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間章 第4章 護れない信念・・・その果てにあるもの

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 パットンは、最前線部隊が展開する地域に、軍団司令部を置いた。


「将軍!!」


 パットンは、塹壕から顔だけ出した状態で、伝令兵からの報告を聞いた。


「偵察隊が、アトランティック・スペース・アグレッサー軍地上軍を発見!戦車1個中隊、歩兵1個大隊クラスが前進中!」


 パットンは、伝令兵からの報告を聞きながら双眼鏡を覗いた。


 しばらく双眼鏡を覗いていると、報告にあったアトランティック・スペース・アグレッサー軍地上部隊を発見した。


「敵の航空戦力は?」


「確認できません!」


 副官からの報告に、パットンは時計を見た。


「どうやら、陽動作戦は、成功したようだな・・・」


 北アフリカ戦線で、イタリア王国陸軍は、快速戦車と落下傘歩兵による空挺降下で、イギリス軍の後方攪乱に成功した。


 この後方攪乱により、イギリス軍の前線部隊は指揮系統が完全に麻痺し、後方に展開している部隊の援護か、その場に止まり、いずれ現われるだろう敵本隊と戦うか、どちらか二択を選ばなければならなかった。


 前線司令部が混乱している機を逃さず、ドイツ第3帝国国防軍陸軍アフリカ軍団と、イタリア王国陸軍アフリカ軍が攻めた。


 結果は、イギリス軍の惨敗であった。


 パットンは、この戦法を高く評価し、研究し、それにアレンジを加えた状態で、アトランティック・スペース・アグレッサー軍の後方を脅かす作戦を計画し、実行した。


「将軍!敵は、前進を続けています!」


「まだ・・・射程外だ」


 パットンは慎重に、アトランティック・スペース・アグレッサー軍との距離を測った。


「将軍!射程距離に、敵が入りました!」


「まだだ!!まだ、攻撃するな!十分に引きつける」


 彼の部下たちは、攻撃命令に備えて、野戦電話の受話器を耳に押し付けていた。


「ここまで来れば、いいだろう。攻撃開始!!」


 パットンの号令を受け、彼の部下たちが野戦電話の受話器に叫んだ。


「「「攻撃開始!!!」」」


 号令と共に、一斉に砲兵部隊の野砲が吼えた。


 撃ち出された砲弾は雨のように、アトランティック・スペース・アグレッサー軍地上部隊に降り注いだ。


 地面が炸裂し、歩兵を吹き飛ばす。


「どうやら、ソ連で確認された光学兵器は、存在しないようだな・・・」


 パットンは、砲兵部隊の一斉射撃の戦果を確認しながら、つぶやいた。


 野砲による砲撃は、さらに続いた。


 野砲の砲撃に続き、対戦車砲も、火を噴いた。


 パットン率いる第1機甲軍団指揮下に置かれた、ドイツ第3帝国国防軍陸軍部隊の、PaK43/41が、火を噴いた。


 8.8センチ対戦車砲弾を撃ち出す。


 対スペース・アグレッサー軍戦車に対応した強化弾であるため、その威力は高い。


 PaK43/41の一斉砲撃により、前衛に展開していたスペース・アグレッサー軍の戦車部隊は、キャタピラーを破壊された。


「初弾命中!!前衛の戦車部隊の動きが停まります!」


 幕僚の報告で、パットンは、緒戦の戦果を自らの目で確認した。


「悪くない結果だ。このまま、砲兵部隊と対戦車砲部隊の火力を集中させろ!!」


 しかし、敵もやられるだけでは無かった。


「将軍!!敵の回転翼機が、現われました!!」


「やはり!航空戦力は、残していたか・・・」


 パットンは、双眼鏡を下ろした。


「数は?」


「2機だけです!!」


「それだけか?」


「サー!間違いありません!!」


 パットンが考案した、後方での陽動が、効いているようだ。


「わかった!高射砲部隊に連絡しろ!!」





 野砲と対戦車砲の砲撃で混乱している、アトランティック・スペース・アグレッサー軍の事を報告されながら、ヴィットマンは、疑問を感じていた。


(今、我々と対峙しているスペース・アグレッサー軍は、本当にモスクワで戦ったスペース・アグレッサー軍なのか・・・?)


 モスクワ攻防戦を経験したヴィットマンは、アトランティック・スペース・アグレッサー軍の恐ろしさを理解している。


(スペース・アグレッサー軍といっても、部隊によっては、能力に、ばらつきがあるのか・・・?)


 ヴィットマンが、疑問に思っていると、彼の乗るティーガーⅠの通信手が、報告した。


「小隊長!!軍団司令部から、突撃命令が出ました!!」


「了解した!」


 ヴィットマンは、車長席から立ち上がり、上半身を出した。


 通常、戦闘中に車長が身を乗り出すのは、敵のスナイパーに狙われる可能性が高くなるのだが、戦況を素早く把握するには、この方法の方がいい。


「小隊!パンツァーフォー(全車前進)!!」


 ヴィットマンに率いられた4輛のティーガーⅠが、スペース・アグレッサー軍地上部隊に向かって前進を開始した。


「敵の戦車は装甲が厚い!全速走行した状態で、敵の後方に回り込め!!」


 ヴィットマンは、モスクワ攻防戦での経験を生かし、部下たちに命じた。


 正面装甲及び側面装甲は、8.8センチ徹甲弾では貫徹するのは難しい。


 しかし、後部の装甲は、それ程厚くないため、後ろに回り込み徹甲弾を撃ち込めば、行動不能叉は撃破可能である。


「白燐弾装填!!」


 ヴィットマンは、狙いを定めると、目潰しにかかった。


「装填!!」


「Feuer(撃て)!!」


 ヴィットマンが乗る、ティーガーⅠの砲口が吼える。


 撃ち出された砲弾は、白燐弾であるため、目標に着弾すると発煙する。


 この発煙により、相手の視界を封じる事ができる。


「命中!!もう1発!!」


「装填!!」


「撃て!!」


 再び砲口が吼える。


「よし!そのまま前進!!前進!!」


「チャンスは、1回だ!!確実に仕留めよ!!」


 ヴィットマンは、砲手に叫んだ。


「了解しています!」


「徹甲弾装填!!」


「装填!!」


 装填手が、素早く徹甲弾を装填する。


「まだ・・・だぞ」


 ヴィットマンが、タイミングを図る。


「Ja!Feuer!!(よし!撃て!!)」


 ヴィットマンの号令で、ティーガーⅠの砲口が吼える。


 撃ち出された砲弾は、そのまま敵戦車の後部を直撃した。


「命中!!もう1発!!」


「装填!!」


「撃て!!」


 ヴィットマンの号令で、再び砲口が吼える。


 2発の徹甲弾をくらった戦車は、そのまま火災が発生し、動かなくなった。


 敵戦車を撃破した事を、喜んでいる場合では無い。


 ヴィットマンが乗るティーガーⅠを砲弾が、かすった。


「右方向!!敵戦車!!白燐弾を装填!!」


「装填!!」


「撃て!!」


 ティーガーⅠの砲口が、吼える。


 白燐弾の弾煙により、再び視界が白く染まる。


「この機を逃すな!このまま、側面に回り込め!!」


 ヴィットマンの指示で、操縦手が、エンジン出力を最大にして走行する。


「この距離なら、側面の装甲板を貫徹できるはずだ!!徹甲弾装填!!」


「装填!!」


「撃て!!」


 ティーガーⅠの砲口が、吼える。


 発射された徹甲弾は、そのまま敵戦車の側面に命中し、キャタピラーを破壊した。


「前方に、敵歩兵!!」


 ヴィットマンは、そう叫びながら、砲塔内に身を隠す。


 通信手が、車体機銃であるMG34の引き金を引く。


 敵歩兵は、自動小銃で応戦するが、小銃弾程度の弾丸では、ティーガーⅠの正面装甲を貫徹する事はできず、そのまま絶命する。





 第1機甲軍団戦車部隊が、側面攻撃を行なったと同時に、第442連隊戦闘団歩兵部隊を含む、歩兵部隊も側面攻撃に参加した。


「突撃ぃぃぃ!!!」


「突込めぇぇぇ!!!」


 歩兵部隊は、M1918A3やSiG44等を撃ちまくりながら、突撃する。


 敵も側面攻撃で混乱しているが、すかさず自動小銃で撃ち返してきた。


 ロウは、突撃する歩兵部隊の最前列で、M1918A3を乱射しながら、敵歩兵のベルトを掴む勢いで突撃する。


 敵兵が至近まで近づくと、M1918A3の先端に装着した銃剣を突き刺す。


 M2A1火炎放射器を携行した兵士は、至近まで迫った敵兵に対し、火炎を浴びせた。


「破壊された戦車に、敵兵が潜んでいる。火炎放射であぶり出せ!!」


「了解!」


 火炎放射兵が、破壊された戦車に向けて、火炎を放射する。


 火炎放射により、逃げ込んだ兵士たちが全身を焼かれながら、現われた。


 全身を燃やされ、のたうち回りながら現れた兵士は、展開したアメリカ兵やドイツ兵たちに、無数の銃弾を撃ち込まれて絶命した。


「装甲車が接近中!!」


 誰かの叫び声が響いた。


「M9を、撃ち込め!!」


 ロウが叫び、M9対戦車ロケット発射器を武装する兵士が構える。


「発射!!」


 60ミリ対戦車ロケット弾が発射され、現われた装甲車に直撃する。


 装甲が厚いため、撃ち込んでも効果が薄いが、足回りは別である。


 足回りが破壊された敵の装甲車は、そのまま停車した。


 ロウたちが、その装甲車に駆け上ると、ハッチを開放して、拳銃で抵抗する兵士を射殺した。


「手榴弾!」


 ロウたちが、手榴弾を装甲車の車内に投擲する。


 炸裂音と共に装甲車は、完全に無力化した。


 だが、敵装甲車を無力化したすぐ後に、その装甲車が吹っ飛んだ。


 近くにいた兵士たちが、爆風に吹き飛ばされる。


「何だ?」


 間一髪で、地面に伏せたロウが顔を上げる。


 彼の視界に、無傷の敵戦車が現われていた。


「退避しろ!!退避!!!」


 ロウは叫び、自身が率いる隊を後退させた。


 すぐさま、M26[パーシング]が急行し、生き残った敵戦車と戦闘を開始した。


 M26[パーシング]の90ミリ戦車砲が吼えるが、敵戦車の正面装甲を、貫徹する事はできなかった。


 敵戦車は、M26[パーシング]の砲撃をものともせず、撃ち返し、M26が撃破された。


「爆弾を貸せ!!」


 ロウはトーチカ等を攻撃するために用意された爆弾を、部下から受け取った。


「援護しろ!!」


 ロウの叫び声で、小銃、機関銃、対戦車ロケットという、ありとあらゆる歩兵携行火器が、火を噴いた。


 彼は、敵戦車に気づかれないように接近し、キャタピラーに向けて、爆弾を投げた。


 爆弾の炸裂と共に、キャタピラーが破壊され、敵戦車の動きが止まった。


 その隙を逃さず、生き残ったM26が、敵戦車の後ろに回り込み、徹甲弾を撃ち込む。


 徹甲弾が3発程度被弾してから、敵戦車が炎上した。


 ロウが顔を上げると、小銃を武装した敵兵士が現われた。


「くそっ!!」


 地面に置いたM1918A3を、手に取る。


 しかし、ロウが構える前に、敵兵士たちは銃撃を受け、絶命した。


 彼の部下たちが、M1918A3を撃ち込んだのだ。


「中隊長!大隊本部からの通信です!」


 無線兵が、無線機の受話器を渡す。


「大隊本部、どうぞ!」


「軍団司令部からの報告では、敵は退却しているそうだ。そのまま追撃せよ!」


「大隊本部、了解!これより、追撃する!!」


 受話器を無線兵に返すと、ロウは立ち上がって叫んだ。


「前進!!」





「将軍!敵が、後退していきます!!」


 幕僚の1人が、報告する。


「さすがは、ドイツ軍だな」


 パットンは、双眼鏡を覗きながら、つぶやいた。


「陸軍国家である、ドイツ第3帝国軍の戦車隊だ。我が陸軍の戦車隊とは、格が違う」


 パットンの指揮下に入ったドイツ第3帝国武装親衛隊と国防軍陸軍の機甲部隊は、アトランティック・スペース・アグレッサー軍地上軍機甲部隊の側面を攻撃した。


 アトランティック・スペース・アグレッサー軍地上軍の正面に立ちはだかったのは、アメリカ陸軍ヨーロッパ派遣軍第1機甲軍団戦車部隊と、それを援護する砲兵部隊であった。


 正面からの戦闘では、M26[パーシング]重戦車と、M4[シャーマン]中戦車の90ミリ戦車砲や、75ミリ戦車砲の火力では、スペース・アグレッサー軍地上軍の重戦車の装甲を貫徹する事ができず、損害を出すばかりであったが、待ち伏せしていた武装親衛隊機甲部隊が、攻撃を開始してからは、戦車戦は、武装親衛隊機甲部隊の独壇場であった。


 回転翼機からの攻撃もあったが、数が少なく、第1機甲軍団の優勢を覆す事は無かった。


 待ち伏せ攻撃により、スペース・アグレッサー軍地上軍は混乱し、指揮系統が乱れた。


 その隙を見逃さず、武装親衛隊機甲部隊は、突撃した。


「敵は、自分たちの武器や兵器が優れていると、過信していたな。所詮武器や兵器は、人が使う道具にすぎん・・・使う人間が混乱してしまえば、武器や兵器の性能を最大限に発揮する事はできない」


 パットンは双眼鏡で戦況を確認しながら、持論を述べた。


 どんなに高性能な戦車や装甲車を保有していても、それは戦術レベルでの優位性を確保する事しかできない。


 戦術レベルでの優位性を確実な物にするには、それを扱う兵士たちの練度が高くならなければならない。


 しかし、今回の場合、敵は、自分たちが保有する兵器が優れていると過信し、目の前に仕掛けられていた落とし穴に、気づく事ができなかった。


 落とし穴にはまった敵部隊は、己の過信が災いし、指揮系統が混乱、小部隊の指揮官クラスまで、状況を理解できず混乱した・・・


 パットンも、軍団を預かる将であるため、彼らの動1つ1つ見るだけで、どの程度の力量なのか判断する事ができる。


「将軍。武装親衛隊機甲部隊の奮戦もそうですが、我が軍の歩兵部隊の奮戦も、称賛に値します」


「ああ、そうだな」


 パットンは、双眼鏡を下した。


「もっとも奮戦した、あの歩兵部隊は?」


「サー!日系アメリカ人で編成された、独立戦闘団の第442連隊戦闘団です」


 幕僚の言葉にパットンは、第442連隊戦闘団歩兵部隊の奮戦振りを思い出した。


「太平洋の片隅の小さな島国が、大陸を相手に全面戦争を仕掛けた。その島国は、突撃の精神を持って、不利な戦況を打開した。やがて、大陸との戦争をやめ、我が国を含むヨーロッパに、宣戦を布告し、太平洋、インド洋を含む大規模な戦争へと、足を踏み入れた・・・」


「は?」


 上官の言葉の意味を、幕僚は理解できなかった。


「太平洋に浮かぶ小さな島国の民族が、何故、あれだけの奮戦ができるのか、第442連隊戦闘団の奮戦を見れば理解できるな」


「サー!」


 ようやく、上官の言葉を理解した幕僚が、返答した。


「彼らは部隊のモットーに、『当たって、砕けろ』が、あります」


「俺とは気が合いそうだな・・・しかし、全滅されては困る。自分たちが犠牲になったぐらいで、この大戦の戦況を、変える事はできない」


 パットンは、満足そうな笑みを浮かべて、つぶやいた。





 第442戦闘団の、1つの戦いは終わった。


 ロウは、1つの天幕を訪れた。


 そこには、星条旗で覆われた無数の棺が安置されていた。


 この戦闘には勝利したが、勝ったからといって犠牲が出ない訳では無い。


「・・・・・・」


 ロウは、その一画の第442戦闘団の戦死者の棺が安置されている所に歩み寄った。


 同じく、星条旗で覆われた棺・・・


「・・・・・・」


 自分たちは、祖先は違っても、アメリカ人として認められた・・・


 ロウは、静かに目を閉じる。





 第442戦闘団の戦いは、これからも続いていく・・・

 間章4をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 次回の投稿は7月15日を予定しています。

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