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薄明光線 第1章 神よりも悪魔よりも恐ろしい存在

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 ニューワールド連合軍連合防空軍アメリカ防空軍に所属するAL-1Aは、護衛戦闘機として随行しているアメリカ防空軍所属のF-22A[ラプター]2機と、空母連合艦隊の前方に展開していた。


「目標情報入りました!」


 オペレーターが、叫ぶ。


「クリスマス島より、V-3ロケットの発射を探知!!空母連合艦隊に向かっています!!」


「V-3ロケット・・・情報では、史実に登場しなかった。対艦攻撃用の弾頭ミサイルだな」


 先任将校が、ディスプレイを見ながら、つぶやいた。


 V-3ロケットは、ドイツ第3帝国国防軍陸軍戦略攻撃軍が配備している、V-2ロケットをベースに、海軍が開発した対艦攻撃用の弾頭ミサイルだ。


 ドイツ第3帝国第1副首相であるロザリンダ・ベレ・クラウゼンが、ヨーロッパ大戦にアメリカ合衆国が参戦した時に備えて、空母及び戦艦への攻撃のために海軍に要請して、開発させた兵器だ。


 ニューワールド連合軍統合情報局では、2タイプがある事が確認されており、1つは地上基地から発射するタイプと、もう1つは潜水艦から発射するタイプだ。


「ドイツ第3帝国との戦争に備えて、我々も派遣されたが、実証実験無しで、いきなり実戦とは・・・絶対に失敗出来ないな・・・」


 先任将校が、緊張した口調で、つぶやく。


「ABL発射準備!」


「ABL発射準備!」


 先任将校の指示を受けて、兵装担当員が、空中発射レーザー(ABL)の発射準備を行った。


 AL-1Aは、ミサイル迎撃を目的とした、航空機である。


 2000年代に初飛行し、搭載するABLで、ミサイル迎撃実験を行った。


 ミサイル、巡航ミサイル、弾頭ミサイル迎撃に成功し、AL-1Aがミサイル迎撃機として承認された。


 レーザーは2種類存在し、追跡レーザーと標識照射レーザーがある。


 まず、追跡レーザーを照射し目標を確認、追跡を行う。


 その後に標識照射レーザーを照射し、ミサイル迎撃する仕組みだ。


 ABLは、ミサイルを焼き切ったり、破壊する訳では無い。


 ミサイルの表面に高熱を加えて、ミサイルの表面の耐久性を弱らせ、飛翔中の圧力で機能不全を引き起こす仕組みだ。


 実際、ミサイル迎撃試験では、ABLを照射されたミサイルは、高熱によりミサイル自体が弱まわり、圧力により空中爆発若しくは空中崩壊した。


 もちろん、ミサイルのみだけでは無く対航空機にも使用が可能であり、戦略爆撃機への迎撃用にも配備されている。


 ニューワールド連合軍連合防空軍アメリカ防空軍は、AL-1Aを4機配備しており、予備として1機、整備として1機、稼働機として2機という段取りが行われている。


「目標を捕捉!」


「追跡レーザー照射!」


 先任将校の指示で、兵装担当士官が、追跡レーザーを照射した。


「目標に、照射完了!」


「標識照射レーザー照射!」


 先任将校が、指示を出す。


「照射!」


 標識照射レーザーが照射され、V-3ロケットの先端が高熱に晒される。


 高熱により先端部分が溶け出し、そのまま圧力により、空中爆発を起こす。


 この間、コンマ数秒である。


「第2目標に照準!」


 先任将校の指示で、2発目のV-3ロケットに、レーザーが照射される。


 先端部分に照射され、そのまま先端部分が溶け出す。


 2発目も、空中爆発を起こす。


「実戦での結果は、上々だな。しかし・・・数が多い」


 V-3ロケットは、かなりの数が発射されたために、1機で迎撃出来る数には限りがある。


「後は、イージス艦に任せよう」





「新たな情報が、入りました!」


 菊水総隊海上自衛隊第1護衛隊群第5護衛隊に所属するイージス護衛艦[ちょうかい]のCICで、レーダー員が叫んだ。


「新世界連合軍連合防空軍アメリカ防空軍に所属するAL-1が、空母連合艦隊に向けて、発射したV-3ロケットの迎撃に成功しましたが、15発が、迎撃網を突破しました!」


「敵攻撃隊の迎撃も、完了していないっていうのに!!?」


「敵も、必死だな」


 CICにいる海曹たちが、声を上げる。


「システムBMDモードに!」


[ちょうかい]艦長の白川(しらかわ)(きく)次郎(じろう)1等海佐が叫ぶ。


「システムBMDモード!SM-3発射準備!!」


 白川の指示を受けた砲雷長が復唱し、ミサイル担当の海曹たちが、データを入力する。


「SM-3発射準備!」


「諸元入力完了!」


 艦船発射型弾頭弾迎撃誘導弾であるSM-3は、大気圏外に達する事が出来る飛翔能力を持ち、1990年代末から何度も実射試験が行われた。


 そして、かなりの高レベルの迎撃評価を、出している。


 海上自衛隊が導入しているSM-3は、ブロック1では無く、最新型のブロック2Bである。


 ブロック2Bは、弾頭制御部が小型化し、推進機器の柔軟性向上、火器管制ソフトウェアがアップグレードされている。


 そのため、迎撃能力及び迎撃成功率は、大幅に向上した。


「SM-3、発射準備完了!」


「SM-3、撃ち方始め!!」


 ミサイル担当士官が叫び、砲雷長の3等海佐が、叫んだ。


()ぇぇぇ!!」


 ミサイル担当士官が叫びながら、発射ボタンを押す。


 前部VLSと後部VLSに搭載されているSM-3が、轟音と振動と共に発射される。


 2発のSM-3が発射され、目標であるV-3ロケットに向かう。


 基本的な迎撃手順は、1発の弾頭ミサイル対して、2発のSM-3を発射する。


 もちろん、SM-3を発射するのは、[ちょうかい]だけでは無い。


 第1護衛隊群第1護衛隊イージス護衛艦[あかぎ]や、[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦等のミサイル駆逐艦が、一斉にSM-3を発射する。


「インターセプトまで、10秒、9、8、7、6、5、4、3、2、1。スタンバイ!」


 対空レーダーのスクリーン上で、2発のSM-3が、1発のV-3ロケットと重なる。


「マークインターセプト!!」


 そのまま1発のSMが通過するが、V-3ロケットの光点が消えた。


「第1次迎撃、成功!」


 レーダー員が、叫ぶ。


 CICの中で、歓声が響く。


 他のイージス護衛艦及びミサイル駆逐艦が発射したSM-3も、V-3ロケットの迎撃に成功した。


 実際、SM-3による迎撃成功率は、シミュレーション上のようには、うまくいかない。


 アメリカの専門家の話では、10パーセントから20パーセントという確率だ。


 しかし、80年前の弾頭ミサイルであるため、成功する確率は、さらに高くなるだろう。


 しかし、絶対では無い。


「艦長!早期警戒機が、高々度から接近する大型爆撃機群を探知!空母連合艦隊に接近しています!」


 レーダー員の報告に、白川は、対空レーダーのスクリーンを眺めた。


「敵も、諦めが悪いな・・・」


 白川のつぶやきに、副長が答える。


「何としても、ここで空母連合艦隊を、撃破したいのでしょう。ここで、諦めたら、米英独伊連合軍の敗北は、確実になります」


「上空防衛に展開している戦闘機部隊に、戦略爆撃機群の迎撃が命じられました!」


「残りの攻撃機は、我々に任せるという事か」


 白川がつぶやく。





 朱蒙(チュモン)軍海軍機動艦隊第1艦隊旗艦である[階()(ベク)]級航空母艦[階伯]は、前衛に[世宗(セジュン)大王(デワン)]級ミサイル駆逐艦準同型艦である[燕山(ヨンサン)(グン)]級ミサイル駆逐艦[燕山君]を配置し、後衛に[李舜臣(イスンシン)]級駆逐艦、[金(キム)春秋(チェンチュ)]、左右に[公開土(クァンゲ)大王(トデワン)]級駆逐艦2隻等の戦闘艦が配置されている。


 朱蒙軍海軍機動艦隊第1艦隊は、新世界連合軍連合海軍第1艦隊指揮下で編成された空母連合艦隊の後衛に配置されている。


[階伯]の艦橋横のウィングに出た第1艦隊司令官である中将は、甲板上で発艦準備を行うF-35B[ライトニングⅡ]を見下ろしていた。


 F-35Bは、アメリカ海軍及び海兵隊の航空部隊が運用する機では無い。


 韓国海軍が、導入した機である。


 韓国軍でも自衛隊と同じく、F-35の導入がされている。


 韓国空軍は、F-4E[ファントム]の後継機としてF-35A、40機以上を導入したが、海軍でも独自に予算を確保して、F-35Bを購入した。


[階伯]の艦載機としてだけでは無く、強襲揚陸艦の艦載機としても、運用するためである。


[階伯]の艦載機として、F/A-50Nが12機、配備されているが、作戦行動によっては、8機のF-35Bを、運用する事も想定されている。


「提督!艦長!」


 飛行先任士官である中領(中佐)が、挙手の敬礼をする。


「F-35B、4機。発艦準備完了しました!」


「わかった。全機発艦せよ!」


 艦長である大領(大佐)が、うなずく。


 発艦するF-35Bは、ステルス性を重要視していないため、胴体内に各種ミサイルを装備する必要が無く、主翼下に空対空ミサイルを6発、搭載する事にした。


「全機発艦!」


 飛行先任士官が、ヘッドセットに叫ぶ。


 その指示は、すぐに甲板上で作業している誘導員等に伝わり、F-35Bに発艦準備命令が出される。


 1機のF-35Bが、発艦準備に入る。


 コックピットからパイロットが、こちらに挙手の敬礼をするのが見えた。


 司令官と艦長が、答礼する。


 そのままF-35Bが滑走し、[階伯]から発艦する。


 続いて2機目の発艦が開始される。


 3機目、4機目と続き、全機の発艦が完了する。


「我が海軍がF-35Bを導入したのは、かなり後だ。彼らが、どこまで活躍してくれるか、わからんが、活躍してもらいたい」


 司令官は、飛び立ったF-35Bを見送りながら、つぶやいた。


 韓国海軍がF-35Bを導入するのは、簡単では無かった。


 韓国空軍からの圧力や反発が強く、かなり邪魔をされた。


 空の主役は、自分たち韓国空軍にあるという、プライドが強く、海軍が多用途戦闘機を導入するのは、一苦労だった。


 海軍は、あくまでも制海権を獲得するための手段として導入すると、主張したが、この主張は、F/A-50Nの時も使ったため、なかなか首を縦に振る空軍では無かった。


 軽戦闘攻撃機であるF/A-50Nは、ある程度の理解はあったが、F-35Bは、ステルス性能がある上に、多用途戦闘機である。


 そのような理由が、通用する訳が無い。


 まあ、ゴネる空軍を、何とか説き伏せての運用である。


 それだけに、それに見合う戦果を出さなければならない。


「彼らは、アメリカ本土で直接訓練を受けた猛者揃いです。必ず、提督のご期待に応えてくれると思います」


 艦長の言葉に、司令官は、うなずく。


「そういえば艦長は、国防部で海軍が多用途戦闘機を導入すべしと、強く主張したな」


「はい、あの時は苦労しました。ですから彼らは、必ずやってくれます」





 朱蒙軍海軍航空司令部第8戦団第82飛行戦隊階伯派遣隊に所属するF-35Bの4機編隊長である少領(少佐)は、レーダーを表示しているディスプレイを、見下ろす。


「ホランイ1から、各機へ、AWACからの情報では、敵戦略爆撃機は、ドイツ第3帝国国防軍空軍のMe264だ。搭載している爆弾は、情報が正しければ核爆弾と思われる。何としても我々が、核爆弾搭載機を撃墜するぞ!!」


「「「ラジャ!!」」」


 他のパイロットから、返答が入る。


 空母連合艦隊から発艦したF/A-18E/F[スーパーホーネット]、F-35B/C、殲―15等が合流している。


 この他に上空防衛のために出動している、連合空軍等の空軍機もいる。


「イーグルアイから連合軍戦闘機部隊に告ぐ。全機、ミサイル発射を許可する。核爆弾が誘爆する可能性がある。使用するミサイルは、中射程ミサイル又は長射程ミサイルに限定する。くれぐれも、格闘戦をしよう等とは思わないように」


「ホランイ1。ラジャ」


 全戦闘機部隊の統合指揮を行っている、菊水総隊航空自衛隊のE-767から指示を確認し、少領は返答する。


「ホランイ1より、各機へ、攻撃命令が出た。全機、AIM-120を選択しろ」


 少領の指揮下で作戦行動するF-35Bの主翼下には、AIM-120は4発搭載されている。


 それが4機であるため、計16発である。


「行くぞ!!FOX3!!」


 少領が叫び、発射ボタンを押す。


 連合軍戦闘機部隊全機が、一斉に長射程ミサイル、中射程ミサイルを発射する。


 事前に敵が核爆弾を、クリスマス島に配備している情報が入っていたため、新世界連合軍を主体として、その対策を行っていた。


 レーダー画面上で、ミサイルの光点とMe264が重なる。


 一気に光点が、消滅した。


「イーグルアイより、連合軍戦闘機部隊へ、無人偵察機が核爆弾の落下を確認した。最初の第1波攻撃で、当たりを引いたようだ」


「やったぞ!」


 少領が叫ぶ。


 フライトヘルメットの通信機から歓声の声が響いてくる。


「各機!核爆発に備えろ!」


 イーグルアイから警告が飛ぶ。


 もしかすればミサイルが命中する寸前に、核爆弾を投下した可能性もある。


 そうなれば爆発高度に達したら、核爆発するだろう。


 イーグルアイからの警告は、当たっていた。


 高度3000メートル付近で、猛烈な閃光が発生した。


 その後、猛烈な爆風が機体を撫でる。


 それなりの距離があったが、それでも衝撃波は強かった。


 しかし、事前に警告されていたため、各機の間隔が空いているだけでは無く、バランスを崩しても、すぐに態勢を取り戻せる高度を維持していた。


 閃光を見たパイロットもいたが、フライトヘルメットのカバーのおかげで、大したダメージは無かった。


「80年前の核爆弾でも、あれだけの威力があるのか・・・」


 爆心地は海であったため、まったく問題無いように見えるが、あれが艦隊の真ん中だったら、一瞬にして艦隊は消滅しただろう。


「あれが・・・日本の2つの都市に、落とされた・・・」


 少領は、小さくつぶやいた。


 彼が学生の時、修学旅行で、日本の広島を訪れた時があった。


 原爆博物館を見学したが、原爆の写真を見た時、たった1発の爆弾で、都市が破壊されるとは実感が湧かなかった。


 だが、目の前の光景を見れば、それも実感できる。


 天を衝く巨大なきのこ雲・・・過去の映像や写真では目にした事があったが、実際に目の当たりにすると、その禍々しい雲に、恐怖を感じずにはいられない。


「人間は、恐ろしい・・・」


 少領は、小さくつぶやいた。

 薄明光線 第1章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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