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HELL ISLAND 第8章 4ヵ国連合軍連合陸軍の進撃 5 包囲網の完成

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 ニューワールド連合軍連合陸軍総軍イタリア・太平洋軍第31准騎兵旅団第31騎兵連隊第1偵察戦闘中隊は、最前衛に配置されている。


 チェンタウロ戦闘偵察車で編成されている、騎兵部隊である。


 騎兵部隊と言っても、軍馬を使う訳では無い。


 現代の騎兵部隊は、戦闘偵察部隊と言うほうが、しっくりくるだろう。


 偵察任務だけでは無く、その機動力及び隠密能力を生かし、敵部隊に打撃を与える事が目的である。


 部隊の主力であるチェンタウロ戦闘偵察車は、イタリア陸軍が開発した装輪装甲車であるが、陸上自衛隊が運用する16式機動戦闘車と同じく、52口径105ミリライフル砲を装備しているため、装輪戦車とも呼ばれている。


 イタリア半島は、地中海に伸びた長靴という地形である。


 そのため、東南西すべての海岸に、敵兵力が上陸してきた場合に備える、防衛部隊を配置するのは不可能である。


 そこで、イタリア陸軍は陸続きの北部に、主力戦車であるアリエテや重武装部隊を配置し、それ以外の地域には、機動力の高い軽武装部隊を配置する防衛方針をとった。


『すべての道はローマに通ずる』と言う、諺があるように、イタリア半島は、紀元前の時代より、ローマを中心に、全土に主要道路が、網の目のように張り巡らされている。


 いわゆる、ローマ街道である。


 これらの街道は、イタリアの主要都市を結ぶように整備され、軍事目的だけで無く、物流等の経済的な目的で、大いに利用されていた。


 現在では、自動車道としても整備されているそうだ。


 そのため、チェンタウロ戦闘偵察車を中核とした装輪装甲車部隊が、迅速に展開する事が可能である。


 この方針は、現在の陸上自衛隊の防衛方針と同じである。


 最初に展開する部隊は、軽武装部隊であり、重武装部隊は、その後から来るとされている。


 チェンタウロ戦闘偵察車は、高い火力と高い機動力を有するため、戦車部隊で編制された重武装部隊が到着するまで時間を稼ぐ。


 今回、菊水総隊陸上自衛隊第14機動旅団第15即応機動連隊と、大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1騎兵旅団第13騎兵聯隊と同じく、米英独伊連合軍地上部隊の後方に回り込み補給路を断ち、後方を脅かす任務を任されている。


 第31准騎兵旅団は、第1騎兵旅団第14騎兵聯隊と共に、その任務を遂行する。


「中隊長より、各小隊に告ぐ」


 第1偵察戦闘中隊長の大尉が、ヘッドセットで、麾下の小隊長に言った。


「装甲キットが取り付けられているとはいえ、防御能力は低い。戦車砲の直撃には耐えられない。細心の注意を払え!」


 チェンタウロ戦闘偵察車は、ある程度の火力を有するが、防護能力は低い。


 正面装甲でも機関砲弾程度の直撃に耐えられる程度であり、この時代の軽戦車クラスの砲弾の直撃に耐えられずに撃破されるという可能性を、考慮しておく必要がある。


 取り外し可能な装甲キットを取り付けてはいるが、対戦車擲弾の被弾に耐えられる事が出来るぐらいだ。


 もっとも、時速70キロ程の速度で走行するため、それを狙うというのは、極めて困難だろうが・・・


 第1偵察戦闘中隊は、チェンタウロ戦闘偵察車ではあるが、52口径105ミリライフル砲搭載のタイプⅠでは無く、45口径120ミリ滑空砲搭載のタイプⅡである。


 タイプⅠのチェンタウロと違い、車体及び砲塔が新規設計され、重量も30トンに増量され、主力戦車を撃破可能な火力と市街地戦で、待ち伏せ攻撃等に対処できるRWSが、搭載されている。


 タイプⅠでは自動装填装置が搭載されていないが、タイプⅡは自動装填装置が取り付けられている。


 しかし、改良されたと言っても、最新の自動射撃システムが、搭載されている訳では無い。


 120ミリ滑空砲を搭載した事により、射撃時に受ける反動の衝撃から、車体を安定させるために車体を改良している。





「前方に、L3!」


 チェンタウロ戦闘偵察車タイプⅡの砲手が、叫ぶ。


「快速戦車か・・・」


 第1偵察戦闘中隊第2小隊長である少尉が、つぶやく。


 少尉は、ディスプレイに視線を向けながら、快速戦車のシルエットを確認した。


 L3/33こと、CV33である。


 L3とは、3トン級軽戦車を指す。


「あれは、対戦車型だな・・・」


 L3は快速戦車で、量産型は、8ミリ重機関銃を2挺装備しているだけだが、さまざまなバリエーションが存在する。


 彼らの前に現れたのは、S-18/1100[ゾロターン]という20ミリ対戦車ライフルを搭載した対戦車型である。


 北アフリカ戦線で、その存在が確認された。


 正式名称は、L3ccである。


「一般的にイタリア軍は、連合軍に大敗し、ドイツ軍が強いと思われているが、L3も、さまざまなバリエーションが登場し、第2次世界大戦を戦術的に活躍した」


 対戦車型のL3ccだけでは無く、火炎放射戦車であるL3Lfや、自走迫撃砲まで登場した。


「照準よし!」


 砲手が、叫ぶ。


「撃て!」


 少尉の叫び声に砲手が、発射ボタンを押す。


 120ミリ滑空砲に装填された装弾筒付翼安定徹甲弾が、発射される。


「さすがに120ミリ砲の反動は、高いな・・・」


 105ミリライフル砲では無く120ミリ滑空砲を搭載しているため、その反動は高い。


 もちろん、新規設計により、安定性等は確保されているが、やはり反動はある。


 そもそも120ミリ滑空砲を搭載した理由は、近年の情勢が大きく変わったためである。


 PKO活動にも積極的に、チェンタウロ戦闘偵察車が、派遣されるようになった。


 しかし、現地の反政府軍勢力等の武装勢力は、強力な主力戦車を持っている場合が多く、そのほとんどが現地改造され、打撃力及び防護力が強化されている場合がある。


 そのため、105ミリライフル砲では、威力不足が指摘された。


 そこで、強力な120ミリ滑空砲を搭載する事によって、撃破力を高めた。


 それに、時代と共に防衛方針も変わる。


 現在では、各国でも装輪戦車が導入され、戦場の主力となり、このままいけば、戦車よりも実働数が多くなる。


 技術の進歩と共に、装輪戦車は、さまざまな能力向上が図られた。


 これまでは、チェンタウロ戦闘偵察車の主任務は、主力戦車アリエテが到着するまで時間を稼ぐ事であったが、時代の情勢の変化を受けて、戦闘能力が向上した事により、チェンタウロ戦闘偵察車のみで敵主力戦車を撃破できる事が、条件になった。


「L6接近中!」


 砲手が、叫ぶ。


「また、軽戦車か!」


 少尉が、叫ぶ。


 L6が、主砲である20ミリ機関砲を、連射しながら接近してくる。


 チェンタウロ戦闘偵察車は、打撃力及び走行能力は高いが、防御能力は高く無い。


 20ミリ機関砲でも正面装甲以外に直撃したら、装甲が貫徹する場合がある。


 数発が、チェンタウロ戦闘偵察車の側面に、被弾した。


 しかし、装甲キットのおかげで、貫通する事は無かった。


「撃ち返せ!」


 少尉が叫び、砲手が砲塔を旋回させる。


「照準よし!」


 砲手が、叫ぶ。


 自動装填装置が、採用されているため、次弾装填は早い。


「撃て!」


 少尉の発射命令で、120ミリ滑空砲から、装弾筒付翼安定徹甲弾が発射される。


 発射された装弾筒付翼安定徹甲弾が、L6の正面装甲を貫き砲塔を吹き飛ばす。


「ここまで一方的だと、敵に同情する」


 少尉が、つぶやく。


「重戦車であるP40が、見たかったのですが・・・」


 砲手がポツリと、つぶやく。





 快速戦車や軽戦車を撃破した後、チェンタウロ戦闘偵察車の後方から、6輪の装甲車部隊が現れた。


 現れた装甲車は、プーマ軽装甲車である。


 イタリア陸軍が、火力支援任務を主任務とするチェンタウロ戦闘偵察車に随行し、偵察及び兵員輸送を主任務とするために、開発した軽装甲車である。


 車体上部に搭載されている12.7ミリ重機関銃M2は、RWSであるため、車内から機銃手が遠隔操作で、対人射撃及び非装甲車輛への射撃を実施する。


 後部から騎兵たちが、展開する。


 彼らはARX-160[ベレッタ]や、ミニミ軽機関銃を携行している。


 ARX-160は、6.8ミリライフル弾という新型ライフル弾を使用するため、小口径弾でありながら、7.62ミリライフル弾に匹敵する威力を発揮する。


 第15即応機動連隊普通科部隊が使用する89式5.56ミリ小銃の5.56ミリ小銃弾と異なり、確実にイタリア兵に致命傷を与える事ができた。


 すでに快速戦車及び軽戦車が撃破されたため、米英独伊連合軍のイタリア陸軍歩兵部隊に、ニューワールド連合軍連合陸軍のイタリア陸軍騎兵部隊に敵う訳が無く、次々と死体の山を築き上げられた。


「小隊長!セモヴェンテが、接近してきます!」


 ライフル兵の1人が、叫ぶ。


 小隊長が、素早く確認した。


「どうやら虎の子の対戦車自走砲を、投入して来たか・・・」


 彼らの前に現れたのは、M40[セモヴェンテ]である。


 ドイツ第3帝国国防軍陸軍の歩兵部隊支援であるⅢ号突撃砲を元に、開発された歩兵支援用の突撃砲である。


「75ミリ砲は、厄介だ!すぐに撃破しろ!」


 小隊長が、叫ぶ。


 短砲身とは言え、75ミリ榴弾砲を搭載している。


 発射される75ミリ対戦車榴弾は、チェンタウロ戦闘偵察車の正面装甲を貫徹可能であり、他の軽装甲車の装甲も貫徹できる。


 実際史実でも、北アフリカ戦線で、M40[セモヴェンテ]は、アメリカ製中戦車であるM3[グラント]及びM4[シャーマン]に対して、効果的な打撃を与えた。


 そして、この時代でも・・・


 M40は、北アフリカ戦線で連合国を相手に、獅子奮迅の活躍をした。


 さらにその後、サヴァイヴァーニィ同盟軍の侵攻に対抗するために、軍事同盟を締結した連合国軍と共闘し、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟陸軍義勇軍に対しては、L3と同じく戦況そのものに影響を与える事は無かったが、ある程度に苦戦させる事に成功していた。


 パンツァーファウスト3を携行した、対戦車兵が現れ、構える。


「発射!!」


 対戦車兵は、パンツァーファウスト3を、発射する。


 パンツァーファウスト3は、陸上自衛隊で110ミリ個人携帯対戦車弾の名称で採用、配備されている個人携行の対戦車火器だ。


 発射された対戦車榴弾は、M40の正面装甲に命中し、装甲板を貫徹し、そのまま爆発炎上した。


 他にもM40が現れたが、チェンタウロ戦闘偵察車タイプⅠやタイプⅡの、105ミリライフル砲や120ミリ滑空砲が吼え、撃破された。


「前進!」


 プーマ軽装甲車に搭乗し、指揮を行っていた中隊長が下車した部下たちに命じた。


 車両は、下車した騎兵の歩行速度に合わせて、前進する。


 米英独伊連合軍のイタリア陸軍の残存部隊は抵抗したが、別方向から攻めてきた第15即応機動連隊と第13騎兵聯隊の攻撃で、数を減らした。


 同行した第14騎兵聯隊は、掃討戦に移行し、残存する米英独伊連合軍のイタリア陸軍の歩兵部隊を追い詰める。


「前方に味方がいる。誤射に注意しろ!」


 先任指揮官から部下たちに、注意が喚起される。


 第15即応機動連隊と合流した第31准騎兵旅団は、次の作戦へと移行した。


 このまま彼らは、米英独伊連合軍地上軍8個師団の後方から襲い掛かる事になっている。





 菊水総隊陸上自衛隊第14機動旅団第15即応機動連隊、ニューワールド連合軍連合陸軍イタリア・太平洋軍第31准騎兵旅団、大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1騎兵旅団第13騎兵聯隊及び第14騎兵聯隊が米英独伊連合軍地上軍主力部隊の後方に展開を開始した後、その後方に展開する機甲部隊があった。


 ニューワールド連合軍連合陸軍イタリア・太平洋軍第10機甲旅団である。


 ニューワールド連合軍連合陸軍に属するイタリア陸軍の機甲部隊で、傘下に3個戦車連隊と2個機械化歩兵連隊等が所属している。


 主力戦車は、イタリアが国産開発した第3世代主力戦車であるアリエテである。


「連隊長。偵察隊より、報告です!予備部隊の3個師団が、動き出しました!」


「ようやく動き出したか・・・」


 戦車連隊長の大佐が、指揮車であるM113装甲兵員輸送車の車内で、待ちかねていたように、つぶやいた。


「どうやら、カミカゼは、うまくいったようだな・・・連中、尻に火を点けられ、慌てふためいたと見える・・・」


 大佐が言ったカミカゼとは、大日本帝国海軍が創設した特殊作戦部隊である特別攻撃隊・・・通称『神風』である。


「全車に告ぐ!」


 連隊長は、ヘッドセットに叫んだ。


「予備部隊の3個師団が動き出したが、友軍の破壊工作及び攪乱工作により、かなり混乱している。我々の兵力は1個旅団であるが、第3世代主力戦車であるアリエテで編成された、3個戦車連隊である。前進中の機甲師団に所属する重戦車の戦車砲でも正面装甲を貫徹する事はできない!落ち着いて、目の前の敵戦車を撃破する事に専念しろ!」


 連隊長は各指揮官に、落ち着いて攻撃をするように指示した。


「「「了解!!」」」


 各指揮官から、返答がきた。





 アリエテの戦車長である軍曹が、接近中の敵戦車を確認した。


「接近中の重戦車は、P40か・・・」


 イタリア王国で設計、開発された重戦車であるP40が、予備部隊の機甲師団所属の重戦車だった。


「1個戦車大隊クラス・・・という事は、米英独伊連合軍地上軍に投入されたイタリア陸軍は、全部のP40を戦場に投入した事になるな」


 アリエテの戦車長である軍曹は、小隊軍曹でもあるため、ある程度の戦況を把握する事ができる。


「・・・何の因果か・・・イタリア王国の重戦車を、現代のイタリア共和国の主力戦車で、迎え撃つ事になるとは・・・」


 小隊軍曹は、ニヒルな笑いを浮かべて、つぶやいた。


 こういう時が来るかもしれないと、予想はしていた。


 しかし・・・それでも正直、複雑な気分だ。


「目標!P40!」


 小隊長の、緊張した声が響く。


「おいおい、小僧。そんなに緊張していると後に来るぞ・・・」


 小隊に所属する、別の戦車長の声がした。


 小隊長を除き、この小隊に所属する戦車乗りの年齢は高い。


 戦車長たちは、小隊長を除き40代である。


 彼らの上官である小隊長は、陸軍士官学校を卒業したばかりの、20代前半の新任下級士官である。


 そのため、車長たちからは、小僧と、呼ばれている。


「目の前の敵に、集中しろ!」


 小隊軍曹が、叫ぶ。


「距離よし!撃ち方始め!」


 小隊長の号令で、車長たちが、射撃を命じた。


 アリエテの戦車砲である、44口径の120ミリ滑空砲が、一斉に吼えた。


 発射された装弾筒付翼安定徹甲弾が、P40の正面装甲を貫く。


「P40の戦車砲は、75ミリ砲だ。威力も、それ程は高く無い!慌てず1輌ずつ確実に撃破しろ!」


 小隊軍曹が、各車長たちに告げる。


 アリエテは低速で前進しながら、走行間射撃を実施し、P40を次々と撃破していく。


 P40からも砲撃が来るが、75ミリ徹甲弾では、アリエテの正面装甲を、貫く事はできない。


 一方的に、撃破されていく。





 予備部隊と本隊は、完全に分断された。

 HELL ISLAND 第8章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は3月30日を予定しています。

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― 新着の感想 ―
らめえ~~~!L3やL6相手に120 mm砲の装弾筒付翼安定徹甲弾を使っちゃあ、らめえーーーーーー!!!!!! 明らかにオーバーキルだし、弾がもったいない。下手すると貫通するだけかもしれん。 L3…
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