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ハワイ会戦 第15章 石垣 再び戦場へ 1 ワイルドキャット

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

「ふぎゃあぁぁぁぁ!!!」


 指揮母艦[信濃]の統合作戦室に、菊水総隊総隊総隊司令部付連絡将校である、氷室匡人2等海佐の悲鳴が、響き渡った。


「あっ!!申し訳ありません!申し訳ありません!!」


 各方面からの、戦局に付いての報告会議の途中、配られていた湯飲みが、ひっくり返り、熱い緑茶が手にかかってしまったのだ。


 湯飲みを置こうとして、手を滑らせて氷室にお茶をひっかけたのは、統合作戦室で給仕を担当している10代後半の水兵だった。


「大変だ、手が真っ赤になっている」


 そう言いながら、氷室の手を手拭いで拭いているのは、年長の水兵だった。


「申し訳ありません。こいつは、配属されてから日が浅くて・・・」


「・・・大丈夫です。大した事は、ありませんよ」


「ですが、すぐに冷やさないと・・・」


 グイグイと水兵は、氷室の腕を引っ張る。


「いや・・・その・・・本当に、大丈夫ですから・・・」


「失礼します」


 統合作戦室に、下士官が入室してくる。


 下士官は、ツカツカと氷室の側に来ると、氷室の耳元に口を寄せる。


「氷室中佐殿。桐生さんが、緊急の面会を希望されています」


「今、会議中だよ。後にして貰えない?」


 何?この、偶然を装うワザとらし~い、演出。


 何か仕組まれているような・・・嫌な予感を覚える。


「氷室君。今から少し、休憩に入る。手当をしてきたまえ」


「・・・いえ・・・あの・・・」


 声をかけてきた山本に、氷室はモゴモゴと口籠る。


「では・・・すぐに、手当てしてきます!」


 山本からの許可(?)を得て、先程の2人の水兵が、氷室をガッチリと両脇から掴み、速攻で連行していく。


「謀ったな!桐生さん~!!!」


 氷室の絶叫が、響き渡る。





「あら、あら。まぁ~大変、大変!」


 臨時救護所に、偶然(?)居合わせた[信濃]酒保店長の桐生明美が、大袈裟に騒ぎ、氷室の火傷の手当を始めた。


「何です?」


 ブスッとした表情で、氷室が問う。


 当然、周囲には誰もいない。


「ニャオ。ニャ、ニャ、ミャオ、ニャ~オ。ニャン」


「猫語で無く、日本語で話して下さい」


「緊急報告。山猫が、動いた。以上」


「!?・・・山猫というと、アクションゲームで有名な、ソ連の?」


「ニェット(NO)」


「・・・だとすると、1944年にパラオ諸島アンガウル島に投入された、精鋭特殊部隊・・・」


「ダー(YES)」


「何故に、ロシア語?」


「特に意味は無いし、そういう気分なだけ。目的は、戦闘時の側撃、及び後方攪乱、破壊工作等と、思われる・・・かな?」


 何故に、そこで疑問形?


「・・・部隊規模は?」


「ヤー・ニ・パニマーユ(わっかりませ~ん)」


「・・・・・・」


「だって、専門家じゃないし~」


 それでは、情報の意味が無いのだが・・・


「で・・・僕に、どうしろと?」


 頭に、2・3個の怒りマークを浮かべつつ、冷静な口調で問いかける。


「わからないなら、直接現場へ出向いて、ちょっと調べてこようかな~・・・と。それと、場合によっては、ついでに・・・という訳で・・・」


「ダメです!」


「ブゥ!」


 即座に却下する氷室に、桐生はムクれる。


「・・・と、言いたいところですが、先日のヒッカム基地の奇襲は、陽動の可能性が大ですね。空からの大規模攻勢と見せかけて、注意を反らし、すかさず地上から奇襲をかける・・・と、いうのも考えられますね。陸軍上陸部隊の大規模攻勢に備えているこちらの間隙を突く。それなら、小規模な部隊でも実行不可能では無い。あり得ないとは言い切れません。アリューシャン列島近海で、新世界連合軍連合海軍第1艦隊第2空母打撃群が、違った形で、それを仕掛けられましたからね・・・ですが・・・」


「肉を切らせて骨を切るにしては、味方の犠牲の方が、大き過ぎると?そこまで、やるか?とか、考えています?」


「まあ、そうです。連合国アメリカ海軍に関しては、僕の知っている人物が、作戦に関わっている。陸空軍の作戦に関しては、共同作戦を展開する以上、助言くらいなら出来る立場でしょうし・・・しかし・・・そこまで非情になれる人物とは・・・」


「フンフン。思えないと・・・」


「ええ」


 手当の終わった桐生は立ち上がると、紙コップにコーヒーを淹れて、氷室に手渡す。


「どうも」


「・・・もし氷室さんが、その人物だったとしたら・・・どうだった?案外、同じ事をするのではない?」


「・・・・・・」


「アメリカ軍の基本戦略は、今も昔も変わっていない。万全な態勢を整えて、圧倒的兵力で、一気呵成に敵を攻め落とす。その方が、大局的に見ても犠牲を低く抑えられる。アメリカ軍に拘らなくても、日本の戦国時代の戦国大名を見れば、わかるでしょう。秀さんや、信リンみたいな戦国大名も、大雑把に言えば同じような事をしていたでしょう?足軽みたいな下端の人は、自分の領地の領民から徴用していたのだから。領民の犠牲を最低限に抑えなければ、自国の領地経営そのものが立ちいかなくなって、戦どころではなくなるのだから・・・」


「秀さん、信リンって・・・」


 この人は・・・


 知っている人全員(歴史上の人物含む)に、片端から勝手に愛称付けまくっているんじゃないかと、勘ぐってしまう。


 豊臣秀吉や、織田信長の事を、勝手に愛称で呼ぶとは・・・2人のファンの歴史マニアの人に知られたら、激怒されますよ!


「・・・わかりました。七人御先の出動を、認めます」


「よっしぁー!!」


 両手を握りしめて、ガッツポーズをする桐生。


「ただし!」


「?」


「貴女は、お留守番!」


「えぇ~っ!?」


 自分も出る気、満々だったんかい!?という突っ込みは置いておく。


「いやいやいや・・・貴女は、七人御先のリーダーでしょう。何、最前線に出ようとしているんですか?」


「指揮官先頭!は、基本でしょう」


「基本を、自分ルールに変えないで下さい!ゴールポストを動かすのは、反則です!」


 この人は~・・・さらに、こめかみに怒りマークを増やしつつ、氷室は続ける。


「貴女は立場上、後方から全体を把握してもらって、僕に別方向からの助言をしてもらわなくてはなりませんからね。いいですね!」


「はいはい」


「はい。は、1回!それに、貴女が危険な目に遭ったりしたら、僕が本庄さんに、叱られるんですよ!自重して下さい!」


「う~ん・・・確かに。先月と先々月は、お兄様に結構な枚数の始末書を書かせてしまったし・・・これ以上始末書が増えると、お兄様の給料が減らされるかも・・・それは、ちょっとマズいよね・・・」


「気にする所は、そこですか!?ってか、自分の上司に、何ていう事を、やらせているんですか!?」


 こんな部下は、イヤだ!と、内心で絶叫する。


(それは、さておき・・・まあ、ラッセル少尉・・・いや、今は少佐だったな。彼には一本取られていますしね。従姉さんに代わって、ここは一つ、お返しでも、させてもらいますか・・・)


 ため息を付き、眼鏡を弄りながら、氷室は思考を幾重にも巡らせていた。





 4ヵ国連合軍総旗艦重巡洋艦[インディアナポリス]。


 その艦橋横ウイングで、レイモンド・アーナック・ラッセル少佐は1人、夜色に染まった海を眺めていた。


 これまでの戦況を、振り返る。


[モンタナ]級戦艦を基幹とする戦艦部隊と、[ヤマト]級戦艦を基幹とする戦艦部隊の水上戦は、引き分けたが、他の戦闘については、比較的優位性を保ってはいるが、ここ一番、敵の防衛線を突き崩せないでいる。


 大日本帝国軍も、自衛隊、ニューワールド連合軍も、攻勢防御に徹して、無理をしない戦術に切り替えて、余力を十分に残している。


 増援部隊の到着を待っていると、ありありと見せつける事で、こちらの焦燥感を煽っている。


 その煽り方が、実に巧妙なのだ。


 消極的と見せかけつつ、制空権をかけた航空戦では、むしろ積極的な攻勢に出ている。


 そのため、一部の将校からは、これまでの戦闘で出た戦死戦傷者数に比しても、戦果が上がらない事に、総司令部の消極性に対する批判も、少なからず出始めている。


「ふう・・・」


 犠牲はそれなりに出るのが前提であったが、次々と上げられてくる報告書の内、戦死戦傷者数が記された書類に目を通すのは、正直辛い。


「・・・制空権が、確保出来ていない状態での、陸軍の進撃・・・」


 間もなく開始される陸軍上陸部隊の作戦行動に、直接口出しは出来ないのだが、総参謀長であるマクモリス中将を通じて制空権完全確保まで、陸軍には作戦行動を延期するように申し入れたが、聞き入れられなかった。


 空軍はもちろん、海軍も艦載機による上空支援や予備爆撃等は行う予定だが、今の状況では真面な支援も儘ならないどころか、敵航空機の反撃に、海空軍ともに相当な損害を覚悟しなくてはならない。


 この状態で、地上戦が行われれば、敵地上軍に対しても、それなりに、かなりの損害を与える事は出来ると思うが、こちらが被る損害も相当だろう。


「ふう・・・」


 また、ため息が出る。


「おい」


「ひやっ!?」


 後ろから急に声をかけられて、驚いた。


「・・・カズマ・・・ビックリさせないでよ・・・」


「ボーとしている、アンタが悪い」


「・・・・・・」


 軽く抗議をしたが、言い返された。


「ほら」


「・・・夜食を頼んだ覚えは、ないけれど・・・?」


 カズマ・キリュウが、サンドイッチとコーヒーが載ったトレイを差し出してきた。


「夕食を、まともに食っていなかっただろう?」


「・・・食欲が無くてね」


 陸軍内では、総司令部の意向である制空権確保が最優先という戦略に対し、肯定と反対の意見が対立しているそうだ。


 反対派の言い分としては、先のオアフ島東海岸に築かれた兵站拠点に対する大日本帝国海軍の艦砲射撃による攻撃を受けた件で、海軍の哨戒網があっさりと破られた事に対しての、海軍の不手際を根拠として、強い懸念を主張しているそうだ。


 その点は理解しているし、その件に関しては、批判されても仕方が無い。


 第1護衛隊群に損害を与えた事で、こちらの攻撃が有効であるという自信から、彼らの敵に発見される前に敵の位置を捕捉し、攻撃するという本来の特性を、一時的に失念していた。


 そこを、突かれた。


「・・・いや・・・せっかく、持ってきてくれたけれど、やっぱりいいよ・・・」


「いいから食え!」


「・・・はい」


 凄んで、ズイッとトレイを押し付けてくるキリュウのプレッシャーに負けて、トレイを受け取った。


「大体、思い悩んだって何にもならないだろう。飯も食わないで考えたって、ロクな事にならない。上手くいく事や、いかない事なんて、あって当たり前だろう?」


「まあ・・・そうなのだけれど・・・」


「だったら、飯を食うなり、シャワーを浴びるなりして、気分を変えろ。アンタ、何日シャワーを、浴びていないんだ?臭うぞ!」


「え?そう?」


 思わずレイモンドは、自分の服の臭いを、クンクンと嗅いでみる。


 レイモンド自身は、この時代では珍しい非喫煙者なのだが、煙草や葉巻の臭いや煙が充満する作戦室等に籠る事もあるので、煙草の臭いは勤務服に染みついている。


 ついでに汗の臭いも・・・


 いつまでもクンクンとやっているレイモンドに、キリュウは、イラッときたらしい。


「とにかく!サンドイッチを食ったら、さっさとシャワーを浴びて、着替えをしろ!!いいな!!」


「はいっー!!」


「フン!」


 プンプンといった感じで、肩をいからせてキリュウは艦橋の方に戻っていった。


「・・・何だか・・・どちらが年上だか、わからないな、これじゃあ・・・」


 レイモンドは、苦笑した。


 これでは、口うるさい母親と、面倒臭がり屋の子供の構図である。


 しかし、キリュウの言葉で、少し気が楽になった。


「・・・そうだね。少し気分を変えてみよう」


 そうつぶやいて、一口サンドイッチに、かぶりついた。





「ゴキブリ退治をします」


 山本以下、統合作戦本部と菊水総隊司令部より許可を得た氷室は、石垣達也2等海尉以下3名を、海軍作戦室に召集した。


「ゴキブリ?」


「・・・・・・・」


「・・・・・・・」


「[信濃]の食堂にでも、大量発生したのですか?」


「違います!」


 (そく)()美雪(みゆき)3等海尉の、すっとぼけた質問に、氷室はズッコケた。


(言葉の裏を、読んでよね・・・)


 本気で言っているのか、それとも単に天然なだけなのか、ワザとなのか・・・頭痛を感じた。


「ゴホン!」


 側に控えている海軍部長の宇垣が、咳払いをする。


「言い直します。現在、敵陸軍上陸部隊本隊より先行して進軍中の、通称山猫部隊。第81歩兵師団の師団司令部陣地を強襲。無力化します」


 そう言って氷室は、地図にレーザーポインターを当てる。


 この時点で、氷室の元にはかなりの情報が、もたらされている。


 深部偵察や、ドローンによって師団司令部陣地が置かれている地点も、把握できていた。


「わっかりませ~ん」等と、宣っていた桐生だが、必要な情報は、すべて提供してくれた。


 その中には幾つか、どうやって調べた?と、突っ込みたくなるものもあったが・・・


 まあ、彼女の場合、自分の息子経由で別ルートからの情報を、仕入れる事も出来るから、そこは聞かない事にした(下手をすれば、どんな酷い目に遭うか、わかったものでは無い)。


 それによると、自分たちの史実とは名称こそ同じだが、第81歩兵師団は、自分たちの知っているそれとは、別物であるとの事だ。


 一応、師団という位置付けではあるのだが、まだ編成途上であり将兵の数は、数千人規模でしか無い。


 それに、編成されてから時間が経っていないため、十分な練度があるとも言い難く、そのため予備部隊に編入された事。


 それに、不満を持っている将兵が、多いとの事だ。


(連合陸軍司令部の指示というより、抜け駆けに近い作戦行動の可能性有り・・・ねえ)


 いくら何でも・・・と、思うが、新世界連合の連合情報局に、裏付けのための確認を取った所、桐生の収集した情報は、かなり正確だった。


 現在、第81歩兵師団は、師団司令部の指揮の下、小隊若しくは中隊規模に分かれて、移動している。


 上空からの偵察に対処するためか、車輛は使わず、徒歩で山間部を進行している。


 よもや、その位置情報すら完全に把握されているとは、思うまい。


(怨霊を敵に回した人間に、逃れる術は無いという事かな?・・・げに恐ろしきは、怨霊の祟りなりってね・・・エクソシストか陰陽師でも連れてこなきゃ・・・)


 心中で、つぶやく。


「当該部隊の目的は、近日中に予定されている上陸部隊の進軍にあわせて、別方向からの伏撃、若しくは後方からの攪乱を仕掛けて来ると思われます。それに対しては、菊水総隊陸上自衛隊第14機動旅団第50普通科連隊で対処します。その間隙に、我々が山猫の巣を強襲するという訳です。部隊指揮官兼戦闘指揮官は、メリッサ・ケッツァーヘル少尉、同副指揮官は(レン)(チン)(ラン)中尉、副官として、石垣2尉と側瀬3尉。ケッツァーヘル少尉と任中尉の指揮下の部隊には、貴女がたの小隊に加えて、牛島中将直轄の[鬼兵衆]の、1個小隊を編入させます。それと・・・陽炎団国家治安維持局防衛部の戦闘部隊も、共同作戦部隊として参加します」


「国家治安維持局?彼らは、警察の傘下では?」


 タイムスリップして間もない頃、陽炎団に派遣された事もある石垣が、疑問を口にする。


 あの時、防大で同期だったという、国家治安維持局巡査長の新谷(しんたに)と知り合ったが、彼は警察官だった。


「国家治安維持局は、治安部と防衛部で編成されています。治安部は、主に警察官。防衛部は、自衛官が主に配属されています」


 氷室は、簡単に説明した。


「そうですか」


 石垣は、それで納得したようだ。


 もちろん氷室は、嘘は言っていない。


 主に、という言葉を強調しただけだ。


 警察官や自衛官以外にも、有象無象な人間たちが所属していると、言っていないだけだ。


 細かい説明を求められても、適当に誤魔化すだけだが。


 世の中、知らない方が良い事も、あるからだ。


「我々の作戦行動について、詳しく説明してもらいたい」


 任が手を上げる。


「[鬼兵衆]の保有する戦闘ヘリMi―24D[ハインド]で移動後、このポイントで、ファストロープ降下後、陸路で敵司令部が展開する地点へ移動してもらいます。そこで、深部偵察を行っている、防衛部戦闘部隊と合流後、司令部機能を無力化します」


「もう少し、具体的に聞きたいですね。司令部機能の無力化といっても、敵の規模がわからないのでは、どの程度の損害を与えた状態で作戦終了とするのか、判断が付きかねます」


 メリッサが、意見を述べる。


「もちろん、足腰が立たないくらいまで、ドッカン!バッカン!ズッコン!よ。仕上げは、ちゃ~んと用意しているから、心配しないで」


 背後から聞こえてきた声に、全員が振り返る。


 いつの間にか、石垣たちの背後には狐のような雰囲気を纏った女性が、狐のような笑顔を浮かべながら、迷彩服3型を着用して立っていた。


「彼女が、国家治安維持局防衛部戦闘部隊班の・・・」


「小松!?何で、お前が!!?」


 紹介しようとした氷室の声を遮って、石垣が声を上げる。


「お久しぶり、石垣君。元気だった?」


 狐のような笑みを顔に張り付けたまま、小松(こまつ)(あい)()2等陸尉は、スーと石垣の側まで歩み寄ると、当たり前のように椅子に座った石垣の膝の上に腰を下ろす。


「なっ!何をする!!?」


 突然の小松の行動に、狼狽した石垣は小松を押しのけようとするが、石垣の首に腕を回した小松は離れない。


 石垣にとっては非常に不本意ながら、彼女から逃れようと、暴れれば暴れる程、側から見れば衆人の目前で、イチャイチャしているバカップルのようにしか見えない。


「ちょっと、貴女!何者なの!?タツヤから離れなさい!!」


「私?小松紫花2等陸尉よ。ふ~ん、タツヤ・・・タツヤねぇ・・・」


 挑発するような視線をメリッサに送りながら、小松は石垣の頬をペロッと舐める。


「・・・・・・」


 プルプルとメリッサが、怒りに身体を震わせ、2人を殺気の籠った目で見ている。


「・・・・・・」


 任も、身体を震わせているが、こちらは笑いが込み上げてくるのを、必死で堪えているようだ。


「ねえねえ、小松2尉。石垣2尉とは、どういう関係なのですか?」


 1人、わかっていない側瀬が、小松に尋ねる。


「石垣君の、カ・ノ・ジョ・・・よ」


「そうなんだ」


「違う!!断じて違う!!ぐえっ!!」


 小松に、首を絞められた。


「もう~石垣君ったら、照れちゃって。私たちの愛の始まった、あの日の事を忘れたの?」


「あれはっ!俺の恋愛を、お前に、ぶち壊された日だっ!!」


「あれれれ~?二股掛けていたのは、誰だったっけ~?」


「うわわわ!二股!?大胆!!」


 ワクワクといった感じで、側瀬は、目をキラキラさせている。


「違う!!俺は、こいつに嵌められただけなんだぁぁぁぁ!!!」


 石垣の絶叫が、響き渡る。





「・・・ブリーフィングを、終了します・・・」


 そう言って、氷室はコッソリと、修羅場と化した作戦室を抜け出した。


(・・・人選・・・間違えた・・・)


「ひ~む~ろさん」


「ひゃあぁぁぁ!桐生さん!」


 作戦室の外には、桐生がしっかりと待ち伏せていた。


「・・・まあ、こうなるだろうとは、予想はしていたけどね・・・」


「・・・面目無い」


「気分転換には、良しと、しときましょう。あんなだけれど、アイちゃんは優秀よ」


「・・・だと、いいですが・・・」





 一抹の不安を残しつつ、強襲作戦は実行される。

 ハワイ会戦 第15章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は12月9日を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[一言]  更新お疲れ様です。  氷室さんと桐生さん、レイモンド氏とカズマ君、石垣君と女性陣…緊迫した戦場中での和み要素の三連打。  時々和み要素があるとミリオタでもない私のような読者は気分的に助かり…
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