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マレーの虎 第4.5章 指揮官の苦悩

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 菊水総隊航空自衛隊航空機動衛生隊は、医療機能を有する仕様に改造されたVE-22Bが着陸地点に着陸すると、傷病兵たちを機内に収容した。


 VE-22Bの収容定員は3人だが、3人全員を飛行中に治療できる。


 それが2機着陸したため、6人の重傷病兵を飛行中でも治療する事が可能だ。


 傷病兵の中から、最も優先しなければならない者を選び、機内に収容し、離陸する。


 新世界連合軍連合兵站軍航空軍から、資材と軍医等がV-22Bで空輸され、地上で本格的な医療行為が行われた。


 着陸誘導班は、離着陸する航空機に対応し、傷病兵輸送班は、担架等で輸送した。


 銃創や切創で負傷した兵や隊員は、包帯や止血帯を交換し、V-22JやV-22Bに乗せられ、搬送された。


「彼は重傷だ!あっちに乗せろ!」


 医官が初診を行い、VE-22Bに乗せるか、V-22B/Jに乗せるかを決めた。


「足に1発、くらった!」


 連合陸軍アメリカ兵の1人が、仲間から補助を受けながら現れた。


「見せてくれ」


 医官が、撃たれた部分を軽く診る。


「7.62ミリ小銃弾が残っている。鎮静剤は打ったか?」


「いや、打っていない」


 足を負傷したアメリカ兵が答える。


「待っていろ。今、鎮静剤を打つ」


 医官は、薬品が入った注射器を取り出し、負傷兵に投与する。


「これで痛みは無くなる。後は、輸送機に乗り込んで、野戦病院で治療を受けろ」


 医官は指示し、V-22Bを指差した。


 周囲では、彼以外にも軍医、看護官等が走り回っている。


 中には、心肺停止した傷病兵がいるのか、心肺蘇生処置が行われている。


 上空では、周辺警戒のためにA-10A[サンダーボルト]が2機、警戒飛行している。


 オランダ軍の攻勢に対し、圧倒的対地攻撃能力で制圧したが、対地攻撃用のミサイルや爆弾は残っており、主力戦車を撃破可能な30ミリ機関砲もある。


 万が一にも、迎撃戦闘機が現れても、短射程空対空ミサイルと耐久能力で、簡単には敗れない。


 神野は、周辺警戒班の指揮官として、周辺状況確認を行っていた。


「オランダ兵は後退し、安全は確保されているんだな?」


「はい、そうです。偵察機からの情報では・・・攻勢は、パレンバン方面に集中しているようです。我々に対しては、側面攻撃や後方攪乱等の遊撃戦を、阻止する事を目的とした・・・攻撃だったようです」


 無線員からの報告を受けながら、神野は傷病兵の搬送と、撤退状況についての状況も、確認した。


「傷病兵の搬送が完了しだい。健全な隊員及び兵士は、ただちにヘリで、朱蒙軍海軍海兵隊の上陸地点に、空輸するそうです」


 報告を受けた神野は、腕時計のデジタル表示された時刻を見た。


「2時間程度で、完了するな」


 朱蒙軍海軍海兵隊の1個海兵旅団が橋頭堡まで後退し、健全者たちを予備部隊として再編成し、再び戦地に投入する・・・という事だろう。


「少し・・・落ち着けるか・・・」


 神野は、9ミリ機関拳銃を持ち直した。


[雲(ウン)(ボン)]級強襲揚陸艦[雲峰]が、上陸地点沖合に停泊し、洋上での陸海空作戦の前線指揮所として機能している。


 艦内の医療設備を駆使して、パレンバン攻略作戦に参加した攻略部隊の傷病兵収容も、行っている。





[イーグル]の作戦室では、寺内は各情報部門から戦況説明を、受けていた。


 デジタル化であるため、全員の手元に置かれているタッチパネル式の端末機から各戦況についての詳細な内容が表示され、100インチの液晶メインモニターや、付属のモニターには、偵察機等からの偵察映像や、デジタル表示された地図が映し出されている。


「マレー半島に上陸した水陸両用戦闘集団第1水陸両用旅団と、タイ王国から南進した連合支援軍陸軍第12諸兵科連合戦闘団は、マレー半島攻略の主力である第25軍が本格的に上陸し、イギリス軍及びマレー方面の義勇軍と交戦中です。ボルネオ島は、菊水総隊陸上自衛隊水陸機動団第1水陸機動連隊と第24歩兵師団が上陸し、さらに、陸上自衛隊第8師団第12普通科連隊を中核とした戦闘団が上陸、ボルネオ島の攻略を行っています。スマトラ島には、新世界連合軍連合陸軍空挺部隊、朱蒙軍特殊作戦軍陸軍空挺部隊、陸上自衛隊第1空挺団を中核とした空挺部隊に、大日本帝国陸海軍空挺部隊を組み込んだ状態で、パレンバン地方を制圧、朱蒙軍海軍海兵隊第11海兵旅団と増援部隊として連合海兵隊第5コマンドー旅団第51コマンドーを中核とした戦闘団が投入されました」


 寺内は、端末機から表示される情報と新世界連合軍から派遣された連絡将校からの説明を受けながら、慣れない液晶画面を見続ける事に、目の疲れを感じていた。


 基本的に寺内は、作戦行動については、各部隊の高級指揮官及び上級指揮官の判断に任せている。


 彼から、直接口出しをする事は無いが、作戦内容だけは、必ず把握しているだけでは無く、南方軍の幕僚や自身の指揮下として新世界連合軍、自衛隊、朱蒙軍の幕僚たちの意見を聞いた上で、作戦を許可している。


「パレンバン方面で孤立した部隊は、どうなった?」


 寺内が質問すると、幕僚の1人が答えた。


「孤立した部隊の地点を把握し、航空機による空輸で、負傷兵たちを安全地帯に搬送しています。健全な隊員や兵士たちは、臨時の混成部隊を組織して、パレンバンに急行させます。なにぶん・・・大規模な作戦行動ですから、極力予備部隊の投入は避けています」


「・・・・・・」


 寺内としては、南方攻略のために、できる限りの兵を増援に送りたいが・・・中央太平洋はハワイまで、南太平洋はソロモン諸島、北太平洋はアッツ島(現在攻略作戦が開始中)まで戦線が拡大し、防衛部隊の組織、連合軍及び枢軸国軍からの攻勢が発生した際に、増援部隊を即応投入できる態勢が敷かれている。


 これに、新世界連合軍からの要請で、新たなる場所を攻略する事になったため、さらに兵が引き抜かれている。


 南方攻略に、集中できないのである。


 寺内自身も、南方攻略のために、大本営に陸軍1個軍と、海軍陸戦隊1個聯隊規模の増援要請と大本営を経由して、新世界連合軍から連合陸軍と連合海兵隊の増援を要請していたが、結果は・・・期待した回答は、得られなかった。

 マレーの虎 第4.5章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 次回の投稿は8月28日を予定しています。

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