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HELL ISLAND 第15章 カイルア地区攻防戦 後編

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 ドイツ・フランス合同旅団第31中型輸送ヘリコプター連隊第311飛行隊は、第11猟兵連隊第2歩兵中隊を搭乗させた状態で、カイルア地区上空に接近していた。


「カイルア地区に設置されている対空砲は、フランス陸軍航空部隊の攻撃ヘリ部隊が、片付ける!だが、完全には無力化出来ない。対空砲火の中で、降下作戦を実施する!各員、注意しろ!」


 分隊長であるロルフ・クレーベ軍曹は、部下たちに注意した。


「市街地戦であるが、市街地に非戦闘員等はいない。交戦規則下での制限は受けない!市街地にいるのは、すべて敵だ!!」


 戦争映画等で、市街地での戦闘では厳しい交戦規則が定められる場面が描かれる事があるが、それは市街地内に非戦闘員及び軍人又は軍属に属さない医療従事者、第3国から派遣された非戦闘員、視察者がいる場合である。


 市街地内で敵交戦者が敵対行為を働いた場合、無制限に武力行使が認められる場面があるが、それは間違いである。


 たとえ、敵交戦者からの攻撃があった場合でも、誤って非戦闘員等を殺傷した場合は、その部隊又は兵士は、殺人未遂罪又は殺人罪で捜査、起訴される場合がある。


 もちろん、例外はある。


 例外として認められる事案として、事前に都市攻撃等を予告し、市街にいる者を交戦者として扱うという布告を出した場合は、非戦闘員等の保護対象外となる。


 カイルア地区は、米英独伊連合軍上陸部隊が上陸する前に、非戦闘員は、事前に避難させているため、今、カイルア地区にいるのは、米英独伊連合軍に属する軍人と軍属である。


 クレーベは、G36A2に、マガジンを叩き込む。


 他の兵たちも、マガジンポーチからマガジンを取り出し、G36A2に叩き込む。


「降下まで、2分!!」


 機長の声が、ヘッドセットに響く。


「2分だ!!」


 クレーベが、叫ぶ。


 攻撃ヘリコプターであるEC665[ティーガー]が、市街に展開する対空砲に、攻撃を仕掛け、無力化している。


 だが、完全にでは無い。


 少数ではあるが、対空砲が炸裂し、UH-1Dの機体が揺れる。


 さらに、M2重機関銃から発射された弾丸が、被弾する。


 UH-1Dは、ある程度の被弾には耐えられるが、被弾しすぎると、撃墜される可能性も高まる。


「降下地点に接近!!ホバリングする!!」


 機長が叫び、ヘリをホバリングさせた。


「ロープ!!」


 クレーベが、叫ぶ。


 ロープが、下ろされる。


「降下!!降下!!」


 クレーベの叫び声で、部下たちがラペリングする。


 クレーベの番となり、ヘリからラペリングする。


 地面に着地すると、素早くG36A2を構えて、地面に膝を着く。


 兵員を全員降下させると、UH-1Dは、作戦地域から離れた。


「敵発見!!」


 MG5を構えていた機関銃兵が叫ぶ。


 そのままMG5の引き金を引き、MG5が火を噴く。


 MG5は、5.56ミリ弾を使用するMG4を、7.62ミリ弾仕様にしたものである。


 MG4よりもサイズアップしたが、5.56ミリ弾の問題点である、火力不足を補う事ができる。


 圧倒的な火力であるため、現れたイギリス兵たちを、あっと言う間に、無力化する事ができた。


「前進!!」


 クレーベは叫び、部下たちに前進を命じた。


「屋根の上に敵!!」


 G36A2を構えたライフル兵が叫び、引き金を引く。


 屋根の上から攻撃しようとした狙撃兵は、そのまま地面に転がり落ちた。


「グレネード!!」


 足元に手榴弾が、転がってきた。


 クレーベたちが、地面に伏せる。


 手榴弾が炸裂するが、兵士たちは、事前に地面に伏せたため、無事だった。





 ドイツ・フランス合同旅団指揮下に置かれているフランス陸軍航空コマンド第41戦闘航空旅団第41戦闘ヘリコプター連隊第1戦闘ヘリコプター隊は、麾下の2個小隊を、2つに分けた。


 1つは、戦車部隊及び機械化歩兵部隊の航空支援。


 もう1つは、ドイツ陸軍輸送ヘリ部隊の護衛と、市街地に降下した歩兵部隊の航空支援である。


 戦闘ヘリコプター隊に所属する攻撃ヘリコプターは、EC665[ティーガー]である。


 ドイツ陸軍輸送ヘリ部隊及び歩兵部隊の護衛と航空支援を任されているEC665は、空対空戦闘能力があるHAPである。


「AWACSより、こちらに接近中の航空部隊あり!!注意せよ!!」


「各機、地上支援を一時中止し、空対空戦闘に集中しろ!!」


 EC665HAPで編成された、第1小隊長である大尉が指示を出す。


「・・・現れたか」


 レーダーが、接近中の航空機を探知した。


「小隊長!!敵機は、P-38[ライトニング]です!!」


 EC665HAPには、地上目標と対空目標を攻撃可能な、30ミリ機関砲を機首下に搭載されているだけでは無く、AAMバージョンの、ミストラルが搭載されている。


 ミストラルは、歩兵の携帯式防空ミサイルシステムを基本として、車載型の近距離防空ミサイル、艦載型の近接離防空ミサイル、空対空型の自衛ミサイルまで開発されている。


 ただし、すべての種類はあくまでも、近距離目標に対する自衛用の対空ミサイルであるため、戦闘目的では無い。


「本部へ。戦闘機部隊は、いつ頃、到着する!?」


「到着は、2分後だ!」


「了解!!」


 小隊長は、短く答えた。


 2分間だけなら、まったく問題無い。


「ロック完了!!」


 後席に座る、副操縦手兼射撃手が告げる。


 EC665は、他の攻撃ヘリコプターと違い前席に操縦手が座り、後席に副操縦手兼射撃手が座る事になっている。


「ミストラル・ミサイル発射!!」


 小隊長の号令で、射撃手が、ミストラル・ミサイルの発射ボタンを押す。


 ミストラルが発射され、P-38[ライトニング]の主翼に、命中する。


 他のEC665も、ミストラルを発射し、P-38を撃墜しているが、近距離空対空自衛ミサイルであるため、戦闘機や戦闘攻撃機が搭載する、短距離空対空ミサイルより射程が短い。


 そのため、すぐにP-38と、格闘戦闘する事になった。


「ブレイク!!」


 小隊長は、操縦桿と格闘し、ヘリを上昇させたり降下させたり、左に旋回、右に旋回させた。


 そのまま後ろにつき、機首下に搭載されている30ミリ機関砲AM-30781が火を噴き、P-38に機関砲弾が、叩き込まれる。


 P-38は黒煙を吐きながら、そのまま高度を下げていく。


「そろそろ限界か・・・」


 小隊長がつぶやいた時、突然、現れた空対空ミサイルが、次々とP-38を撃墜する。


「ピッタリ、2分だな・・・」


 小隊長がコックピットのデジタル時計に視線を向けると、2分ちょうどに、戦闘機からの援護がきた。


 ミサイルに遅れて、4機の戦闘機が視界に入った。


 現れた戦闘機は、ニューワールド連合軍NATO軍欧州連合軍最高司令部即応部隊司令部欧州合同軍航空軍に所属する、ラファールC多用途戦闘機である。


 海軍が配備している、ラファールMでは無く、空軍向けに配備されているCタイプである。


 性能等は、ラファールMと、まったく変わらない。


 現れたラファールCは、残りのP-38を片付けていく。


 P-38の方も、ジェット戦闘機が現れた途端、機首を返し撤退した。





 ニューワールド連合軍NATO軍欧州連合軍最高司令部欧州合同軍地上軍ドイツ・フランス合同旅団が、カイルア地区に攻勢を開始したと同時に、菊水総隊陸上自衛隊第1特科団第1地対艦ミサイル連隊麾下の4個中隊に、88式地対艦誘導弾の発射準備を命じていた。


 周辺には、64式7.62ミリ小銃を携行した警備部隊が、展開している。


「SSM-1、配備完了。状況開始まで待機する」


 パジェロの助手席で、無線機の受話器を耳に当てながら、中隊長である2等陸尉が、連隊本部に報告する。


 88式地対艦誘導弾を配備した理由は、カイルア地区への攻撃では無く、カイルア沖に展開する輸送船団及び駆逐艦部隊への攻撃のためである。


 ただし、攻撃目標である輸送船は、アメリカ海兵隊とイギリス海兵隊の予備部隊が待機する輸送船のみで、兵員を吐き出した輸送船への攻撃はしない事が、決められている。


 どの輸送船が空であるかは、事前の情報収集により、把握している。


 統合省防衛局情報本部が総力を上げて、把握した情報である。


「5、4、3、2、1、状況開始!」


 連隊長である1等陸佐の声を聞き、各中隊長が各小隊に、発射命令を出した。


「SSM-1。撃て!!」


 中隊長の命令で、各小隊に所属する88式地対艦誘導弾が、発射される。


 88式地対艦誘導弾の運用は、すべて車載化された指揮統制装置、捜索・標定レーダー装置、射撃管制装置、中継装置、ミサイル発射機搭載車、予備ミサイル・装填装置搭載車で構成される。


 88式地対艦誘導弾搭載車は、各中隊に4輌、4個中隊16輌で編成されている。


 轟音と共に発射された、88式地対艦誘導弾は、48発である。


 アメリカ本土の演習場で行われた実弾射撃訓練でも、電波妨害下でも全弾を命中させた実績がある。


 射程も150キロメートルを超えるため、艦砲射撃が届かない内陸部から展開し、洋上の敵艦隊に、88式地対艦誘導弾を命中させる事は可能だ。


 菊水総隊海上自衛隊のP-3Cが、カイルア地区上空を飛行しているため、連隊指揮所等は、リアルタイムで88式地対艦誘導弾が命中する光景を、目にする事ができる。


 弾頭重量150キログラムがあり、輸送船や駆逐艦程度の艦種であれば、一撃で轟沈だろう。


 海上自衛隊が運用するハープーン・ミサイルよりも威力は低いが、それでも十分すぎる威力を発揮する。


 88式地対艦誘導弾は低空飛行し、目標となった輸送船及び駆逐艦に接近する。


 至近距離まで近付くと、一気に急上昇し、そのまま急降下し、突入する。


 輸送船の甲板に突き刺さり、そのまま炸裂する。


 予備部隊と、その部隊が使用する燃料、弾薬等が満載されているため、それらに引火し、輸送船は大爆発する。


 そのまま大炎上し、まったく手が付けられない状態になった。


 駆逐艦にも88式地対艦誘導弾が襲い掛かるが、駆逐艦は、対空射撃を実施し、誘導弾を撃ち落とそうとするが、うまくいかず、そのまま甲板に突き刺さった。


 そして、炸裂する。


 駆逐艦は、くの字に曲がり、そのまま轟沈した。


 大破炎上した輸送船からは、無事なアメリカ海兵やイギリス海兵が、海に飛び込んだ。


 しかし、上陸したアメリカ海兵隊及びイギリス海兵隊の上陸部隊は、この攻撃に対応する暇は与えられなかった。


 ドイツ・フランス合同旅団の機甲部隊と空中機動部隊が、カイルア地区に接近し、防衛部隊と激しい戦闘を行っていた。





 カイルア地区に上陸している米英独伊連合軍地上軍アメリカ海兵隊第1海兵師団長の、ブレット・スコット・ウォーレス少将は、カイルア地区のホテルの1つを、司令部として使っている。


「閣下!!洋上に展開している艦隊が、やられました!!」


「被害状況は?」


「はっ!予備部隊が乗船しているアメリカ海兵隊部隊及びイギリス海兵隊部隊の輸送船が、ほとんど攻撃を受けました。1発のロケット弾で、大火災が発生し、手が付けられません!!」


 ウォーレスは、その報告を聞き、そうだろうな、と思った。


 輸送船には兵員だけでは無く、戦車や装甲車を含む車輛や、大量の弾薬や燃料等の補給物資が満載されている。


 それらがすべて引火すれば、とんでもない爆発が起こる。


「閣下!!スペース・アグレッサー軍の侵攻です!!」


 新たな報告が入る。


「守備隊の様子は?」


 防衛陣地には、防衛部隊だけでは無く、予備部隊として待機している部隊も、防衛陣地に回している。


 そう簡単には突破される事は、無いだろう。


「至急!総司令部に連絡して、上空援護を回してもらえ!!」


 ウォーレスは、航空支援を要請した。


 彼の手元には、米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊が、スペース・アグレッサー軍地上軍と大日本帝国陸軍の共同作戦で、包囲殲滅された事が届いている。


「カイルア地区防衛部隊より、報告!スペース・アグレッサー軍地上軍の火力は圧倒的であり、防衛戦は困難!このまま突破される可能性も高い。との事です!」


「地雷原は、どうなった?」


 ウォーレスは、幕僚に聞いた。


「突破されました。スペース・アグレッサー軍地上軍の、一部の戦車及び装甲車に被害を出しましたが、効果的な打撃を与える事は、出来ませんでした」


「そうか・・・」


 スペース・アグレッサー軍地上軍が保有する戦車や装甲車は、対戦車地雷等の対戦車兵器に対する防御力が、極めて高い。


 ハワイ諸島オアフ島の、パールハーバー海軍基地に潜入したものの、そのまま見つかって拘束されたが、スペース・アグレッサー軍の上級将校の計らいで、客人として扱われた、海軍将校の話によると、未来では、正規戦よりも非正規戦が主体となり、車輛や兵員は、ゲリラ戦に備えた防御態勢が強化されているとの事だ。


「閣下!スペース・アグレッサー軍が、空挺作戦を実施してきました!」


 新たな報告が、入る。


 ヘリボーン作戦も、作戦的には空挺作戦に分類される。


「それで?」


「市街各地で降下し、市街に展開しているイギリス海兵隊の部隊と交戦していますが、地上部隊と攻撃機の連携により、圧倒されています」


 イギリス海兵隊の警備部隊には軽戦車が配備されているが、回転翼機である攻撃ヘリコプターが搭載する対戦車兵器と、地上部隊の携行式対戦車兵器の前では、軽戦車や装甲車は完全に無力であろう・・・


「閣下!スペース・アグレッサー軍のジェット戦闘機が現れ!上空援護に投入された空軍のP-38が、撃墜されました!」


「これまでか・・・」


 その報告を聞き、ウォーレスは椅子に深く座り直した。


 これ以上の継戦は、不可能だろう。


「敵と・・・会談する」


 ウォーレスは、1つの望みに賭ける事にした。


 洋上に展開する輸送船のうち、兵員を降ろした輸送船は、攻撃を受けていなかった。


 つまり、自分たちを殲滅する気は無い・・・という事だ。


 ウォーレスの読み通り、スペース・アグレッサー軍と会談すると、カイルア地区からの撤退を要求された。


 彼は、それを承諾した。

 HELL ISLAND 第15章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は5月18日を予定しています。

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