HELL ISLAND 第17章 古兵と新兵の水上戦[ミズーリ]対[ミズーリ] 2 進取果敢
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍司令官直轄部隊水上打撃群に所属する、ミサイル戦艦[ミズーリ]は、僚艦と共に、ハワイ諸島オアフ島に向かって航行していた。
ミサイル戦艦[ミズーリ]艦長のケイト・トミナガ・バギー大佐は、士官室で副長と一緒に、朝食をとっていた。
バギーは、野菜の入ったスープをスプーンですくいながら、通信士官である下級士官から報告を聞いていた。
「連合海軍情報部からの報告では、米英独伊連合軍海軍司令部は、連合遊撃部隊を編成し、ハワイ諸島に急行する増援部隊及び輸送船団を、迎撃しています」
「昨日までの報告では、ドイツ第3帝国海軍の仮装巡洋艦部隊が、大日本帝国海軍陸戦隊1個大隊を乗せた、第一号型輸送艦部隊に遊撃戦を実施し、半数以上の輸送艦が撃沈されましたそうです。一部の艦は、沈没は免れたものの、航行不能です」
副長が、こんがりと焼き色がついた、厚切りベーコンにフォークを刺しながら、言った。
「海の悪魔ね」
バギーが、千切ったパンをかじりながら、つぶやいた。
「史実では、仮装巡洋艦は中立国の商船に偽装し、甲板要員も軍服では無く、民間船舶の船員の服装をしていたわね」
彼女の言う通り、史実のドイツ第3帝国国防軍海軍は、潜水艦による通商破壊だけでは無く、中立国の商船に偽装し、服装も民間船舶作業員の格好で、イギリス海軍やアメリカ海軍等の連合国船団に接近し、通商破壊を行った(ただし、攻撃する寸前に、国際法上要求されている、自国の海軍旗を掲げていた)。
大日本帝国海軍でも、未確認ではあるが、特設巡洋艦(大日本帝国での呼称)の甲板作業員は、女装した事もあると言われている。
何故、未確認かと言うと、大日本帝国海軍側での記録が、あまり存在しないのだ。
しかし、マリアナ諸島やレイテ島陥落後や沖縄陥落後等、アメリカ海軍籍の石油タンカーを含む輸送船団の位置を、かなり正確に把握していた事が判明しているだけでは無く、輸送船団の護衛の駆逐艦からも、それらしい服装の甲板員がいたという証言も存在するから、真相は不明である。
「仮装巡洋艦は、かなり厄介ね・・・」
バギーは、最後のベーコンを口に運びながら、ぼやいた。
南方戦線では、多数の仮装巡洋艦が、遊撃戦を実施している。
その手口は巧妙であり、搭載する艦砲、魚雷、機関砲等の武装は、カバーを解放後にも認識できないよう隠蔽しているだけでは無く、攻撃を開始する1歩手前の段階まで海軍旗を掲げないため、発見は困難である。
さらに、攻撃終了後は戦果に驕る事も無く、さっさと戦場を離脱するため、追跡が困難である。
中立国の国旗を掲げているため、その間は交戦国及び交戦勢力は、手の出しようが無い。
ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第2艦隊第3空母戦闘群は、対仮装巡洋艦対処に、全力を挙げた。
無人偵察機を発艦させて、高々度から監視し、それらしい艦を発見すると、艦載機である対艦兵装にしたF-35Bを発艦させ、視認圏外の高度で待機させた。
同機は、ステルス統合打撃機であるため、レーダーによる探知は不可能だ。
監視対象艦が仮装巡洋艦であると判明すると、搭載する対艦ミサイルを発射し、同艦を撃沈した。
因みに、その時の攻撃は、戦時国際法ぎりぎりの状態だったという。
おかげで、統合省外務局、ニューワールド連合外交局、大日本帝国外務省の和平工作委員会は、止むを得ないとしながらも、外交交渉に悪影響を与える結果であるとし、頭を抱えたのは、言うまでも無い。
水上打撃群旗艦の[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦[ベンジャミン]は、ミサイル戦艦[ミズーリ]後方、600メートルの位置にいた。
特異な艦影をした[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦は、高度なステルス性等の先進的な設計がされた、ミサイル駆逐艦である。
艦種は駆逐艦ではあるが、満載排水量1万4797トン、全長183メートルと、巡洋艦クラスのサイズである([タイコンデロガ]級ミサイル巡洋艦よりも大きい)。
[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦の最新型である[ベンジャミン]は、前級3隻の[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦よりも、ステルス性能が若干低下しているが、その分、予算を抑える事に成功し、他の分に予算を回す事に成功した(しかし、建造費は高価である)。
前級の3隻と違い、武器システムは、大幅に変更されている。
主砲は、2門のAGS155ミリ砲では無く、電磁投射砲に変更されている。
電磁投射砲は、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟海軍西海攻略艦隊旗艦の[キーロフ]級原子力ミサイル巡洋艦が武装する電磁投射砲を小型化した物であるが、威力、射程距離等も負けずとも劣らずの性能がある。
対空、対水上(小型船舶)戦に備えて、指向性エネルギー兵器(DEW)が搭載されているため、砲弾、ロケット弾、ミサイル等の飛翔体や爆弾を積み込んだ小型船舶への迎撃が可能である。
対舟艇用の30ミリ機関砲は、変更されず、そのまま装備されている。
ミサイルも前級3隻は、対地攻撃用のトマホークと区域防空用のESSMだけであったが、[ベンジャミン]では、広域防空用のスタンダードSM-2と、ミサイル防衛用のスタンダードSM-3、対潜戦用のアスロックが搭載されている。
これだけのミサイルが搭載されるため、トマホークとESSMの搭載数が減ったが、ESSMは、細身であるため1セルに4発装填可能だ。
よって、区域防空能力が低下する事は無い。
トマホークの方は搭載数が減るが、電磁投射砲の登場によって、その役目を補う事が出来る。
[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦のCICは、さらに発展させたSMCが、設置されている。
これは、従来のCIC機能だけでは無く主機操舵室、群司令部指揮所の機能が追加されている。
「提督。第1艦隊司令部から届いた、最新の情報です」
副官である中尉が、報告書を持って現れた。
「ふむ」
水上打撃群司令官であるイーサン・ヴィンセント・タイラー少将(1つ星)は、報告書を受け取った。
[ベンジャミン]を基幹とする水上打撃群は、艦隊総軍司令官直轄部隊であるが、命令系統等をスムーズにするために、艦隊総軍麾下の各艦隊司令部の指揮下に置かれる事がある。
現在は、第1艦隊司令部指揮下に置かれている。
「4空母集結海域が、決められたか・・・」
ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第1艦隊第1空母打撃群、第2艦隊第3空母戦闘群、連合支援軍海軍に属する大連艦隊、統合省防衛局長官直轄部隊第1空母機動群に所属する4隻の空母が合流する。
その合流を阻止するために、米英独伊連合軍海軍が、大規模な攻勢をかける兆しがあるため、水上打撃群、菊水総隊海上自衛隊第1護衛隊群、朱蒙軍海軍第1艦隊は、その護衛を命ぜられた。
「さぞかし、その光景は、凄まじいものだろうな・・・」
タイラーが、つぶやいた。
ニューワールド連合軍連合空軍アメリカ太平洋空軍第1航空軍第11航空団第901空中航空管制飛行隊に所属するE-3Bは、同航空団に所属している第801空中給油飛行隊のKC-135Rが1機、第111戦闘飛行隊のF-15C[イーグル]、6機と共に水上打撃群や第1空母打撃群の広域上空警戒を行っている。
「レーダーに感あり!」
レーダー員が、報告する。
先任士官が、レーダー員の元に駆け寄る。
「1機のアンノウンが、連合海軍水上打撃群に、接近しています!」
「速度から見て、飛行艇クラスだな」
先任士官が、レーダーに表示されている速度や高度等を見て、つぶやいた。
「至急、水上打撃群に警告を発しろ!」
先任士官が、レーダー員に指示を出す。
レーダー員は、探知したアンノウンに関する情報を、水上打撃群及び付近に展開する友軍機、友軍艦艇に連絡する。
もっとも、ミサイル戦艦[ミズーリ]を除いて、他の艦艇はデータリンクを共有しているため、アンノウンの情報は、レーダー員が警告する前に、各艦のCIC又はCDCのレーダー要員が把握している。
「艦長。上がられます!」
朝食を終えたバギーは、副長と共にミサイル戦艦[ミズーリ]の艦橋に上がった。
「艦長。旗艦[ベンジャミン]より、連絡。艦隊に接近中のアンノウンが1機」
「偵察機でしょうか・・・?」
若い大尉が、つぶやく。
「偵察機でしょうね」
バギーが、確信した口調で答える。
「各艦に、対空戦闘の指示が出ました」
「対空戦闘用意!」
副長からの報告に、バギーは対空戦闘の指示を出した。
しかし、ミサイル戦艦[ミズーリ]の対空戦闘能力は、自艦防空用の最低限である。
副砲である連装速射砲とCIWSのみであるため、近距離まで接近されない限り、[ミズーリ]の出番は無い。
ほとんどの広域防空及び区域防空は、[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦や、[ズムウォルト]級ミサイル駆逐艦が担当する。
「待って!」
バギーは、ある事を思い付いた。
「副長。[ベンジャミン]との通信回線を、開いて」
「何をするつもりですか?」
「うふふふ・・・」
副長の問いにバギーは、不敵な笑みを浮かべるのであった。
「[ミズーリ]より、交信を求められています」
[ベンジャミン]の通信士官が、報告した。
「回線を開け」
タイラーは、短く指示を出した。
「私だ」
モニターに、バギーの顔が映し出された。
「提督。接近中の偵察機を撃墜せず、本艦を発見させて下さい」
バギーは、一切の前置きをせず、タイラーに具申した。
「その心は?」
「偵察機の偵察目的は、遊撃部隊のための偵察飛行です。その遊撃部隊の1つに戦艦[ミズーリ]がいます」
「[ミズーリ]対[ミズーリ]の対決をしたいと?」
彼女が何を言おうとしているか理解し、タイラーは聞いた。
「その通りです」
「[ミズーリ]対[ミズーリ]の、対決をするメリットは?」
「将兵たちの、士気向上です。開戦以来7ヵ月、連合国は枢軸国と手を組み、我々に全面戦争を挑もうとしています。将兵たち・・・特に兵卒や下級下士官の中では、圧倒的な武力で開戦したにも関わらず、講和の兆しが無い事で、士気の低下が見られます。ここで、戦艦対戦艦、それも[ミズーリ]対[ミズーリ]というネタは、とてもインパクトになると思います」
「貴官の主張は、一理ある事は認めるが、万が一にも、こちらが負けた場合は?」
「その時は、ミサイル戦艦[ミズーリ]は、将兵たちの復讐心に火を点ける事が出来るでしょう。いわば、象徴です」
「・・・・・・」
勝つのならともかく、敗北した場合の結果は、とんでもない事態となるはずだが、彼女の言い分は理に適っている。
これより少し前に、ニューワールド連合軍連合海軍総軍宛に、日本共和区統合省防衛局幕僚本部を経由して、1つの提案書が提出されたそうだ。
その提案書の内容と似たような提案は、連合海軍作戦本部からも具申されていたので、タイラーも知っていたが、合理的な思考の持ち主であるタイラーとしては、映画じゃあるまいし・・・としか思えない程、賭けの要素が強かった。
元々、賭け事が嫌いで、そういった事には些細な事でも手を出した事の無いタイラーにとって、ハイリスクハイリターンな賭けにも似た具申はまず、受ける事はしない。
しかし・・・
その提案を、直接は知らないはずのバギーが、同じように危険を理解した上でも、敢えて具申をしてくるところをみると、この賭けの勝率は、それなりには高そうだ。
考える時間は、短かった。
「いいだろう。許可する」
タイラーは決断した。
「ありがとうございます」
この瞬間、タイラーは生まれて初めての賭けで、大博打に挑む事になる。
「艦長も、面倒な賭け事をしますね・・・」
副長が、呆れた口調でつぶやく。
しかし、その表情は楽しそうだ。
「さて、記者を呼んで」
「そうおっしゃると思って、すでに呼んでいます」
上級兵曹長が、報告した。
ミサイル戦艦[ミズーリ]には、従軍記者として女性記者が1人乗艦している。
艦長が女性であるため、従軍記者も女性が選ばれたのだ。
「戦艦[ミズーリ]対戦艦[ミズーリ]という特ダネよ。記者としては、こんな特ダネを前に食指が動かない訳が無い」
バギーは、不敵な笑みを浮かべながら、部下たちを見回した。
しばらく待つと、1人の女性記者が現れた。
アビー・ハーパー・クァックという女性記者である。
年齢はバギーと同じ歳であるが、名字から分かる通り、彼女はベトナム人の血を引いている。
ただし、ベトナム人としての血は、4分の1である。
彼女の母親は、ベトナム(南ベトナム共和国)出身である。
ベトナム戦争で、アメリカ軍が全面撤退を決定した時に、撤退するアメリカ軍と共に、アメリカ渡ったそうである。
彼女は、中東での過激派宗教テロ組織が建国した国家とのテロ戦争で、従軍カメラマンとして活躍し、中立的記者の立場でアメリカを含む多国籍軍や過激派宗教テロリストと接触し、取材を行った実績がある。
彼女の記事は、国際世論や国内世論だけでは無く、テロリストからも評価される程の中立的な記事だ。
「クァック氏。これから、本艦は戦闘をします。その光景を、この艦橋から見届ける事を許可します」
「相手も戦艦ですか?」
「そうです。戦艦[ミズーリ]」
「!?」
その言葉を聞いて、クァックは驚愕した。
「そうです。本艦とまったく同じ・・・いえ、この言葉は正確ではありませんね。過去の戦艦[ミズーリ]と、このミサイル戦艦[ミズーリ]が戦う訳です」
「クァック氏。ヘルメットと防弾ベストを」
上級兵曹長が、ヘルメットと防弾ベストを渡す。
「とんでもない特ダネですね」
ヘルメットと防弾ベストを受け取りながら、クァックは、つぶやく。
「では、こちらへ。まもなく敵の偵察機が、現れます」
バギーは、写真等が撮れやすい位置に誘導する。
クァックは、防弾ベストを着込み、ヘルメットを被る。
防弾ベストは、海軍が使う物であり、救命胴衣の機能も併せ持つ。
「警告のあった、アンノウンを視認!」
見張り員が叫ぶ。
バギーが、双眼鏡を覗く。
クァックが、デジタルカメラを構える。
「PBY[カタリナ]ね・・・」
バギーが、つぶやく。
クァックが、カメラのシャッターボタンを押す。
「対空戦闘!副砲及びCIWS起動!」
いくら接近を許すとは言え、攻撃される可能性もある。
攻撃に備える必要はある。
「PBY[カタリナ]が、急旋回!離脱のコースを、とっています!」
「艦長。先程のPBY[カタリナ]の通信を、[ベンジャミン]が傍受しました!遊撃部隊司令部に、我々の情報を報告しています!相当慌てているそうです」
「予定通りね」
バギーは、双眼鏡を下ろす。
「艦長。[ベンジャミン]より、付近を航行している潜水艦又は仮装巡洋艦を警戒するため、警戒を厳とせよ。との指示です」
「了解」
護衛の[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦が、艦隊幅を大きくとり、警戒に入る。
艦載の対潜哨戒ヘリコプターである、MH-60R[シーホーク]を発艦させる。
ハワイ諸島とミッドウェー島の中間海域。
第1級警戒配備中の大日本帝国統合軍省統合作戦本部直轄艦指揮母艦[信濃]の娯楽室で、石垣達也2等海尉と氷室匡人2等海佐は、勤務の合間の束の間の休息時間に、気分転換を兼ねてチェスに興じていた。
「・・・聞いたよ、石垣君。君の大叔父さん、海軍陸戦隊特別攻撃隊の極秘作戦に、参加されたそうだね・・・」
「・・・・・・」
チェスの駒を動かしながら、石垣は無言だった。
石垣の足元では、ボーダーコリーの伝助が、テーブルの下に潜り込んで寝そべっている。
「その特別攻撃隊の奇襲作戦のお蔭で、米英独伊4ヵ国連合軍連合陸軍の攻勢を、凌ぐ事が出来た訳だけど・・・複雑だね・・・」
チェスの駒を動かしながら、氷室がつぶやく。
いつもの、おちゃらけた口調で無く、敢えて悔やみを述べる訳でも無く、淡々とした口調に、氷室も内心で、複雑な思いを抱いているのだろう。
無人の娯楽室に、駒を動かす音だけが響く。
「・・・子供の頃に、祖父から聞いた話では、大叔父は、1944年のサイパンで、海軍陸戦隊の一員として戦い、戦死したと・・・」
「・・・そうなんだ・・・」
「私の名前は、祖父が大叔父の名に因んで、読み方と一文字漢字を変えて、付けてくれたんだそうです・・・」
「・・・そうなんだ。大切な名前だね・・・って!そこに、置く!!?」
いつの間にか、氷室の王の駒は、石垣の駒によって包囲され、詰んだ状態になっていた。
「ち・・・ちょっと、待ってくれるかな・・・?」
「いいですよ。じっくり待ちましょう」
焦る表情を浮かべる氷室に、余裕の笑みを浮かべて、石垣は答えた。
ガタン!!
急にテーブルが大きく揺れ、チェスの駒がひっくり返って転がる。
「あぁー!!伝助!何て事を!!?」
寝そべっていた伝助が、急に立ち上がったのだ。
石垣が、絶叫する。
「あららら~・・・ご愁傷様」
助かったという表情の氷室と、口をパクパクさせている石垣を交互に見比べて、「僕、何かした?」という表情で首を傾げて、伝助は娯楽室のドアに尻尾を振りながら、歩いて行く。
ドアがノックされて、下士官が姿を現した。
「氷室中佐殿、石垣中尉殿。宇垣海軍本部長が、お呼びです。至急、作戦室へ」
「わかった」
返事をしてから、氷室と石垣は顔を見合わせた。
「何でしょう?」
「前線で、何かあったのかもしれないね。片付けは僕がやっておくから、先に行っていてくれる」
「いえ・・・片付けは、私が・・・」
「いいの、いいの。僕は宇垣さん、ちょっと苦手なんだ・・・先に、怒られててよ」
「・・・何故に、怒られる事、前提?」
ブツブツ言いながら、石垣は伝助と、下士官に伴われて作戦室に向かって行った。
「さぁ~てと・・・」
チェスを片付けようとした氷室は、チェス盤の上で、倒れた駒を後目に立っている、2つの駒を見た。
「女王と女王・・・ね」
眼鏡の奥の目を、僅かに細めて氷室は、つぶやいた。
HELL ISLAND 第17章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
次回の投稿は6月1日を予定しています。




