HELL ISLAND 第6章 4ヵ国連合軍連合陸軍の進撃 3 大日本帝国陸軍近衛師団の参戦
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
大日本帝国陸軍ハワイ方面軍オアフ島軍第1歩兵師団第3野戦重砲兵旅団第1野戦重砲兵聯隊第1野戦重砲兵大隊第1野戦重砲兵中隊に所属する砲兵たちは、九六式十五糎榴弾砲に、砲弾を装填していた。
装填されているのは、九二式榴弾でも無く、九五式破甲榴弾でも無い。
二式榴弾砲用集束弾である。
未来の日本からの技術援助で、開発された新型砲弾である。
親弾に搭載されている子弾が、敵地上空で放出され、子弾は、四方100メートルに広がる。
現代で言う、クラスター爆弾である。
海軍では、フレシェット弾を導入し、陸軍では、クラスター爆弾を、それぞれ導入した。
二式榴弾砲用集束弾の元であるクラスター爆弾は、陸上自衛隊では2010年に発行された、クラスター弾に関する条約に抵触するために、すべて廃棄処分されていたが、設計図等は保管されており、統合軍省軍需省は、そのデータを元に開発した。
クラスター爆弾の問題点である、子弾の不発弾問題も、改善されている。
子弾1発1発に、自爆機能が組み込まれている。
そのため、予算が高騰したが、問題点の改善はできた。
「装填よし!」
装填手が、九六式十五糎榴弾砲に二式榴弾砲用集束弾を装填すると、叫んだ。
砲兵要員たちは操作し、砲口を上げる。
「砲撃準備完了!」
砲兵小隊長が、報告する。
彼の報告の後、各砲兵小隊長たちが報告する。
中隊長である中尉は、指揮下の小隊長からの報告を聞くと、大隊本部に報告した。
すぐに大隊本部から、砲撃開始の命令が下った。
「撃て!!」
中隊長の号令で、一斉に九六式十五糎榴弾砲が、一斉に吼えた。
撃ち出された二式榴弾砲用集束弾は、進撃する米英独伊連合軍地上軍のアメリカ陸軍歩兵部隊に向かって飛翔した。
敵地上空で親弾から子弾が放出され、敵歩兵部隊の頭上に、雨のように降り注ぐ。
子弾が炸裂し、歩兵及び車輛を吹き飛ばす。
二式榴弾砲用集束弾は、軽装甲車輛を撃破可能な威力を有する。
不発弾は、時限信管が作動し、時間差で炸裂する。
この時間差による炸裂により、敵歩兵部隊の被害を拡大した。
自爆機能を付けたため、陸軍ではあえて、不発するように細工した。
着地時の衝撃で炸裂する子弾と、時限信管で炸裂する子弾があるため、危害範囲や危害規模は大きい。
「次弾装填!!」
中隊長の号令で、再び九六式十五糎榴弾砲に、二式榴弾砲用集束弾が装填される。
「「「砲撃準備完了!!」」」
各小隊長から報告が入る。
「撃て!!」
砲口が上がった九六式十五糎榴弾砲が、再び吼える。
支那事変から実戦投入された同榴弾砲は、近代化された重榴弾砲である。
支那事変だけでは無く、太平洋戦争では、南方作戦で活躍した。
防衛戦に転換したガダルカナル島の戦いからは、各戦線で加農砲と共に、野戦重砲兵部隊の主力火力として使用された。
巧妙に隠蔽された砲陣地と不規則な砲撃により、それなりの戦果を上げた。
アメリカ海兵隊からは、かなり恐れられた戦法である。
沖縄防衛戦では、独立重砲兵部隊は重榴弾砲の砲弾を撃ち尽くすか、重砲が破壊されるまで奮戦した。
その後、将兵は、歩兵として挺身攻撃を実施し、奮戦した。
第1野戦重砲兵聯隊は、砲弾を使い切った後、第1歩兵師団傘下の2個歩兵旅団の指揮下に入り、歩兵戦闘が実施出来るように、一式半自動小銃が装備されている(歩兵旅団での主力小銃は、64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型である)。
九六式十五糎榴弾砲から発射された二式榴弾砲用集束弾が炸裂する光景を、第1歩兵師団第1歩兵旅団第1歩兵連隊第2歩兵大隊第3小銃中隊第4小銃小隊長の南郷泰輔少尉は、双眼鏡を覗きながら、確認した。
南郷泰輔は、大日本帝国海軍聯合艦隊空母機動部隊第2航空艦隊司令長官である、南郷伊之助中将の三男である。
南郷は、陸軍歩兵少尉であるが、正規軍出身では無い。
戦争が勃発して招集された、予備役歩兵少尉である。
戦争が始まる前は、彼は国民学校の教師であった。
そのため、厳つい雰囲気は無く、小隊の部下・・・特に兵卒からは、兄のように慕われていた。
南郷は双眼鏡を下ろし、部下たちを見る。
新式自動小銃である64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型を構えながら、時を待っている。
自分も、拳銃嚢から壱式自動拳銃を取り出す。
「少尉殿。まだまだ距離はあります。肩の力を抜いて下さい」
小隊附下士官である軍曹が、声をかける。
「今、肩の力を入れていたら、戦闘になった時に、へばります」
彼の言葉を聞いて、南郷は肩の力を緩める。
「そうか。なら、そうさせてもらおう」
第3野戦重砲兵旅団第1野戦重砲兵聯隊に、所属する榴弾砲の砲撃音が常に響く。
南郷は、戦車壕に車体を隠している九五式軽戦車に、顔を向ける。
(・・・相手は、重戦車や中戦車。機甲師団の戦車でなければ敵わない相手ばかり、こんなで勝てるのか?)
部下の前で、将校が怯える等許されない。
そのため、南郷は心の中で、つぶやくのであった。
歩兵旅団傘下に、歩兵支援のために九七式中戦車と九五式軽戦車で編成された戦車大隊がある。
だが、その火力は敵の重戦車及び中戦車に対しては、無力である。
「少尉殿」
小隊附下士官である軍曹が、声をかけた。
「心配するには及びません」
軍歴が長い軍曹は、新任の若い将校の思惑を理解したのか、そう言った。
「確かに、ここにある戦車では、敵の戦車に対して威力不足ですが、聯隊麾下に対戦車中隊があります。彼らが武装する無反動砲なら、中戦車であろうと重戦車であろうと撃破は可能です」
彼の言う通りである。
歩兵聯隊麾下に対戦車中隊が編成されており、対戦車火器である一式十糎半無反動砲は、重戦車及び中戦車の正面装甲を貫徹可能である。
さらに、携行式対戦車発射筒の威力も強大であり、対戦車戦は心配する必要は余り無い。
「敵部隊接近!!」
中隊長の声が、無線機に響く。
「射撃用意!」
南郷は部下たちに、射撃準備を命じる。
64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型を武装する小銃分隊と、九九式軽機関銃を武装する機関銃分隊の兵士たちが狙いを定める。
第1歩兵師団の歩兵部隊には、機関銃として62式7.62ミリ汎用機関銃改が装備されているが、これは歩兵大隊の火力支援中隊に集中配備されている。
小銃小隊の機関銃分隊には従来の九九式軽機関銃が配備されている(弾薬の共通化のために7.62ミリ小銃弾仕様に改良されている)。
歩兵大隊麾下の歩兵砲中隊から一式一〇五粍榴弾砲が、砲撃を開始する。
敵からの砲撃が、近付いてくる。
「訓練通りにやれ!焦る事は無い。敵の砲弾は、そう簡単に当たらない!」
小隊附下士官である軍曹が、部下たちに叫ぶ。
「射撃開始!」
中隊長の声が、響く。
「撃てぇぇぇ!!」
南郷の号令で、一斉に64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型や九九式軽機関銃が、火を噴く。
「装填完了!」
「照準よし!」
第1歩兵師団第1歩兵旅団第1歩兵聯隊第1対戦車中隊第1対戦車小隊第1射撃分隊の、一式十糎半無反動砲を操作する兵士たちが、叫ぶ。
「撃て!」
一式十糎半無反動砲の砲口が、吼える。
一式十糎半無反動砲は、戦後、創設された準軍事組織である警察予備隊時代に、アメリカ陸軍から供与された、106ミリ無反動砲M40である。
口径が106ミリと表記されているが、実際の口径は、105ミリである。
陸上自衛隊でも、60式106ミリ無反動砲(106ミリ無反動砲M40を、ライセンス生産された物)を導入しており、退役し、予備装備として保管されていた60式自走106ミリ無反動砲と共に、大日本帝国軍需省に供与した。
大日本帝国陸軍では歩兵師団の対戦車火器として、一式十糎半無反動砲を配備した。
機械化編成された機甲師団や、近代化編成された近衛師団には、同じく統合省防衛装備局から供与された、旧式の対戦車誘導弾が軍需省で研究、開発され、配備されているが、歩兵師団への配備を進めるのは困難だった。
そのため、代わりに一式十糎半無反動砲が、配備された。
発射された弾頭は、戦車にも効果がある成形炸薬弾である。
M26[パーシング]の正面装甲に直撃し、同重戦車を炎上させる事に成功した。
「やったぞ!!」
分隊長が、叫ぶ。
「再装填急げ!」
無反動砲であるため、再装填に時間がかかる問題点があるが、第1歩兵師団歩兵旅団歩兵聯隊の対戦車中隊の将兵たちは、十分な砲撃訓練を積んでいるため、確実に目標戦車に直撃させる事ができる。
対戦車火器は、これだけでは無い。
各歩兵大隊火力支援中隊に一式携行対戦車弾発射筒が配備されている。
これは、陸上自衛隊に長らく導入された89ミリロケット発射筒M20改4型をベースに、軍需省が開発した携行式の対戦車弾発射筒だ。
84ミリ無反動砲や110ミリ個人携帯対戦車弾が導入されてから、部隊から姿を消したが、予備装備として保管されていた。
保管されていた89ミリロケット発射筒M20改4型を、統合省防衛装備局が大日本帝国軍需省に供与した。
陸軍では、歩兵部隊の火力支援中隊だけでは無く、他の兵科部隊にも配備する計画をした。
そのため第1歩兵師団では、歩兵部隊だけでは無く、砲兵部隊、兵站部隊にも配備されている。
対戦車戦闘が想定されているハワイであるため、ハワイ方面軍に優先的に集中配備された。
九七式中戦車や九五式軽戦車しか無いからと言って、敵の重戦車や中戦車に対してまったく無力では無い。
このような対戦車火器が導入されているから、対戦車戦闘は、ある程度には出来る。
もちらん、九七式中戦車や九五式軽戦車で編成された戦車大隊も、何もしていない訳では無い。
「前方のM4[シャーマン]の履帯を、狙え!」
九七式中戦車の車長が、叫ぶ。
「了解!」
砲手が狙いを定める。
「照準よし!」
「撃て!!」
九七式中戦車の、一式四七粍戦車砲の砲口が吼える。
発射された砲弾は、強化型の徹甲弾である。
M4[シャーマン]の履帯に命中し、履帯を破壊する。
「よし、動きが止まった!」
動きが止まった戦車等、ただ単に狙われる的でしか無い。
一式十糎半無反動砲を武装する対戦車部隊が確実に仕留める。
たとえ火力が敵戦車部隊より劣っていても、対戦車部隊との連携攻撃で、確実に敵戦車を撃破していく。
戦闘が開始されて、ある程度の時間が経過すると、戦場は歩兵対歩兵戦が、繰り広げられていた。
「このぉっ!!」
南郷は壱式自動拳銃を拳銃嚢に戻し、軍刀を抜き、銃剣を構えて突っ込んできたアメリカ兵の胸元に突き刺した。
日本刀のイメージとしては斬るのが一般的だが、実際には相手を斬ると、刀にもそれなりのダメージを与える事になる。
実際は、刀へのダメージを抑えるには、突くのが正しい。
この方法だと、刀に与えるダメージは最小限であるだけでは無く、相手を確実に仕留める事ができる。
彼の部下たちは、64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型や、九九式軽機関銃の先端に装着した銃剣で、突っ込んできたアメリカ兵の胸元や首元に突き刺している。
「やあ!」
南郷は、銃剣を取り付けた自動小銃による刺突を軍刀で弾き、そのまま敵兵を斬り伏せる。
南郷は、九七式手榴弾を取り出した。
安全ピンを抜き、先端を鉄帽で叩いた。
信管を点火させ、敵に向かって投擲する。
「手榴弾!」
南郷が叫び、塹壕にすばやく伏せる。
九七式手榴弾が炸裂する。
部下たちも、九七式手榴弾の信管を作動させて、投擲する。
連続して、九七式手榴弾の炸裂音が響く。
「戦車接近!!」
誰かが、叫ぶ。
南郷は、塹壕から顔を出した。
「M3[スチュアート]!」
軽戦車である、M3[スチュアート]だった。
砲塔が旋回し、砲口から火炎が放射された。
「うわぁぁぁ!!!」
塹壕にいた彼の部下たちが、全身に火炎を浴びせられた。
「くそぉぉぉ!!」
南郷は奇跡的に無事だったが、火傷を負った。
再び火炎放射戦車であるM3の砲口が、こちらに向く。
「くっ!」
これまでか、そう思った時、突如としてM3が爆発した。
「何だ!?」
確認すると、次々と戦車が爆発炎上している。
「「「天皇陛下万歳!!!」」」
「「「大日本帝国万歳!!!」」」
掛け声が響く。
掛け声の方向に南郷が向くと、予備部隊として後方に待機していた、第1近衛師団の近衛歩兵部隊が、64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型や62式7.62ミリ汎用機関銃改等を持って、突撃して来た。
M3等を撃破したのは、ハワイ方面軍オアフ島軍に配備されている、第1近衛師団第1近衛歩兵旅団第1近衛歩兵聯隊対戦車中隊である。
同対戦車部隊が導入しているのは、機甲師団機械化歩兵聯隊の対戦車部隊が配備している、二式対戦車誘導噴進弾である。
これは、陸上自衛隊が初めて国産開発した、対戦車誘導弾である、64式対戦車誘導弾をベースに、軍需省が開発した対戦車火器である。
能力は64式対戦車誘導よりも劣るが、この時代の戦車を撃破するのには、十分な威力がある。
近衛師団は、皇族と宮城を警衛する特別な部隊であり、一般の歩兵師団とは別格である。
そのため、陸軍近代化計画により、新設する機甲師団についで、近衛師団は優先的に新武装が行われた。
平時は、皇族と宮城等の警衛を行うが、戦時には野戦師団として戦闘に参加する部隊である。
陸軍参謀本部は、未来の自衛隊や軍隊を研究し、将来的には即応展開師団として整備している。
彼らの士気は高く、膠着した状態を脱する役割を果たした。
「突撃!突撃!」
軍刀を持った将校が、叫ぶ。
新万歳突撃戦法は、一般歩兵師団等で経験しているアメリカ軍であったが、近衛師団近衛歩兵部隊の新万歳突撃は、まったくの別物だった。
近衛歩兵の強さは、格段に違っていた。
それもそのはず、大日本帝国陸軍では近衛兵になれるのは、大変名誉な事である。
そのため、もっとも、士気が高い。
HELL ISLAND 第6章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。




