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矛と盾 番外編 重い再出発

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 海軍軍令部で、北海道及び南東諸島での戦闘報告の詳細が、報告された。


「・・・・・・」


 軍令部総長の永野(ながの)修身(おさみ)大将は、軍令部次長の伊藤(いとう)整一(せいいち)中将と、総長室で天を仰いでいた。


 損害としては、第3航空艦隊第3航空戦隊に属する空母2隻が大破し、その他、海軍総隊司令部に属する軽巡洋艦、駆逐艦にもそれなりの被害を出した。


 空母2隻は、ドックで修理を行っているが、新造艦の急建造計画等や電子機器の整備やそれらの運用を行う技術兵や技術兵曹の育成及び士官の育成で、ほとんどの海軍予算が回されている。


 第3航空艦隊の再建は、いつになるか、まったくわからない。


「我々が、強行した作戦です・・・」


 海軍総隊司令長官である中将が、肩を落としてつぶやいた。


 もともとこの作戦は、未来の日本人たちによる戦争介入に批判的な海軍の高級士官たちによって行われた作戦行動であり、独断性がかなり強い。


「今さら、何を言っても遅い・・・軍令部では、このような事態になる事は、ある程度は把握していた」


 永野が、重たい口を開く。


「私を含めて、多くの海軍高級士官が彼らの存在に危機感を持ち、さらに彼らの活躍を快く思わない上級士官や高級士官もいました。しかしその結果、彼らと直截な面識が無く、本土から遠く離れた戦況を聞かされ、多くの下級士官や特務士官の不満を助長させる事態になりました。その責任は取らなくてはなりません」


 伊藤も、つぶやく。


「本土侵攻のみならず、本土空襲まで許したのだから、な・・・彼らが首都圏防空用に配備した・・・陸上型イージスだったか・・・あれが無ければ、東京の被害は想像もできない」


 永野が、東京の被害状況について、詳しく記載されている情報に、目を通した。


 もう1つの歴史の中で、日本が被る被害を知っている自分たちは、少なくとも被害を最小限に押さえる事ができたと知っている。


 しかし、国民のほとんどは、その事を知らない。


 連合国の行った行為に対し、報復を叫ぶ声は日増しに強くなっていく。


 だが、世界の動きは、もはや自分たちの予想を大きく逸脱していた。


「しかも、ソ連では彼らの時代で、彼らに敵対していた旧東側陣営により、スターリン以下その他の軍務や政務の高官が倒され、彼らによる新ソ連が建国されました。ある意味では、我々が予想していた以上の重大な事態になっています」


 伊藤の言葉に、永野もうなずく。


 彼の手には、中国の情勢についての報告書が手渡されている。


 すでに共産党は倒れ、中国の半分が彼らの手に落ちた。


「我々の力では皇国どころか、国民1人1人の安全も保障できない状況下に置かれてしまった」


 永野がつぶやき、伊藤は天を仰いだ。


 陸軍は、開戦前のいくつかの反乱行為により、陸軍内では大規模な改革が行われた。


 もちろん、警察、憲兵も同様であり、唯一海軍だけが、今まで通りの体制であったが、それも今日までであろう。


「さて、今回の失態の責任を、取りに行こうでは無いか」


 永野が総長室に設置されている時計の時間を見ながら、ソファーから立ち上がった。


 もちろん、2人もその後に続く。


 しかし、この一件での責任は、陸軍大臣の東條(とうじょう)英機(ひでき)大将(1942年1月1日付で中将から大将に昇進)、海軍大臣の及川古志郎(おいかわこしろう)大将、陸軍参謀本部総長の杉山元(すぎやまげん)大将、海軍軍令部総長の永野修身大将の4人は、解任される事は無かった(戦時下であるため、軍の最高幹部の解任叉は更迭を行えば、全軍の士気に関わると判断されたからだ)。


 ただし、陸海軍省及び、陸軍参謀本部と海軍軍令部の高級士官や上級士官たちの一部は、更迭か異動が命じられた。


 航空予備軍は、本土防衛や航空戦略においての重要性が明らかになり、これまで第3軍の新設に反対していた陸海軍部に認めさせる事に成功し、正式に空軍として新設、独立軍として創設された。


 これと同時に、空軍省が新たに新設され、初代空軍大臣に、人格者として満蒙のロレンス叉は、蒋介石にその人徳の高さを妬まれ、土匪原と呼ばれた土肥原(どいはら)(けん)()空軍大将(陸軍大将から転官)が任命された。


 土肥原は新設された統合軍(形だけの組織であった統合軍令部を改変し、改名した)情報局副長官も兼務する事になった。


 空軍作戦総本部総長には、鈴木率(すずきより)(みち)空軍中将(土肥原と同じく陸軍中将から転官)が、任命された。


 海軍航空隊出身の高級士官は空軍航空総軍司令部のポストに配置された。





「これは、どんな運の巡り合わせだろうな?」


 伊藤は、複雑な表情でつぶやいた。


 責任を取るという形で、軍令部次長を解任された伊藤の新たな配属先は、戦艦[大和]を旗艦とする、第1艦隊司令長官であった。


 自分の運命は、未来の日本人たちから教えられていた。


 この自分が、[大和]に乗艦する事になるとは・・・


 自分の力で、運命を逆転させろという事か?それとも、運命のままに[大和]と共に、海に沈めという事なのか?


「・・・運命に、唯々諾々と従うつもりにはなれんな。どうせなら、運命に抗う道を選ぶとしよう」





 日本本土防衛戦の後、大日本帝国海軍は、その編成を大きく変える事になる。

 矛と盾 番外編をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますがご了承ください。

 次回はこぼれ話を2話を投稿いたします。

 投稿予定日は12月19日を予定しています。

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