マレーの虎 第3章 パレンバン攻略 3 救出と脱出
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです
ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第2艦隊旗艦兼南方攻略作戦指揮艦である[イーグル]級ヘリコプター搭載航空母艦[イーグル]は、艦隊総軍第2艦隊所属の水上艦部隊から派遣された、駆逐艦とフリゲートの護衛下で、連合陸海空軍と連合海兵隊、菊水総隊陸海空自衛隊、朱蒙軍陸海空軍等から派遣された、連絡将校たちを乗艦させていた。
大日本帝国陸軍南方軍司令官である、寺内寿一大将以下幕僚たちの姿もある。
[イーグル]は、ニューワールド連合軍連合海軍に加盟するイギリス海軍が保有する戦闘艦ではあるが、ヘリコプターの運用能力を有する、空母型統合作戦指揮艦である。
そのため、F-35BやAV-8Bといった、VTOL機の運用能力は無い(V-22[オスプレイ]の運用能力はある)。
統合作戦指揮室は、広く設計されているため、多くの連絡将校たちが、入室する事ができる。
因みに[イーグル]の統合作戦指揮室は2つあり、1つは第2艦隊及び指揮下に入った艦艇の指揮、監督ともう1つは南方作戦の指揮をとる南方軍幕僚及び連絡将校が使用する統合作戦指揮室だ。
全長210メートル、全幅35メートル、基準排水量2万3000トン、速力30ノットは、海上自衛隊[ひゅうが]型ヘリコプター搭載護衛艦に少し大きくした艦だ。
武装は、CIWSを除くと、艦首部分に連装対空ミサイル発射器が装備されているため、個艦防空能力はある程度高い。
南方作戦は、大日本帝国陸海空軍が、全力で攻略にあたっているため、派兵規模は、ハワイ攻略、フィリピン攻略、南太平洋攻略、北太平洋攻略作戦を遥かに上回る。
これまで、菊水総隊自衛隊の指揮、監督下、新世界連合軍の指揮、監督下で行われたが、南方攻略作戦は、大日本帝国陸海空軍を中核として行われる。
各参加軍等の指揮権は、各軍及び自衛隊に委託されているが、南方作戦全体に関わる作戦指揮権は、大日本帝国陸海空軍南方軍にある。
寺内が、[イーグル]に乗艦しているのは、そのためだ。
完全にデジタル化された情報処理システムと、情報指揮システム等は、南方軍傘下の各軍や独立部隊とは比べ物にならず、寺内自身も、部下や連絡将校の報告を受けるだけで、ほとんどを彼らに任せている。
「将軍。パレンバンに空挺降下を行った連合空挺部隊は、連合軍からの根強い対空砲火と秘密航空基地から離陸した迎撃戦闘機による妨害を受けて、全体の1割程度が予定降下地点とは異なる地域に、バラバラに降下しました」
連合陸軍から派遣されている将校が、報告する。
「安否は?」
寺内は、デジタル表示された、パレンバン地方の地図を見下ろした。
「不明です。一部の部隊とは交信ができましたが、他は不明です」
「捜索部隊の出動は?」
寺内は、パレンバンに降下した連合空挺部隊から、組織的行動が可能な部隊に、救出兼捜索部隊を組織するよう指示したが・・・参謀長の塚田攻中将が、意見を述べた。
「閣下。それは極めて困難です。安否不明の部隊は、連合軍の完全な勢力圏内にいます。例え、無事だったとしても、空挺降下を行った連合空挺部隊には、捜索兼救出部隊を臨時編制する余裕はありません」
「塚田参謀長の言う通りです。ジブチの監視部隊からの報告では、スエズ運河がサヴァイヴァーニィ同盟軍同盟空挺軍に占領される前に、ドイツ第3帝国軍籍の輸送船団と、イタリア王国海軍護衛艦隊が、紅海に出現した事を確認しています。さらに、スマトラ島、ボルネオ島等に、ドイツ第3帝国国防軍陸軍軽歩兵部隊を中核とした混成部隊が、派遣されている情報があります。枢軸国が、どのくらいの規模の兵力を投入しているか、わからない状況下で、パレンバン地方で、作戦行動中の連合空挺部隊から臨時部隊を編成するのは危険です」
連合陸軍に所属するデジタル迷彩服OCPを着込んだ、アメリカ陸軍の佐官が具申した。
「捜索、救出部隊を別に派遣する事は?」
寺内は、孤立した部隊の捜索、救出プランを諦めなかった。
「まずは、無人偵察機や有人偵察機を飛ばしましょう。捜索、救出部隊は、その後です」
「よし、では、早急にかかってくれ」
寺内の決定に、安否不明の部隊への捜索、救出行動の第1段階が行われた。
神野と路によって率いられた、第1空挺団及び朱蒙軍空輸特殊作戦旅団の隊員、兵士たちは、オランダ軍のパトロール部隊等に発見されないように慎重に前進した。
「待て」
神野が、手を挙げる。
後方の隊員、兵士たちが止まる。
「車のエンジン音だ」
「身を隠せ!!」
路が指示し、全員が伏せる。
整備された道には、ほど遠いが・・・完全な不整備な道、という訳でも無い。
草木に身を隠し、接近中の不明勢力を確認する。
アメリカ製ジープに分乗した、オランダ陸軍の分隊が現れた。
オランダ領東インド陸軍は、オランダ本国がドイツ第3帝国と講和後、インドシナ半島を拠点に連合国寄りの自由フランス軍が組織されたのと同時に、アメリカ製武器、兵器が供与された。
ジープには、水冷式重機関銃であるM1917が、搭載されている。
それが3輛・・・
神野と路は顔を見合わせると、言葉にせずとも、やり過ごす事にした。
その3輛が目の前を通過しようとした瞬間・・・先導車の地面が爆発し、先導車を吹っ飛ばした。
「地雷か!?」
路が、韓国語で叫ぶ。
残りの2輛が停車し、車載のM1917で周囲を警戒していると、機関銃手2人が銃声と共に地面に倒れた。
神野と路たちは顔を上げ、9ミリ機関拳銃とK2の引き金を引いた。
9ミリ機関拳銃は、目標を狙って、正確に無力化するでは無く、弾をばらまいて目標を制圧する、と表現すべき機関拳銃である。
神野は、9ミリ機関拳銃を撃ちまくり、オランダ兵を制圧する。
路以下、小銃を持つ射手たちは、その間にオランダ兵を沈黙させた。
「南方軍挺進集団第2挺進団だ!撃つな!」
神野や路たちが潜んでいた場所とは違う場所から、挺進兵たちが姿を現した。
彼らは、二式手動装填式小銃や指揮官用のM1短機関銃をベースに開発、量産された二式短機関銃を持って、神野たちの元に駆け寄った。
「南方軍挺進集団第2挺進団第6歩兵大隊斥候小隊です。我々は、連合軍の迎撃戦闘機で搭乗機を撃墜された。貴官たちは救出部隊か?」
斥候小隊に所属し、神野たちの前にいる挺進兵たちの中では、先任になる軍曹が尋ねた。
「我々も、君たちと同じだ。目的地と異なる地域に、パラシュート降下してしまった。現在、近くで墜落した輸送機の元に、向かっている」
「それなら、好都合だ。ここら近辺で、パラシュート降下した部隊が、集結している。自分は、このポイントで監視についている」
斥候小隊の分隊指揮官から説明を受けると、神野は、合言葉と場所を聞き、墜落地点に移動した。
彼らの話では、墜落した輸送機は炎上していたが、今は鎮火し、使える武器や無線機等を確認している最中のようだ。
パレンバン地方から直線で、最短距離の進軍で到着できる沿岸地域に、朱蒙軍海軍海兵隊第11海兵旅団は、大日本帝国海軍聯合艦隊第1特別陸戦隊の援護下で強襲上陸に成功した。
第1特別陸戦隊が、海軍で新設された落下傘による空挺作戦を実施する空挺部隊である。
聯合艦隊司令長官直轄部隊であり、横須賀鎮守府、呉鎮守府、佐世保鎮守府、舞鶴鎮守府、大湊鎮守府の各鎮守府内に編成されている特別陸戦隊に所属する陸戦兵を中心に、選抜された水兵、下士官、准士官、特務士官、士官たちで編成されている。
選抜された者の中には、艦隊勤務者もいるが、基本は陸上勤務者が中核である。
フィリピン攻略作戦や南太平洋での作戦に従軍し、実戦経験が豊富な第1特別陸戦隊と、常に予備部隊として作戦行動を共にした第2特別陸戦隊、本土で新設されたばかりの第3特別陸戦隊の3個隊編成だった。
現在では、第4特別陸戦隊の編制が完了し、後期訓練が行われている。
1個隊編成は、1個大隊強の900人であり、落下傘兵は800人、指揮所要員100人である。
64式7.62ミリ小銃改を携行した小銃中隊3個、62式7.62ミリ機関銃改や携行式対戦車火器を装備する火力支援隊1個、迫撃砲や速射砲を装備する砲隊1個である。
朱蒙軍海軍海兵隊第11海兵旅団第11水陸強襲車輌大隊は、第2特別陸戦隊と第11海兵旅団に所属する第11偵察大隊第1中隊の援護と支援を受けながら、海岸に上陸する。
海岸に上陸したKAAV7A1から吐き出された、同旅団に所属する第111海兵大隊の歩兵が、K2及びK3を持って展開する。
事前に、大日本帝国海軍聯合艦隊第1特別陸戦隊と、朱蒙軍統合特殊作戦軍海兵隊迅速対応大隊の1個中隊が、上陸予定地域及び橋頭堡予定地域を制圧していたため、連合軍からの妨害を受ける事無く、橋頭堡を確保した。
第11海兵旅団は、主力の歩兵部隊である3個海兵大隊、K1A1戦車で編成された1個戦車中隊、工兵中隊、兵站大隊等が上陸した。
橋頭堡を確保し、物資揚陸作業が順調に進んでいる中、第11海兵旅団長の施載准將は、自身の幕僚と、第1特別陸戦隊司令の堀内豊秋中佐及び幕僚たちと共に、作戦会議を行っていた。
通訳として、双方に韓国語と日本語の通訳技官がいる。
「[イーグル]からもたらされた最新の情報では、連合空挺部隊の1割が、予定降下地点を外れて、敵の勢力圏内で孤立している。南方軍司令官の指示で、彼らの捜索及び救出部隊を組織する事になった。堀内中佐、すぐに出せる兵力は?」
施の質問に、堀内付の通訳である特務士官が、堀内の言葉を通訳する。
「1個小銃中隊を、投入する事は可能です。これに1個火力支援小隊と、砲小隊を組み込みます」
堀内が答えると、施付の通訳士官(尉官)が、通訳した。
「では、こちらも1個偵察中隊と、1個戦車小隊を引き抜き、1個海兵中隊を中核に捜索、救出部隊を編成する」
捜索、救出部隊を臨時編制すると、次の議題に移った。
「当初の作戦通り、我々は2日以内に、パレンバン地方に降下した連合空挺部隊と、合流しなければならないが、移動ルートの確保を担当する、陸軍挺進集団第1挺進団第1歩兵大隊からは、何の連絡も無いか?」
「定時連絡が2回に渡り、途絶えましたが・・・これは当初の作戦計画通りで、何らかの不具合及び不測の事態が発生し、3回までの定時連絡が無い事は、想定されています。いかに、屈強な精神力を持つ日本陸軍でも、これだけの大規模な作戦で、複雑な行動計画ですから、このような事態もあるでしょう」
作戦担当の幕僚である、中佐が告げた。
「堀内中佐は、どう思う?作戦参謀は、そう言っているが、2回も定時連絡が無いのは、誤差等を想定した予定範囲内か?」
施は、堀内に顔を向ける。
「私も、作戦参謀殿と同じ意見です。命令系統、通信系統が異なる連合空挺部隊1個師団強が参加し、複雑な作戦行動計画です。2回程度の通信途絶は、起きるかもしれませんが、念のために偵察機ないし、偵察部隊を投入する方が、いいかもしれません」
堀内の具申に耳を傾けながら、施は広げられた地図を見下ろす。
第11海兵旅団第11偵察大隊第2中隊は、深部偵察を専門とする偵察部隊がある。
彼らを投入する事に、問題は無いだろう。
施は決断し、深部偵察部隊である第2中隊を、投入する事にした。
朱蒙軍海軍海兵隊第11海兵旅団第111海兵大隊は、第11水陸両用車輌大隊と共に橋頭堡拡大と、連合空挺部隊との合流を目的とした、侵攻が行われた。
前哨部隊として、海軍聯合艦隊第1特別陸戦隊第1小銃中隊が前進する。
64式7.62ミリ小銃改Ⅱ型を携行する歩兵部隊であるが、新世界連合軍からは、特殊部隊に位置付けられている。
彼らは厳しい選抜試験に合格し、厳しい訓練に耐え抜いた猛者揃いである。
海軍陸戦隊(特別陸戦隊を中核)の中から、体力、知力、精神力に優れた者を選抜している。
例を出すなら、イギリス海兵隊の特殊部隊である特殊舟艇部隊(SBS)に近い。
力だけでは無く、知恵だけでも戦えるように訓練、教育されている。
海軍空挺部隊では、迷彩服が導入されている。
これは、陸海空軍とは異なる。
陸軍では濃い緑色の戦闘服、海軍は陸戦服、空軍は警備服と言った迷彩色の戦闘服では無く、完全な迷彩服である。
第1特別陸戦隊第1小銃中隊が最前衛に着き、前進していると、地図にも乗っていない村を確認した。
中隊長である大尉が、村を双眼鏡で確認する。
「無線!」
中隊長は、無線兵を呼び、後続の本隊である第111海兵大隊本部に連絡した。
「こちら第1特別陸戦隊第1小銃中隊、半キロメートル先に地図にも乗っていない村を確認した。規模はかなり小さく、村人は推定50人程度・・・」
詳細に報告すると、第111海兵大隊本部から返信が来た。
「その程度の村なら、地図にも乗らないだろうし、この辺には、小規模な集落が、ごろごろあるだろう。何か引っかかるのか?」
「恐ろしく静かだ。この辺りなら、連合空挺部隊が空挺降下した話は届くだろうし、誰も慌てた様子が無い」
中隊長が報告すると、第111海兵大隊から再び返信が来た。
「了解した。他の小隊から何の連絡も無いか?」
「確認中だ」
中隊長が、他の小隊と連絡しようとした時・・・
別の小隊が、地雷原を確認した。
報告では、対人地雷から対戦車地雷まで、設置されているそうだ。
部隊を散開させると、複数箇所に地雷原あり、撤去しながら前進するよりも、迂回した方が早く到着できるだろうと、各部隊から報告が上がった。
地雷原だけでは無く、小隊叉はそれ以下で編成されたゲリラ部隊によるゲリラ戦や接触戦が繰り広げられた。
中隊長は、地雷原やゲリラ部隊と接触した位置情報を確認すると・・・
「これでは、とても最短予定期間以内には合流できない、な・・・」
中隊長は、安全策をとり、後続の本隊には地雷原等を迂回するコースを進言し、別部隊に地雷撤去や対ゲリラを要請した。
第111海兵大隊も、迂回する安全策を支持し、第1特別陸戦隊第1小銃中隊長の具申に従った。
マレーの虎 第3章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますがご了承ください。




