいでしょうか。この懐剣は、カズマ氏の祖父が渡米をする際に、他家に嫁いだ実姉に、自分の身代わりという形で、託して行った物です」
手に持とうとして、直接素手で持っては駄目だったのではなかったかと思ったレイモンドは、テーブルに備えられている紙ナプキンを使って、懐剣を受け取る。
思ったよりも重量感のあるそれは、長い年月を経た感じがあるが、とても大切に保管されていた事が窺える。
「これを、貴方に預かって頂きたいのです。カズマ氏に、どんな判決が下されるかは、わかりません。でも、いつか必ず、貴方の元に戻って来る。私は、そう信じています。だから、その時に、彼に渡して欲しいのです」
「何故、僕に?こんな、大切な物は、カズマの子孫である貴女が、直接カズマに渡した方が良いと思いますが・・・?」
レイモンドが疑問に思うのは、当然だろう。
石垣が、ポロッともらしていた事から推測すれば、彼女の幼少期には、すでにカズマはいなかったという事らしい。
だが、今ならカズマと直接顔を合わせる事も、可能なのだ。
「いずれ・・・カズマ氏には会います。でも・・・今は、その時期では無い・・・それだけです」
「・・・わかりました。必ず、カズマに渡します。それまで、僕が大切に預かります」
桐生が、何を思っているのか・・・今は、判らない。
何か、思うところがあるようだが、聞いても教えてもらえそうに無い。
だが、自分を信頼して、大切な物を預けてくれると言うのなら、引き受けても良いと思った。
「でも、必ずカズマに会いに来て下さいね。約束ですよ」
「はい、必ず」
優しい笑顔で、桐生は答えた。
その夜。
翌日の派遣艦隊の出航を控えて、パールハーバー・ヒッカム統合軍基地内の総司令部で、壮行会が行われた。
壮行会といっても、大仰なものではなく、一種の会食のような形式を取っている。
ビッフェ形式で行われた会食に参加した石垣は、大日本帝国や新世界連合の何人かの軍人たちと会話した後、自分のトレーに好きな料理を盛り付けてもらい、テーブルに着いた。
同じテーブルには、石垣チームの面々である、メリッサ・ケッツァーヘル少尉、任春蘭中尉、側瀬美雪3等海尉が座っている。
(・・・何だかなぁ・・・)
山縣の推薦によって、石垣は、特使に選抜されたのだが・・・
蓋を開けて見ると、チームとしての特使選抜という形態だった(今回の会食には参加していないが、ボーダーコリーの伝助も、メンバーとして数えられている)。
ちょっと、複雑である。
ふと、石垣は側瀬のトレーに、大盛の赤飯が盛られた茶碗がある事に気が付いた。
「・・・赤飯?」
「私、赤飯大好きなんです!」
「・・・・・・」
石垣は、少し複雑な表情を浮かべた。
「あれ?石垣2尉って、赤飯嫌いでした?」
「いや・・・嫌いじゃ無いけど・・・」
石垣の脳裏に、とある出来事が思い浮かぶ。
「・・・確かに、停戦は成立したけれど・・・これまでの戦闘で、敵味方関係なく大勢の命が失われている・・・その、赤飯って・・・ちょっと不謹慎じゃないかと・・・」
「えぇ~!?」
石垣の言葉に、側瀬が不満そうに声を上げる。
「下らないな」
「そうね」
任とメリッサが、同時に、つぶやく。
「えっ?」
自分の味方がゼロという事に、石垣は驚いて氷室を見る。
「メリッサ先生。説明を、お願いしま~す」
「はい、わかりました」
氷室に振られて、コホンと咳払いをして、メリッサは説明を始めた。
「タツヤが、気になっているのは、関西地方を中心に起こった大震災の時にあった事でしょう?避難者の炊き出しで、赤飯のおむすびが提供された時に、一部の人々が騒いで、マスコミに大々的に報道された事でしょう?」
「そうです」
「あれは、後から騒いだ一部の声の大きい人の声を、マスコミが拾っただけ。最初にそれを言い出した人は、不謹慎という理由では無くて、災害の被害を受けた人が、心身共に消耗している状態では、赤飯等に使われるもち米は、腹持ちは良くても、消化が悪いから体調が悪くなる可能性があるから良くないというのを、偏った思想の持主が、勝手に解釈したそうよ」
「そうだな。中国なら、災害の被災者には、お粥のような消化に良い物を、提供するだろう。しかし、提供した側の善意は、十分理解出来るから、そんな、文句は決して言わない。むしろ、そんな文句を言う人間の方が、袋叩きにされるだろう」
「そうそう。ウチの死んだお婆ちゃんも、いつも言ってた。どんな理由があっても、食べ物に文句を言う人間は、最期は罰が当たって、何も食べられなくなって、苦しんで死ぬって・・・だから、食べ物に文句を言っちゃ駄目だって!」
「・・・そんな、文句なんて言ってないのに~・・・」
女性陣から、言葉の総攻撃を受けて、石垣は半ベソになる。
「まあまあ、そのくらいで・・・でもね、石垣君。赤飯に使われる小豆は、邪を払うと言われているんだよ。だから、1つの区切りを付けて、新しい事を始める時に、災いが降りかからないようにという願いも籠っている。確かに僕たちも、連合国や枢軸国の人々も、多くのものを失った。でも、失ってしまったものは、もう帰らない。どんなに悲しくても、過去は変わらない。変わらないという事は、忘れてはいけないけれど、囚われてもいけない。未来は見えないけれど、乗り越えていかなくてはならない困難な事が沢山ある。それらを乗り越えていけるようにという願いが、赤飯には籠っているんだよ」
「はあ・・・」
何だか、赤飯1つで、ここまで話が大きくなるとは・・・
「・・・そう言えば、俺のお祖父さんの葬式の時に、初七日の法要のお膳で、赤飯が出ていたっけ・・・」
幼い頃の事が、石垣の脳裏を過った。
終わりがあれば、始まりもある。
何かに区切りを付け、再び前に進む・・・そのための意味があるものがある。
翌日、早朝。
アメリカへの帰還兵を乗船させた、輸送船団を護衛する菊水総隊海上自衛隊第5護衛隊群旗艦ヘリコプター搭載護衛艦[ひゅうが]を基幹として、汎用護衛艦[あきづき]、[ながなみ]、新世界連合軍連合海軍艦隊総軍第1艦隊駆逐艦部隊で、編成された派遣艦隊は、パールハーバーを出港した。
[ひゅうが]の甲板に立ち、石垣は、太陽が昇る水平線の向こうにある、アメリカ大陸を見据えていた。
まだ見えない未来、それと同じく、水平線の彼方は、まだ見えない・・・
撥雲見天 第11章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は4月19日を予定しています。




