死闘南方戦線 序章1 命知らずたちの独語
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ソ連軍や英蘭印連合軍が上陸作戦を開始する前、菊水総隊海上自衛隊第5護衛隊群(予備艦隊)旗艦の[ひゅうが]型ヘリコプター搭載護衛艦[ひゅうが]の航空機格納庫に、迷彩塗装された4枚の回転翼を装備する多用途ヘリコプターが、収容されていく。
その機影は、ベル412EPIであるが、少し異なる。
[ひゅうが]の格納庫に収容された航空部隊は、統合省防衛局長官直轄部隊陸上自衛隊の航空科部隊である特殊空中機動隊、通称[デアデビル(命知らず)]と呼ばれる、飛行隊の多用途ヘリコプターである、UH-2である。
UH-2は、陸上自衛隊航空科部隊の主力多用途ヘリコプターであるUH-1Jの後継機として、ベル412EPIをベースに開発された多用途ヘリコプターであり、アメリカ海兵隊の多用途ヘリコプターUH-1Y[ヴェノム]のような仕様である。
特殊空中機動隊隊長代理兼第1飛行隊長である伊沪段平1等陸尉は、格納庫に収容された4機のUH-2を見回した。
特殊空中機動隊第1飛行隊は、8機編成のUH-2が配備されている。
第2飛行隊は、4機編成のCH-47FJ(特殊空中機動隊が新設される時にアメリカ陸軍予備機として保管されていた同機を中古品として購入し、日本仕様に改修した)があり、2つの飛行隊を直接指揮する隊本部には、指揮官機として同じくUH-2が2機と、観測機として2機、通信設備や情報機材を搭載したCH-47FJを1機配備している。
「伊沪1尉。隊長代理の肩書きは、どうだ?」
特殊空中機動隊航空整備隊の准陸尉が、声をかける。
「隊長が、原隊復帰するまでの辛抱だ」
「そうだろうな。他の部隊や上層部からは、死神3佐と呼称され、自衛隊からも諸外国軍からも恐れられた空の死神・・・そして、隊長が創り上げた特殊空中機動隊は、遂には[デアデビル(命知らず)]と呼ばれた」
准陸尉の言葉に、伊沪は苦笑を浮かべる。
「ああ。姐御が原隊復帰したら、デアデビル隊は陸上自衛隊のヘリ部隊の中で、最も活躍する最精鋭飛行隊だ」
伊沪の言葉に、准陸尉が少しだけ表情を曇らせた。
「考えたくないんだが・・・姐さんは、今の部署に配属されてからは、大日本帝国陸軍の士官候補生や士官見習たちや兵卒たちからアイドル的扱いだから・・・相当、鬱憤が溜まっているぞ。実戦になれば姐さんの口癖であり、部隊モットーである、猪突猛進、敵を一切の容赦無く叩きのめせ、100の論議より、100の爆弾の投下。ミサイルの発射を議論するよりも、作戦を確実に成功させる秘訣、その言葉通りの攻撃が、連合軍の頭上に襲いかかる」
准陸尉の言葉に、伊沪がげんなりした表情を浮かべた。
武器弾薬の輸送管理等を担当する補給班が、チェックを終えて、班長が伊沪にチェック表を提出した。
UH-2は、2人のパイロットと3人の航空士、機関銃手以外に、8人の完全武装の隊員を乗せた状態で、12.7ミリ連装式機関銃叉は7.62ミリ連装機関銃を2器搭載し、対戦車誘導弾叉はロケット弾、誘導爆弾を搭載できる。
「まるで、ベトナム戦争のアメリカ陸軍航空部隊だな」
准陸尉が、つぶやく。
彼は50代であるから、ベトナム戦争(1970年代)時代の世代生まれに入り、テレビのニュースや新聞等も、幼いながらも見ただろう。
「確かに俺たちは、ベトナム戦争で空の騎兵と呼ばれたヘリ部隊の、自衛隊版かもしれないな・・・台風や悪天候下でも離陸し、孤立した友軍の救出や航空支援を行った」
伊沪は、ベトナム戦争に従軍した、ヘリ部隊の元パイロットの話を、思い出した。
「しかし、まあ・・・うちの姐御は、バリバリの過激派だからねぇ・・・死神モードの姐御の手綱を握れるのは、菊水総隊の山縣司令官じゃなくて、破軍集団の國仙司令官ぐらいだから・・・」
伊沪の脳裏に、死神の大鎌を振りかざして、連合国の軍人たちの首を、次々と刈り取っていく、隊長の姿を思い浮かべて、さらにゲンナリした。
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