HELL ISLAND 第13章 4ヵ国連合軍連合陸軍の進撃 10 HELL ISLAND
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
新型コロナウイルスにより、緊急事態宣言が、私の地元にも出されました。みなさは、どのようにお過ごしでしょうか?
最近も暗いニュースや、いつまで緊急事態宣言が続くのかという不安があると思います。
当初、来週の月曜日5月4日は、ゴールデンウイークという事で、お休みをいただこうと思っていましたが、少しでもみなさんの気分転換になればと思い。休まず投稿しようと思います。
みなさん、大変な時期ではありますが、ご自愛下さいませ。
大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1機甲師団と共に、右翼の攻撃を担当するニューワールド連合軍連合陸軍総軍アメリカ太平洋軍第1機甲師団第1機甲旅団戦闘団が、全力出撃状態で、側面攻撃を実施した。
M1A2SEPV3[エイブレムス]で編成された第1機甲旅団戦闘団は、3個諸兵科連合大隊のうち、2個を前線に投入し、1個を予備部隊として待機させていた。
後衛に第1野戦砲兵大隊が展開し、M109A6[パラディン]が、支援砲撃を実施している。
ニューワールド連合軍連合陸軍に加盟する、アメリカ陸軍の主力戦車であるM1A2シリーズの最新型であるSEPバージョン3は、電子機器、ソフトウェア、弾薬データリンクの更新、改良型のM829E4とM1147が搭載可能に改修された。
M1シリーズの最新型であるM1A3は、M1A2SEPV3をベースに新規設計され、軽量化されたバージョンである。
そのため、能力はM1A3と変わらない。
市街地戦も想定されているため、TUSKⅡ化されている。
これにより、携行式対戦車火器による攻撃に対応でき、車体及び砲塔の防護能力、車長と装填手の生存能力を向上させる事ができる。
「前方に、センチュリオン!」
砲手が、叫ぶ。
中隊長兼車長である大尉が、液晶モニターを見ながら、こちらに砲撃を実施するセンチュリオンを確認した。
「APFSDS、装填!」
「装填!」
装填手が、M829E4を装填する。
M829シリーズの最新型であるAPFSDSは、前型のM829A3よりも装甲貫徹能力等が強化され、打撃力が高まった。
「ファイア!!」
大尉の号令で、砲手が発射ボタンを押す。
砲口が吼え、M829E4が発射される。
センチュリオンの正面装甲を貫き、そのまま爆発炎上する。
「新たに、センチュリオン接近!!」
「照準を合わせろ!」
「合わせました!」
「ロックしたか!?」
「ロック完了!」
「ファイア!!」
大尉の号令で、M829E4が発射される。
接近中のセンチュリオンの砲塔側面に着弾し、砲塔を吹き飛ばす。
どこの戦闘地帯でも同じく、現代の主力戦車の前に、第2次世界大戦後期に登場した戦車は、一方的に撃破された。
「PIATを装備した歩兵が、接近!!」
砲手が、叫ぶ。
PIATとは、第2次世界大戦時にイギリス陸軍が開発した、対戦車擲弾発射機である。
西部戦線及び北アフリカ戦線で、ドイツ第3帝国国防軍陸軍戦車に対して、歩兵の携行式対戦車火力では威力不足だった事が重大な問題となった。
当然ながら、新たに強力な携行式対戦車火器が、必要になった。
そこで開発されたのが、PIATだった。
威力は、距離にもよるが、Ⅵ号戦車[ティーガーⅠ]の側面を撃ち抜いて、撃破した例があるため、その威力は侮れない。
「CROWS起動!」
M1A2SEPV3の上部に搭載されている、遠隔操作式銃搭である。
12.7ミリ重機関銃M2に装備されているため、車内にいながら射撃が可能である。
大尉は、遠隔操作で、CROWSに装備されているM2の銃口を旋回させ、PIATを装備した対戦車兵に向けた。
発射ボタンを押して、M2の銃口が火を噴いた。
いかに戦車が強力とはいえ、搭乗する人間の弱点は、変わらない。
車外に出れば、狙撃手に狙わる可能性が高くなる。
ハッチ全周に防弾楯を装着していても、完全に防護できる訳では無いからだ。
火を噴いたM2は、至近まで接近した対戦車兵を、絶命させた。
しかし、1人の対戦車兵がPIATを発射した。
発射された対戦車擲弾は、砲塔側面に着弾した。
だが、瓦型の装甲板によって擲弾は防がれた。
「総員!下車!」
小隊長の号令で、M2A3[ブラッドレー]の兵員室にいた機械化歩兵の兵士たちが、M4を持って、車外に飛び出した。
SDM-Rを武装したマークスマンは、2脚を立てた状態で、伏せ撃ちの姿勢になった。
照準器であるACOGを覗いた。
SDM-Rは、アメリカ陸軍分隊マークスマン・ライフルの事である。
主な役目として、ライフル兵の戦闘可能外にいる敵兵を、仕留める事である。
スナイパーに区分されるかもしれないが、スナイパーでは無い。
どちらかと言うと、スナイパー兵とライフル兵の中間的位置に属する兵である。
マークスマンは、長距離にいるイギリス兵に照準を合わせて、引き金を引く。
M16を改造したライフルであるため、ほとんどM16と変わらないが、フルオート射撃ができず、セミオート射撃のみ可能というライフルだ。
それでも射程距離は600メートルまで届くため、スナイパーライフルには及ばないが、長距離目標を撃つ事が可能だ。
マークスマンたちがSDM-Rの引き金を引き、長距離にいる敵兵を仕留めながら、M4を携行したライフル兵が目の前の敵兵を仕留めた。
「撃ち方止め!!撃ち方やめ!!」
指揮官から、射撃中止命令が出た。
展開した機械化歩兵たちが、ライフルや機関銃の引き金から手を離す。
イギリス兵が、手を挙げている。
射撃が中止されると、イギリス兵たちが次々と手を挙げて、立ち上がっている。
「降伏を確認!注意しながら捕虜を確保しろ!」
機械化歩兵中隊長の、指示が飛ぶ。
南方戦線で、敵が降伏したふりをしながら近付き、手榴弾等による攻撃を実施したという情報は、届いている。
もちろん、こういった事は、戦場では良くある話である。
すでに米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊8個師団は、完全な包囲下で殲滅戦が実施されている。
さらに予備部隊は、ニューワールド連合軍連合陸軍のイタリア陸軍機甲部隊が対処しているため、増援が来る可能性は、極めて低い。
もはや戦っても、戦況を逆転させる事は不可能。
そうなれば、降伏を選択する部隊が出てくるのは当然だ。
「そのまま、ゆっくり前に進め!!」
小隊長が、M4A1を構えながら、叫んだ。
それに従い、イギリス兵たちは前進した。
「とりあえず終わったな・・・」
M1A2SEPV3の車長席から上半身を出した状態で、大尉がつぶやいた。
もちろん、抵抗される事に備えて12.7ミリ重機関銃M2は、いつでも撃てるようにしている。
隣にいる装填手も7.62ミリ汎用機関銃M240のピストルグリップを握った状態で、目を光らせている。
もしも、投降するイギリス兵が抵抗の意思等を見せれば、すぐに引き金を引ける態勢である。
M4を構えたライフル兵が近付き、投降したイギリス兵の身体検査を実施する。
検査が終了したイギリス兵たちは、そのまま後方で待機していたMPに引き渡され、
防弾仕様の5トントラックM939に、順次乗り込ませる。
隠れている敵兵を捜索するために哨戒犬が投入され、潜んでいる敵兵を捜索する。
そして、自走砲や迫撃砲等の砲撃で発生した、負傷兵を捜索するために、探知犬も投入される。
負傷兵に関しては、衛生兵たちが負傷のレベルを確認する、トリアージが実施された。
カテゴリーⅠ(赤)になった負傷兵は、優先的にヘリに乗せられ、野戦病院に搬送された。
カテゴリーⅡ(黄)になった負傷兵は、輸送トラックに乗せられ搬送された。
しかし、カテゴリー0(黒)を宣告された負傷兵は、モルヒネ等の鎮静剤が投与された後、そのまま放置された。
防衛局長官直轄部隊陸上自衛隊中央衛生団第1中央衛生隊第106野外病院隊に所属する石垣梓1等陸尉は、次々と搬送される重傷者の治療を行っていた。
ここに運ばれてくるのは、カテゴリーⅠとカテゴリーⅡに認定された者たちばかりである。
カテゴリーⅢに認定された者は、各師団及び各旅団の後方支援連隊(旅団編成の場合は隊編成)麾下の衛生隊が、治療を担当する。
トリアージは基本的に、4段階のカテゴリーに分類される。
緑で識別されるカテゴリーⅢは、搬送、救命処置の優先順位の中では一番低く、条件として歩行可能、今すぐに救命処置や搬送の必要性が無い者が該当する。
つまり、軽傷者である。
軽症者は、処置後、すぐに部隊復帰が可能、又は1週間以内に復帰が可能であるため、後方支援連隊又は後方支援隊麾下の衛生隊で対応する。
黄で識別されるカテゴリーⅡは、早期に救命処置が必要であるが、基本的にはある程度の安定状態であり、すぐに生命の危険が無い者が該当する。
このため、陸上自衛隊では、衛生隊が管理する1トン半救急車に乗せられ、搬送されるが、救急車両が足りない場合は、大型輸送トラック又は中型輸送トラックで搬送される。
赤で識別されるカテゴリーⅠは、緊急に救命処置が必要な者が該当し、一刻も早く救命処置が必要な者である。
そのため、搬送は多用途輸送ヘリで緊急搬送される。
黒で識別されるカテゴリー0は、死亡又は緊急の救命処置を行っても、回復の可能性が無い者が該当する。
そのため、黒を宣告された者で、息がある者は、モルヒネ等の鎮静剤が投与され、安楽死が行われる。
ただし、薬が不足している場合等では、拳銃携帯者が拳銃による安楽死を行う。
近年の大規模災害等で、カテゴリー0を宣告された者に対する安楽死制度が議論され、特定の大規模災害又は戦場でのみ、安楽死を認める法整備が行われた。
「処置完了!彼を、ヒッカムに搬送して!」
石垣は、搬送された重傷者の治療を終えて、告げた。
重傷者に関しても、2つの治療に分けられる。
時間はかかるが、部隊復帰が可能である重傷者は、第106野外病院隊が管理する入院設備に移されるが、長期にわたり部隊復帰が不可能、又は身体の欠損等で、復帰そのものが不可能な重傷者に関しては、応急処置が施された上で、ヒッカム航空基地に搬送され、そのまま病院船又は病院機に移される。
「次!」
「火炎放射を受け、全身火傷の重傷者です!!」
看護官が、カルテを見ながら叫んだ。
石垣は、カルテを受け取り、すばやく目を通す。
全身火傷を負った負傷者が、運ばれてきた。
彼女が、負傷者の状態を診ると・・・
「彼は助からないわ・・・安楽死に、しましょう・・・」
人間は、90パーセント以上の火傷を負うと、助かる可能性は極めて低い。
この負傷者は、90パーセントどころか、100パーセントに近い火傷である。
バイタルをチェックしても、助かる可能性は極めて低い。
石垣は、安楽死を決断した。
トリアージ制度を導入しても、このような事態は起きる。
黄色だった者が、時間経過と共に、赤になる場合もある。
「はい」
看護官が、注射器と薬品を取り出した。
「どうぞ」
薬品の入った注射器を患者の動脈に刺し、薬品を注入する。
ピー・・・
無機質な電子音が、1つの命の終焉を告げる・・・
「死亡確認」
石垣が、告げる。
軍というものに所属する医師でも、民間の医師でも命を救いたいという気持ちは変わらない。
だが、苦痛しかない延命を続けるか、安息の死か・・・
本人に選択が出来ない状態では、どちらが正しいか、答を出せる者はいない・・・
どれ程、残酷な結果であっても、これが現実である・・・
菊水総隊旗艦である指揮艦[くらま]の司令部作戦室では、菊水総隊司令官の山縣幹也海将は、陸自部隊幕僚長の飯崎稀之助陸将補から、地上戦の報告を聞いていた。
「米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊8個師団は、大日本帝国陸軍部隊、菊水総隊陸自部隊、新世界連合軍連合陸軍部隊、朱蒙軍陸軍部隊によって、完全に包囲されましたが、そのまま包囲殲滅戦に移行する前に、降伏しました」
山縣の隣に座っている、菊水総隊司令部付の防衛政務官である畑中達が、口を開いた。
「どのくらいの将兵が、投降した?」
「現在、確認中ではありますが、推定でも4万人規模の将兵が、投降したと思われます」
「予備部隊は、どうなった?」
山縣が、聞いた。
「新世界連合軍連合陸軍のイタリア陸軍からの報告では、重戦車を3割程度失った段階で、撤退しました」
飯崎からの報告に、司令部作戦室は静まり返った。
米英独伊連合軍上陸部隊は、推定でも50万人はいる。
この段階で8個師団を失っても、戦略的には、それほどの被害では無い。
無人偵察機や偵察隊等から報告でも、まだまだ重戦車だけで無く、固定砲塔の重戦車がある事が知らされている。
「星柿陸将。貴官は、戦車乗り出身だ。ここから米英独伊連合軍地上軍は、どのような戦車運用を行う?」
陸自部隊副司令官である星柿いさめ陸将は、オアフ島の地図を見下ろしながら、口を開いた。
「8個師団の損失は、相当な痛手でしょう。重戦車や中戦車も多く失ったでしょうから、今度は、防御力の高い固定砲塔の重戦車を前面に出し、進撃してくるでしょう」
「固定砲塔の戦車は、どちらかと言えば、待ち伏せに向いているのでは、ありませんか?」
海自部隊副司令官の、黒山一松海将が聞いた。
「確かにそうです。固定砲塔の戦車は、回転式砲塔と比べて、装甲強化及び火力強化が、可能です。情報では重駆逐戦車ヤークトティーガーがいます。これはⅥ号戦車[ティーガーⅡ]の車体をベースに、砲塔を撤去した固定式砲塔搭載ですが、主砲は55口径128ミリ砲です。強化徹甲弾を装備しているため、その威力は侮れません。さらに増加装甲を取り付けているため、防御力も史実のヤークトティーガーとは比べ物にならないと、思われます」
星柿が、説明する。
ドイツ第3帝国に潜入している諜報員の話では、重駆逐戦車ヤークトティーガーは、100輌程が生産されたのみだったが、そのうち10輌程が、オアフ島に投入されたとの話だった。
南方戦線では、重駆逐戦車エレファントが、至近距離で強化徹甲弾を発射し、74式戦車1輌を撃破している。
エレファントの戦車砲は、ティーガーⅠやティーガーⅡの戦車砲よりも威力が高い、71口径の8.8センチ砲だ。
その強化徹甲弾で、74式戦車を撃破する事が出来たのだ。
12.8センチ砲が使用する強化徹甲弾を、至近距離で撃ち込まれたら、90式戦車や10式戦車でも、ひとたまりが無いだろう。
「私としては、敵が態勢を整えるまで待つ必要はありません。ここは、一気に攻めるべきと、考えます」
星柿が、具申した。
「こちらから、仕掛けるのか?」
「そうです」
山縣の言葉に、星柿が、うなずいた。
確かに、米英独伊連合軍地上軍は、8個師団を失った。
しかし、後発の増援部隊も、次々と送られて来る状態だ。
この状況下で、敵に時間を与えるのは、こちらが不利になる可能性が高い。
彼の言う通り、今度は、こちらから、攻めるべきだろう・・・
HELL ISLAND 第13章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。
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