対米包囲網 第3章 オペレーション・インディアナポリス 3 市街地戦
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
[おおすみ]型輸送艦2番艦[しもきた]は、連合海軍、朱蒙軍海軍、大日本帝国海軍の輸送船団と共に、パナマ攻略作戦に、参加していた。
[しもきた]に乗艦している陸上自衛隊は、先遣部隊であり、第7機甲師団第71戦車戦闘団は、民間船舶に資材、装備、人員と共に乗船し、待機している。
[しもきた]後部甲板で駐機しているCH-47JA[チヌーク]に、先遣部隊として、中央即応連隊第1中隊の第1陣が、乗り込む。
軽装甲機動車や高機動車といった車輌も積まれており、市街地戦闘では十分な活躍が、期待できる。
「中隊長より、第1陣として、出撃する隊員たちに、告ぐ」
第1中隊長の國際3等陸佐が、ヘッドセットで、部下たちに言った。
「敵は、パルチザンの破壊工作等で混乱しているだろうが、絶対に気を抜くな。命令系統及び指揮系統が乱れた・・・という事は、集団的抵抗は無くとも、個別的抵抗がある。戦闘は、我々の予想を超える激戦状態になるかもしれん。今までの訓練通りに臨機応変に対処し、弾薬を節約しろ!いいな!!」
「「「はい!!!」」」
國際の最後の訓示に、部下たちが大きな声で答える。
彼の中隊は、エクアドルでの南アメリカ在留外国人救出計画に参加し、現地の武装勢力からの攻撃で、少なくない隊員を失った経験がある。
あの時は、幸いにも新世界連合軍連合陸軍に属するイギリス陸軍の戦闘ヘリコプター隊と、多国籍特殊作戦軍に所属する特殊空挺部隊(SAS)が間に合ったために、壊滅は避けられたが、間に合わなかったら、全滅していただろう。
國際が乗機する、CH-47JAが、宙に浮く。
ヘリボーンを実施するのは、彼らだけでは無い。
他の揚陸艦からも、ヘリが発艦し、パナマ市に向かっている。
輸送ヘリだけでは無く、攻撃ヘリも出撃する。
「おい!騎兵隊の、お出ましだぞ!!」
中央即応連隊第1中隊の、第1陣に属する普通科隊員が叫ぶ。
國際が窓から外を見ると、連合海兵隊に属するアメリカ海兵隊の、AV-8B[ハリアーⅡ]が2機、低空飛行している。
パナマ市上空で、地上部隊の近接航空支援や、制空戦闘を実施するのだろう。
(今回は、前回と比べると、比べ物にならない程の地上部隊支援が、計画されている・・・)
國際は、攻撃ヘリやハリアーの展開を確認しながら、心中でつぶやく。
「降下地点まで5分!」
航空科の陸曹が、叫ぶ。
「5分だ!」
國際が部下たちに叫び、その部下たちは隣の隊員に、知らせる。
「降下地点に接近!」
國際のヘッドセットから、機長の声がする。
「目標、降下!」
國際たちが乗機するCH-47JAが、高度を下げる。
「着陸!!」
機長の叫び声の後、CH-47JAが着陸した。
後部ランプが開放され、第1陣の普通科隊員たちが飛び出す。
軽装甲機動車や高機動車も、CH-47JAから吐き出される。
どちらの車輌にも、12.7ミリ重機関銃若しくは5.56ミリ機関銃MINIMIが、装備されている。
國際が、89式5.56ミリ小銃を持って、パナマ市の地面に足を着けると・・・硝煙の匂いがした。
上空では、攻撃ヘリであるAH-1W[スーパーコブラ]や、AV-8B[ハリアーⅡ]の機影が確認できた。
第1陣の普通科部隊を吐き出したCH-47JAは、攻撃ヘリ等の援護下で離陸し、[しもきた]で待機している第2陣を、空輸するために戻った。
「ゲリラ戦に備えて、周囲を警戒しながら、行動しろ!」
國際が、無線機で部下たちに指示した。
軽装甲機動車や高機動車の車影に隠れて、普通科隊員たちが展開する。
パナマ市にヘリボーンした新世界連合軍、朱蒙軍、自衛隊は、指揮系統が乱れたパナマ国家警備隊と、市街地戦を開始した。
MINIMIを装備した軽装甲機動車と、普通科小隊が、国家警備隊からのゲリラ戦を、受けた。
建物の窓からの、M1917重機関銃による銃火だった。
「あの窓だ!」
軽装甲機動車に装備した、MINIMIの銃口を向けた。
MINIMIの引き金を引き、軽機関銃による連続射撃で、M1917重機関銃を武装する機関銃手を黙らせる。
「まだ、建物内に敵兵がいるかもしれん!慎重に中に、侵入しろ!」
89式5.56ミリ小銃を装備する普通科隊員たちが、建物の出入口と思われるドアに近づき、少し開けて、M26破片手榴弾を投擲する。
M26破片手榴弾の炸裂音と共に、普通科隊員たちが突入した。
市街地戦闘の訓練は、ハワイ諸島オアフ島で、十分な訓練を積み込んでおり、頭で考えるよりも速く身体が動く。
CQBのために、89式5.56ミリ小銃の銃口には、89式多用途銃剣では無く、フラッシュライトを装着している。
フラッシュライトであるため、屋内戦で突然、敵兵が現れたとしても眩しい光で、敵兵の視界を奪い、怯ませる事ができる。
M1903を武装する国家警備隊の兵士が、銃剣を装着した状態で現れるが、フラッシュライトの光を真面に見てしまったために、視界を奪われた。
視界を奪い、怯んだ隙を見逃さず、小銃員は89式5.56ミリ小銃の銃床を、顔面に叩き込んだ。
顔面に、銃床を叩き込まれた敵兵は、そのまま絶命した。
1階を制圧すると、次に2階に進んだ。
2階の廊下に出ようとした時・・・重機関銃による銃撃を受けた。
「あ、危ねっ!!・・・後、1歩、前に出ていたら・・・命が無かった・・・」
身を隠した小銃員が、つぶやく。
「手榴弾!」
手榴弾ポーチから、M26破片手榴弾を取り出し、同僚と共に投擲する。
手榴弾を投擲すると、敵側から悲鳴の声が聞こえたが、手榴弾の炸裂と共に、悲鳴は消えた。
「よし!!行け!!」
89式5.56ミリ小銃を構えて、廊下に出る。
廊下の奥に、M1917重機関銃が、設置されていた。
1人、無事な兵がいたが、M1917重機関銃を構える前に単発射撃で、絶命させた。
その後は、抵抗という抵抗は無く、敵兵の姿も現れなかった。
「たったの1個分隊程度で、我々に戦闘を挑んだのか・・・」
陸士が、つぶやく。
「おい!!早く戻るぞ!!」
「どうした?」
「下で戦闘中だ!!3班から、応援要請だ!!」
第2班長が、第1班長に叫んだ。
「わかった。お前たちは、3班の応援に行け!!俺たちは、ここから、敵を迎え撃つ!!」
「了解した!!」
第2班長は、班員たちをまとめると、下に向かった。
「この骨董品を、動かすぞ!」
第1班長は、最初に自分たちに銃火を浴びせた、M1917重機関銃を動かした。
「知っているか?こいつは、陸上自衛隊創設時の装備の1つだったんだ。もっとも、1950年代に、順次退役したが・・・」
第1班長である2等陸曹の祖父は、任期制の陸上自衛官だった。
自分が、自衛隊の道に進んだ時、その当時の自衛隊の話を聞かせて貰った。
「設置完了!!」
班員たちが、報告する。
班長は、M1917重機関銃を構えて、外で軽装甲機動車と、第3班に攻撃を仕掛けているパナマ国家警備隊の兵士たちに向けて、機関銃弾を浴びせた。
M1917重機関銃が火を噴く光景は、現代日本では、映画の世界でしか拝めない。
頭上からの銃撃により、パナマ国家警備隊の兵士たちは、戦闘を中断し、後退した。
菊水総隊陸上自衛隊指揮下の中央即応連隊第1中隊が、パナマ市の一部分を確保すると、エクアドルから出撃したC-2輸送機が、パナマ市上空に現れた。
C-2輸送機には、第1空挺団機械化普通科群第2中隊が、搭乗している。
後部ランプが開放され、96式装輪装甲車C型が、落下傘降下される。
機械科普通科群第2中隊の普通科隊員たちは、CH-47JAでパナマ市に展開しており、中央即応連隊第1中隊の援護下で、96式装輪装甲車C型を回収するだけだ。
「パナマ市を完全に制圧する!前進!!」
96式装輪装甲車C型と同じく、第1空挺団機械化普通科群仕様に改良された82式指揮通信車B型に搭乗した中隊長(3等陸佐)が、上面ハッチから身体を出し、ヘッドセットで指示した。
機械化普通科群第2中隊に属する各小隊は、96式装輪装甲車C型に搭乗し、パナマ市制圧を実施する。
96式装輪装甲車C型は、12.7ミリ重機関銃叉は96式40ミリ自動擲弾銃を、主装備する事ができる。
建物から銃撃を加えてきた時には、96式40ミリ自動擲弾銃が火を噴き、部屋ごと、敵兵を吹き飛ばす。
路上に現れた敵に対しては12.7ミリ重機関銃が火を噴き、敵兵をズタズタに引き裂く。
市街地戦闘であるため、どうしても細かな場所を制圧するには、普通科隊員が直接、出向かなくてはならない。
96式装輪装甲車C型から、下車した普通科隊員たちは、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床を構えて、展開する。
「おい!!ナイトストーカーズが、お出ましだぞ!!」
MINIMIを構えた隊員が上空を見ながら声を上げた。
「あれは俺たちの護衛だ。小型ヘリだから、中型ヘリや大型ヘリと違って、小回りが効く」
班を率いる班長が、答える。
彼らの頭上を飛行しているのは、多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊作戦コマンドに所属する、第160特殊作戦航空連隊のAH-6J[キラーエッグ]である。
M134と、ハイドラ70ロケット弾を、搭載している。
動く物があれば、中隊本部を経由して、行動中の普通科隊員に警告される。
場合によっては、M134若しくはロケット弾攻撃で、脅威を排除する。
共同部隊行動計画では、上空援護は連合海兵隊アメリカ海兵隊の航空部隊と、多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊作戦コマンドが、担当している。
「敵兵!!」
路地裏を前進していた、先導の隊員が叫ぶ。
同時に、連発射撃音が響く。
「また、重機関銃かよ!?パナマ国家警備隊は、どれだけの銃火器を、アメリカから供与されているんだ!!」
壁際に身を隠しながら、陸曹が叫ぶ。
「いえ、彼らは、パナマ国家警備隊の兵士たちでは、ありません!!」
陸士が、叫んだ。
「どうして、わかる?」
「英語を、話していました」
「つまり・・・」
誰かが、つぶやく。
「パナマに駐留する、アメリカ陸軍か?」
陸曹が、つぶやきながら、鏡を出す。
「間違いない。アメリカ陸軍だ」
陸曹が、鏡に映し出された敵隊を確認しながら、つぶやいた。
「M1919重機関銃2挺と、M1[ガーランド]で武装した小銃兵が、10人程度・・・」
「パナマ市にあるアメリカ陸軍の駐屯地は、パルチザンが、破壊工作や攪乱工作で、無力化していたはずなのに・・・」
「その前に出撃した、隊なのだろう!」
隊員の1人が、そう叫びながらMINIMIを、撃ちまくる。
上空で、上空援護のために同行していたAH-6Jが、搭載するロケット弾を発射し、M1919重機関銃や、M1等で武装した、アメリカ陸軍の小隊を殲滅した。
パナマ市一角を制圧した連合海兵隊アメリカ海兵隊と、多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊戦コマンド第75レンジャー連隊の部隊、陸上自衛隊パナマ市攻略部隊は、前線作戦指揮所を構築し、戦況の把握を行っていた。
「連合海兵隊アメリカ海兵隊は、強襲揚陸艦からヘリボーン部隊を展開し、パナマ市に降下。ゲリラ戦を警戒しながら、前進しています。第75レンジャー連隊の1個レンジャー中隊が、パナマ市の官庁街を制圧中ですが、根強い抵抗を受けています。パナマ市に駐屯するアメリカ陸軍部隊も、引く気配がありません」
広げられたパナマ市の地図を見下ろしながら、國際が部下から、説明を受けていた。
強襲揚陸艦から出撃した多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊戦コマンド第160特殊作戦航空連隊第1大隊第11中強襲ヘリコプター中隊に属するMH-60L(DAP)は、第75レンジャー連隊第1大隊をパナマ市官庁街に下ろした後、上空援護の任務についていた。
「屋上に、迫撃砲を設置している、敵兵を視認!!」
ニューワールド連合軍多国籍特殊作戦軍アメリカ陸軍特殊戦コマンド第160特殊作戦航空連隊第1大隊第11中強襲ヘリコプター中隊に所属する、マシュー・コベット中尉が、叫んだ。
「了解!照準よし!」
副操縦士兼射撃手が、左右に搭載されているチェーンガンM230の、発射ボタンを押した。
主力戦車を撃破可能な機関砲であるため、身を隠す所が無い屋上では、生身の人間が、この攻撃を逃れる術は無い。
「屋上の迫撃砲は、無力化した・・・」
その時、機体に衝撃が走った。
他の建物から、銃撃を受けたのだ。
「スーパー116。その場に、止まり過ぎだ!!早く、その場から離れろ!!!」
上空で、航空部隊を指揮する指揮機から、通信が入る。
「了解。ただちに、離脱する」
「機長。この時代で、モガディシュの戦闘は、ご免ですよ」
「ああ、わかっている。幸いにも小口径の重機関銃で、良かった。もしも、大口径機関銃による対空射撃だったら、完全な、モガディシュの再現だった・・・」
「スーパー116。地上部隊が、屋上からクロスファイアを受けている。ただちに急行して、屋上の敵を、殲滅せよ!」
「了解。目標を、目視した」
コベットが、乗機のヘリの機首を、その方向に向ける。
「ロケット弾攻撃を、行うぞ」
「了解!」
副操縦士兼射撃手が、機関砲射撃からロケット弾攻撃に、切り替える。
「発射準備完了」
「発射!」
コベットの命令で、ロケット弾が、連続発射された。
ロケット弾が建物の屋上で炸裂し、屋上から、地上部隊に銃火の雨を振らせていた兵士たちを、吹き飛ばす。
「次の目標!」
「照準よし!」
「発射!!」
再び、MH-60Lに搭載されているロケット弾が、発射される。
ロケット弾は、最初に炸裂した屋上の向かい側の建物の屋上に、被弾した。
屋上でロケット弾が炸裂し、迫撃砲等の砲弾に誘爆したのか、さらに大きな爆発が起こり、敵兵を無力化した。
「こちら、スーパー116。ロケット弾が、尽きた。一端、補給に戻る」
「了解」
コベットは、そのまま乗機のMH-60Lの機首を、強襲揚陸艦に向けた。
強襲揚陸艦では、第1大隊整備隊が常時待機しており、着艦する武装ヘリの簡単な機体検査を行いながら、燃料、弾薬を補給する。
コベットの2度目の出撃で、パナマ市は、完全に占領された。
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