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死闘南方戦線 第21章 コタ・バル強襲上陸

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 大日本帝国陸軍水陸両用戦闘集団第1水陸両用旅団は、海軍の一号型高速輸送艦で編成された、高速輸送艦隊第2輸送隊に乗り込み、イギリス領マレー半島コタ・バルに接近しつつあった。


 史実のマレー半島攻略作戦も、コタ・バルに強襲上陸作戦した。


 しかし、陸軍参謀本部が計画した、マレー全体の攻略所要日数等の問題で、作戦そのものに、いくつかの不備が存在し、数多くの戦傷兵を出した。


 今回は、陸軍参謀本部と海軍軍令部が、未来から渡されたマレー半島等の東南アジアでの戦闘記録を研究し、新たに南方攻略作戦を作成した。


 コタ・バルでは、イギリス陸軍の1個旅団と、現地民から徴兵した義勇軍1個准旅団が、防衛陣地を構築している。


 史実と異なり、作戦準備段階を大幅にとったため、東南アジア方面の連合国に属する駐留軍に、防衛態勢構築の時間を与えてしまった。


 だが、こちらも万全の策で、南方攻略の準備が整っている。





 イギリス領マレー半島と、タイ王国との国境線付近で、ニューワールド連合軍連合支援軍陸軍第2諸兵科連合戦闘団第12歩兵連隊が、大日本帝国陸海軍の作戦開始に合せて、攻勢に出る態勢だ。


 同部隊は、80年後のタイ王国陸軍から派遣された戦闘部隊だ。


 タイ王国は、1940年代でも東南アジアでは数少ない独立国であり、太平洋戦争時では、大日本帝国の同盟国として、南方攻略から防衛等の重要な戦略拠点だった。


 しかし、裏では連合国とも積極的な外交を行い、万が一の事態に備えていた。


 そんな彼らに、非公式に接触したのが、未来のタイ人である。


 第12歩兵連隊は、同戦闘団に属する戦車大隊、砲兵大隊と共に電撃戦を仕掛け、大日本帝国陸海軍の上陸作戦を援護する。


 M48A5で編成された1個中隊が、エンジンを唸らせながら、進撃開始時刻を今か、今かと待っている。


 第12歩兵連隊所属の1個大隊は、近接戦闘に備えてM16A2に銃剣を取り付け、匍匐姿勢のまま待機していた。


 そして・・・進撃開始の時刻を迎える。


「進撃開始!!進撃開始!!」


 統合作戦指揮を行う大隊本部から、直接命令が下る。


 その瞬間、長い時間をかけて戦車や戦闘車両を巧妙に隠蔽し、偵察機や国境警備の観測所から発見できないように配置していた、機甲部隊が一斉に動き出した。


 イギリス陸軍国境警備部隊の監視所の監視員たちは、突然現れた重戦車クラス(区分は中戦車)に驚愕した。


「敵襲!!」


 監視所に配置されていた、イギリス兵が固定電話に飛びつき、緊急連絡した。


「日本軍か!?タイ軍か!?敵勢力の規模は!?」


 観測隊本部から報告が、求められた。


「重戦車クラス1個中隊以上!!その他、車輌が多数・・・」


 監視兵の報告は、そこで終わった。


 鼓膜が破れるかと思うような、不快な雑音の後、突然通信が切れた。


 陸上部隊だけが、攻勢に出る訳が無い。


 地上部隊の進撃開始と同時に、タイ王国に配備されていた、連合支援軍空軍に属するF-16Aが出撃し、監視塔及び通信施設に、対地ミサイルを撃ち込んだ。


 タイ王国が、大日本帝国と同盟関係である以上、タイ王国を拠点に大日本帝国陸軍が、マレー半島に南進する事は予想されていたため、イギリス軍は、国境方面に国境警備隊の増強と、1個旅団を防衛部隊として配置していた。


 それと、タイ王国と大日本帝国との海上交通路を遮断していたため、戦車や重砲等を持ち込む事はできないと判断していた。


 しかし、これだけの大部隊が、一度に投入される事など、想定外だった。


 国境警備部隊は、小火器と機関銃程度の武装であり、旧式とは言え、第1世代叉は第2世代に区分されるM48A5戦車や、M16A2で武装したタイ王国陸軍1000名規模の電撃戦に対処できる訳が無い。





 イギリス領マレー半島と、タイ王国との国境線で、新世界連合軍連合支援軍陸軍の諸兵科連合部隊2000名が南進したと同時に、コタ・バルに接近した輸送艦隊第2高速輸送隊から水陸両用戦闘集団第1水陸両用旅団と海軍陸戦隊沿岸強襲制圧隊(日本帝国海軍陸戦隊傘下に新設された海軍版の海兵隊)の第1陣を搭乗させた上陸舟艇と、陸海軍で共同開発した水陸両用多用途車である特二式内火艇が出撃した。


 上陸舟艇は、1艇で歩兵だけなら2個小隊を搭乗させる事ができるが、一式支援戦車や一式汎用戦車も運ぶ事ができる。


 特二式内火艇は、史実に登場した同名の水陸両用車とは違う。


 どちらかと言うと、特三式内火艇に近い。


 四七粍戦車砲と車載式汎用機関銃を武装し、軽戦車程度の戦車砲に耐えられる装甲板を装備している。


 乗員5人以外に、完全武装の歩兵を5人、乗り込ませる事ができる。


 第1陣が、一号型高速輸送艦や輸送駆逐艦から出撃したと同時に、護衛の駆逐艦や軽巡洋艦から上陸援護のために、艦砲射撃が行われた。


 さらにタイ王国に進駐させた一式陸上攻撃機壱型が出撃し、上陸地点のイギリス陸軍防衛陣地に、空爆を加えた。


「海岸乗り上げまで、1分!」


 上陸舟艇を操縦する、陸軍船舶工兵科の伍長が叫ぶ。


「上陸後、英軍からの激しい攻撃を受ける。訓練通りに砂浜に乗り上げて上陸したら、バラバラに散らばれ!絶対に止まるな!!」


 第1水陸両用旅団第1水陸歩兵聯隊第1大隊第2中隊長である大尉が、部下たちに注意した。


「海岸乗り上げまで、5、4、3、2、1!」


 伍長が叫ぶと、上陸舟艇が砂浜に乗り上げた。


 前部ランプが、開放された・・・


 だが、海岸に構築されていたイギリス陸軍のトーチカ等から、重機関銃や軽機関銃による銃撃を受け、身を隠す場所がほとんど無い砂浜に展開した水陸歩兵聯隊所属の歩兵や、沿岸強襲制圧隊に所属する海軍陸戦兵たちは、一溜まりも無い。


 機関銃の掃射により、彼らは次々と血を流しなら絶命する。


「前方のトーチカを吹っ飛ばせ!!」


 特二式内火艇の艇長である、軍曹が叫ぶ。


「了解!」


 砲手である兵長が照準を合わせて、四七粍戦車砲に装填された榴弾を発射する。


 榴弾の直撃により、トーチカが吹っ飛ぶ。


 第1水陸歩兵聯隊第1大隊の兵士たちは、64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型や、7.62ミリ汎用機関銃改で武装しているため、歩兵携行火器の火力は、かなり高い。


「撃て!!撃て!!」


 小隊長の命令で、兵士たちは64式7.62ミリ小銃改Ⅰ型を、発砲する。


 トーチカや野戦陣地は、すべて木製と土嚢で構築されており、命中箇所にもよるが、上手く行けば土嚢の隙間を弾丸が通り、そのまま内部の兵を倒す事もできる。


 威力の高い7.62ミリライフル弾を使用しているため、例え急所を外しても、撃たれた兵は、戦闘を継続する事が、かなり不可能に近い。


 特二式内火艇を盾にしながら、水陸両用作戦を行える歩兵部隊や、海軍陸戦部隊は、前進を続け、活動範囲を徐々に広げていく。


 第2陣の上陸部隊が上陸し、第1水陸両用旅団第1水陸砲兵大隊や、戦車部隊が砂浜に乗り上げ、歩兵支援の火力が一層向上した。


 防衛戦を展開するイギリス陸軍では、タイ王国から極めて強力な連隊規模の兵力が南下し、コタ・バルにも大日本帝国陸海軍が上陸した事により、各旅団の上位部隊である師団司令部では混乱していた。



 マレー半島北端部の防衛と、警備を任されているイギリス陸軍マレー駐留軍団第10師団司令部では、タイ王国から南進したスペース・アグレッサー軍地上軍と、コタ・バルに強襲上陸した大日本帝国陸海軍の同時侵攻に、対応を求められていた。


「師団長!予備として配置している1個旅団を投入しましょう!国境線及びコタ・バルの防衛は放棄し、防衛戦を展開している2個旅団には、後退命令を出してください。第2次防衛線を主戦場にすれば、守りきれるはずです!」


 参謀長の具申に、師団長は腕を組んだまま黙っていた。


「ですが、参謀長!スペース・アグレッサー軍地上軍と、大日本帝国陸軍が合流すれば、第2次防衛線での防衛戦は、不可能です!」


 作戦担当の参謀が、主張する。


「いや、これまでの経験から、恐らくスペース・アグレッサー軍地上軍も、大日本帝国陸海軍も、我々がジョンブル魂を背景に、最後の一兵が死ぬまで持ち場で抵抗する事を想定しているはず。よもや我々が後退し、残存部隊と無傷の1個旅団を再編し、防衛戦をするとは考えていないだろう、彼らが合流すれば、指揮系統や命令系統の違いで、多少の混乱が生じる。そこで、一気に攻勢に転じれば、我々が優位になる」


 参謀長の主張に、師団長が腕を解いた。


「参謀長の推測は、理に適っている。それで行こう」


 師団長の決断に、参謀たちがうなずいた。


 命令はただちに伝達され、国境方面及び上陸地点で、激戦を繰り広げている傘下の旅団司令部に、後退命令が出された。


 第10師団の傘下には、3個の正規軍旅団と4個義勇軍准旅団が編成されており、第2次防衛線には、1個旅団と2個准旅団が配置されている。


 残存部隊と合流すれば、いかに強力な新兵器や未知の兵器を取り揃えていようとも、簡単には突破できない。


「通信参謀!空軍に連絡して、戦闘機と爆撃機による上空援護を要請しろ!」


「イエス・サー!」





 第10師団展開地域上空を担当するイギリス空軍の航空基地では、同師団司令部からの航空支援要請を受けて、エプロンで待機していた戦闘機ホーカーハリケーンが、エンジンを始動し、離陸準備を行っていた。


「急げ!急げ!」


 出撃命令を受けて、先任下士官が、拡声器でパイロットたちに叫ぶ。


 航空基地のレーダー員が、同航空基地に接近する無数の航空機群を探知した。


 しかし、探知した方位、及び速度と高度が、イギリス空軍の規定された飛行ルートであったため、すぐに反応できなかった。


「複数の飛行物体を探知!こちらに接近中です!」


 レーダー員の軍曹が、叫ぶ。


「味方の増援部隊か?無線で確認しろ」


 基地司令官である大佐が告げる。


「・・・・・・」


 だが、軍曹の顔色が変わった。


「軍曹!?」


 基地司令官が怒鳴るように叫ぶと、軍曹は振り向き、答えた。


「違います!味方では、ありません!!」


 軍曹の報告に、基地司令官は言葉を失い。口に咥えていた煙草を落とした。


「接近中の航空機群が、増速!!スペース・アグレッサー軍です!!」


 誰かが報告するが、基地司令官は、司令部の窓に近づき外を見ていた。


 低空で高速接近中のジェット戦闘機群が、目視で確認できるぐらいまで接近し、その機から無数のロケット弾が発射された。


 エプロンで離陸準備をしていたハリケーンや、その他の航空機は、離陸する余裕すら与えられず、ロケット弾の餌食になった。


 パイロット、整備兵、警備兵たちが、ロケット弾攻撃と機銃掃射の中を逃げ惑う。


 航空基地を攻撃したのは、ニューワールド連合軍連合海軍艦隊総軍第3艦隊第4空母戦闘群原子力空母[フォッシュ]から発艦した、戦闘攻撃機ラファールである。





 国境方面と上陸地点で防衛戦を展開していた2個旅団と、1個准旅団は、師団司令部命令で第1次防衛線から第2次防衛線まで後退した。


 どちらの旅団も、戦闘開始前より、3割から4割の損害を出していた。


 国境から南進した第2諸兵科連合戦闘団は、コタ・バルで橋頭堡を確保した大日本帝国陸海軍と合流した。


 大日本帝国陸軍水陸両用戦闘集団第1水陸両用戦闘旅団は、海軍陸戦隊沿岸強襲制圧隊に、橋頭堡及び物資集積所等の警備と防護を任せて、連合支援軍陸軍第2諸兵科連合戦闘団と合流して、そのままマレー半島攻略作戦計画通りに、南下する事にした。


 マレー北端部の防衛と警備を任されているイギリス陸軍第10師団参謀長の推測は、推測としては悪くない物であったが、両方の部隊は、最初からあらゆる事態を想定して、上級部隊(連隊以上の部隊)単位で幾度の訓練を実施していた。


 第1水陸両用歩兵聯隊内で編成されている歩兵支援砲中隊の主武装である一〇五粍榴弾砲が展開し、火力支援砲撃が行われた。


「第1砲撃隊!撃て!!」


 小隊長の命令で、傘下の一〇五粍榴弾砲4門が吼える。


 一〇五粍榴弾砲は、新世界連合から供与された105ミリ榴弾砲であるM102である。


 第2次世界大戦時に、アメリカ陸軍の師団砲兵部隊の主力榴弾砲であった105ミリ榴弾砲M101の後継として開発されたのが、M102である。


 軽量化が施されており、重量は1トン半以下である。


 このため、物資輸送能力の無い航空機でも、空輸が可能である。


 水陸両用戦闘集団では、傘下の水陸両用歩兵聯隊歩兵支援砲中隊に集中配備され、1個中隊に4個砲撃隊16門が配備されている。


 第1砲撃隊に続いて、残りの砲撃隊も砲撃を開始する。


 第2諸兵科連合戦闘団砲兵大隊の、155ミリ榴弾砲M198が火を噴き、第2次防衛線に展開しているイギリス軍の部隊が、後退してきた部隊と合流し、再編成を行っている時に榴弾の雨が降り注ぎ、部隊を混乱させる。


 榴弾砲による砲撃開始と同時に、戦車部隊、歩兵部隊が前進した。


 最寄りの空軍基地から出撃するはずだった、上空援護の航空部隊は、離陸前に新世界連合軍連合海軍艦隊総軍第3艦隊第4空母戦闘群から出撃した、ラファール攻撃隊による航空攻撃で叩かれているため、1機も上空にはいない。


 無傷の1個旅団と2個准旅団、3割から4割近い損害を出した2個旅団と1個准旅団が合流し、再編成中に砲撃を受けたため、余計に損害を多く出した。


「師団長!戦車2個中隊を基幹とした1個歩兵連隊強の連合部隊が進撃中です!」


 副官からの報告に、師団長が奥歯を噛みしめた。


「ここで将兵を無駄に死なせても、戦局が好転する事は無い・・・」


 師団長がつぶやき、副官に振り返った。


「撤退だ!撤退しろ!!」


「ですが!この状況下での撤退は、悪戯に犠牲を増やすだけです!」


「ある程度の犠牲は、覚悟の上だ!」


 師団長が、再度撤退命令を下した。


 副官は、師団司令部付の通信兵に、撤退命令を出すよう指示した。


「各部隊は、連隊長クラスの判断で撤退作業を開始するよう各旅団司令部に伝達しろ!」


 バン!


 副官が叫んだ時、後ろから拳銃による銃声が響いた。


「!?」


 副官が振り返ると、師団長がこめかみから血を噴き出しながら、地面に倒れた。


 彼の手には、拳銃が握られていた。

 死闘南方戦線 第21章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

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