対米包囲網 序章 2 マルシャル・ソヴィエツコヴォ・ソユーザの独語
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
ゲオルギー・コンスタンチーノヴィチ・ジューコフは、与えられた自室で、ある人物が来るのを待っていた。
ジューコフは、今年の4月に、大日本帝国本土の北海道に侵攻した、ソ連軍の司令官だった。
近代化された大日本帝国軍、菊水総隊、ニューワールド連合軍、連合支援軍からの根強い反撃にあって、ジューコフ率いるソ連軍は、降伏を余儀なくされた。
降伏後は、捕虜として丁重に扱われたが、現実は、それを許さなかった。
彼がいなくなった後、ソ連では、大規模な異変が発生した。
サヴァイヴァーニィ同盟軍が、スターリンを亡き者にし、ソ連を完全に掌握。
新しいソ連を、創り上げたのだ。
「同志元帥。マッカーサー閣下が、お越しになられました」
副官からの知らせに、ジューコフは、すぐに通すように、指示をした。
「失礼します。元帥」
副官に案内された、ダグラス・マッカーサーが、穏やかな口調で語りかけながら、入室して来た。
「閣下。何か、飲みますか?」
ジューコフは、統合省防衛局が、用意したウイスキーを見せた。
「いただきましょう」
ジューコフはグラスを取り出し、自分の分とマッカーサーの分を注いだ。
「ご決断されたと、聞いております」
マッカーサーが、水割にされたウイスキーを飲みながら、告げた。
「ええ」
「ソ連正統政府と正統政府軍の、指導者になられるのですね」
「そうです。彼らは、ソ連正統政府及び亡命ロシア人の土地として、千島列島の、歯舞、色丹、国後、択捉の4島を、提供してくれました」
ジューコフは、ウイスキーをストレートで飲んだ。
統合省及び新世界連合の文民たちは、捕虜となったジューコフと接触し、サヴァイヴァーニィ同盟の傀儡国家として建国された新ソ連を奪還するために、彼を長とするソ連正統政府の樹立を打診した。
ジューコフは悩んだ末に、ソ連正統政府首長兼ソ連正統政府軍最高司令官になる事を、決めた。
新秩序は、新たな軋轢を生む。
新ソビエト連邦内では、これまでの歴史通りの粛正の嵐が吹き荒れ、それから逃れるために、多くの避難民が国外に脱出している。
それらの人々を受け入れる、ある程度の秩序を保った受け皿は、どうしても必要になる。
「ドイツ第3帝国でも、亡命して来たロシア人たちによって、樹立された、ロシア解放政府と、ロシア解放軍が、創設されています。今の情勢から考えれば、彼らとも衝突する可能性もあります」
「それは、貴方も同じでは?」
ジューコフは、飲み干したウイスキーのグラスに、ウイスキーを注いだ。
「いかがです?」
「いただきます」
ジューコフは、マッカーサーのグラスが空になっている事を確認してから、ウイスキーを注いだ。
「貴方がたも、彼らが唱える新世界を実現するために、ハワイ連邦とハワイ連邦軍の樹立に手を挙げたでは無いですか」
マッカーサー以下、アメリカ、イギリス等の連合国の捕虜たちの中で、マッカーサーのようにニューワールド連合軍に協力を申し出た連合軍将兵たちは、新たなる拠点として、現在は、大日本帝国の統治下に置かれているハワイ諸島を、独立国家として、アメリカ合衆国にも大日本帝国にも介入されない国家として樹立する事を、ニューワールド連合から承認された。
マッカーサーは、ハワイ連邦軍の長となった。
「ハワイの独立を、アメリカ政府が承諾するはずはありません。当然ながら、アメリカ軍を中核とした連合国軍と、全面衝突するでしょう。状況は、私たちと似たような物でしょう」
ジューコフの言葉にマッカーサーは、「確かに、そうですな」つぶやきながら、ウイスキーを口にふくんだ。
2人の会談は、長くは無かったが、お互い何を思っているか、それを理解する事ができた。
どちらも新世界という理想を胸に、同胞たちに銃口を突き付ける事に、迷いは無い事に・・・
後に発生するハワイ会戦において、ジューコフとマッカーサーは、それぞれの軍を率いて、連合国軍と枢軸国軍と戦うのである。
対米包囲網 序章2をお読みいただきありがとうございます。
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次回の投稿は12月18日を予定しています。




