HELL ISLAND 第11章 4ヵ国連合軍連合陸軍の進撃 8 包囲殲滅戦の開始
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1機甲師団第1歩兵戦車団第1歩兵戦車大隊長の西竹一中佐は、大隊指揮車の二式指揮通信車の上部ハッチから上半身を出した状態で、自分が率いる新設の戦車部隊を眺めていた。
彼が率いる戦車は、陸軍機甲部隊が運用する、主力戦車の61式戦車改では無い。
大日本帝国統合軍省軍需省陸軍局傘下の軍事産業が、61式戦車改、一式汎用戦車、一式支援戦車の、開発生産ノウハウを生かし、新世界連合から購入した、スペックダウン型の主力戦車をベースに、国産開発した新型の主力戦車である。
二式歩兵戦車は、連合支援軍陸軍に属する、イスラエル国防軍陸軍の主力戦車メルカバに似た戦車だ。
メルカバに似ているのは、メルカバMk1をベースに、開発されたからだ。
大日本帝国陸軍では、61式戦車改を越える、高性能な戦車が必要であると、認識していた。
そこで、日本共和区統合省防衛装備局、大韓市国軍需省、新世界連合に依頼し、候補となる戦車を探した。
防衛装備局は、74式戦車を提案、大韓市国はK1戦車、新世界連合はM60[パットン]、チーフテン、メルカバ等の戦車を提案した。
大日本帝国陸軍の要求は、将来的に120ミリ滑空砲が搭載可能である事、将来的に防御力の向上が容易である事、兵員輸送が可能である事等を要求した。
74式戦車、K1戦車、M60は早々に選考から脱落し、チーフテン、メルカバが最終選考に残り、激論が交わされた。
その結果、兵員輸送が可能という点で、最終的にメルカバMk1が、選ばれた。
主砲は、105ミリライフル砲が国産開発できなかったため、すでに国産化されていた一式五二口径九糎ライフル砲(61式52口径90ミリライフル砲をベースに国産化)を搭載した。
エンジン等も国産化されており、整地での速度は50キロ、不整地での速度は40キロという速度を誇る。
重量も55トンである。
歩兵輸送能力もあり、後部に兵員室が設けられており、完全武装の機械化歩兵を、6名輸送する能力を有する。
乗員は、4人である。
オリジナルのメルカバに似ているが、それは車体と砲塔だけであり、他は独自に手が加えられているため、ほとんど別物である。
帝国陸軍は、連合軍と枢軸国軍の合同軍との激戦が予想される、ハワイ方面軍オアフ島軍第1機甲師団に優先的に配備し、第1機甲師団の2個戦車旅団とは別に、新たに第1歩兵戦車団を編成し、その下に、3個歩兵戦車大隊を編成した。
歩兵戦車大隊は、3個歩兵戦車中隊編成で、1個中隊10輌という編成であるが、対戦車戦及び対歩兵戦が可能で、重装甲の防御力を有した状態で、機械化歩兵がいるので、その戦闘能力は極めて高い。
西が搭乗している二式指揮通信車は、二式歩兵戦車をベースに開発された、二式装甲兵員輸送車を指揮車として改造した、装甲車輛である。
「大隊長!」
指揮室にいる部下が、西に声をかけた。
「歩兵団司令部より、作戦は第2段階が完了!第3段階に入る!との事です」
「そうか」
西は、そう言いながら、指揮室に戻った。
「奇襲攻撃作戦及び分断作戦は、成功した。という事か・・・」
ついに、最終局面である第3段階・・・
侵攻した米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊8個師団を、菊水総隊陸上自衛隊第6師団、第7機甲師団、第15即応機動連隊、大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1機甲師団、第1歩兵師団、第1近衛師団、第1騎兵旅団、新世界連合軍連合陸軍総軍アメリカ太平洋軍第1機甲師団、連合陸軍ドイツ連邦共和国陸軍指揮司令部第11装甲師団、新世界連合軍連合陸軍イタリア・太平洋軍第31准騎兵旅団第31騎兵連隊、朱蒙軍陸軍第1軍第11歩兵師団による完全包囲、包囲殲滅戦が行われる。
「敵の側面に、入った!」
西が、無線機に叫ぶ。
「全中隊!砲撃始め!」
西の号令で、二式歩兵戦車が、一斉に砲撃を開始した。
大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1歩兵師団と、激戦を繰り広げていた、米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊に所属するアメリカ陸軍の機甲部隊は、側面から現れた大日本帝国陸軍機甲部隊に、対処しなければならなかった。
「歩兵部隊!!右翼から敵だ!!」
M3A1に乗車している、歩兵大隊の指揮官が叫ぶ。
M1918A3を携行した歩兵部隊が、側面から攻撃を仕掛けて来た機甲部隊に、防御戦闘を実施する。
さらに、歩兵部隊支援のために、M4[シャーマン]が、砲塔を旋回させた。
「何だ!?あの戦車は!!?」
M4A1の車長が、見慣れない戦車を見て叫ぶ。
「新型の戦車か・・・」
大日本帝国陸軍及び海軍陸戦隊は、従来の軽戦車や中戦車と同じく、数多くの新型戦車を戦場に投入している。
「徹甲弾!!装填!!」
車長は、装填手に叫ぶ。
「装填!!」
装填手が、素早く徹甲弾を装填する。
「ファイア!!」
車長が叫び、砲手が戦車砲を発射する。
76ミリ戦車砲の砲口が吼え、徹甲弾が撃ち出される。
発射された徹甲弾は、その新型戦車の砲塔に直撃した。
しかし・・・徹甲弾が、弾き返された。
「やはり駄目か・・・」
新戦車の砲口が、一斉に吼える。
発射された砲弾は、M4[シャーマン]の正面装甲に直撃し、そのまま装甲板を貫徹し、同戦車を炎上させた。
「90ミリ砲クラスか!?」
新戦車の砲弾の威力から、車長が分析する。
「パーシングが、必要だ!!」
車長が、無線機に叫ぶ。
M26[パーシング]は、重戦車であるため、90ミリライフル砲を搭載している。
威力を考えれば、目の前にいる重戦車と同等だが・・・
「パーシングは、現在、すべて前線に出払っている。ここには、無い!」
小隊長から、そのような返答が返って来る。
「前線!?寝ぼけるな!ここが前線だ!!」
車長は、そう叫びながら、その新戦車を見る。
「白燐弾!装填!!」
対抗できる重戦車がいないのなら、自分たちだけで、対処しなければならない。
白燐弾で、敵戦車の視界を塞ぎ、どうにか側面若しくは後方に回り込んでから、砲撃するしか無い・・・だが、他にも重戦車がいるため、その方法は意味が無い。
だが、やらないまま、やられるよりはマシだ。
「装填!!」
装填手が叫び、砲手が撃つ。
発射された白燐弾が、新戦車の目の前の地面に着弾し、白煙が上がる。
他にも歩兵たちが、パイナップルの通称があるマークⅡ手榴弾を投擲し、可能な限り、敵重戦車の視界を塞ぐ。
歩兵たちは前進し、その重戦車の側面に移動し、携行式対戦車火器で対戦車攻撃しようとしたが、突如、その重戦車の後部から歩兵が現れた。
「何だと!?」
後部から出現した歩兵たちは、極めて火力が高い自動小銃や機関銃を携行しており、少数で接近した。アメリカ陸軍歩兵部隊を制圧した。
さらに、後方から装甲兵員輸送車が現れ、そこから攻撃犬のジャーマン・シェパードと、甲斐犬を引き連れた、歩兵が飛び出してきた。
歩兵の指示を受けて、攻撃犬が、アメリカ兵に一斉に襲い掛かり、その喉元に咬みつく。
4足歩行であるため、極めて速く、おまけに小回りが効く、そのため、接近しすぎたアメリカ兵たちは、機械化歩兵と攻撃犬の餌食になった。
米英独伊連合軍地上軍侵攻部隊の左翼を攻撃するのは、菊水総隊陸上自衛隊第7機甲師団である。
中央に配置されているのは、第7機甲師団第71戦車連隊と第11普通科連隊第1普通科中隊、第2普通科中隊である。
左翼に第72戦車連隊、右翼に第73戦車連隊が配置され、それぞれに第11普通科連隊麾下の2個普通科中隊が、配置されている。
第7機甲師団第71戦車連隊第2中隊第1小隊に所属する神薙司2等陸曹は、90式戦車の車長席で、ディスプレイを眺めていた。
「小隊長より、各車へ、第7偵察隊斥候小隊から連絡だ。左翼側面には、枢軸国のドイツ第3帝国国防軍陸軍が配置されている。重戦車や対戦車戦闘の中戦車は、前衛に出ているようだが、我々が襲撃する後衛には歩兵部隊と歩兵支援の中戦車が配置されている。歩兵支援の中戦車の砲は50ミリだから、万が一にもやられる可能性は低いが、絶対に油断するな。中隊長の口癖では無いが、ライオンに追い詰められたシマウマは、ライオンを蹴り殺す。常に1歩下がった判断をするように!」
「3号車、了解!」
神薙が、返答する。
「2号車、了解!」
「4号車、了解!」
最前衛には、第7偵察隊が配置されている。
第7偵察隊斥候小隊の後方に、90式戦車で編成された戦闘偵察部隊が配置されている。
陸上自衛隊の偵察部隊として唯一、戦車を装備する部隊であり、高火力の威力偵察を行う偵察部隊だ。
斥候小隊には、87式偵察警戒車が、装備されている。
「3号車」
2号車の車長から、無線が入った。
「何ですか、小隊陸曹?」
基本的に1号車に小隊長が搭乗し、2号車には次席指揮官の小隊陸曹である1等陸曹が、配置される。
「深呼吸しろ」
「え?」
「いいから、しろ!」
「はい!」
神薙は慌てて、深呼吸した。
「落ち着いたか?」
「はい、先ほどよりは」
「それでいい。パナマの件は、忘れろ。終わった事を気にしても何も始まらん。そんなに思い詰めていると、判断が鈍るぞ。ここは、戦場だ。無駄な考えは捨てろ!いいな!!」
「はい、わかりました」
神薙が返答した後、車内で会話が始まった。
「歩兵支援の中戦車って、Ⅲ号戦車かな?」
操縦手の言葉に、砲手が答える。
「そうだろう。基本的には、Ⅲ号戦車が歩兵支援、Ⅳ号戦車が対戦車戦闘と、役割分担がされていた」
砲手が言い終えた後、神薙が言った。
「1つ、言っておくけど、Ⅳ号戦車は極力、狙わないようにね」
「え?」
「何で?」
操縦手と砲手が、キョトンとする。
「Ⅳ号戦車は、俺のお気に入りの戦車だ。極力、撃破しないように」
「ああ・・・」
「そうでしたね。車長は、あのアニメのファンでしたよね・・・」
「その代わりティーガーⅡは、優先的に撃破しろ」
「それは何故に?」
「何となく想像が、付きますが・・・」
「俺は、個人的理由でティーガーⅡが、嫌いだからだ!」
「「さようでございますね・・・」」
「Ⅳ号戦車♪、Ⅳ号戦車♪」
どこか浮かれているような気がする神薙については、2人の部下は突っ込まない事にするのであった。
神薙の、第2次世界大戦時の戦車好き振りは、アニメの影響だけでは無いのだが・・・
子供の時に、初めて作ったプラモデルの戦車が、T-34だったそうだが、母親が防衛駐在官次官として、ロシア連邦に派遣された時に、一緒にロシアに行き、現地の学校に通っていたそうだ。
その時に、ロシアの博物館で、第2次世界大戦時に、ソ連に接収され展示されていたマウスを直に目の当たりにして、その巨大さに圧倒され、それ以後、ソ連戦車とドイツ戦車には、並々ならぬ思い入れがあると、耳タコで聞かされている。
だが、1つだけ気懸りがあった。
Ⅵ号戦車[ティーガーⅡ]が、侵攻部隊に所属しているのか、そのような報告は聞いていない。
ただし、Ⅵ号戦車[ティーガー]がいる事は聞かされている。
「前方に、Ⅲ号戦車!」
砲手が、叫ぶ。
「あれは・・・」
神薙がⅢ号戦車を確認し、そのバリエーションを思い出していた。
Ⅲ号戦車は、初期型であるA型からN型までのバージョンが、存在する。
史実では、初期のA型は、ポーランド戦にも実戦投入されたが、能力不足で実戦部隊から外された。
「J型だな・・・」
防御力が、強化されたタイプである。
「という事は、50ミリ装甲が、採用されていますね」
砲手が、つぶやく。
90式戦車の44口径120ミリ滑空砲の前では、50ミリ装甲板等、紙同然である。
「APFSDS!!」
神薙は、120ミリ装弾筒付翼安定徹甲弾を選択した。
Ⅲ号戦車等の中戦車であれば、対戦車榴弾でも十分に対処できるが、対戦車榴弾は対歩兵戦に使用するつもりであるため、対戦車戦では、従来の装弾筒付翼安定徹甲弾を使用する事にした。
「各車自由射撃!」
小隊長車から、無線が入る。
「照準!前方のⅢ号戦車J型!!」
「了解!!」
砲手が、砲を操作する。
90式戦車は、10式戦車に比べると、照準安定装置、自動装填装置、熱線映像装置等の各種センサーは劣るが、第3世代戦車の中では、世界トップクラスに入る。
第2次世界大戦時代に開発された戦車や、自分たちの知っている史実より早期に開発され、この戦場に投入されている第1世代戦車もどきに、負けるはずが無い。
すでに、第7偵察隊斥候偵察小隊の87式偵察警戒車及び戦闘偵察小隊の90式戦車、73式装甲車による威力偵察が実施されているため、対峙するドイツ第3帝国国防軍陸軍は、側面の守りを固めている状態だ。
「照準よし!」
砲手が、報告する。
「撃て!!」
神薙が、号令を出す。
90式戦車の120ミリ滑空砲の砲口が、吼える。
撃ち出された120ミリ装弾筒付翼安定徹甲弾は、Ⅲ号戦車J型の正面装甲を貫き、炎の塊にする。
90式戦車が使用する砲弾は、焼尽薬莢であるため、射撃後に空薬莢は燃えて無くなるため、捨てる必要が無い。
「敵歩兵!接近!」
「パンツァーファウストを、装備している」
歩兵たちが、パンツァーファウストを装備している事を確認した神薙は、車内に装備されている89式5.56ミリ小銃折曲式銃床を装備して、車長ハッチを開ける。
砲手も上半身を出して、12.7ミリ重機関銃の安全装置を、解除する。
パンツァーファウスト対策として、取り外し可能な増加装甲板を装着しているが、油断はできない。
間近まで接近され、パンツァーファウストを撃ち込まれたら、もしかしたらが発生する可能性がある。
神薙は、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床を構えて、引き金を引く。
3点射制限射撃であるため、無駄弾を撃つ事は無いし、確実に致命傷を与えるだけの弾丸を撃ち込む事ができる。
砲手も、12.7ミリ重機関銃を連射する。
12.7ミリ重機関銃の銃口が火を噴き、接近するドイツ兵を絶命させる。
「小隊各車!敵戦車は撃破した。敵歩兵に対しては、普通科部隊に任せる!全車停止!!」
後続には、89式装甲戦闘車で編成された第11普通科連隊第1普通科中隊と、73式装甲車で編成された第2普通科中隊がいる。
仮に、対戦車戦闘若しくは対歩兵戦闘が可能な重戦車及び中戦車が増援に駆け付けたとしても、89式装甲戦闘車には、79式対舟艇対戦車誘導弾が装備されている。
自分たちが駆け付ける前に、彼らだけで対戦車戦に対処できる。
HELL ISLAND 第11章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますがご了承ください。
次回の投稿は4月20日を予定しています。




