真紅の旗 其れは革命の色 第5章 第1次防衛線の攻防 1 次世代防空兵器対カール自走臼砲
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
南大西洋上で、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟海軍と、4ヶ国連合艦隊が戦闘状態になっている頃、ソ連西部(ドイツ第3帝国軍占領地域)の第1次防衛線では、ロンメル、アイゼンハワー、モントゴメリーの3人の元帥が、防衛態勢の視察に訪れていた。
重戦車を主力とした防衛陣地を構築し、ティーガーⅠ、ティーガーⅡ、M26[パーシング]、センチュリオンを展開し、対戦車砲陣地、歩兵陣地が穴埋めをする。
対戦車砲は、12.8センチ砲のPaK44、17ポンド対戦車砲、M5対戦車砲等の対重戦車砲や、装甲車両、非装甲車両用の対戦車砲が、展開している。
歩兵部隊にも、携行式対戦車兵器をできる限り配備し、対戦車戦闘能力の向上に力を入れている。
さらに歩兵が携行する小火器は、すべて自動小銃であり、半自動小銃や手動装填式小銃では無い。
アメリカ軍とイギリス軍では、ドイツ第3帝国国防軍陸軍や大日本帝国軍、スペース・アグレッサー軍が、自動小銃を主力としている事を踏まえて、半自動小銃や手動装填式小銃では威力不足と判断し、両軍共同での火力が高く、歩兵が携行しても負担が少ない自動小銃開発に着手した。
アメリカ軍は、M1918A1をベースに、新しく歩兵携行火器として改良をする事にした。
主な改良は、重量の軽量化、ピストルグリップの追加である。
例を出せば民生用、警察用に製造された、M1918のモニターと、同じである。
イギリス軍は、南東諸島攻略作戦の時に使用された、クロムウェルを使用する。
ドイツ第3帝国国防軍陸軍は、SiG44である。
ロンメル、アイゼンハワー、モントゴメリーは、第1次防衛線司令部で、ドイツ帝国陸軍、アメリカ陸軍、イギリス陸軍の高級士官、上級士官からの説明を聞く。
「ヒトラー総統の命令で送られてきた、カール自走臼砲の展開状況は?」
ロンメルが聞くと、ドイツ帝国軍の高級士官である大将が、説明した。
「総統命令で届けられました、8輛のカール自走臼砲は、すでに展開を終えております。このうち、2輛を予備としまして、6輛を各2輛ずつに分けて、敵勢力に対して、火力支援砲撃、制圧砲撃を行います」
大将からの説明に、ロンメルはうなずく。
司令部作戦会議室で広げられた、ソ連西部の地図には、アメリカ陸軍、イギリス陸軍、ドイツ帝国陸軍の各1個軍が、第1次防衛線に展開され、軍傘下の各師団が、分散して配置されている。
「アメリカ陸軍航空軍所属の、戦略偵察機から緊急連絡が、入りました!!」
ドイツ帝国陸軍司令部付通信隊の、通信将校が叫ぶ。
「スペース・アグレッサー軍地上軍が、前進を開始!重戦車クラス1個連隊規模、機械化歩兵連隊規模2個!その他、ロケット弾や高射砲搭載のロケット部隊、高射部隊の存在を確認!」
「およそ、1個旅団クラス・・・か」
アイゼンハワーが、つぶやく。
「ですが、スペース・アグレッサー軍地上軍であれば、1個旅団規模でも、その武力は、1個軍規模に相当します」
モントゴメリーが、告げる。
2人は直接的には、太平洋でのスペース・アグレッサー軍と戦った経験は無いが、戦闘の詳細については、同じアメリカ軍、イギリス軍であるから、ドイツ第3帝国国防軍以上に、情報は多く持っている。
「ロンメル元帥、アイゼンハワー元帥、モントゴメリー元帥。作戦計画通りに、防衛戦を行います」
「頼む」
ロンメルが代表して、うなずいた。
ドイツ第3帝国国防軍陸軍下級士官であるツェーザル・ベッカート少尉は、第1次防衛線最前衛の、前哨陣地部隊の小隊長として、配置されていた。
ベッカートは、24歳の新米青年将校であり、小隊長勤務として配置されたのは、2年前である。
ベッカートは、塹壕の中で座り込んでいだ。
「隊長!手紙が、届いていますよ」
小隊長付伝令兵である兵卒が、手紙を持って、ベッカートの前に立った。
「隊長、手紙です」
「いつも、ありがとう」
「いえ。いつも隊長には、お世話になっていますから」
伝令兵は、顔立ちや声から、10代後半である事がわかる。
ベッカートに手紙を手渡すと、他の兵士たちに、残りの手紙を手渡しにいく。
小隊長付伝令兵は、17歳の少年兵である。
ドイツ第3帝国国防軍兵役適用年齢は、男女と共に、18歳以上である。
ただし、18歳未満から15歳以上の男女は、志願兵制度で軍務に付く事ができる。
17歳以下15歳以上の少年兵は、正規兵としての身分は与えられるが、18歳以上の兵士たちと同じ様に、戦闘部隊には配置されない。
主に後方支援がメインであり、輸送車両で運ばれた補給物資を、物資集積所に運びこむのと、弾薬等の補給兵である。
一定の基準と本人の意志で、伝令兵や将校付従卒として、配置される。
ベッカートは封筒を破り、中身を取り出す。
すると、封筒の中から1枚の写真が、出てきた。
写真には、今月産まれたばかりの息子と、妻の姿が映っていた。
自然と、ベッカートの表情から、笑みがこぼれる。
「おっ!何を、嬉しそうな顔をしているのです。隊長?」
厳つい顔には似合わない、笑みを浮かべながら、30代後半の軍曹が声をかけた。
彼は小隊軍曹であり、小隊長に対する助言、小隊長からの指示を的確に部下たちに指示する頼れる小隊軍曹だ。
「妻が、僕の息子の写真を送ってくれた」
「ほぉ~!それは、めでたい!!」
そう言って、小隊軍曹の顔が、さらに嬉しそうな色を、濃くした。
「おい!お前等!!俺たちの隊長に、子供できたぞ!」
小隊軍曹が振り返り、ベッカート小隊に明るい話題を出した。
小隊に所属する兵士たちは、みんな、祝福の声を上げた。
前哨陣地は、本隊が防衛展開する地点から、さらに前方に展開する陣地であり、部隊である。敵からの攻勢があれば、敵の戦闘斥候部隊と、最初に激突する。
前哨陣地は、前哨基地でもあるため、配置されている歩兵部隊は、最低限の人員と歩兵携行火器、監視機材があるだけである。
敵軍からの総攻撃を受ければ、まず全滅する。
前哨部隊は、基本的に敵からの攻撃を受ければ後退し、本隊に敵勢力の規模等を報告する義務がある。
そのため前哨部隊は、常に緊迫した空気が流れてしまい、兵士たちの精神的ストレスは、大きい。
それだけに明るい話題が、いかに大事か・・・
前哨部隊では、小さな明るい話題でも、兵士たちの士気の向上が見られる。
だが、そんな明るい空気は、長く続かなかった・・・
「敵襲!敵襲!」
敵襲を知らせる警報が、発せられた。
「総員、戦闘配置!!」
ベッカートは、SiG44を持って、塹壕に設置された銃眼から外を覗いた。
耳をすすませると、遠くから戦車の稼働音らしき音が、聞こえる。
「小隊長!敵軍は、1個旅団規模!恐ろしい兵器を持っているそうです。旅団司令部からは、絶対に油断するなと、全部隊に通達されています」
無線兵からの報告を聞くと、ベッカートは、射撃準備の命令を出した。
ベッカート小隊の小隊兵たちが、MiG44を構える。
ドイツ帝国国防軍陸軍第101独立重砲兵軍第101重砲兵旅団第801重砲兵大隊に所属する砲兵たちは、自分たちが運用する、カール自走臼砲の発射準備を行っていた。
カール自走臼砲を運用する第101砲兵旅団では、傘下に5個砲兵大隊、5個補給大隊、3個重量物輸送大隊等で編成されている。
その内の各1個大隊が、ソ連に投入されていた。
「急げ!北アフリカ戦線に派遣された、第811重砲兵大隊に負けるな!!俺たちは、ここで手柄をあげるぞ!!」
中隊長付上級下士官が、下士官や兵卒たちを奮い立たせる。
カール自走臼砲の初陣は、北アフリカ戦線だった。
イタリア王国陸軍第10軍と空挺部隊は、エジプト侵攻の緒戦で勝利し、ドイツ帝国国防軍アフリカ統合軍団(陸軍と空軍)と、共同でエジプトの掌握を目指した。
イギリスは、エジプト防衛のために、イラクやインド等のイギリス海外領土から駐留イギリス軍(正規軍)増援部隊を出させ、アフリカ、中東からも現地民を徴兵し、義勇軍を編成して、エジプトに送り込んだ。
イタリア王国陸軍第10軍と、ドイツ帝国陸軍アフリカ統合軍団は、増強されたエジプト駐留軍及び防衛軍の巧妙な遊撃戦で進撃速度が鈍り、その一瞬の隙を突かれた状態で、正面戦闘を挑まれた。
第10軍とアフリカ統合軍団(陸軍)は、崩壊危機に直面したが、展開していたカール自走臼砲による支援砲撃で、崩壊の危機は回避された。
「大尉。スペース・アグレッサー軍の情報収集能力、情報分析能力は、かなり高いと聞いている。切り札とも言えるカール自走臼砲の存在及びスペックは、知られているのでは無いか?」
第801大隊の指揮官である少佐が、もっとも信頼する腹心の部下に、自分の懸念を語った。
「その可能性もあります。これまで太平洋で大暴れをしているスペース・アグレッサー軍と、それに支援された大日本帝国軍は、まるでアメリカ軍やイギリス軍等の連合軍の行動がわかっているような展開をしていました。ですが、完全に対処できる訳でもありません。大日本帝国本土空襲が、いい例です。何も恐れる必要は、無いかと存じます」
大尉の言葉に、心配性である少佐は、少し心配事が無くなった感じがした。
「そうだな。考えるのは、止めておく事にする」
少佐がつぶやくと、大隊本部付の無線兵が報告する。
「第1斉射準備完了!」
無線兵からの報告に、少佐は叫んだ。
「ファイエル!!」
大隊指揮官の射撃命令で、展開していたカール自走臼砲6輛の内、3輛の砲口から凄まじい咆吼が上がった。
咆吼と衝撃波が、周囲に拡散する。
カール自走臼砲は、威力絶大の60センチ砲弾である。
ただし、威力は絶大だが、射程距離が短いという重大な問題がある。
カール自走臼砲は、堅固な要塞陣地の攻略、無力化を目的に開発された超重榴弾砲である。
直撃しなくても、至近で炸裂されれば、凄まじい衝撃波で、重戦車も無事ではすまない。
特に、その後方で展開している機械化歩兵部隊は、もっと悲惨な目に遭う。
相手が自分たちと同じ軍隊であれば、何も恐れる必要は無いだろうが・・・
残念ながら、その相手は、80年後の時代から送り込まれ、次世代新兵器を数多く配備した、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟陸軍に属する、旧ロシア連邦陸軍の機械化歩兵旅団である。
サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟陸軍第1軍集団第4諸兵科連合軍第401独立自動車化狙撃旅団第401戦車大隊は、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟陸軍総局司令官直轄軍集団から派遣された戦車中隊と共に、モスクワ奪還作戦を開始した。
第401戦車大隊は、第3世代主力戦車であるT-90Aが、配備されている。
しかし、総司令官直轄軍集団麾下の戦車部隊は、次世代主力戦車とも言うべき、第5世代主力戦車のT-20である。
同じく、新戦車とも説明すべき第4世代主力戦車に分類されるT-14は、第1軍集団麾下の戦車軍及び一部の諸兵科連合軍師団の戦車部隊に、配備されている。
「やれやれ。いくら初陣だからとはいえ、太平洋やアジアで大暴れをしている、日本国自衛隊、韓国軍、ニューワールド連合軍に、自分たちの存在を見せつけるために、新戦車を投入する意味があるのか?連中も馬鹿では無い。東アジアでの小国の核開発問題や、その技術力が極めて高い、という事を知っているのだ。同じ轍は踏まないだろうに・・・」
T-90AKに搭乗する大隊長である中佐が、車長席に設置されている液晶モニターを眺めながら、つぶやいた。
T-90AKは、全周旋回式高性能カメラを搭載しているため、そのカメラ映像を見る事で、大隊長以下中隊長クラスは、戦局を即座に把握する事ができる。
「旅団司令部から作戦行動中の部隊へ、敵勢力方面から、3発の大口径砲弾の発射を確認した。無人偵察機からの情報では、カール自走臼砲の砲弾と確認!」
旅団司令部からの報告に、大隊長は涼しい顔で、つぶやいた。
「連中のお手並み拝見と、いきますか・・・」
第401戦車大隊麾下の3個の戦車中隊以外に、防空中隊が新設されている。
防空中隊は、戦車大隊に1個という形で配置されており、3個の防空小隊と、特殊防空小隊1個という編成だ。
「接近中の砲弾を、対砲レーダーが探知!」
特殊防空車に搭乗する、レーダー員兼火器管制員が叫ぶ。
「迎撃しろ!」
車長が、叫ぶ。
「索敵から迎撃に、変更します!」
レーダー員兼火器管制員が、コンピューターを操作した。
特殊防空車上部に設置されている探照灯のような物が旋回し、対砲レーダーが捕捉した飛翔中の砲弾に向き、青色の光る棒と表現すべき、光線が一直線に照射された。
特殊防空車は、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟海軍西海攻略艦隊旗艦である[キーロフ]級重原子力ミサイル巡洋艦[ジダーヌフ]が装備する指向性エネルギー兵器を、車載用に開発したレーザー兵器を搭載している。
照射されたレーザーは、カール自走臼砲から発射された砲弾の先端を急速に加熱し、溶かしていき、やがて、内部の炸薬が過熱により、空中爆発を起こす。
この間、約数秒である。
カール自走臼砲から発射された3発の超榴弾は、南大西洋の時と同じく、空中で迎撃された。
「どうやら次世代兵器の優位性が、実戦で証明された。という訳か・・・」
T-90AKで、大隊長はつぶやく。
「今の砲撃で、カール自走臼砲の位置は、完全に把握できた。あれの破壊は、空軍に任せる事にしよう」
モスクワ及び、旧ソ連の領土だった土地を奪還する陸軍部隊の近接航空支援や、制空権確保のために、サヴァイヴァーニィ同盟軍同盟航空宇宙軍防空総軍第1防空軍第14防空軍団麾下の防空戦闘攻撃連隊のMiG-29SMTは、3機編隊4個の12機で、友軍地上部隊の上空で、待機飛行をしていた。
「カール自走臼砲の位置を確認した。ミサイル発射用意」
4機編隊の内の1個隊が、カール自走臼砲が展開する3ヶ所の陣地に向けて、空対地ミサイルの発射準備を行う。
4機のMiG-29SMTから、それぞれKu-29空対地ミサイルが、発射される。
Ku-29は、Su-29[フランカー]やMiG-29[ファルクラム]といった、ロシア空軍の戦闘攻撃機に搭載可能な空対地ミサイルであるため、補給の問題が起こりにくく、作戦上の問題も起こりにくい。
射程距離は短いが、威力は絶大である。
MiG-29SMTのコックピットにある液晶モニターの1つに、Ku-29のテレビカメラからの映像が、映し出される。
Ku-29は正確にカール自走臼砲に突撃し、画面一杯にカール自走臼砲を捕らえた時点で画面が消えた。
真紅の旗 其れは革命の色 第5章をお読みいただきありがとうございます。
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