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ハワイ会戦 第11章 連合国陸軍強襲上陸

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。

 オアフ島東海岸。


「まもなく、夜明けだな・・・」


 オアフ島東海岸に配備されているのは、ハワイ連邦共和国陸軍オアフ島軍管区第1歩兵師団第1歩兵旅団第1歩兵大隊である。


 新世界連合の認可の下、大日本帝国の統治下で、独立を果たしたハワイ連邦共和国は、ダグラス・マッカーサー中将(ニューワールド連合軍)を総司令官として、陸軍を創設した。


 旧ハワイ州軍と、これまでの戦闘で捕虜となったアメリカ軍将兵たちの中で、マッカーサーに従う将兵たちで、編成されている。


「そうだな・・・」


 塹壕に身を潜めている兵士が、塹壕から身を乗り出し、背伸びをした。


「海上では、海空の激戦が始まっているのに、ここは平和だな・・・」


「平和で、いいさ・・・」


 兵士は、肩にかけたM16を、持ち直した。


「ここが戦場になるという事は、古巣と戦う事になる」


「そうだったな・・・」


 兵士の表情が、曇った。


「確かに覚悟はしていたさ。だが・・・いざ、そういう現実に直面すると、戸惑いはあるな・・・」


 彼もM16を、持ち直した。


 いくら、覚悟を決めたとしても、かつての同胞と戦火を交えるという事に、躊躇いを感じ無い兵士たちは、いないだろう。


「戦いは、海上戦だけで終わってほしいな・・・」


「そうだな・・・」


「俺たちは、反逆者だな・・・」


「アメリカでは、そうなるな・・・だが、アメリカの建国者たちも、イギリスから反逆者に認定されている。あまり変らないさ。あの時も建国者たちは、試練を乗り越えたのだ。俺たちにも出来る!」


「そうかもな」


 兵士は、胸のポケットから煙草の箱を取り出した。


「警戒配置中だぞ!」


「このぐらいは、構わないさ」


 煙草の箱から、煙草を1本取り出した。


「お前も吸うか?」


 彼は煙草の箱を、差し出す。


「貰おう」


 彼も箱から1本煙草を、取り出した。


 兵士は煙草を咥えて、マッチで火をつける。


「ふぅ~・・・」


 彼は煙草の煙を、肺まで吸い込み、吐き出す。


「勤務中の一服は、違うな・・・」


「ああ、落ち着く・・・」


 同僚の兵士も、うなずく。


 警戒配置だけでは無く、古巣と戦うかも知れないという状況は、任務に着く兵士たちに、想像以上の精神的苦痛を強いていた。


「一服中か?」


 突然の声に、兵士たちは驚いた。


「軍曹!?」


 声をかけてきたのは、小隊軍曹だった。


「ああ、そのままでいい」


 小隊軍曹は、胸のポケットから煙草の箱を取り出した。


「俺も吸っていいか?」


「どうぞ」


 小隊軍曹は、煙草の箱から煙草を1本取り出した。


 煙草を咥えると、火をつける。


「お前たちは知らないだろうが、海上では戦艦同士の戦いが、あったそうだ・・・」


「戦艦同士のですか?」


「ああ、そうだ。[ヤマト]級戦艦と、それを上回るアメリカ海軍の[モンタナ]級戦艦が撃ち合いをしたらしい・・・」


「結果は、どうなったのですか?」


 兵士が興味津々といった顔で、小隊軍曹に質問する。


「引き分けだったらしい。大日本帝国海軍は、次期作戦のために、ミッドウェー諸島とハワイ諸島の中間海域まで後退したそうだ」


「それじゃあ、今、この島は無防備じゃ無いですか!?」


「確かにそうだな。だが、それは上も把握している事だ。上には上の考えがあるのだろう」


 小隊軍曹は、そう言うと口に咥えた煙草を地面に投げ、足で踏みつけた。


「じゃあ、しっかり警戒を怠るなよ」


 小隊軍曹はそう言って、彼らに背を向けた。


それを見送って、2人は顔を見合わせる。


「どうやら俺たちが、地上戦をする可能性が、出てきたようだな・・・」


「そのようだな・・・」





[フレッチャー]級駆逐艦[ラ・ヴァレット]は、オアフ島東海岸に接近していた。


「いよいよ俺たちの出番だな!」


[ラ・ヴァレット]の艦橋見張員である水兵が、双眼鏡を覗きながら、つぶやいた。


「パナマのお返しだ。俺たちが、報復する時が来た!」


 同じく艦橋見張員である水兵が、答えた。


 パナマのお返しとは、彼らがスペース・アグレッサー軍と呼称する、ゴースト・フリートの潜水艦から発射された、謎のロケット弾によって、パナマ運河ミラ・フローレス閘門が、破壊された事を指している。


[ラ・ヴァレット]の艦首及び艦尾に搭載されている38口径5インチ単装砲が、オアフ島東海岸に向く。


「砲撃時間だ」


 水兵の1人が時計を確認しながら、つぶやいた。


[ラ・ヴァレット]の単装砲が、吼える。


[ラ・ヴァレット]だけでは無い。


 他の駆逐艦の単装砲も、一斉に吼える。


 発射された砲弾は、海岸線に次々命中し、炸裂する。


「初弾命中!!」


 見張員が叫ぶ。


 艦砲射撃を実施しているのは、駆逐艦だけでは無い。


[サウスダコタ]級戦艦や[アイオワ]級戦艦等も艦砲射撃を実施している。


 猛烈な砲撃により、海岸線は爆煙に包まれた。


「これだけの砲撃だ。スペース・アグレッサー軍も、大日本帝国軍も、ただではすまないだろう」


「そうだといいな・・・」


 水兵の楽観的言葉に、同僚は空を警戒した。


「どうした?」


「いや、スペース・アグレッサー軍航空軍のジェット攻撃機が、来襲しないかなって・・・」


「お前は心配性だな。大丈夫だ。奴らは来ない。今頃、ドイツ空軍のジェット戦闘機と戦っている最中だ」


 彼の言う通り、オアフ島上陸作戦は、東海岸だけでは無い。


 クリスマス島等から離陸した連合軍空軍の戦闘機部隊が、オアフ島の航空戦力と戦っている。


「そうかも知れんが、あの時のように雲からスペース・アグレッサー軍航空軍の哨戒機が現れたらと思うと・・・」


「確かに、あれには驚いたな・・・」


 彼らが言っているのは、ハワイ奪還作戦が開始される前、艦隊がオアフ島に向けて航行中の時にスペース・アグレッサー軍航空軍の哨戒機を目視した時の事だ。


 大型機であるのに恐るべき速さで接近し、艦隊を目視した後に、早々に離脱した。


 あの機影は、中々頭から離れる事は無かった。


 その時、艦橋から艦長が姿を現した。


「艦長?」


 水兵の1人が、声をかける。


 艦長は沈んだ表情で、爆煙に包まれたオアフ島東海岸を眺めていた。


「艦長?」


 もう一度、声をかけると水兵に気付いた。


「どうしましたか?何か気になる事でも?」


 同僚が、声をかける。


「まあ、少しな・・・」


 艦長は、沈んだ口調で答える。


「南北戦争の時の、アメリカ合衆国軍に所属していた将校たちも、同じ気持ちだったのかなと思っただけだ・・・」


「「?」」


 2人は、首を傾げた。


 艦長が言いたいのは、こういう事だ。


 南北戦争時代、アメリカ合衆国は、2つの思想がぶつかり合った。


 アメリカ合衆国と、アメリカ連合国が対立し、戦争になった。


 この時のアメリカ人も、幕末の日本人と同様、それぞれが信じる思想のために戦った。


 どちらが正しく、間違っているか等、関係は無かった。


 単に、それぞれが信じる理想を実現するために、戦ったのである。


 ハワイ準州は、現段階では大日本帝国の統治下ではあるが、アメリカにも大日本帝国にも属さない形で、独立をしようとしている。


 ハワイ人となった元アメリカ人たちも、信じる理想のために戦っている。


 艦長は、そう思うのであった。





 水上艦による艦砲射撃が終わると、いよいよ上陸部隊の行動開始である。


 輸送船から、次々と上陸部隊の兵士が、上陸舟艇に乗り込む。


 M1918A3を携行した、初実戦を迎える若い兵士たちも、上陸舟艇に乗り込む。


 その中には、手を震わせながらM1918A3を持つ、若い海兵がいた。


 彼は、海兵隊に入隊し、訓練を終えたばかりの若い海兵であり、もちろん、これが初の実戦である。


「怖いか?」


 そんな海兵に、1人の海兵が肩を叩いて声をかけてきた。


 彼は、大日本帝国軍やスペース・アグレッサー軍と、戦った経験のある海兵である。


 フィリピンがアメリカの統治下だった時、フィリピンに駐留する海兵隊員だった。


 大日本帝国陸海軍とスペース・アグレッサー軍が、フィリピンに上陸した時、彼は海兵隊員として恥じない奮戦をした。


 最後まで陣地を守るために、M1A1を離さず、部下たちと共に奮戦した。


 最終的に彼が守る陣地は、砲兵隊の砲撃を受け、吹き飛ばされた。


 その後、スペース・アグレッサー軍地上軍の捕虜となり、数ヶ月間の間、捕虜収容所で生活した。


 中立国を通じて、捕虜返還が行なわれ、故国の土を踏んだ。


 故国に帰国し、故郷で家族に会った後、連邦政府がハワイ奪還を呼びかけていたため、彼は躊躇わずに再びの海兵隊の軍服を着る事にした。


 彼は、この小隊の中で唯一、大日本帝国軍やスペース・アグレッサー軍と戦った経験のある海兵であるから小隊長も彼には敬意を払う。


 他の小隊に所属する他の海兵たちも、彼には敬意を払う。


「サー!怖いであります!!」


 若い海兵は、恥じる事無く答えた。


「そうか!俺も怖い!」


「え?」


 意外な言葉に、若い海兵が驚いた顔をする。


「人間にとって怖いものが無いというのは、一番危険な事だ。そういう奴は、すぐに戦死する。だが、怖いと感じ、それを人前で恥じず言える事は、とても大切な事だ。お前は生き残れる!!」


 彼は、若い海兵の肩を叩いた。


「出撃する!!」


 上陸舟艇を操縦する、海軍の下士官が叫ぶ。


 上陸舟艇は、ゆっくりと輸送船から離れ、オアフ島東海岸に向けて、海上を航走した。


 そんなに距離があるわけでも無いのに、オアフ島東海岸までの距離が長く感じられた。


 この間、海兵たちはガムを噛むか、神に祈りの言葉を捧げたりしていた。


「まもなく!上陸だ!!」


 海軍の下士官が、叫ぶ。


「上陸後は、固まって行動するな!そこを狙われる!バラバラに行動するのだ!!」


 小隊軍曹が、部下たちに注意をする。


 上陸舟艇が、砂浜に乗り上げ、前部ランプが開放された。


 その時、突然、銃火を受けた。


 前の列にいた海兵たちが、銃弾を真面に食らい次々と絶命する。


 若い海兵の前にいた海兵が、銃撃を受けて絶命し、倒れてきた。


「うわぁ!?」


 若い海兵は、倒れた海兵の下敷きになった。


「飛び込め!!!」


 誰かが、叫ぶ。


 海兵たちは、前部ランプからでは無く、左右に身を乗り出して、海に飛び込んだ。


 そのまま砂浜に、足をつけた。


 戦車揚陸艦も砂浜に乗り上げ、M4[シャーマン]やM26[パーシング]が上陸する。


「戦車を盾にして、前進しろ!!!」


 海兵たちは、M4[シャーマン]やM26[パーシング]を盾にして、前進した。


 だが、前進するM4[シャーマン]が、敵の対戦車火器によって、破壊された。


 M4[シャーマン]が爆発炎上し、周囲にいた海兵たちを巻き込む。





 連合国アメリカ合衆国海軍の戦艦部隊からの艦砲射撃を受けていたオアフ島東海岸に配備されていたハワイ連邦共和国陸軍オアフ島軍管区第1歩兵師団第1歩兵旅団第1歩兵大隊第1対戦車中隊は、ひたすら耐えていた。


「くそ!バカスカ撃ちやがって!!」


 M5の先任指揮官が、叫んだ。


「元は、同じアメリカ人だというのに、手加減なしか!?」


 誰かが、叫ぶ。


「分隊長!!」


 双眼鏡を構えていた兵士が、叫ぶ。


「どうした!?」


「敵の上陸部隊が前進中です!まもなく、上陸されます!!」


 兵士の報告を聞くと、分隊長は双眼鏡を覗いた。


 海上は、戦車揚陸艦や上陸舟艇で埋まっていた。


「徹甲弾装填!!」


「装填!!」


 分隊長の指示に、装填手がすばやく徹甲弾を装填する。


「訓練通りにやれ!!」


 分隊長が叫ぶと、砲手がすばやく照準を合わせる。


 ハワイ連邦共和国陸軍の兵器は、小火器や一部の重火器は、ニューワールド連合軍から供与された、旧式の自動小銃や汎用機関銃であるが、ほとんどの兵器は、ハワイ攻略、フィリピン攻略等で鹵獲した兵器が、主力である。


 後は、アメリカ軍の攻勢を撃退した時に、鹵獲した兵器も使っている。


 彼らが使っているM5も、ハワイ陥落時に鹵獲した、76.2ミリ対戦車砲である。


「[シャーマン]戦車が上陸!」


「ファイア!!」


 分隊長の指示で、M5の砲口が吼える。


 発射された76.2ミリ徹甲弾が、上陸したM4[シャーマン]の正面装甲に着弾する。


 距離にもよるが、96ミリの装甲板を貫徹する事ができる同砲は、M4[シャーマン]の正面装甲を貫徹した。


「よし!やったぁ!!」


 上陸舟艇から歩兵部隊が上陸を開始し、第1歩兵大隊ライフル部隊や機関銃部隊と、激戦を繰り広げた。


 M16アサルトライフルや、M60汎用機関銃、M1919重機関銃等が火を噴き、上陸した敵歩兵部隊を次々と絶命させていく。


 東海岸に配備されているのは、歩兵部隊だけでは無い。


 戦車壕も存在する。


 第1歩兵旅団に配備されているのは、M3[スチュアート]である。


 M4[シャーマン]は中戦車、M26[パーシング]は重戦車であるのに対し、M3[スチュアート]は軽戦車である。


 M3が武装する主砲は37ミリ砲であるため、上陸したM4[シャーマン]やM26[パーシング]にはまったく効かないが、歩兵戦ではそれなりに活躍した。


 発射された榴弾が、敵歩兵部隊を吹き飛ばす。


 しかし、数に勝る連合国アメリカ海兵隊は、物量戦にものを言わせて前進を続けた。


 そして、枢軸国ドイツ第3帝国国防軍陸軍も、強襲上陸を開始した。


「ドイツ軍が、上陸しました!!」


 無線兵が、大隊本部に連絡する。


 歩兵陣地まで接近したM4火炎放射戦車が、塹壕に向けて火炎放射を行なった。


 猛烈な火炎放射により、歩兵陣地にいた兵士たちは、全身を燃やされながら、塹壕から出て来た。


 塹壕から出て来たところを見計らって、連合国アメリカ海兵隊の海兵たちが、M1918A3で一斉射撃を行なう。


 ある程度の被害が出たところで、第1歩兵師団司令部は、第1歩兵旅団司令部に撤退命令を出した。


 撤退の援護として予備部隊として待機させていた第3歩兵旅団を投入し、撤退の援護を行なった。


 連合国アメリカ軍も枢軸国ドイツ軍も追撃はせず、橋頭堡を確保すると、物資及び兵員の揚陸に全力を上げた。


 スペース・アグレッサー軍地上軍との戦闘等に備えて、兵力を確保するのが狙いだろう・・・





「・・・うん?」


 橋頭保陣地の歩哨に立ち、周囲に警戒の目を光らせていた兵士が、陣地から少し離れた所にある茂みで、何かが動いたように感じた。


「おい!!」


 近くにいる同僚数人に声を掛け、M1918A3を構えて、ゆっくりと茂みに近づく。


「・・・・・・」


 何も無い・・・


「すまない。小動物か何かだったらしい」


 茂みに銃剣を突き刺したり、かき分けたりしたが、何もいないと確認し、同僚に振り返って告げた。


 兵士の声を聞いて、同僚たちは、それぞれの持ち場に戻っていった。


「・・・戦闘の緊張感が、まだ抜けていないのかもしれないな・・・」


 兵士は、つぶやいて気分を落ち着かせるために、茂みに背を向けて、ポケットから煙草を取り出し、火を付ける。


「!!?・・・!!!・・・!!?」


 突然、茂みの影から伸びてきた黒い腕に絡めとられ、声を出す暇も無く、茂みの中に引きずり込まれた。


 ほんの少し茂みが揺れ・・・静かになった・・・





「・・・こちら、紅葉。酒呑童子オクレ・・・」


「こちら、酒呑童子。感度良好」


「敵、橋頭保陣地内に潜入成功」


「了解。計画を開始せよ」


「了解」


 茂みの奥には、黒い戦闘服に黒の防弾チョッキ、同じ色の目出し帽を被った漆黒の一群が、影のように潜んでいた。


「散開!」





 漆黒の一群は、まだ明るい時刻であるにも関わらず、昼間の闇に溶け込むように姿を消した。

 ハワイ会戦 第11章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

 次回の投稿は11月11日を予定しています。

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