薄明光線 第4章 鼓吹 人それぞれ
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
大日本帝国統合軍省統合軍作戦本部統合作戦本部総長の山本五十六海軍大将は、指揮母艦[信濃]の彼の自室で、海軍本部長の宇垣纏中将と、海軍参謀長の黒島亀人少将の、訪問を受けていた。
「作戦が、纏まりました」
宇垣が、作戦書を提出する。
「超空母[回天]及び第1航空艦隊と、第4航空艦隊を基幹とした、空母機動部隊をもって、クリスマス島を攻略します」
黒島が、自信を持った口調で発言をする。
「第1艦隊は、どうする?」
「米英独伊連合軍連合海軍は、我々がクリスマス島攻略作戦を実施すれば、必ず、空母機動部隊及び戦艦部隊を、投入してきます。第1艦隊の全力を持って、敵戦艦部隊を無力化します」
宇垣の言葉に、山本は、クリスマス島攻略の作戦書のページを開いた。
「第1航空艦隊がクリスマス島攻略に専念すれば、第1艦隊の航空援護が出来なくなる。戦艦[大和]及び[武蔵]が、敵の航空戦力の格好の標的になる」
山本の指摘に、黒島が答えた。
「その点に付きましては、考慮しています。先ほど、本国から増援部隊として出撃しました新空母機動部隊が、到着しました。聯合艦隊司令部の直接指揮下で作戦行動を行う予定ですが、これを変更し、第1艦隊に編入させます」
「練度は大丈夫なのかね?操艦要員及び航空要員たちは、十分な訓練を受けていないのではないか?」
「確かに、その辺りに関しては、いささか心配ではありますが、ここに来るまでの間に、ある程度の訓練を実施したと、報告を受けています。本格的な航空攻撃等は無理でも、艦隊の上空援護及び航空支援ぐらいであれば、問題は無いと思われます」
宇垣が、説明する。
山本が開いたページは、作戦に参加する艦隊及び上陸部隊が、記載されている。
その中で、第1艦隊に編入される新設された第11航空戦隊について、山本は注視する。
第11航空戦隊は、大日本帝国統合軍省軍需省海軍局が、急造させた中型航空母艦で、編成された航空戦隊だ。
第11航空戦隊、空母[天城]と[笠置]である。
「彼らの労を労いたい。両空母に、乗艦する手続きをしてくれ」
山本の言葉に、宇垣が笑みを浮かべる。
「その必要はありません。先ほど、聯合艦隊司令長官に直接連絡して、乗艦手続きを済ませておきました」
「早いな」
「総長とは、長い付き合いですから・・・」
宇垣が、苦笑する。
山本が聯合艦隊司令長官に就任してから、宇垣や黒島は彼の幕僚として、仕えてきた。
ある程度に、上官の人となりを理解している。
「では、すぐに行こう」
山本が、席を立つ。
「後、石垣君を呼んでくれ」
「彼も、甲板上で待機しています」
「それも、お見通しか?」
「はい」
山本の言葉に、宇垣がうなずく。
彼は棚から、3本のボトルを取り出した。
「司令官と各艦長への陣中見舞いだ」
山本は黒革の鞄に、それを入れた。
「そうだ。酒保に連絡して、本艦が保管している日本酒を、[天城]と[笠置]に送るよう指示してくれ」
「わかりました。ただちに」
「本艦に保管されている日本酒は、かなり上等な代物だ。彼らの労を労えるだろう」
指揮母艦[信濃]は、統合軍省に所属する高級士官や上級士官たちが乗艦するため、他とは別格の扱いを受けている。
その1つとして、酒類は他の艦艇と違い、格段に高い物が用意されている。
むろん、操艦要員たちも、それらの酒を飲む事が出来る。
そのため、指揮母艦[信濃]に乗艦を希望する、下士官や水兵は多い。
指揮母艦[信濃]に搭載されている二式輸送回転翼機に搭乗した山本、宇垣、黒島、菊水総隊司令官付特務作戦チーム副主任の石垣達也2等海尉は、第11航空戦隊、空母[天城]に向かった。
「石垣君は、[雲龍]型航空母艦を見るのは、初めてかね?」
山本が、質問する。
「はい。資料の写真なら見た事がありますが、実物を見るのは初めてです」
石垣が、答えた。
「そうか。俺は、試験航海中の空母[雲龍]を見た」
「確か・・・近衛艦隊の航空戦力として、配備されていましたね」
「そうだ」
大日本帝国海軍は、[神武]型航空母艦等の大型空母の建造だけを行っているだけでは無い。
航空艦隊だけでは無く、通常の艦隊にも航空戦力が必要であると、山本は早い段階で訴えて来た。
そこで、中型航空母艦の建造が、計画された。
史実でも[雲龍]型航空母艦は、ミッドウェー海戦での敗退により、正規空母4隻の損失を回復させるため、[雲龍]型中型航空母艦15隻の建造が計画された。
だが、戦況の悪化や、空母[信濃]と1番艦[雲龍]の戦没、艦船用の燃料が不足等の問題が発生し、航空艦隊の再建が断念されるという結果を生んだ。
結局、建造されたのは、6隻だけであった。
ここでは、[雲龍]型航空母艦は、ほとんど史実の[雲龍]型航空母艦と変わらない設計がされたが、電探及び対空兵器は、史実の同型艦を上回るレベルである。
(しかし・・・戦艦部隊にも空母を所属させ、戦艦部隊の生存率と任務成功率を、向上させるとは・・・)
空母艦載機と戦艦の艦砲射撃の連携は、艦隊と航空艦隊という区分が行われていた時から研究され、十分な研究と評価が行われていた。
(でも、第11航空戦隊は、十分な訓練と連携が実施出来ていない。最悪、南東諸島での第3航空艦隊と、同じ結果を生むかもしれない・・・)
石垣が、そんな事を考えていると、山本が、それを察したのか、口を開いた。
「石垣君。君の心配も理解出来る。第11航空戦隊では、力不足と考えているのだろう?」
「え・・・あ・・・は、はい・・・」
石垣は隠さずに、正直に頷いた。
「ハワイ会戦は、この戦争の天王山だ。我々と彼らの勝ち負け関係なく、ここでの勝敗が、どのような外交に発展するかが決まる。あの日露戦争の旅順攻略の時のように・・・」
山本の言葉に、石垣は合点がいった。
日露戦争では、旅順湾港に逃げ込んだロシア帝国海軍旅順艦隊を、どのようにして無力化するか・・・
それが海軍の問題であった。
もしも旅順が攻略されないままバルチック艦隊が現れたら、旅順湾港を拠点に、ロシア海軍は、完全に息を吹き返すであろう。
それだけでは無く、ロシア帝国陸軍満州軍の士気も向上するだろう。
陸軍が旅順要塞を攻略した事により、大西洋を南下し、喜望峰を回り、インド洋に進出していたバルチック艦隊の士気を、低下させる事に成功した。
バルチック艦隊司令部では箝口令を敷いたが、人の噂を止める事は出来ない。
人から人へと噂が広がり、話が広がる。
たとえ、真偽不明の噂話であっても、旅順要塞陥落の報を聞けば、将兵たちの士気の低下は必然である。
石垣は戦史の研究が主であったが、メリッサのおかげで、人心というものを理解する事が出来るようになった。
山本の思惑が、何を意味しているのかも、理解出来る。
空母[天城]の飛行甲板で、艦長の川朔阿之介大佐は、士官と搭乗員を整列させていた。
彼の隣には、第11航空戦隊司令官の並木道夫少将が立っている。
空母[天城]の飛行甲板に、二式輸送回転翼機が着艦した。
「敬礼!」
号令官の号令で、川朔たちが挙手の敬礼をする。
山本は、空母[天城]の飛行甲板に降りると答礼する。
「第11航空戦隊司令官の並木です」
「艦長の川朔です」
2人の高級士官及び上級士官が名乗る。
「早速だが、搭乗員たちの顔を見せてくれ」
「はっ!」
川朔が、案内する。
「若いな・・・」
山本が搭乗員たちの顔を見回して、最初の感想がそれだった。
「はっ!新造艦であるだけでは無く、搭乗員たちの飛行時間も、ほとんど200時間程度です」
「ん?」
山本が川朔の説明を受けながら、搭乗員の顔を1人1人見ていると、1人の少年兵の前で、足を止めた。
「どこかで会ったかね?」
山本が、その少年兵の前に立ち、聞く。
「はい!!!」
少年兵は、これでもか!という大きな声で返事をする。
「そこまで大きな声で、無くてもよい」
宇垣が、告げる。
「いやいや、元気があってよろしい!」
山本が、頷く。
「4年程前に総長が、長岡に墓参りにいらした時に、父と一緒に、お会いしました!」
「おお!!あの時の!!」
山本が記憶を探り、思い出したように声を上げた。
「たしか・・・父君は、海軍だったな。元気にしているか?」
「はい、それが・・・父は、軽巡洋艦[音羽]の乗組員でしたが・・・」
少年兵の言葉に、山本は察した。
[新高]型軽巡洋艦[音羽]は、艦艇急造計画で建造された、軽巡洋艦の1隻だ。
ラバウル軍港を拠点にする第8艦隊に編入されたが、濠太剌利海軍の潜水艦により、撃沈された。
[音羽]艦長は、艦と運命を共にした。
因みに海軍では、海軍大臣、軍令部総長、聯合艦隊司令長官の命令で、沈没する軍艦から司令官及び艦長等は、必ずしも艦と運命を共にする必要は無いと布告を出したが、司令官又は艦長によっては、艦と運命を共にする者もいる。
「家は、大丈夫なのか?」
山本の問いに、青年は答えた。
「はい、弟は小学校の高学年になったばかりです。妹は、まだ幼く、母が世話をしなければなりません!」
「働き手は、お前だけか?」
「はい!」
少年兵が、元気よく返事をした。
「名前を、聞いておこう」
「はっ!海軍航空隊天城飛行隊所属の井塚朔3等飛行兵曹です!」
「井塚3曹。これは総長からの直接命令だ。君は、必ず生き残れ。君だけでは無いが、君たちのような若者は、この戦争が終結後、極めて貴重な存在となるだろう」
山本は、少年兵の肩に手を置いた。
「随分と、若いな・・・」
山本は、川朔に聞こえるぐらいの声で、つぶやいた。
「はい、うちの艦だけではありませんが、あのような少年兵たちが、他にもごろごろいます」
艦艇の急造計画により、操艦要員及び航空要員が、不足している。
もちろん、本土にある各鎮守府に勤務する陸上勤務者は必要であるため、16歳以上18歳未満の少年兵たちが、実戦部隊に配属されるのは珍しい話では無い。
第1航空艦隊及び第2航空艦隊でも、搭乗員の損失があるため、少数ではあるが少年兵が配属されている(主に護衛航空戦隊の護衛空母の飛行要員として)。
「そうだ。君たちの労を労うために、酒を用意した。後で、皆と一緒に飲もう」
「ありがとうございます。美味しく、いただきます」
川朔が、一礼する。
「石垣中尉!」
石垣は、トイレに行きたくなったため、山本たちと別れて、空母[天城]のトイレに行っていた。
用を済ませた石垣が通路を歩いていると、1人の下級士官に呼び止められた。
「貴方は・・・」
「[天城]飛行隊の、古田正人中尉です」
「ああ!霞ヶ浦で、お会いしましたね!」
石垣は、思い出した。
この時代にタイムスリップして、間もない時に山本に連れられて、霞ヶ浦海軍航空隊を訪れた時、そこで出会った海軍士官だ。
「古田さん」
石垣は、嬉しそうな顔で彼の名を呼んだ。
「中尉に昇進したのですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます。今まで基地航空隊勤務でしたが、空母航空隊勤務になりました」
古田は鼻を掻きながら、応じた。
「どうですか?石垣中尉。久し振りに飲みませんか?」
「それが・・・」
石垣は、現在、山本のお付きで、ここに来ている。
勝手に誰かと、飲む訳にはいかない。
「かまわんよ。石垣君」
背後から、声をかけられた。
「や、山本総長!」
「総長!」
石垣が振り返り、古田は挙手の敬礼をする。
「久し振りの再会だ。彼らと飲むといい。年長の高級士官や上級士官たちと、一緒に酒を飲むよりも、同じ階級の者たちと飲むのがいいだろう?」
「いえ・・・その・・・総長」
石垣は、そういう問題では無い事を、説明しようとした。
彼は、公務中である。
公務中に飲酒をする等、言語道断である。
この時代は、あまり問題視されない時もあったが、石垣のいる海上自衛隊・・・
自衛隊は、問題視する。
石垣が、何を言おうとしているか、理解した山本は笑みを浮かべた。
「上には、後で私から説明しよう。だから、飲むといい。それでも問題なら、山本に無理矢理飲まされたと言ってくれてもかまわない」
「はぁ~・・・わかりました」
石垣が、うなずく。
「では、若者同士、頑張ってくれたまえ」
山本が、手を振る。
「まあ、総長から許可が出たし、行くとしようか」
石垣が、古田に振り返る。
「ああ。こっちだ」
古田が、案内する。
古田に案内され、艦上戦闘機、艦上爆撃機、艦上攻撃機、回転翼機の搭乗員である、士官たちが集まる航空士官室に入室した。
「すごい客人を、連れてきました」
古田が、航空士官室にいる士官たちに、石垣を紹介する。
「おお古田」
「後ろにいるのは・・・」
「総長のお付きの、将校では無いか!?」
1人の大尉が、驚いた口調で叫ぶ。
「すげぇ~お前。そんな将校と、知り合いだったのか?」
「まあ、座れ!座れ!」
少佐の階級章を付けた、飛行服の上級士官が、石垣に椅子を勧める。
「まあ、飲め、飲め」
石垣の盃に、日本酒を注ぐ。
「いただきます」
「ぐぃ!と行け」
大尉が、一気に飲み干すように勧める。
石垣は、盃に注がれた日本酒を、一気に飲む。
「どうだ、美味いだろう。[天城]が保管している日本酒は?」
「はい、美味しいです」
石垣が盃を置くと、一升瓶を持った大尉が、空になった盃に再び日本酒を注ぐ。
「どんどん飲め」
すでに出来上がっている士官たちに勧められて、石垣が日本酒を注がれた盃を空ける。
(俺、大丈夫かな・・・?)
このペースで飲み続ければ、酔うのは必然であるが、場の空気には逆らえず、石垣は、注がれるままに、ぐいぐいと日本酒を飲むのであった。
その後、士官たちが、石垣を歓迎するために、軍歌を歌い出した。
「・・・あれ?」
目が覚めた時、最初に目に入ったのは、見慣れた自室の天井だった。
「・・・・・・」
いつの間に、[信濃]に戻ったのだろう?
記憶が、無い。
「ええと・・・」
ベッドで身体を起こした状態で、残っている記憶を探る。
士官たちの歌う軍歌を聞きながら、断り切れずに注がれる酒を、ひたすら飲んでいたような・・・
「ヤバい・・・」
多分、酔いつぶれて寝てしまった・・・?
まだアルコールが抜けていないのか、頭の芯が重い。
「・・・これって、宇垣海軍部長に雷を落とされるって、オチ付き・・・?」
今頃、「何たる醜態だ!!怪しからん!!」と、ばかりに、頭から角を生やしている宇垣を想像して、頭を抱える。
「ワン!」
「うわっ!?ビックリした!」
いつからそこにいたのか、ボーダーコリーの伝助が、お座りをしていた。
伝助の頭を軽く撫でて、床に足を付ける。
「クゥ」
伝助が、顎で示す方向を見ると、ベッド横のサイドテーブルの上に、水差しと小皿に乗った小指の先大の丸薬のような物があった。
「・・・これを飲めって?」
正体不明の怪しい丸薬を、不気味がっている石垣に、「飲め!」と、ばかりに伝助が圧を送って来る。
「・・・・・・」
ままよ!とばかりに、一気に口の中に丸薬を放り込む。
「・・・!!・・・苦アァァァ~!!!」
苦味が、鼻腔の奥まで突き抜けて、思わず絶叫を上げて、水を一気にあおって嚥下する。
「クゥ」
伝助は、「これでも食べろ」とでも言っているのか、いつの間にか口に咥えていたドロップ缶を投げて寄こしてきた。
涎塗れのドロップ缶を開けて、掌に転がって来たドロップを、大急ぎで口の中に放り込んだ。
「ふぅ~・・・」
甘味が口中に広がり、口の中の苦味が一掃される。
そこで、小皿の下に紙片が挟まっている事に気が付いた。
「?」
『お疲れ様。
家伝の酔い覚ましです。ちょっと、苦いけれど効果は、バツグンだからね。
原料はナイショ。でも、うちの父と、本庄さんで人体実験は、完了しているから安心してね。
by 桐生』
「・・・逆に、不安しか無いんですが・・・」
達筆と言っていいほどの、綺麗な文字と文章のギャップが、あり過ぎる・・・
『P.S 宇垣海軍部長さんから、目が覚めたら作戦室に来るようにと、伝言されました』
やっぱりか~!!・・・重い気持ちになりながら、服を着替える。
気分は沈んでいたが、頭に残っていた重さは、作戦室のドアの前に着くころには、スッキリしていた。
「昨夜は、醜態を見せてしまい、申し訳ありませんでした」
この際、叱られるなら最初から謝ろう・・・そう思って、ドアを開けると同時に頭を下げた。
「・・・・・・」
何も反応が、無い。
恐る恐る頭を上げると、山本、宇垣、黒島は、席に着いたまま、それぞれが書類に目を通していた。
「昨日は、ご苦労だった。今日はゆっくり休みたまえ」
書類に視線を落としたまま、宇垣が声をかけてきた。
「・・・あの・・・」
理解出来ずに、石垣は固まっていた。
「君は、酔いつぶれていたので覚えていないだろうが、[天城]飛行隊長が礼を言っていた。共に飲み、歌い、語り合ってくれて、嬉しかったそうだ」
「・・・・・・」
「彼らは戦地へ赴く・・・たとえ、覚悟は出来ていても、当然不安があるだろう・・・恐怖もあるだろう・・・我々のような年長者が声をかけても、それを払拭するのは難しい・・・しかし、同年配である君は違う。彼らと同じ目線で、同じ立場で、屈託なく語り合う事が出来る。我々では出来ない事だ。それは、死地に赴く者にとって、どんな激励や激昂にも勝る・・・ご苦労だった」
「・・・・・・」
まったく、憶えていない・・・自分は、一体何を喋ったのだろう・・・?
首を傾げて考え込んでも、思い出せないものは思い出せない。
「それと、古田中尉からの伝言だ『また、一緒に飲みましょう』だそうだ」
「はい!」
「ところで、石垣君」
宇垣の話が終わったところで、山本が、ニンマリとした笑みを浮かべて、口を挟んできた。
「その時には、ぜひとも俺にも声をかけてくれ」
「は?」
「おや、覚えていないのかね?下戸の俺に、酒の飲み方を教えると言っていたではないか?」
「えぇぇぇ~!!?そんな、失礼な発言をしたのですか!!?」
山本の投下した爆弾に、石垣は絶叫した。
「・・・嘘は、いけませんよ、総長。嘘は・・・」
「はっはっは。冗談だよ、冗談」
頭を抱えている石垣を見ながら、黒島が山本に突っ込む。
本当に、心臓に悪い・・・
薄明光線 第4章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は9月7日を予定しています。




