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マレーの虎 第13章 臨時編成任務部隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 南シナ海上空を飛行するC-2M[グレイハウンド]は、台湾の高雄航空基地でマレー半島での、ある作戦に投入される将校を乗せて、連合海軍艦隊総軍司令官座乗艦である[ロナルド・レーガン]級原子力航空母艦[フォレスタル]([ニミッツ]級原子力航空母艦)に、向かっていた。


 C-2[グレイハウンド]は、アメリカ合衆国海軍が導入している、洋上で展開している原子力空母へ、陸上航空施設から物資輸送及び急患輸送等を行う、艦上輸送機だ。


 垂直離着陸輸送機である、MV-22Bの海軍仕様である戦闘捜索救難任務と、艦隊兵站支援任務、特殊作戦任務型のHV-22Bも配備されているが、多用な任務を遂行するため、一部の任務を肩代わりする予備として、C-2が現役のポジションに位置する。


 C-2Mは、C-2Aの改良型であり、E-2D[アドバンスドホークアイ]の操縦性、整備性の共有化が、図られている。


 C-2Mに搭乗しているのは、マレー半島で行われる作戦に参加する石垣(いしがき)達也(たつや)2等海尉、メリッサ・ケッツアーヘル少尉、(レン)(チェン)(ラン)中尉、(そく)()美雪(みゆき)3等海尉の4人と、統合軍作戦本部統合作戦総長の山本五十六(やまもといそろく)海軍大将以下統合作戦総長附幕僚たちが、乗り込んでいる。


 護衛戦闘機として、大日本帝国空軍空母艦上航空団所属のF-14[隼]が2機、配置されている。


 護衛機は、秘匿艦隊から聯合艦隊空母機動部隊独立旗艦となった、超正規航空母艦[回天]の艦載機である。


「F-14を見ていると、あのスカイアクション映画を、思い出す。まるで、その大日本帝国版のようだ・・・」


 石垣が、ぽつりと、つぶやく。


「準備期間があったとはいえ、これだけの短期間で、良くここまでの練度と技能を、習得できたものだ・・・」


 山本が、護衛機であるF-14[隼]を眺めながら、つぶやいた。


「航空予備軍を新設した時、陸海軍航空部隊から飛行要員1000人と、高等学校飛行学部の生徒1000人が応募し、その中から400人程度の優秀な飛行要員を、選抜しました。彼らは、厳しい飛行訓練課程に耐え抜き、今の練度を確保しているのです」


 統合作戦空軍本部長の、小沢(おざわ)()三郎(さぶろう)中将が答える。


 石垣自身も、その話は聞いている。


 航空予備軍(空軍の前身)時代の飛行要員たちは、将来運用するジェット戦闘機のノウハウを取得するため、ハワイ・ヒッカム航空基地と千歳航空基地の航空自衛隊施設で、練習機による操縦技術を磨いた。


 その後、空母艦上航空機の飛行要員と、陸上航空機の飛行要員に分かれて、それぞれの訓練を短期間で習得した。


 まさに、月月火水木金金、という状態だったらしい。


 飛行要員としての技術だけでは無く、当然、語学能力も高くなければならず、飛行要員たちは、空いた時間のほとんどを、英語能力取得に割いた。


 高度な会話だけでは無く、読み書きも、マスターしなければならない。


 因みに、大日本帝国空軍飛行要員たちの英会話能力、読み書きレベルは、英語圏国家の全体の平均レベルである。


「まもなく、着艦!」


 C-2Mの航空士の声が、ヘッドセットに響く。


 その後、C-2Mが、ゆっくりと高度を下げた。


 2機のF-14[隼]が、翼を左右に振って、右に旋回し、帰路に着く。


 彼らの護衛は、ここまでである。


 後は、[フォレスタル]の防空行動圏内であるため、同艦の艦載機が担当する。


 ここまで、護衛したF-14[隼]は、最寄りの航空基地で燃料補給を行った後に、本拠点に戻るのだろう。





 C-2Mが[フォレスタル]に着艦すると、誘導員の指示に従い駐機エリアに移動する。


 南シナ海を航行しているため、[フォレスタル]は、常時アラート態勢が敷かれている。


 石垣たちが[フォレスタル]の飛行甲板に足を着けると、第1カタパルトと第2カタパルトで発艦態勢に入っている、2機のF/A-18E[スーパーホーネット]があった。


 轟音と共に、1機のF/A-18Eが発艦する。


「どこを、爆撃するのだろう?」


 石垣が、発艦するF/A-18Eを眺めながら、つぶやいた。


「違うわ。あれは、単なる上空哨戒。主翼を、よく見なさい。短射程ミサイルと、視界外射程ミサイルしか、搭載していないわ」


 メリッサが、教える。


「石垣。戦時下で空母から戦闘機が出撃するからといって、常に戦闘地帯への攻撃は、行わない」


 任が、メリッサの言葉を、捕捉をする。


「ですが、ニュースや新聞では、紛争地域に1日200から600回の空爆を、行っているって・・・」


「そういう日もあるけど、毎日では無いわ。それに1日200回から600回の攻撃は、地上部隊への、近接航空支援も含まれている。実際の航空作戦による軍事施設攻撃は、1日100回程度、ほとんどが地上部隊の援護よ」


 メリッサの説明に、石垣は、「なる程」と、納得した。


「ねえねえ、メェメェ。アメリカ海軍の[ア-・・・ナントカ]イージス艦の飛行甲板で、ヘリから武装した兵士たちが降りているけど、何をしているの?」


 側瀬が、指を指しながら、質問をする。


「あれは[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦。海上自衛隊や、その他の海軍のイージスシステム搭載艦の模範となった艦」


「アーナントカって・・・アーだけは、合ってるけど・・・」


 石垣は、腹を抱えて笑いそうになるのを押さえた。


「恐らく、あれは強襲部隊による、強襲制圧訓練ね」


 メリッサの説明に、石垣は[フォレスタル]の護衛艦である[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦フライトⅡAタイプに、視線を向ける。


 MH-60S[ナイトホーク]から、ファストロープ降下する仮想敵部隊と、甲板上で黒色の鉄帽を被り、MWUとその上に黒色防弾チョッキを着込んだ警戒要員たちが、降下阻止を行っている。


「ふむ。偶然ではあるが、もしも機会があれば、今後のために、じっくりと視察したいものだな」


 海軍本部長の()(かき)(まとめ)中将が、興味津々といった感じで訓練風景を眺めながら、つぶやきを漏らす。


 新世界連合軍に属する加盟国軍は、これまで元の時代で経験したさまざまな教訓と、この時代で経験した教訓等を研究し、さまざまな事態に備えるための訓練を、それぞれ実施している。


 そのため、訓練内容は常に変わり、宇垣が知っている訓練もあれば、初めて見る訓練が実施されていたりする。


 さらに、その訓練内容は、各艦艇によって違う。


 同じ訓練内容でも艦艇ごとに見ると、内容が細かい所で異なっていた。


 宇垣としても、前線統合作戦海軍部の長として、聯合艦隊司令部や各艦隊司令部に、新作戦と新展開等を、立案しなければならないため、彼らが行う訓練を視察する事は、極めて貴重だ。


「お待ちしておりました。山本提督」


 MWU姿で、連合海軍艦隊総軍司令官であるアーサー・スタンプ・ケッツアーヘル大将が、出迎えた。


「お出迎え感謝します。ケッツアーヘル提督」


 2人は挙手の敬礼をした後、握手を交わした。


「ヘリの準備が整うまで、暫くかかりますので、それまでお待ちください」


 ケッツアーヘルの言葉に、山本はうなずく。





[フォレスタル]の飛行甲板で、発艦準備を完了した連合海兵隊所属のアメリカ海兵隊航空部隊のUH-1N[ツインヒューイ]に、石垣たちは乗り込んだ。


「目的地、コタ・バルまでは、20分で到着します!そこから陸路で移動してください!」


 誘導員の下士官が、石垣たちに伝える。


 声が大きいのは、ヘリのローター音で声が、かき消されないためだ。


「わかった!」


 石垣が叫び、座席に座る。


 UH-1Nは発艦し、目的地であるコタ・バルに向かう。


 海上自衛隊のデジタル迷彩服姿の石垣は、黒色の防弾チョッキに、デジタル迷彩服と同じ模様の鉄帽を被っている。


 陸戦が予想されるため、個人装備範囲内の銃火器を装備している。


(立検隊と海援隊の副特技資格を保有しているから、64式7.62ミリ小銃では無く、89式5.56ミリ小銃を装備できるけど・・・大丈夫かな。5.56ミリ小銃弾では、威力不足という事例が、上がっているけど・・・)


 石垣は、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床を眺めながら、心中でつぶやく。


 側瀬も、石垣と同じ副特技資格を保有しているため、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床を装備している。


 メリッサは、アメリカ陸軍特殊部隊制式採用自動小銃の、SCAR-H(NATO共通弾7.62ミリ小銃弾では無く、6.8ミリ新小銃弾を使用する)を装備し、拳銃は、一部の特殊部隊兵士が装備するM1911A2を、携帯している。


 任は、連合支援軍旧人民解放軍が装備する、主力小銃95式自動歩槍では無く、03式自動歩槍である。


(考えて見ると・・・自動小銃の弾が、バラバラだな・・・)


 石垣と側瀬は、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床であるため、弾薬の共通だけでは無く、弾倉も共通である。


 しかし、メリッサが携行するSCAR-Hは、6.8ミリライフル弾を使用し、任は5.8ミリ小銃弾である。


 威力不足は補えるが・・・きちんと計算しなければ、少数による分隊で、多勢とは戦えない。


(まあ、ケッツアーヘルさんが、チーム・リーダーだから、その辺りは問題無いか・・・)


 この4人のチームでは、リーダーがメリッサで、サブリーダーが任である。


 そんな事を考えていると、UH-1Nが目的地に到着した。





 UH-1Nが着陸し、4人が装備と共に、マレー半島の土に足をつけると、そのまま用意された車輌で、第25軍司令部庁舎に向かった。


「無事に、到着できたようだな」


「あれ?兄さん。どうしてここに?」


「ここでは、石垣1佐だ。石垣達也2尉」


 出迎えたのは、石垣の兄である石垣達彦1等陸佐だった。


「し・・・失礼しました、石垣1佐。1佐が、どうしてここに?」


「お前たちが参加する、臨時編成任務部隊の全部隊行動指揮官として、配置された。詳しい内容は、会議室で説明する」


 石垣1佐が、簡単に説明した。


「そろそろ、他の部隊も到着する頃だな」


 石垣1佐が、腕時計を確認しながら、つぶやく。


 すると・・・上空から、無数のローター音が響いてきた。


 石垣が顔を上げると、迷彩柄のベル412群が飛来した。


「UH-2・・・?」


 石垣が、上空を旋回するUH-2を見上げながら、つぶやいた。


 UH-2は、着陸誘導班の指示に従い、臨時ヘリポートに着陸した。


「え?・・・えぇ!!?」


 石垣は、UH-2のコックピットから現れたパイロットを見て、言葉を失った。


「霧野・・・3佐?」


 フライトヘルメットを脱ぎ、迷彩帽を被った(きり)()みくに3等陸佐を見た石垣は、目を疑った。


 石垣の知る霧野は、のほほんとした雰囲気の30代前半だが、20代前半にしか見えない、カワイイ感じの女性自衛官で、大日本帝国陸軍の若手の士官や下士官、兵卒のアイドルだった・・・はずだ。


 今、目の前にいる彼女は、研ぎ澄まされた刃を思わせる、峻烈な雰囲気を纏っている。


「彼女が、死神の異名を持つ霧野3佐よ」


 メリッサが、石垣に教える。


「・・・・・・」


 石垣は、霧野のあまりの変りように、唖然としていた。


「彼女は、まだ到着していないようね・・・」


 霧野は、石垣を一瞥すると、石垣1佐に顔を向けた。


「ああ。まだだ」


 石垣1佐からの回答を聞いた霧野は、不敵な笑みを浮かべた。


「ふっふっふっ。所詮は鉄の棺桶等、この程度な物よ。そう思うだろう辻中佐?」


「はっ!まったく、その通りであります。少佐殿!」


 (つじ)政信(まさのぶ)中佐が、不動の姿勢で叫ぶ。


「ど、どうなっているの?」


 石垣は、まったく、ついて行けない空気に、出せた言葉は・・・それだけだった。


 辻は、霧野より階級が上である。


 これでは、上下の立場が逆転してしまっている。


「そういう事」


 混乱している石垣に、メリッサが告げる。


 その後、遠くから履帯音が響いてきた。


 履帯音が発する音の方向に、石垣が顔を向けると、10式戦車群が現れた。


 1輛の10式戦車が、石垣の前で停車した。


 車長席のハッチが開いた。


「たっちゃん!おひさ~」


 姿を現した車長の声は、石垣が良く知る人だった。


「まり姉?」


 ゴーグルを戦車帽の上に乗せ、車長が素顔を見せた。


 彼女は、石垣の姉である石垣(いしがき)(あずさ)1等陸尉(医官)の幼馴染みである芝茉(しばま)梨花(りか)である。


 戦車帽を被り、戦車靴を履いた迷彩服3型姿の彼女は、石垣が実姉と同様に、姉のように慕っている女性だった。


 階級は、1等陸尉。


「たっちゃん。元気そうで何より、聞いたわよ。パラオ沖海戦では、活躍したって!」


「いえ、まり姉さん。あれは・・・その・・・」


「謙遜しない!謙遜しない!」


 石垣は、ものすごい力で、芝に抱きしめられた。


「フゴゴゴゴ・・・ッ!!!」


「芝1尉。そいつの労を労うのは結構だが・・・そのまま抱きしめて、窒息死されても困る」


 因みに・・・メリッサ、任、側瀬の3人は、目の前の急展開で、話に付け入る隙を失った。


「ハァ!ハァ!ハァ!死ぬかと思った・・・一瞬だけ、お花畑が見えて、白装束のお婆さんが、現れたような気が・・・」


「あれぇ~石垣2尉。そのまま、お婆さんに付いて行かなかったんですか?」


「俺に死ねと!!?俺が死んだら、困るだろう!!?」


「いや、まったく困らないな」


 側瀬と石垣の掛け合いに、任が、とんでもない発言をして参戦する。


「その前に、お婆さんが石垣2尉を、ハンマー投げみたいに、ブンブン振り回して投げ返してくるわ。『地獄にも、天国にも、お前の行き場はない!』って」


 メリッサも、乗る。


「たっちゃん。駄目だよ~。知らない人に、付いていったら・・・」


「あの~まり姉さん。俺は、そこまで子供じゃ無いよ!」


 石垣が、地味に酷い事を言う3人と、芝にギャアギャアと抗議するが・・・完全にスルーされていた。


「それはそうと・・・防衛局長官の腰巾着の、防衛局長官直轄部隊陸上自衛隊日本共和区警備隊戦車隊第1中隊長の芝茉梨花1等陸尉殿は、このような遠方の土地に何の用だ?観光旅行にしては、随分と重そうな、荷物を持って」


 霧野が、からかうような口調で、言った。


 しかし、目が怖い・・・


「そう言う貴女も、竹とんぼで遊覧飛行かな?」


 芝も、負けじと、言い返す。


 その口調は、言葉とは裏腹に、低く冷たい。


「「・・・・・・」」


 2人の間に、見えない激しい火花が散った。


「「ひいぃぃぃ!!」」


 その、凄まじい殺気を真面に喰らって、石垣と辻が、悲鳴を上げた。


「何処へ、行くつもり?」


 逃げようとした石垣の襟首を、メリッサが掴む。


「嫌だ~!!死にたくない!!死にたくない!!!」


 石垣は、暴れるが、メリッサに無力化される。


 辻の姿は・・・影も形も無かった。


「おほん!」


 石垣1佐が咳払いをして、コントはそこまでだ、と言わんばかりのオーラを出しながら、止めた。





 東南アジアでの連合軍、枢軸国軍との泥沼化した戦線に終止符を打つため、新たに立案された新作戦が決定された日の夕方。


 スプラトリー諸島スプラトリー島の軍施設屋上で、菊水総隊司令官、山縣幹也海将と新世界連合軍総参謀長のヴィクトル・バルツァー大将の2人が、沈みゆく夕日を眺めていた。


「山縣司令官が、このような賭け事に乗るとは思いませんでした」


「他に、現状を打開する手は無い」


「ですが、もしも、貴方が信じる石垣達也2尉が失敗すれば、貴方は責任を問われますよ」


「それは貴官も同じだろう。作戦を確実に成功させるのなら、貴官のご息女の方が、適任だったろう?」


 山縣の言葉に、バルツァーは苦笑した。


「あれは、反骨精神の塊でして、作戦成功よりも、人命を第一に考えます。ですが・・・それでは、いけないのです。今回の作戦は・・・」


「そうだな。この作戦の成否で、南方作戦に投入される兵士たちの、戦死率が変わる。泥沼化か、双方が手を出し惜しむ緊張状態のどちらかだ。確かに、君のご息女には難しいかもしれない・・・大義のためなら、犠牲も仕方無い。という残酷な決断を、下さなければならない」


「これを言えば、親バカと思われるかもしれませんが・・・娘は、心根の優しい娘です」


 バルツァーは、そう言った後、一瞬だけ、間を置いて言った。


「その優しい娘が、軍人という職業を選んだのは、私に対しての反抗でもあるでしょう。自分の父親は、作戦成功の為ならば、いかなる非情な決断を下す事も厭わない・・・それが、戦場で多くの兵士の命を救う事になったとしても・・・結果として、妻と、もう1人の娘を失い、多くの国民の心に深い傷を刻んだ、あの事件のトリガーの1つになった事に・・・あの娘は、それを自らの行動で示している。武器を持たない人々を守れずに、何が軍人か、何が英雄かと・・・自分は決して、父親のようにはならないと・・・」


「彼女は、常に自ら行動する事で、それを主張している。元の時代のアフリカとメキシコでもそうだった。この時代にタイムスリップした後も、そうだった。自国軍に見捨てられた一般人を保護し、保護した一般人に、1人の死傷者も出さず、守り抜いた。私は、彼女こそが石垣君を、良い道に導いてくれると信じている」


 山縣は、バルツァーから夕日に視線を戻して、つぶやいた。





 同じ頃、コタ・バル沖を、1隻の日本共和区船籍の民間の貨物船が、哨戒任務を行う、大日本帝国海軍の哨戒艇と駆潜艇に混じって、航行していた。


 沈み行く太陽を、甲板から眺める小柄な人影。


「8人目」


「なぁに?」


「東南アジア各地に散った、各メンバーからの報告です。『宅配便は、お届け日に配達完了』以上です」


「そう、お届け日に不在って事が、無かったのは何より。皆には、お疲れ様と伝えておいて」


 小柄な人影は、報告をしに来た船長に告げた。


「それと、ヘリの準備が整いました」


「ありがとう」


 そう言って、小柄な人影は、僅かに笑い声を上げた。

 マレーの虎 第13章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

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