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間章 2 Sの戦闘 拠点制圧

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 朱蒙軍海軍海兵隊第11海兵旅団第11偵察中隊深部偵察隊は、本隊から遠く離れ、敵地奥深くに展開していた。


 機関短銃を携行した、K1A1を武装した深部偵察隊の海兵たちは、顔に迷彩を施している。


 深部偵察隊の指揮官である大尉が、手を挙げて、部下たちに止まれの指示を出した。


「味方だ!」


 前方から声が聞こえた後、声がした方向の茂みが、動いた。


 海兵たちが、一斉にK1A1の銃口を向ける。


「合言葉を言え!」


 深部偵察隊の指揮官が、茂みから姿を見せた、ギリースーツを着込んだ兵士に、言葉をかける。


「新秩序は?」


「新たなる弱者と、強者を生む」


 正しい合言葉を答えたため、目の前に現れたギリースーツの兵士が、味方であると認識した。


「陸上自衛隊特殊作戦群第1中隊所属の、フロッグだ」


「第11海兵旅団第11偵察中隊深部偵察隊・・・」


 朱蒙軍海軍海兵隊と、陸上自衛隊特殊作戦群は、無事に合流を果たした。


「ここから半キロ先に、民兵部隊が拠点にしている集落がある。集落の中央部には、オランダ軍の通信所が、置かれている」


 特殊作戦群第1中隊第1小隊の指揮官から、民兵部隊の拠点についての説明を受けた。


 朱蒙軍海兵隊第11海兵旅団は、上陸後、地元民で編成された民兵部隊と、義勇軍からの地の利を生かしたゲリラ戦による伏撃を受け、前進速度を緩めなければならなかった。


 パレンバン地区に空挺降下した連合空挺部隊と、無事に合流するには、どこかにある敵の本拠点を叩く必要があった。


「確かに、この集落なのか?」


 深部偵察隊指揮官の大尉が、確認する。


「間違いない。集会場の建物には、見慣れないアンテナがあるだけでは無く、集落の警備及び守備にしては、厳重過ぎる程の数の兵士が、警備している」


 特戦群の小隊長が、端末機を取り出し、デジタルカメラで撮影した画像を保存したファイルを開き、見せた。


「確かに、ここが、ゲリラ部隊の司令部のようだ」


 画像を見ながら、大尉が答える。


「だが・・・これだけの警備がいると言うことは、我々だけで強襲するのは危険だな」


 大尉は、唸り声が上げた。


 簡単に済ませる方法として、航空機による爆撃という手があるが、ゲリラ戦を仕掛ける民兵部隊や義勇軍の本拠点という事は、彼らが独自に使う暗号表や、連絡手段等が存在するはずだ。


 これらを、すべて灰にしてしまっては、今後の作戦にも支障を来す。


 実際、第11海兵旅団通信隊が、謎の信号をキャッチした。


 彼らが使用する暗号表を、無傷で奪う事ができれば、今後の作戦行動も、スムーズにできる。


「なら、手段は、1つしか無いな」


 特戦群の小隊指揮官が、告げた。


「1人ずつ、確実に仕留めていく。誰にも見つからずに・・・」


「わかった。それで行こう。君たちは、援護してくれ。我々が、集落に潜入する」


 短い打ち合わせではあるが、さすがに精鋭部隊同士であるため、お互いの意思精通は、お手のものだ。


 大尉は手話で、部下たちに配置に付く事を指示すると、コンバット・ナイフを持って集落の内部に移動する事にした。


 可能な限り、銃は使わず、ナイフで静かに仕留める。


「各班、配置に着いたか?」


 大尉は、隊内無線で、各班長と連絡をとった。


「「「配置よし」」」


 各班の指揮官から、配置完了の連絡を受けた。


「こちらフロッグ、配置完了」


 特戦群の小隊も、配置が完了した。


 彼らは、見晴らしが良いところから、集落を監視し、自分たちを誘導、叉は進行方向にいる警備兵を、仕留める。





「こちら、フロッグ。左から警備兵が、向かって来ている」


 陸上自衛隊特殊作戦群第1中隊第1小隊長の大崎(おおさき)志計(のぼる)1等陸尉は、双眼鏡を覗きながら、集落の状況と、警備兵の配置を確認する。


「目標を確認」


 迷彩塗装された、M24対人狙撃銃を装備した狙撃手が、伏せ撃ちの姿勢で、つぶやいた。


「いつでも撃てます」


 彼が装備する、M24対人狙撃銃の銃口には、減音器が装着されている。


「撃て!」


 大崎は、小声ではあるが、はっきりと叫んだ。


 狙撃手は、観測手である大崎の射撃命令を聞き、引き金を引く。


 減音器により、発射時の銃声が、軽減される。


 目標まで、約450メートルである。


 照準を合わせた警備兵の頭部に、発射された7.62ミリライフル弾が、被弾した。


「命中」


 大崎が、短く告げた。


 狙撃手は、M24対人狙撃銃の槓杆を引き、空薬莢を排出する。


 そのまま槓杆を戻し、次弾を薬室に入れる。





 狙撃は、彼らだけでは無い。


 HK417を装備した他の隊員も、木の上や、村を一望できる場所で、狙撃する。


 木の上でHK417を構えた隊員は、狙撃眼鏡を覗き、観測班からの指示に従い、接近する敵兵を仕留める。


 彼も、銃口に減音器を装着しているため、音が軽減される。


 集落を警備している敵兵は、自分に何が起きたのか、わからないだろう。


 気がついた時には、頭部や胸部に一瞬の苦痛を感じて、意識を失うのだから・・・


「敵兵排除」


 木の上から狙撃している隊員が、無線に呼びかけると、深部偵察隊の兵士4人が、周囲を警戒しながら、現れた。


 先ほど狙撃で倒した敵兵の側で止まると、2人が周囲を警戒しながら、もう2人が倒れた死体を抱えて、物陰に隠した。


 いくら、狙撃による援護や警戒があるといっても、隠密行動である事は、変わらない。


 もしも、敵兵が、倒れた仲間を発見すれば、必ず異変に気づく。


 異変を他の仲間に通報される前に、仕留められれば問題無いが、もしも、通報されたら、待機している即応部隊が動き出す。


 そうなれば、面倒な事になる。





 大崎は、双眼鏡で、深部偵察隊の動きと、集落の警備状況を確認した。


「新たな目標が、出現」


 大崎が、警告する。


 新たに出現した敵兵と、鉢合わせする深部偵察隊の班は、身を隠した。


「駄目だ。目標を、見失った」


 警備兵が建物の影に入ったため、彼の配置からでは、正確な狙撃ができない。


「わかった。彼らに任せよう」


 大崎は、すぐに判断し、身を隠した深部偵察隊の指揮官に、連絡した。


 深部偵察隊指揮官を経由して、狙撃が不可能である事が、伝えられた。


 4人の深部偵察兵が、慎重に接近し、建物の影に入った敵兵を、ナイフで仕留めた。


「隊長。別の敵兵が、現れました」


 狙撃手が、M24対人狙撃銃から双眼鏡に切り替えて、侵入者を捜索していると思われる敵を、発見した。


「確認」


「いつでも、撃てます」


 狙撃手が、M24対人狙撃銃を構える。


 狙撃眼鏡を覗き、自分が発見した場所に向ける。


「撃て」


 大崎の号令で、狙撃手が引き金を引く。


 M24対人狙撃銃の銃口から、鈍い発射音が発せられる。


「命中」


 胸部に発射された弾丸が命中し、標的は、血を噴き出しながら絶命する。


 狙撃手は、槓杆を引き、空薬莢を排出する。


「まもなく、集落の集会場です」


 狙撃手が、狙撃眼鏡を覗きながら、つぶやく。


 4人組の1個班が、集会場の壁際に接近した。


 突入準備を、行う。


 閃光手榴弾を、ポーチから取り出す。


「最終段階だ。我々は、異変に気付き、外に出た敵を殲滅する」


 大崎が、部下たちに確認する。





 閃光手榴弾の炸裂音を聞き、屋内の敵が、外に現れた。


「敵発見!」


「射撃を、許可する」


 大崎の指示で、待ち伏せしていた特戦群小隊の班が、一斉射撃を行う。


 可視レーザーサイトと、ドットサイトを装着した、M4A1による一斉射撃であるため、民兵たちは、抵抗する余裕も無く、次々と倒れていった。


 中には屋内から反撃する民兵もいるが・・・


「擲弾装填!」


 M4A1の装備するM203A1に、擲弾を装填した隊員が構える。


「発射!!」


 2人の隊員が、反撃を受けている家の窓に向けて、擲弾を2発、撃ち込む。


 木造家屋で、簡易に立てられた家であるため、2発の擲弾が炸裂しただけで、半壊状態になった。


 屋根の上から、攻撃しようとする者もいたが、付近に配置された狙撃手による狙撃で、絶命し、地面に転がり落ちる。


「撃ち方やめ!撃ち方やめ!」


 班長である3等陸尉が、射撃をやめさせる。


 単発射撃による精密射撃であったため、すぐに射撃が止む。


 屋内から両手を挙げて、姿を現す民兵が1人、2人と姿を見せると、次々と投降する者が現れた。


「見える位置まで、出てこい!」


 M4A1を構えた、特戦群小隊に所属する上級陸曹が、叫ぶ。


「各員、注意しろ」


 小隊の指揮をとる大崎から、警告がくる。


「そこで跪け!」


 特戦群に所属する陸曹たちが、ムシ語で投降する民兵たちに、指示を出す。


 インドネシアは、元の時代では、多種多様な民族が集まる国家で、公用語であるインドネシア語を話せる者は、多くない。


それぞれの地域で、独自の言語が存在し、スマトラ島だけでもムシ語(南スマトラ地区)、ミナンカバウ語(西スマトラ地区)、バタク・トバ語(北スマトラ地区)等が存在する。


 オランダ領であるため、主要都市に出稼ぎに出る者は、オランダ語が必須であり、他のインドネシア人と標準的会話をするには、インドネシア語の2ヶ国語が必須である。


 しかし、こういった場合では、オランダ語もインドネシア語も通じない者たちが多いため、現地語をある程度、習得する必要がある。


 特戦群の陸曹たちは、片語程度ではあるが、現地語で投降する民兵たちに指示を出す。


 投降する民兵たちを、広場に誘導し、地面に跪かせた状態で、監視する。





 集会場に突入した深部偵察隊は、M84[スタングレネード]の炸裂と同時に屋内に侵入し、中にいたオランダ軍の連絡班や義勇軍、民兵部隊の幹部たちが態勢を整える前に、全員を無力化した。


「暗号表と、通信機器を確保しろ!」


 上士が叫び、深部偵察隊の兵士たちが、通信機器や暗号表、通信表等を確保する。


「隊長!作戦地図が、あります!」


 机の上に広げられていた地図を、見つけた上兵が、叫ぶ。


 大尉が、作戦地図を見る。


 ところどころに、印や矢印等がある。


「どうやら、ここは、それなりの拠点のようだ。すぐにヘリを呼べ!」


 無線兵に搬出用のヘリを要請するよう指示し、捕虜としたオランダ軍連絡班や、他の民兵や義勇軍の幹部たちを、見回した。


「特殊作戦群の小隊長からです!周囲の安全を確保した。邪魔が入る可能性は無い」


「了解」


 大尉は、押収した作戦地図や通信表、暗号表等を部下たちと共に仕分けし、ヘリが来るのを待った。


 第11海兵旅団には、UH-60Pがある。


「大尉。司令部より、進軍中の第11海兵旅団第112海兵大隊1個中隊を、回すそうです」


 上と連絡をとっていた無線兵が、報告する。





 K200A1装甲兵員輸送車で編成された、1個中隊と、憲兵を搭乗させた、K711大型トラックの輸送隊が現れた。


 捕虜を輸送するK711大型トラックは、全車に防弾性能を向上するために、現地で調達した鉄板を、取り付けている。


 鉄板だけでは無く、M60機関銃や、5.56ミリ分隊支援火器K3が、取り付けられている。


 言わば、ガントラック化されている。


 K1A1で武装した憲兵たちが、投降した民兵や、義勇兵を、特戦群から引渡され、そのままトラックの荷台に、乗せる。


 護衛部隊の車輌として派遣されたK200A1も、対ゲリラ戦対策なのか、追加の装甲板が、取り付けられている。


「現代の戦場を舞台にしたアメリカの戦争映画でも、安物の鉄板や、現地で破壊された敵の戦車や、装甲車等から装甲板を取り外して、簡易な防弾性能向上が、現地部隊独自で行われるシーンがあったが、本当にやるんだな・・・」


 特戦群の小隊に所属する3等陸曹が、つぶやく。


 菊水総隊陸上自衛隊でも、これまでの戦闘で得られた教訓から、防弾能力向上や、後方支援部隊の重武装化が、行われている。


「お前は、特戦群に入ってから、日が浅かったな」


 特戦群に所属して、3年目になる陸曹が、声をかけた。


「俺は、タイムスリップ前に、海外派遣の経験があるから言えるが、どこの戦場でも、部隊単位で、独自の防弾能力向上と、火力の向上を目的とした、改良が行われていた」


 憲兵たちの指示に従って、投降した民兵や義勇兵が、トラックに乗せられる光景を見ながら、彼は話す。


 負傷した民兵や義勇兵は、第11海兵旅団所属のUH-60Pに、乗せられる。


 それと同時に、押収した敵側の資料も渡す。


 負傷者の数は少数で、ほとんどが特戦群所属の小隊による精密射撃等で絶命している。


 奇跡的に生き残れたのは、擲弾や手榴弾の炸裂等によって負傷した者に、限られている。





 彼らが回収した資料によって、待ち伏せ部隊の位置や、地雷原の位置だけでは無く、義勇軍部隊とオランダ軍が使う通信方法までがわかり、砲爆撃による、ゲリラ部隊のアジトへの拠点襲撃で、無力化する事に成功した。


 オランダ軍等の連合国軍や義勇軍、民兵部隊は、状況が悪くなった途端に、後退した。


 予定通りと言うわけでは無いが、第11海兵旅団前衛部隊は、連合空挺部隊との合流を果たした。





 連合空挺部隊と、第11海兵旅団が合流できたと同時期に、第16軍第38歩兵師団が、上陸した。


 連合空挺部隊が攻略したパレンバンは、第38歩兵師団第38輜重兵聯隊の警備部隊と交代する。


 輜重兵部隊は、兵站を担当する兵科であり、陸上自衛隊では輸送科、需品科に区分される。


 兵站任務の中で、補給路の遮断、補給物資集積所等への攻撃もあるため、兵站態勢の維持及び警備のための警備部隊が存在する。


 もちろん、輜重兵聯隊警備部隊の対処を越える事態になれば、歩兵聯隊からの応援を要請する事になる。


 第1空挺団第1普通科大隊等が制圧したパレンバン飛行場は、工兵隊と施設隊によって修復され、CH-47といった、大型輸送ヘリコプターだけでは無く、C-130輸送機等の離着陸が可能になった。


 輸送機や輸送ヘリが着陸し、補給物資が下ろされる。


 陸軍航空隊の戦闘攻撃機が進出し、パレンバン飛行場を拠点に制空戦や地上攻撃を行うために配備される。


「これで、パレンバンの油田は、確保できた」


 パレンバン地区の占領が完全にできた事を見届けてから、第38歩兵師団長の佐野(さの)忠義(ただよし)中将が、つぶやいた。

 間章 2をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 次回の投稿は11月15日を予定しています。

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