間章 第1章 アッツ島上陸
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
大日本帝国海軍聯合艦隊第4航空艦隊が、アラスカ州南部にあるダッチハーバーの軍事施設に航空攻撃を行っている頃・・・アリューシャン列島ニア諸島アッツ島沖に、聯合艦隊第3艦隊(聯合艦隊新艦隊編成計画で編成された水陸両用作戦艦隊)を基幹として、陸軍の1個支隊、海軍陸戦隊1個大隊を乗せた輸送船団と、海上護衛隊の護衛戦隊、菊水総隊海上自衛隊の多機能輸送艦[わかまつ]、新世界連合軍連合海軍艦隊総軍第1艦隊第1遠征打撃群が参加して、アッツ島攻略作戦が開始された。
上陸部隊の主力は、第3艦隊の新編成と同時に海軍で編成された、水陸強襲部隊と陸上自衛隊水陸機動団第2機動連隊、連合海兵隊総軍第41海兵遠征隊である。
上陸部隊主力の兵力は、6000名以上であり、予備部隊兼支援部隊として陸軍1個支隊(1個歩兵聯隊を基幹とした諸兵科連合部隊)と、大湊鎮守府特別陸戦隊から引き抜かれた1個大隊を合わせた、7000名程が参加している。
アッツ島では、アメリカ陸海空軍による基地建設が行われており、守備隊として陸軍が2000人、海軍は飛行艇部隊と哨戒艇部隊等を合わせた1000人、陸軍航空軍から独立したばかりの空軍2000人が、配備されている。
兵力数で言えば5000人だが、大統領直轄の連邦軍では無く、アラスカ州兵部隊と、アラスカ州防衛隊から選抜された、州兵及び民兵を陸海空軍に編入して、編成した守備隊、駐屯部隊である。
彼らの普段の任務は、大規模災害時の災害派遣任務(救助活動及び公共施設等の防護を含む災害警備)と、大規模犯罪叉は暴動等による治安維持任務である。
能力的に考えれば、新設されたばかりの大日本帝国海軍版海兵隊である水陸強襲部隊でも十分対処できるが、陸軍の水陸両用作戦集団と違い、彼らが編成されたのは最近である。
そのため、これだけの大部隊を投入したのだ。
第3艦隊独立旗艦である揚陸指揮艦[千歳]からの作戦開始命令が発令され、同艦隊で軽巡洋艦部隊が、アッツ島に向けて、艦砲射撃を行った。
揚陸指揮艦[千歳]は、史実では[千歳]型水上機母艦[千歳]を、揚陸指揮艦として艦種変更と改修し、上陸作戦時における水上艦艇部隊、陸上部隊、航空部隊の指揮、統制を行う専門艦だ。
第3艦隊は、異動した軍令部次長の伊藤整一中将の後任として軍令部次長に就任した井上成美中将が、水陸両用作戦専門艦隊として再編成し、改修予定の[千歳]型水上機母艦を2隻のうち、1隻が揚陸指揮艦として、もう1隻が水陸両用作戦艦隊の制海権支援、上陸部隊支援のために航空母艦として、それぞれ艦種変更及び改修された。
第3艦隊司令長官兼水陸強襲部隊司令官は、高橋伊望中将が勤め、艦隊参謀長と上陸部隊参謀長の2人がいる。
どちらの参謀長も少将が任命され、上官を補佐する。
「長官。上陸部隊の第1陣を、出撃させます」
「うむ」
高橋が、うなずく。
揚陸指揮艦[千歳]の作戦室では、上陸部隊、水上艦部隊、航空部隊の展開状況や、友軍部隊の状況等を細かく記載した海図と、上陸地点及び進行予定路を記入した、アッツ島の地図が並べられている。
「作戦段階は、予定通りに進んでいるか?」
高橋が、上陸部隊の参謀たちに聞く。
「はっ、多少の遅れは出ておりますが、どれも作戦検討段階で、予想された状況です」
第3艦隊上陸部隊参謀部の作戦参謀が、答える。
第3艦隊水陸強襲部隊の戦闘部隊は、上陸舟艇及び艦首部分が観音開きの門扉とその内部に歩板を有する基準排水量1500トン型揚陸艦で、上陸地点である海岸線に上陸した。
水陸強襲部隊は、海軍空挺部隊と同じく諸兵科聯合の聯隊編成である。
小銃等の小火器で武装した小銃中隊3個、汎用機関銃を武装した機関銃中隊1個、歩兵砲及び迫撃砲を運用する砲中隊1個で、1個大隊として運用される。
水陸強襲部隊には、戦闘部隊として2個大隊と水陸両用戦車である特二式内火艇と、空挺戦車として陸軍が導入している二式軽戦車で編成した戦車隊1個、対戦車砲及び野砲を運用する重砲隊1個がある。
小銃は、前聯合艦隊司令長官の山本五十六大将が兼務していた第1艦隊司令長官時代に、第1艦隊に配備されていた、64式7.62ミリ小銃改である(聯合艦隊再編により、64式7.62ミリ小銃改及び62式7.62ミリ機関銃改は、聯合艦隊独立旗艦と直轄艦隊に所属する水上艦部隊に配置換えされている)。
汎用機関銃は、62式7.62ミリ機関銃改であり、小銃中隊の火力支援として、大きく期待されている。
「前進!前進!橋頭堡を、確保する!!」
先遣部隊である大隊長が、各小銃中隊長に無線で連絡し、歩兵支援である二式軽戦車を先導に、アッツ島守備隊の水際防御に備える。
上陸した水陸強襲部隊第1陣は、前進を続けるが、上陸開始時は薄い霧だったが、時間が経過すると共に霧が濃くなった。
アッツ島守備隊からの水際防御が無い事を確認した水陸強襲部隊は、橋頭堡を築いた。
第3艦隊独立旗艦[千歳]の作戦室では、アッツ島の状況が報告されていた。
「アッツ島守備隊からの、大規模反撃が無い?」
高橋は、水陸強襲部隊、幽霊総隊陸軍水陸機動団第2連隊、連合海兵隊第41海兵遠征隊からの、それぞれの報告を受けて、つぶやいた。
「強襲上陸を開始しましたが、どこからも上陸阻止の水際防御は、ありません」
「アメリカ軍守備隊の兵力を考えれば・・・5000の兵力に対して、こちらは、約1万5000(予備部隊を含む)。攻者三倍の法則に、従っている。敵もそれを把握し、持久戦に持ち込む・・・という訳か」
高橋は、参謀たちの報告を受け、敵の意図を推測しながら、つぶやいた。
「確かに、その考えは間違いではありません。水際防御を放棄し、守備隊を内陸部に移動させ、我々を島の奥深くに引きずり込む・・・少数の守備隊が、大軍を破るには有効な戦術です。しかし・・・」
上陸部隊の先任参謀が言い終える前に、高橋も、彼が何を言いたいのか理解した。
「島嶼戦で、その戦法を使って勝利するには、増援部隊が来る事が前提でなければならない」
「その通りです」
「長官。アッツ島は厄介な事に、1年のほとんどを霧に覆われています。敵は、天候を利用し、味方同士の同士討ちを誘っている可能性もあります」
参謀たちの主張を聞きながら、高橋は、攻略作戦を慎重に進める事にする。
揚陸指揮艦である[千歳]は、菊水総隊や新世界連合軍と共同作戦、共同での打ち合わせを行えるように整備されている。
常に友軍との情報共有は、可能である。
「上陸部隊には、全周警戒を命じ、常に敵の奇襲攻撃に、備えさせろ」
高橋としては、これ以上の命令を出しようが無かった。
アッツ島の気候は、1年間のほとんどが曇り、雨、雪、霧であり、晴天は、1年に10日間程度だけである。
「霧が、濃くなったな・・・」
大日本帝国軍上陸部隊の橋頭堡を警備するのは、海軍大湊鎮守府特別陸戦隊から編成された、アッツ島警備隊陸上警備科隊第1中隊である。
日没を迎えて、アッツ島守備隊からの夜襲に備えていた、第1中隊長がつぶやく。
「各小隊長及び分隊長に命令を徹底させろ。合言葉を話さない者には、発砲しても構わん!」
中隊長は、指揮所から外の光景を眺めながら、無線兵に言った。
橋頭堡防御陣地で、小火器を武装する海軍陸戦隊警備兵たちは、交替で警備配置に着いていた。
彼らは七.六二粍小銃弾仕様に改良した、九九式手動装填式短小銃を携行している。
陸海軍全軍でも、未来から供与された自動小銃、半自動小銃、半自動短小銃を改良して、ライセンス生産を行っているが、すべての部隊が、新式歩兵携行火器に更新した訳では無い。
もちろん、単に、更新が完了していないだけでは無く、兵士の中には、新式歩兵携行火器への更新を望まず、従来の手動装填式小銃を好む者もいた。
特に、選抜射手に認定された射手が比較的多く、陸軍でも64式7.62ミリ小銃改に更新した部隊でも、選抜射手は、九九式手動装填式小銃(短小銃も含む)を好んで使用する。
海軍特別陸戦隊及び占領地の防衛、治安維持と拠点警備をするために編成されている警備隊や根拠地隊、防空隊、設営隊でも、手動装填式小銃が主力である。
特に海軍では、自動小銃、半自動小銃、半自動短小銃の導入、更新は陸軍、空軍、警察予備隊、海上警備隊、各国家地方警察管区で編成されている銃器警備隊と比べると、一番進んでいない。
「ん?」
警備配置についていた警備兵が、何かの音を微かに聞いた。
警備兵は、耳をすました。
「どうした?」
同僚が、聞く。
「野砲!」
その音の正体がわかった時、警備兵は叫んだ。
その場にいた全員が、身を屈める。
榴弾が近くに着弾し、炸裂する。
「敵襲!敵襲!」
榴弾の着弾と同時に、前方からアメリカ兵の叫び声と、銃を乱射する射撃音が響いた。
警備配置の警備兵からの叫び声で、第1中隊は、九九式手動装填式短小銃を構え、各小隊で配置されている九九式軽機関銃を武装した機関銃兵が安全装置を解除し、引き金を引く。
九九式軽機関銃も、七.六二粍小銃弾仕様に改良されている。
連射音が響き、霧の向かう側から突撃してくるアメリカ軍守備隊に、弾丸が撃ち込まれる。
「撃て!」
陸上警備科隊に配置されている、九五式軽戦車の九八式三七粍戦車砲が、吼える。
発射された砲弾は、榴弾であり、対人攻撃には十分な火力を有する。
未来から供与された新式戦車等は、対戦車戦能力、歩兵支援能力、敵陣地攻略能力が向上したのと引き替えに、重量が増大した。
陸軍機甲科が運用する、軽戦車に分類される一式支援戦車は、重量が18トンである。
九五式軽戦車は、7トン程度であり、輸送能力が低い艦や、後付けで輸送能力を備え付けられた艦にとっては、新式戦車よりも、運用が容易だった。
陸軍では、歩兵科運用の戦車として、海軍では、根拠地警備や、橋頭堡等の警備運用を目的にしているため、九七式中戦車や九五式軽戦車は、現役のポジションを維持している。
アメリカ軍守備隊陣地側で、九八式三七粍戦車砲から発射された榴弾が炸裂したのか、断末魔の叫び声が響く。
しかし、アメリカ軍アッツ島守備隊からの野砲や迫撃砲攻撃等もこちらに届き、味方陣地が吹っ飛ぶ。
「撃て!!撃ち続けろ!!」
指揮官の号令で、九九式手動装填短小銃を構えた小銃兵たちが、一斉射撃から個人射撃へと変わる。
橋頭堡への本格的攻撃と把握したアッツ島警備隊本部では、九七式中戦車を、もっとも攻勢が強い地点に投入した。
これと同時に、重機関銃小隊も投入し、アメリカ軍アッツ島守備隊からの攻勢を防いだ。
大日本帝国軍上陸部隊橋頭堡が、アメリカ軍アッツ島守備隊1個中隊程度の夜襲を受けた日の翌日は、晴天とは言えないが、ある程度の天候が回復した。
アッツ島に建設された、アメリカ空軍航空基地制圧のために、菊水総隊陸上自衛隊水陸機動団第2機動連隊1個中隊と、対戦車中隊から1個小隊と、連合海兵隊第41海兵遠征隊歩兵大隊B中隊及び武器中隊等から投入された混成部隊が、霧と夜の暗闇の中を、密かに飛行場付近まで接近していた。
比嘉が指揮する小隊も、飛行場制圧に参加している。
「行動開始時刻です」
小隊陸曹が、腕時計を確認しながら、上官に囁く。
比嘉は、小銃小隊の各班で1門装備している、84ミリ無反動砲による機関銃陣地攻撃を指示する。
84ミリ無反動砲を装備する砲手が、無反動砲を構える。
予備弾薬運搬手が、榴弾を装填する。
飛行場に設置されている高射砲や野砲陣地は、連合海軍艦隊総軍第1艦隊第1遠征打撃群防空中枢艦及び防空艦から発射されるトマホーク巡航ミサイルと、対地攻撃用砲弾による艦砲射撃で撃破するか、強襲揚陸艦から発艦した、AV-8B[ハリアーⅡ]による航空攻撃で撃破する手筈だ。
だが、巡航ミサイルやAV-8Bは、高射砲陣地や野砲陣地は破壊してくれるが、機関銃陣地や軽戦車部隊までは、面倒を見てくれない。
「攻撃準備完了」
小隊陸曹が、無反動砲による砲撃が可能である事を伝えた。
「撃て」
比嘉は、小さく命じた。
その瞬間、84ミリ無反動砲が、一斉に吼えた。
比嘉小隊が担当する機関銃陣地に、84ミリ榴弾が着弾し炸裂する。
他の場所でも、同じように炸裂音が届く。
それと、同時に飛行場方面から、もの凄い爆発音と衝撃波が響いた。
「野砲陣地及び高射砲陣地に、トマホーク及びペイブウェイが命中!」
中隊指揮所と無線交信を担当する、小隊長付無線員が報告する。
「・・・報告されなくても、爆音と振動、衝撃波が届くんだ。すぐに、わかるな」
比嘉は、数キロメートル先で火柱が上がるのを確認しながら、つぶやいた。
「ニュースや映画で、陸上部隊の攻撃前に、アメリカ軍やNATO軍等が、巡航ミサイルや、航空攻撃で、爆撃する光景がありますが、実際に生で見ると・・・腹の中で竜巻が発生したかのような感覚です」
小隊陸曹が囁く。
だが・・・その時、制圧する基地側で、さらなる爆発が起きた。
「何だ?」
「無線員!洋上叉は航空から、第2次攻撃するという報告は?」
明らかに行動計画に無い出来事が発生し、陸曹たちが不思議がる中、比嘉が無線員に確認をとった。
「何ですって!?もう一度、繰り返して下さい!!」
無線員が、再送を頼んでいる。
「貸してくれ!」
比嘉は無線員から、受話器を受け取る。
「中隊指揮所。状況はどうなっている?何故、第2次攻撃をする必要がある?」
比嘉が問いかけると、中隊指揮所でも混乱しているようだった。
「そのまま待て・・・」
その後、無線機から雑音が響いた。
「無線不調?」
「小隊長!空を!」
比嘉は状況を掴めないでいると、部下が1人、空に指を指しながら叫んだ。
「なっ!?」
比嘉は、言葉を失った。
空には無数の輸送機から空挺降下する落下傘兵や、空挺戦車等があったからだ。
間章 第1章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますがご了承ください。




