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真紅の旗 其れは革命の色 第13章 北太平洋海戦 1 アッツ島攻略作戦開始

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 大湊軍港を出港した菊水総隊海上自衛隊第5護衛隊群第9護衛隊イージス護衛艦[みょうこう]は、新世界連合軍連合海軍艦隊総軍第1艦隊ミサイル巡洋艦部隊[タイコンデロカ]級ミサイル巡洋艦[ポートランド]、同艦隊駆逐隊の1個隊から[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦[ファイフ]の2隻と共に、北太平洋に針路をとった。


「艦長。[ポートランド]艦長と、通信回線が繋がりました」


[みょうこう]の通信士が、艦長である箕田(みのだ)宗司(そうじ)1等海佐に報告した。


 箕田は、艦橋に設置されている受話器を取ると、[ポートランド]艦長のジョナス・フェネリー・ノダ大佐と直通交信を行った。





[ポートランド]の艦橋では、[みょうこう]からの通信を通信士が確認すると、ノダを艦橋に呼んだ。


「艦長。上がれます!」


 艦橋にいる、先任下士官が叫ぶ。


 アメリカ海軍のデジタル迷彩服を着た、薄い褐色の肌をした長身男性が、艦橋に姿を現す。


 彼が[ポートランド]艦長の、ジョナス・フェネリー・ノダ大佐である。


 名前からわかるように、日系アメリカ人である。


 正確には日本人としての血は、8分の1程度であるが、顔立ちは日本人に近い。


「艦長。[みょうこう]艦長からです」


 通信士が、ノダに受話器を渡す。


「[ポートランド]艦長の、ノダです」


「[みょうこう]艦長の箕田だ。新世界(ニューワールド)連合軍連合海軍作戦本部総長からの指示書は、届いているか?」


「本部総長の命令は、確認しています。[ファイフ]艦長も、命令を確認しました。本艦及び[ファイフ]は、[みょうこう]の指揮下に入り、艦隊行動を共にします」


「ノダ艦長の軍歴は、先ほど拝見した。中々の軍歴を持っているではないか、[アーレイ・バーク]級ミサイル駆逐艦の艦長だった時は、東シナ海及びマラッカ海峡等での海上警備行動に従事、[タイコンデロカ]級ミサイル巡洋艦の副長時では、アラビア海での作戦行動に従事した。貴官と共に肩を並べられるのは、とても光栄だ」


 箕田からの褒め言葉を、ノダは丁重に受け取った。


「大変恐縮です。自分も箕田艦長と共に同じ作戦に参加できるのは、とても楽しみにしておりました」


 ノダも箕田の経歴は把握しており、アメリカ海軍での彼の評価に、大変感銘を受けていた。


「[ポートランド]の士気は?」


「本格的な実戦を迎えられると知って、本艦乗員350人は、日々の訓練成果を出せると士気も最高潮に高まっています」


「それを聞いて安心した。貴艦と[ファイフ]の、奮戦を期待する」


 箕田はそう言った後、交信を終了した。





[ポートランド]との交信を終え、受話器を戻した箕田は、艦橋で司令席に腰掛ける隊司令である1等海佐(1等)に顔を向けた。


「司令。[ポートランド]及び[ファイフ]が、本艦の指揮下に入りました」


「うむ」


 隊司令は、小さくうなずいた。


 彼は基本的に、口数がかなり少ない人物である。


 そのため、元の時代でも他の隊司令等から、沈黙司令叉は無口司令等と、呼ばれていた。


 その名の通り、ほとんど喋らず、幕僚や彼の部下たちが物事を進める、というのが日常である。


 しかし、決断力や自己完遂能力は、他の隊司令とは比べ物にならないぐらい高く、まさしく『能ある鷹は爪を隠す』という格言を、絵に描いたような指揮官である。


 箕田自身も彼の事は理解しており、艦隊の指揮官として、もっとも信頼を寄せている。





 大日本帝国海軍呉鎮守府呉軍港から、新設されたばかりの第4航空艦隊が出港し、[みょうこう]、[ポートランド]、[ファイフ]の3隻と合流するために、北太平洋に針路をとった。


 第4航空艦隊は、回転翼機搭載航空母艦[鵬翔]航空母艦[大鳳]、[隼鷹]型航空母艦[隼鷹]と[飛鷹]、空母[龍鳳]の回転翼機空母1隻と正規空母4隻で編成された、空母機動部隊である。


 第4航空艦隊独立旗艦として回転翼機空母[鵬翔]、第6航空戦隊[隼鷹]と[飛鷹]と第7航空戦隊[大鳳]、[龍鳳]という編成である。


 空母護衛艦部隊として、軽巡洋艦を基幹とした防空駆逐艦、汎用駆逐艦、対潜駆逐艦が随行する。


 艦隊司令長官は、正規艦隊司令長官と同じく、中将が任じられた。


 第4航空艦隊司令長官として赴任したのは、細萱戊四郞(ほそがやぼしろう)中将である。


「何という巡り合わせだろうか・・・」


 細萱は、[鵬翔]の艦橋で、目の前の海上を眺めながら、つぶやいた。


 空母[鵬翔]は、開戦時の段階で旧式化しており、改修が必要だった。


 史実のような改修を行わず、対潜回転翼哨戒機及び人員輸送回転翼機を搭載する能力と、艦隊指揮艦としての機能を持たせるために改修された。


 新設された第4航空艦隊の最初の任務は、アリューシャン列島のアメリカ軍基地化の阻止と、アッツ島攻略である。


 未来の日本人から教えられた、この戦争の記録でも、彼はアリューシャン列島要地の攻略及び破壊を目的とした、AL作戦の指揮官だった。


 アッツ島沖海戦では、さまざまな不運等に見舞われ、第5艦隊司令長官兼北方部隊指揮官であった細萱は、解任の上に予備役に編入された。


「敗者復活戦・・・若しくは彼らの知る史実で、アリューシャン方面での戦いの結果を挽回するチャンスを与えてくれた訳か・・・」


 細萱は、そうつぶやきながら、双眼鏡を覗いた。


 彼自身も、未来の日本人から与えられた資料を研究し、同じ轍を踏まないように尽力した。


 第4航空艦隊が新設されるに辺り、司令長官職は、最初から彼であった。


(南雲長官の期待にも、応えなければならない・・・)


 実は、アリューシャン列島でのアメリカ軍要地の攻略及び破壊に対する指揮官として、細萱を軍令部に強く推薦したのは、秘匿艦隊司令長官から、空母機動艦隊司令長官に就任した南雲忠一(なぐもちゅういち)大将だった。


 南雲は、空母機動部隊独立旗艦である超正規航空母艦[回天]に、彼を招いた時に告げた。


「俺も、もう1つの歴史の中では、真珠湾奇襲作戦等で、完璧な成功を成し遂げる事は、できなかった。軍令部と聯合艦隊司令部との意見の食い違いから、規程通りの軍令部の意見を優先してしまった。全滅の覚悟も無く、戦に勝てるはずが無いのに・・・な。だが、彼らから与えられた情報により、挽回するチャンスを与えられた。それどころか、今や聯合艦隊が保有する全空母艦隊の、司令長官に任命された。貴官も、自らの意志で、自分の未来を切り開くべきだ」


 細萱は、南雲の言葉を思い出していた。


 すでに未来人から与えられた歴史の記録は消滅し、まったく異なる歴史が刻まれている。


 今、ここにいるのは、彼らの記録に存在した自分では無く、別人である。


「長官。択捉島単冠湾に、アッツ島上陸部隊が、輸送戦隊及び護衛戦隊と共に、集結を完了したそうです」


 通信参謀が、報告する。


「わかった」


 細萱は、通信参謀の報告を聞き、受け取った通信文に目を通しながら、うなずいた。


「陸軍1個支隊及び海軍陸戦隊1個大隊を乗せた輸送艦と、菊水総隊海軍の輸送艦と陸軍の1個大隊クラス及び新世界連合軍連合海軍揚陸艦部隊、連合海兵隊1個海兵遠征部隊・・・アリューシャン列島は、アメリカ合衆国の正式な領土だ。これは、准領土であったハワイ諸島の占領よりも効果的な打撃を、加えられるだろうな・・・」


 作戦が成功すれば、アメリカ合衆国本土に暮らすアメリカ国民は、衝撃を受けるだろうと、細萱は推測した。





 第4航空艦隊は、[みょうこう]、[ポートランド]、[ファイフ]の3隻と合流すると、細萱は神風艦隊(イージス艦で編成された3隻の艦隊の通称)の隊司令官と、3人の艦長を旗艦[鵬翔]に呼んだ。


 第4航空艦隊の空母4隻には、最初から回転翼航空機が搭載され、対潜哨戒や各空母等の連絡機として運用されている二式対潜水艦哨戒回転翼機が、各空母に3機ずつ搭載([鵬翔]には対潜哨戒機及び人員輸送機を合せて、11機を搭載である)されている。


 回転翼機空母[鵬翔]から発艦した二式人員輸送回転翼機は、4人の上級指揮官を空母[鵬翔]に乗艦させた。


 他の4隻の空母[大鳳]、[龍鳳]、[隼鷹]、[飛鷹]から航空戦隊司令官及び各艦の艦長、軽巡を基幹とする戦隊、駆逐隊等からも戦隊司令官、隊司令、各艦の艦長たちが集められた。


 アッツ島攻略作戦のための制海権確保、及び制空権確保等の海上作戦を、打ち合わせるためである。


 回転翼機空母[鵬翔]の飛行甲板に着艦した二式人員輸送回転翼機から、箕田が降り、飛行甲板に足をつけた。


 彼は、[鵬翔]と並行航行している空母[大鳳]の艦影に顔を向けた。


 装甲空母とも呼称される、大日本帝国海軍が導入した空母[大鳳]は、史実と同じく、飛行甲板に装甲板を張り、急降下爆撃機から爆撃に耐えられる設計が施されている。


 空母対空母の戦闘が、艦隊決戦の勝敗を分ける時期を見通し、空母の急所である、飛行甲板を守る事が重要になった。


 史実のミッドウェー海戦でも、アメリカ海軍の急降下爆撃機による爆撃で、4隻の空母が致命傷を受けた事が、いい例であろう。


 急降下爆撃機による爆撃でも、艦載機格納庫や機関室にまで、爆弾が貫通しないよう対策が施されたのが、本艦である。


 しかし、マリアナ沖海戦では、航空攻撃では無く、潜水艦による雷撃で致命的なダメージを与えられ、沈没するという結末だった。


馬場(ばば)代将、箕田大佐、ノダ大佐、オークス中佐。[鵬翔]乗艦を歓迎します」


 海軍陸戦服を着込んだ上級士官の男が、挙手の敬礼で出迎える。


「[鵬翔]艦長の、伊地(いち)(がき)(かおる)大佐です」


 伊地垣が、自己紹介をする。


 馬場は、イージス艦[みょうこう]に乗艦する隊司令である。


 彼の階級は1等海佐(1等)であるため、諸外国海軍では、代将という区分に分類される。


 オークスは、[ファイフ]艦長である。


「いかがでしたか、空の旅は?80年後の回転翼機と比べると、断然の差がありましょうが、変わった環境を過ごせましたか?」


 伊地垣は、穏やかな口調で話しかける。


「技術に、あまり大差はありませんでした」


 馬場が、短く答える。


 馬場は、基本、必要最低限の事しか言わないため、素っ気なく感じられるが、付き合いの長い箕田には、馬場が、乗り心地に相当満足しているのがわかる。


 因みに彼らの服装は、馬場と箕田は紺色の作業服姿で、ノダとオークスは海軍デジタル迷彩服姿だった。


「では、こちらへ」


 伊地垣が、回転翼機空母[鵬翔]の作戦室に、案内した。


 他の空母[大鳳]、[龍鳳]、[隼鷹]、[飛鷹]からも、発艦した二式対潜哨戒回転翼機が、空母[鵬翔]に着艦し、各航空戦隊司令官の少将と各艦の艦長(大佐)が、飛行甲板に足を付けた。


 彼らも箕田たちに形式的な挨拶をした後、回転翼機空母[鵬翔]の作戦室に向かった。


 第4航空艦隊に所属する各隊の司令官や司令、各艦の艦長たちは、回転翼機空母[鵬翔]には何度も乗艦しているため、案内は不要だが、箕田たちは史実の写真で[鵬翔]を見ただけであるから、案内は必要である。





 回転翼機空母[鵬翔]の作戦室では、第4航空艦隊司令長官と幕僚、各戦隊司令官、駆逐隊司令、各艦長たちが詰めている。


 その中に、馬場、箕田、ノダ、オークスの、4人もいる。


「アッツ島攻略作戦での第4航空艦隊の任務は、アメリカ合衆国アラスカ州ダッチ・ハーバーへの、空母4隻に搭載されている、艦載機180機の攻撃隊による航空攻撃を実施します」


 作戦参謀である中佐が立ち上がり、北太平洋の海図を見下ろしながら、作戦内容を説明した。


「ダッチ・ハーバーは、北太平洋での重要な軍事拠点であり、軍港には巡洋艦を基幹とした戦闘部隊が存在し、哨戒艇や水雷艇等の小型戦闘艦艇が、常時海上警備を行っています。軍港以外にも航空施設があり、陸軍航空軍、海軍航空隊、海兵隊航空隊が配備されています」


 ダッチ・ハーバーについての情報は、菊水総隊経由で与えられている。


 第4航空艦隊による航空攻撃は、通例の第1次攻撃と第2次攻撃に分けて行われるが、第1次攻撃は、奇襲に近い航空攻撃であるため、邪魔される事無く軍港機能と主要飛行場機能を抑える事ができる。


 しかし、第2次攻撃時は、他の航空施設から出撃した攻撃隊によって、第4航空艦隊は攻撃に晒される事になるであろうが、防空駆逐艦で編成されている駆逐隊や、汎用駆逐艦で編成された駆逐隊による対空砲火と迎撃隊による迎撃で、対処できると考えられている。


 第4航空艦隊の軽巡、駆逐艦は、電探連動の対空射撃が可能である。


 回転翼機空母[鵬翔]、空母[大鳳]、[龍鳳]、[隼鷹]、[飛鷹]の5隻にも、自艦防衛用の対空兵器が搭載されている。


 もちろん、防空能力が極めて高いイージス艦3隻が展開しているため、艦載のスタンダード・ミサイル2で撃墜する事ができる。


「アッツ島攻略部隊を乗せた輸送艦隊は、第4航空艦隊から後方に展開し、軽巡及び駆逐艦、フリゲートによる艦砲射撃も同時刻に行われます。我々は、ダッチ・ハーバーへの航空攻撃を終了しだい、アッツ島への航空攻撃も実施します」


 作戦参謀が説明した後、北太平洋の地図を、アッツ島の地図に変えた。


 アッツ島は、ハワイ諸島が攻略されてから、アメリカ陸軍と海兵隊が進駐し、航空施設と要塞化が行われていた。


(史実のアッツ島とは、逆バージョンという事か・・・)


 箕田はアッツ島の状況を思い出しながら、心中でつぶやいた。


 史実でのアッツ島では、1943年5月中旬から5月末ぐらいまで、大日本帝国陸軍守備隊と、アメリカ軍との激戦が行われた。


 アッツ島攻防戦は、大日本帝国軍の玉砕で、終息した。


 同島での戦闘結果は、大本営発表で初となる、玉砕が発表された激戦だった。


(もしかすれば、アッツ島のアメリカ軍も、玉砕覚悟の戦闘を行ってくるかもしれないな・・・)


 箕田は、ペリリュー島でのアメリカ軍と自由フランス軍の戦闘の結果は、知っている。


 最後まで降伏勧告を無視し、司令官命令で、無降伏命令が出された。


 戦う事ができない負傷兵以外は、全兵士が銃を持ち、徹底交戦した。


 東南アジアでも、同じ報告が上がっている。


 ボルネオ島とスマトラ島の油田地帯に、新世界連合軍連合陸軍空挺部隊、菊水総隊陸上自衛隊第1空挺団、朱蒙軍陸軍空挺旅団、大日本帝国陸軍挺進集団と、大日本帝国海軍空挺隊が大規模な空挺作戦を行い、油田地帯確保のために英蘭軍等と激戦を行っているが、イギリス軍やオランダ軍は、引く気配を見せないそうだ。





 歴史が逆行し、第1次世界大戦時の、無降伏主義が再び台頭してきたようだ。

 真紅の旗 其れは革命の色 第13章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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