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HELL ISLAND 第18.5章 それぞれの艦生

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 米英独伊連合軍海軍統合遊撃部隊第1遊撃部隊所属の、軽巡及び駆逐艦の沈没海域。


 ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第6艦隊第603合同任務部隊所属の、[ハミルトン]級カッター[シャートクワ]は、他のカッターの中で最初に到着した。


 すでに現場海域には、第6艦隊第610合同任務部隊(航空隊)、統合省保安局海上保安本部特殊救難隊、菊水総隊海上自衛隊航空集団第31航空隊第71飛行隊のヘリコプターや救難機、救難飛行艇が到着し、救助活動を行っている。


[シャートクワ]から出撃したHH-65[ドルフィン]も、救助活動を行っている。


「船長。内火艇の準備が、完了しました」


 下級士官である大尉が、報告に来た。


「武装要員は?」


 船長である中佐が、双眼鏡で覗きながら、聞いた。


「準備できています」


「わかった。では、救助活動を開始してくれ」


[ハミルトン]級カッターは、アメリカ沿岸警備隊に所属しているカッターだ。


 アメリカ沿岸警備隊は、海軍としての機能に司法警察権が常に与えられた、洋上実力組織だ。


 歴史は古く、アメリカ海軍よりも前に創設された。


 あくまでも司法警察権を有する海軍であるため、階級は軍隊に準じた物が採用されている。


 フィリピン海軍では、中古の[ハミルトン]級カッターをフリゲートとして購入し、運用している程の能力を有する。


「重傷者は、飛行艇やヘリに乗せて、病院船[ホープ]に搬送させろ。軽症者及び健全者は、本船に乗船させろ」


「アイアイ。船長」


 下級士官が、挙手の敬礼をする。


「[ミズーリ]対[ミズーリ]という戦艦の1対1の勝負をするために、随伴の軽巡及び駆逐艦をすべて撃沈したから、すべて戦争捕虜として、迎え入れなければならん・・・」


 船長は、誰にも聞こえない声で愚痴った。


 乗員救助のために、駆逐艦を2隻程度残していれば、救助活動の手間が省けるだけでは無く、戦争捕虜が大量に発生しなくてすむ。


 オアフ島では大規模な激戦が行われており、保護した戦争捕虜は、味方部隊の援護を目的とした暴動等を防ぐために、離れた場所に捕虜収容所を設置して、そこに収容している。


 第6艦隊司令部からの指示で、捕虜は、すべてミッドウェー島に移送するよう指示された。


 内火艇に搭乗した救助要員は、ヘリや飛行艇に収容されない軽症者たちの救助を行った。


 むろん、抵抗等に備えて救助要員たちには、ハンドガンを携行させているだけでは無く、ショットガンで武装した、警備要員も配置させている。


 内火艇に乗せられた軽症者は、搭乗している救護要員から簡単に負傷の具合等を診られる。


[シャートクワ]に戻った後、軍医や看護要員から、適切な治療を受ける。


「しかし・・・6隻の戦闘艦が沈没したにもかかわらず、漂流している将兵たちの数が、少ないな・・・」


 ハープーン・ミサイルの威力は、駆逐艦であれば轟沈、軽巡洋艦であれば大破は確実である。


 恐らく、退艦命令も出す余裕が無く、各々の判断で離艦が行われて、ほとんどの乗員が、艦と共に沈んだのであろう・・・


「船長。まもなく他の僚船が、到着します」


 第603合同任務部隊は、太平洋という広い範囲に展開しているため、近くにいるカッターや巡視船は、ほとんどいない。


 大日本帝国海軍聯合艦隊からは、駆逐艦。


 保安庁海上警備隊からは警備艦が派遣されているため、それらが到着するまで待たなければならない。





 米英独伊連合軍連合海軍統合遊撃部隊第1遊撃部隊旗艦である戦艦[ミズーリ]は、まったく同じである老朽艦[ミズーリ]との戦闘を終えて、同艦から派遣されたVBSSチームを乗艦させた。


 艦長命令で末端の水兵まで、いかなる抵抗もしてはならないと指示されたため、戦艦[ミズーリ]の乗組員たちは、黙って乗艦してきた武装したVBSSチームの指示に従っている。


 シリル・ディーン・ホワイト少将は、老朽艦[ミズーリ]から回された内火艇に乗艇し、老朽艦[ミズーリ]に向かっていた。


「80年後とはいえ。そんな未来でも戦艦[ミズーリ]が、健在だとは・・・」


 ホワイトは、自分が乗艦していた、戦艦[ミズーリ]と同じ艦影の、老朽艦[ミズーリ]を見上げながら、つぶやいた。


 内火艇が老朽艦[ミズーリ]に到着すると、ホワイトはタラップを上り、その甲板に足をつけた。


「ミサイル戦艦[ミズーリ]艦長、ケイト・トミナガ・バギー大佐です」


「米英独伊連合軍連合海軍統合遊撃部隊第1遊撃部隊司令官、シリル・ディーン・ホワイト少将」


 2人は顔を合わせると挙手の敬礼し、お互い名乗った。


 ホワイトは、話では聞いていたが、女性が艦長という事に、驚愕した。


「オアフ島で、客人として迎え入れられていた海軍士官から、話は聞いていたが・・・本当に、女性でも艦長職に就けるのだな」


 バギーは、苦笑した。


「80年後のアメリカでは、女性大将も、珍しくありません」


「それも聞いたが、実物を見なければ、確信も出来ない」


「では、こちらへ」


 バギーは、艦内へと案内した。


 彼女の随行員として迷彩服を着た海兵が2人、同行している。


 因みに1人は、女性である。


 いくら降伏したとはいえ、敵の将官である。


 このぐらいの処置は、当然ながら行われる。


(戦闘部隊でも、女性が活躍しているのか・・・)


 彼の息子も、海兵隊の少尉であり、海兵隊の話は、手紙で知らせてくれる。


 ニミッツの幕僚であるレイモンド・アーナック・ラッセル少佐からの報告では、2020年代のアメリカ海兵隊は、陸海空軍を置いて、最精鋭部隊として位置付けられているそうだ。


「どうぞ」


 ホワイトは、艦長室に案内された。


 バギーは、ソファーを勧める。


 彼は、ソファーに腰掛けた。


 バギーが腰かけると、従卒の水兵が、コーヒーカップを2つトレイに乗せて、艦長室に現れた。


「コーヒーです」


 従卒が、コーヒーカップをテーブルに置く。


 バギーは、角砂糖を2つ淹れると、ミルクを淹れた。


 ホワイトも、角砂糖を1つ淹れた。


「80年という時を経ても、かなり手入れをされているな・・・」


 彼は、老朽艦[ミズーリ]の感想を述べた。


「本艦は、20年間ほど記念艦として、パールハーバーに停泊していました。実際、この派遣前までは、記念艦でした」


「記念艦?」


「この大戦を生き残った戦艦は、[アイオワ]級戦艦4隻を含めても、わずかでしかありません。2020年代に入って、[アイオワ]級戦艦は、アメリカでの観光名物として、新たな任務を遂行していました」


「そうか。80年後では、そのような艦生を送っているのか・・・それは幸せな事なのか、不幸な事なのか、わからんな」


 ホワイトは、コーヒーを啜った。


 戦うために造られた戦艦が、戦いの場から遠ざけられ、観光名物として、艦生を送るというのは、その戦艦に心があったら、幸と思うのか不幸と思うのか・・・?


 それを判断するのは、戦艦それぞれだろう・・・


 ホワイトは、思った。


 この戦争が終わり、半世紀が経過すれば、恐らく生き残った戦艦は、観光艦や記念艦として、艦生を送るだろうと・・・

 HELL ISLAND 第18.5章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、誤字脱字があったと思いますが、

 次回の投稿は6月8日を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[一言]  更新お疲れ様です。  記念艦…日本の記念艦といえば、やはり戦艦三笠でしょうか。  一度、見学に見に行ってみたいとは思っていますが、今のご時世では難しいのが残念です。  記念艦として歴史を伝…
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