表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
362/452

撥雲見天 序章 1 2等海尉の独語

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 米英独伊4ヵ国連合軍総司令官チェスター・ウィリアム・ニミッツ・シニア元帥が派遣した特使から、停戦と会談の申し入れを受け、大日本帝国統合軍省統合作戦本部統合作戦総長である山本五十六(やまもといそろく)大将は、菊水総隊司令官の山縣幹也(やまがたみきや)海将との協議の上、これを受諾した。





「・・・終わった・・・」


 第2水陸機動連隊本部で、その報告を受けた石垣(いしがき)達也(たつや)2等海尉は、小さくため息を付きながら、つぶやいた。


 連隊本部内では、通信員が停戦命令を、各部隊に通達している。


「・・・・・・」


 長かった・・・本当に・・・


 心底から、そう思った。


 昨年の12月8日。


 真珠湾攻撃から始まった、太平洋から東南アジア方面まで拡大した戦争・・・


 その天王山とも言える、ハワイ攻防戦。


 まだ、戦争そのものは終わった訳では無いが、1つの区切りが付いたと言っていいだろう。


 敵も味方も含めて、多くの人命が、失われた・・・


 そして、多くの人の心に、深い傷が刻まれた・・・


 1つの実感としてあるのは、資料や記録では、現実というものを完全に理解する事は難しいという事だ。


 自分が何年も、学び、考えていた戦争の歴史についての考察の時間よりも、タイムスリップをしてから2年も経たない時間の方が、遥かに多くのものを学び、考える事が、出来たようにも思える。


「・・・・・・」


 石垣は、第2水陸機動連隊本部の片隅で、物思いに耽っていたが、連隊本部内の他の隊員たちは、次々と上がって来る情報に、慌ただしく動き回っている。


 停戦を受理したからと言っても、前線各所までその通達が、完全に行き届いている訳では無い。


 米英独伊4ヵ国連合軍も、使用出来る通信回線をフル稼働して、地上軍残存部隊に、即時戦闘中止命令を発令しているが、地上軍総司令部が司令部機能を消滅させている以上、通信が途絶している部隊も、数多く存在する。


 そのため、戦闘行為が完全に収束するには、まだまだ時間が掛りそうだ。


 それらに対処しているのだから、連隊本部の隊員たちは、石垣のように停戦の余韻に浸る余裕は、まだ無い。





「石垣2尉」


 石垣に付き添っていた広報官が、声をかけてきた。


「何ですか?」


「たった今、[信濃]から連絡がありまして、山本作戦本部総長からの命令で、至急[信濃]に、帰投せよとの事です」


「わかりました」


 山本が、自分を呼び戻そうとする理由。


(・・・もしかして・・・俺も、ニミッツ提督との停戦の会談に、総長の随行者として参加出来るのかも・・・?)


 ・・・そんな、考えが過った。


 もし、それが実現したら・・・こんな歴史的瞬間に居合わせる事が、出来るとすれば・・・


 これ程、幸運な事は無い。


 それを想像すると、笑みが自然に浮かんでくる。


「・・・石垣2尉、何、ニヤニヤしているんです?キモ~い!!」


 それを見咎めた(そく)()美雪(みゆき)3等海尉が、顔を顰めて告げてくる。


「キモいって、失礼な!?」


 確かに、意味も無く、ヘラヘラと笑みを浮かべていれば、傍からは、不気味がられるのは仕方が無いが・・・その言い方は、酷い。


「・・・もしかして・・・ヤラしい事を想像していた・・・とか?」


「失礼な!俺は、変態じゃない!!」


 思わず、石垣は叫んだ。


「ムキになってる!やっぱり、図星なんだ~!!石垣2尉の、ドスケベ~!!」


「違う!!」


「そこ!静かにしていろ!!!」


 叱られた・・・

 撥雲見天 序章1をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ