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ハワイ会戦 第2章 激戦!第1航空艦隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 ハワイ諸島オアフ島沖。


 大日本帝国海軍聯合艦隊空母機動部隊第1航空艦隊は、艦隊速度18ノットで航行していた。


 第1航空艦隊独立旗艦である[神武]型航空母艦1番艦[神武]の戦闘指揮所に、菊水総隊司令部から、菊水総隊海上自衛隊第6航空群第6航空隊第61飛行隊所属のP-1哨戒機が、米英独伊連合軍連合海軍空母機動部隊を発見した事が、報告された。


「司令長官」


 参謀長が、声をかけた。


 第1航空艦隊司令長官である山口(やまぐち)多聞(たもん)中将は、戦闘指揮所の司令長官席に座ったまま、参謀長の話を聞いた。


「菊水総隊海軍からの情報では、哨戒機が発見した空母機動部隊は、正規空母2隻、軽空母2隻です」


「前哨部隊か・・・」


 山口は、小さくつぶやいた。


「彼らから持たされた情報では、正規空母10隻以上、軽空母10隻以上です。長官のおっしゃる通り、前哨部隊でしょう」


 参謀長の言葉に、山口が、うなずく。


「恐らく、その後方に空母機動部隊の本隊が、展開している」


「どうしますか?」


「北太平洋に展開していた第4航空艦隊は、敵機動部隊の恐るべき対空兵器と、迎撃戦闘機による攻撃で、9割以上の損害を出した。我が航空艦隊が攻撃隊を出撃させれば、同じ結果になるだろうか?」


 山口は、参謀長に顔を向けた。


「第1航空艦隊は開戦以来、大規模な戦闘を経験していませんが、開戦の段階で、1000時間以上の飛行時間を有する搭乗員が揃っています。さらに、第2航空艦隊に所属していた搭乗員たちも、我が艦隊に大勢転属されて来ています。第2航空艦隊は、開戦以来、南太平洋及び東南アジア方面での実戦を、数多く経験しています」


 参謀長が、答える。


「歴戦の搭乗員たちが揃っています。それに、こちらも備えをしている以上、第4航空艦隊と同じ結果になる可能性は、低いと思われます」


 参謀長の言葉に、山口は、司令長官席を立ち上がった。


 第1航空艦隊前司令長官であった南雲(なぐも)忠一(ちゅういち)大将(当時、中将)から譲り受けた空母機動部隊を、みすみす失う訳にはいかない。


 山口は、自身が司令長官に就任してから、史実のような悲惨な結果になる事を防ぐために、菊水総隊海上自衛隊第1護衛隊群と、合同演習を何度も実施した。


 撃沈判定は、今だに出せていないが、損害を与えるまでに、搭乗員たちは成長していた。


 参謀長から、その心配をする必要が無いと伝えられ、彼は決断した。


「第1次攻撃隊を、ただちに出撃させよ!!」


 山口は、その指示を出した後、幕僚たち見回した。


「第4航空艦隊攻撃隊は、敵機動部隊の対空兵器と迎撃戦闘機の迎撃能力で、撃退された。差し違えてでも、我々だけで敵機動部隊を仕留める!そうしなければ、帝国海軍は、末代まで舐められるぞ!」


「「「はい!!」」」


 山口の指示が、第1航空艦隊第1航空戦隊と、第5航空戦隊に伝えられた。


「第1航空戦隊[赤城]より、返信!第1次攻撃隊出撃準備完了!!」


「第5航空戦隊[飛龍]より、返信!第1次攻撃隊出撃準備完了!!」


 通信兵からの報告を受け、山口は通信兵たちに、振り返った。


「[赤城]、[飛龍]に通信、第1次攻撃隊は、ただちに出撃、いかなる犠牲を払おうとも、前哨部隊である敵空母を、何としても撃沈せよ!!」


 通信兵たちは復唱し、第1航空戦隊と第5航空戦隊に伝達した。


「長官。第1次攻撃隊を、ただちに発艦させます」


 空母[神武]艦長の会津(あいづ)俊樹(としき)大佐が、告げた。


「うむ」


 山口は、うなずく。


「第1次攻撃隊発艦準備!!」


 会津が、艦内放送をする。


 搭乗員待機室で、待機している第1次攻撃隊の搭乗員たちが、飛行甲板に飛び出す。





 第1航空艦隊独立旗艦空母[神武]の飛行甲板で、発動機を回転させた零式艦上戦闘機[海鷹]型に、神武飛行隊戦闘機隊隊長である斧田(おのだ)敬一(けいいち)少佐が、乗り込んだ。


 斧田は、第2航空艦隊第2航空戦隊空母[瑞鶴]飛行隊の戦闘機隊隊長であったが、先月に、第1航空艦隊独立旗艦空母[神武]の飛行隊戦闘機隊隊長に、任じられた。


 斧田は、操縦席に乗り込むと、操縦席に家族の写真を貼り付けた。


 写真には妻だけでは無く、産まれたばかりの息子の姿もある。


 海軍兵学校を卒業して、すぐに結婚し、妻と2人で結婚生活を送っていた。


 第2航空艦隊から第1航空艦隊に配属される前に、休暇をもらい、妻のいる実家に顔を出した。


 すると、自分が東南アジア方面での戦いに赴いている時に、産まれた息子が自分の帰りを待っていた。


 どんな状況であろうと、新しい命は、常に産まれてくる。


 それは、絶望しきった世の中に、明るい希望をもたらす。


 幕末の時代、会津藩に仕えていた祖父から、耳にタコができるぐらいに聞かされた話である。


 父が産まれたのは、会津戦争末期の頃だった。


「必ず、この戦いで生き残って、お前たちの所へ帰る!」


 斧田は、写真に写る妻と息子に、話しかけた。


 それは、強い決意のようなものだった。


「いや・・・それだけでは、いけないな・・・俺に従う部下たちも、必ず元気なままの姿で、家族の元に帰す!」


 斧田は、目を閉じて、自分自身に告げた。


 自分に従う部下たちにも、故郷に帰れば、待っている家族がいるだろう。


 戦場に身を置いている以上、全員を無事に故郷に帰す事は、叶わない。


 何故なら、敵も同じ人間であるからだ。


 敵にも家族や恋人は、いるだろう。


 お互いが、家族や恋人の元に帰りたいという信念で戦うのだ・・・


 生き残るのは、より強い精神力を持った方だろう。


 斧田は、計器類に、素早く目を走らせる。


 機体状況に不具合が無いか、飛行前の確認をする。


「大尉。機体は、万全です!!」


 整備員が、叫ぶ。


「そのようだな」


 斧田が、答える。


 飛行長が、発艦を指示する。


 斧田は、艦橋を見上げる。


 艦橋からは、第1航空艦隊司令長官である山口多聞中将が、出撃する飛行隊を見下ろしている。


「行って参ります!!」


 聞こえるはずもないが、斧田は、山口に向かって叫んだ。


 その後、挙手の敬礼をする。


 艦橋にいる山口から、答礼が返る。


 斧田は手を下ろし、風防ガラスを閉める。


 その後、[海鷹]を、滑走させる。


 そのまま、空母[神武]の飛行甲板を滑走し、彼が操縦する[海鷹]は、空に舞う。


 斧田は、後ろを振り返る。


 空母[神武]から、次々と第1次攻撃隊に参加する艦戦隊、艦爆隊、艦攻隊が、発艦している。


 第1航空戦隊空母[赤城]、[加賀]、第5航空戦隊[飛龍]、[蒼龍]からも、攻撃隊が次々と空に舞い上がる。


 斧田は、第1次攻撃隊隊長である中佐の話を、思い出した。


「敵機動部隊は、我が海軍と同じく、恐るべき対空兵器と電探を装備している。これから出撃する攻撃隊のうち、どのくらいが敵空母に打撃を与えられるかはわからないが、用心するように、第4航空艦隊攻撃隊は、全力出撃したが、高性能の迎撃戦闘機と対空兵器の前に、かなりの損害を出した。決して、敵を過小評価してはならない!」


 操縦桿を握る手に、力が入る。


 斧田は、再び出撃する攻撃隊を、振り返った。


「お前たち、必ず生き残れ!無駄に命を散らす事は、許さん!」


 斧田は、部下たちに小さく告げた。





 第1航空艦隊から出撃した第1次攻撃隊は、編隊を組んで、敵機動部隊へと向かった。


「そろそろ。敵機動部隊の、電探探知圏内に入る・・・」


 斧田がつぶやくと、第1次攻撃隊隊長である中佐から、通信が入る。


「まもなく、敵機動部隊の電探探知圏内に入る!全機、敵機の迎撃がある。心して、行け!!」


 隊長の通信は、全機に向けられたものであるため、第1次攻撃隊の搭乗員全員の耳に入った。


「もう一度、告げるが・・・」


 斧田は、通信機の通話ボタン押して、部下たちと交信した。


「軍令部からの通達で、敵迎撃戦闘機は、F8F[ベアキャット]だ。これまでの戦闘機と異なり、運動性能、旋回性能、格闘性能は格段に違う。大きさは、零戦よりも小さいそうだが、高性能発動機を搭載しているため、その分出力が、かなり高い。対零戦用に開発された、迎撃戦闘機だ。用心しろ!」


 斧田にとっては、初めて指揮する者ばかりである。


 第2航空艦隊の搭乗員たちとは違い、第1航空艦隊の搭乗員たちは、開戦以来本格的な空母対空母の戦闘を経験するのは、これが初めてである。


 飛行時間は、第2航空艦隊の搭乗員たちを上回るが、実戦経験は少ない。


 用心するに、こした事は無い。


「敵機だ!!」


 先導を飛行する[海鷹]の搭乗員から、通信が入る。


 敵空母機動部隊から出撃した迎撃戦闘機F8Fは、正面から現れた。


 双方が交差する前に、互いに機銃掃射が行なわれる。


 斧田も敵機と交差する前に、照準器である十字線に敵機を捉えて、二〇粍機関砲の発射ボタンを押し込む。


 主翼に搭載されている二〇粍機関砲が、火を噴く。


 双方の曳光弾が、交錯する。


 斧田機から発射された二〇粍機関砲弾は、照準器に捕らえたF8Fの操縦席に被弾した。


「やった!」


 F8Fは、操縦席付近から黒煙を出しながら、高度を下げていく。


 だが、1機を撃墜したからと言って、喜んでいる場合では無い。


 すぐに別のF8Fが、襲いかかってくる。


「くっ!!」


 間一髪といったところで、斧田は、F8Fの機銃掃射をかわした。


 しかし、後ろをとられたままである。


「さすがに、腕がある」


 なかなか引き離せない敵機の操縦士を、斧田は、そう評価した。


 斧田は、[海鷹]の速度を上げて振り切ろうとするが、F8Fの速度が速かった。


「ならば!!」


 斧田は咄嗟に[海鷹]の速度を落とした。


 これにより、速度が速いF8Fが前に出る。


「お前の後ろを、とったぞ!!」


 彼は、すかさず照準器の十字線に、敵機を捉えようとする。


「とった!!」


 照準器の十字線に、F8Fの後尾を捕捉した瞬間、二〇粍機関砲の発射ボタンを押す。


 主翼から、二〇粍機関砲が火を噴く。


 二〇粍機関砲弾が後尾に被弾し、片方の尾翼を破壊する。


 そのまま、二〇粍機関砲の発射ボタンを押し続け、ついにはF8Fが爆発炎上した。


「撃墜!」


 斧田は、周囲を見回す。


 周囲では、F8Fと[海鷹]の空中戦が行なわれていた。


「よし!」


 斧田は、次の目標を定めると、増速した。


 彼が定めた目標は、味方の[海鷹]の後ろをとり、しつこいぐらい追跡しているF8Fである。


「聞こえるか!」


 斧田は、追跡を受けている[海鷹]の搭乗員と、交信する。


「俺が合図したら、右に旋回しろ!」


 斧田は、操縦桿を僅かばかり、右に傾けながら引く。


「今だ!!」


 合図を受けて、追跡を受けていた[海鷹]が、右に旋回する。


 それを追跡して、F8Fも右に旋回する。


「これで終わりだ!!」


 斧田は、二〇粍機関砲の発射ボタンを押す。


 二〇粍機関砲弾が撃ち出され、F8Fが火を噴く。





 第1航空艦隊第1次攻撃隊に所属する艦攻隊の[流星]は、敵機動部隊の防空圏内に、入った。


 防空圏内に入った途端、猛烈な対空放火を受けた。


「何という対空放火だ・・・」


 魚雷を搭載した[流星]の操縦士が、つぶやく。


「機銃手!しっかり掴まっていろよ!」


「はい!」


 操縦士が、機銃手に警告した。


 その後、彼は増速して、敵機動部隊の空母に機首を向けた。


「あいつに魚雷を、ぶち込む!!」


 操縦手が、叫ぶ。


 彼が標的にしたのは、アメリカ海軍の正規空母である[エセックス]級航空母艦である。


 操縦席に、アメリカ海軍の空母の艦影を撮った写真が、貼り付けられている。


 写真は、2枚貼り付けられており、それぞれ[エセックス]級航空母艦と、[インディペンデス]級航空母艦の艦影を撮った写真である。


 彼の搭乗する[流星]は、他の[流星]と共に機首を、[エセックス]級航空母艦に向けた。


「他の連中も、大きい獲物を狙うか・・・」


 操縦手が左右に顔を向けて、つぶやく。


 考える事は、同じである。


 しかし、大きい獲物の守りは堅かった。


 防空艦から、猛烈な対空放火を受けた。


「機銃手!失神するなよ!!お前が失神すれば、後方から迫る敵機に対処できない!!頼むぞ!!」


「はい!!」


 機銃手は、大きな声で返事をする。


 猛烈な対空放火で、1機の[流星]が撃墜された。


「2番機が、やられた!」


 操縦手の通信機に、悲鳴が響く。


「あ!!敵駆逐艦に、魚雷が命中しました!!」


 機銃手が、叫ぶ。


 操縦手は一瞬だけ、振り返る。


 確かに、敵駆逐艦が爆発炎上している。


「よし!!アイツに続くぞ!!俺たちの手で、必ず、敵空母を仕留めるぞ!!」


 操縦手は操縦桿を操り、[流星]を海面スレスレに飛行させた。


 1000時間を超える飛行時間を有するために、この程度の飛行は朝飯前だ。


「あと少し!!」


 操縦手は、魚雷投下のタイミングを計る。


「できる限り近付く!!気を引き締めろ!!」


「はい!」


 操縦手は操縦桿を操り、機をジグザグに飛行させる。


[エセックス]級空母から対空放火を受ける。


 この対空放火により、同じく魚雷投下の高度を飛行する僚機の[流星]が被弾し、海面に激突する。


「くそぉぉぉ!!!」


 操縦手が、叫び、目前に迫りつつある空母を睨みつける。

 

「よし!」


 操縦手が叫び、魚雷投下のボタンを押す。


[流星]から魚雷が投下される。


 投下された魚雷は、そのまま直進し、[エセックス]級空母に命中した。


 水柱が上がった。


「やった!!」


 操縦手は高度を上げて、[エセックス]級空母の真上を飛行した。


 戦果を確認するために操縦手、ある程度の高度で、機を旋回させた。


「・・・さすがに、守りは堅いな・・・魚雷1本ぐらいじゃ、ビクともしない・・・」


 操縦手は、魚雷が命中した[エセックス]級空母を見下ろしながら、つぶやいた。


 見た感じでは、魚雷1本程度の直撃では、何のダメージも受けていないように見える。


 魚雷や爆弾を搭載している他の[流星]が、自分たちも続けとばかりに突撃を開始するが、防空艦の対空放火と[エセックス]級空母の対空放火で、次々と撃墜される。


「これ以上、被弾しないつもりか・・・」


 操縦手は、その光景を眺めながら、つぶやいた。


 だが、味方も負けてはいない。


 また、1隻の駆逐艦が火柱を上げ、沈んでいく。


 軽巡の対空放火をかいくぐった[流星]から投下された魚雷が、軽巡の中央部で水柱を上げる。





激しい攻防戦が、続く。

 ハワイ会戦 第2章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 次回の投稿は8月26日を予定しています。

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