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矛と盾 第7章 共闘 連合空挺部隊

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 フィリピン共和国クラーク空軍基地のエプロンでは、日本、韓国、新世界連合軍の連合空軍(日本は航空自衛隊)の戦術輸送機C-130が、離陸準備をしている。


 その前では、菊水総隊陸上自衛隊第1空挺団第1普通科大隊、朱蒙軍統合特殊作戦軍団第21空輸特殊作戦旅団第1大隊、新世界連合軍連合陸軍フランス緊急展開軍第3即応展開師団第3落下傘旅団第2外人落下傘連隊第2中隊の各国陸軍兵(日本は陸上自衛隊)たちが、完全武装で整列していた。


 夜間に降下するため、全員の顔は迷彩塗装である。


 彼ら、連合空挺部隊が降下を開始するのは、南幸島飛行場である。


 英蘭印連合軍のイギリス陸軍空挺部隊に、奪取された飛行場を、奪還するのが彼らの任務だ。


 作戦内容は全員に周知させ、末端の士(兵)までもが完全に了解している。


 それぞれの指揮官が、自国語で部下たちに最終確認を行っている。


 菊水総隊陸上自衛隊第1空挺団第1普通科大隊長の見山(みやま)(かん)一郎(いちろう)2等陸佐は、自身の部下たちに訓示を行った。


「諸君等も知っての通り、我々の制圧地点は、幸島飛行場と隣接する幸島駐屯地の奪還である。偵察機からの情報通り、他の空挺部隊と比べれば、降下時の戦闘は多くないだろう。だが、敵が態勢を整えれば、すぐに敵の増援部隊と激戦になる。我々の任務は、韓国軍と新世界連合軍フランス軍が、飛行場を完全に掌握するまで、彼らを護る事だ。決して任務は楽では無い!我々が負ければその瞬間、幸島奪還作戦は、非常に困難になる。覚悟しろ!!」


 見山が叫ぶと、第1普通科大隊の隊員たちが、一斉に部隊モットーを叫んだ。


「「「必中の打撃!!!」」」


 その後、朱蒙軍統合特殊作戦軍団第21空輸旅団第1大隊は韓国語で、同じく部隊モットーが叫ばれ、それに遅れてフランス陸軍外人部隊兵で編成されている、落下傘連隊第2中隊からも部隊モットーが叫ばれる。


「「「必勝の一撃!!!」」」


「「「戦場の最精鋭!!!」」」


 空挺部隊は通常戦闘部隊の中では最精鋭の部隊であり、戦略レベルでも戦術レベルに置いても、成否を分けるのが空挺部隊でもある。そのため、アメリカ軍やイギリス軍の空挺部隊を模範に部隊の団結と士気向上等を目的として部隊モットーが作られ、作戦開始前に叫ぶ、という事が軍規や隊規で決められた。


 そのモットーの後、全空挺隊員、空挺兵たちが駈け出し、C-130戦術輸送機に乗り込む。


 連合空挺部隊約1000人規模の空挺隊員叉は空挺兵を乗せた、20機以上のC-130戦術輸送機と、重火器を積み込んだ菊水総隊航空自衛隊のC-2輸送機、新世界連合軍連合戦略輸送軍のC-17が後に続く。


 輸送機部隊の護衛戦闘機隊として、新世界連合軍連合空軍から多用途攻撃機であるトーネードIDSが8機(ドイツ連邦空軍)と、F-16C[ファイティング・ファルコン]が8機(シンガポール空軍)の計16機が護衛する。


 第1空挺団第1普通科大隊は、89式5.56ミリ小銃折曲式銃床、9ミリ拳銃、9ミリ機関拳銃(指揮官クラス)、コンバットナイフ、各種手榴弾、予備弾倉を携帯し、背嚢には5日分の糧食、予備の弾薬や手榴弾から部隊行動に必要な物が携帯されている。


 第21空輸特殊作戦旅団第1大隊は、K11複合型小銃の問題点の改善とさらなる発展を行った特殊部隊用制式自動小銃であるK20複合型小銃、USP、MP7(指揮官クラス)、その他は第1普通科大隊と同じである。


 第3落下傘連隊第2中隊は、FA/MAS等のフランス軍が採用している小火器等がある。


 火力支援として、特科部隊叉は空挺砲兵部隊も降下する事になっている。


 幸島飛行場及び駐屯地への降下誘導と援護のために、幸島警備隊と事前に第1空挺団降下誘導小隊が、南幸島に降下している。


「これから、本格的な攻勢の開始だ」


 見山が、つぶやく。





 朱蒙軍海軍機動艦隊第1艦隊旗艦である[階()(ベク)]級航空母艦1番艦[階伯]は、第1ミサイル駆逐艦戦隊の[世宗(セジュン)大王(デワン)]級ミサイル駆逐艦の発展型である4番艦と5番艦が随行し、第4駆逐艦戦隊の[李舜臣(イスンシン)]級駆逐艦と[忠(チュウ)(ナン)]級フリゲート3隻が、2隻のイージスシステムを搭載したミサイル駆逐艦をカバーする。


 さらに菊水総隊海上自衛隊から、第5護衛隊群旗艦であるヘリコプター搭載護衛艦[ひゅうが]と護衛艦[きりさめ]が同行している。


[階伯]はイギリスの造船所で、かつてはイギリス海軍の航空母艦であった[インヴィンシブル]級航空母艦をベースに韓国海軍仕様に建造されたのが本級だ。


 基準排水量1万7000トン、満載排水量2万1500トン、全長220メートル、全幅38メートル、速力28ノットである。海上自衛隊が保有する[ひゅうが]型ヘリコプター搭載護衛艦よりも大きく、[いずも]型ヘリコプター搭載護衛艦よりも小さい。軽空母に該当し、搭載する艦上機は韓国空軍が保有する、FA-50軽戦闘攻撃機を艦上戦闘攻撃機仕様に開発した、FA-50Nである。


 搭載機数はFA-50Nを12機、対潜哨戒ヘリコプター、人員叉は物資輸送ヘリコプターが6機、陸軍叉は海兵隊の攻撃ヘリコプターと輸送ヘリコプターを4機等である。


 乗員は個艦要員500人、航空要員(空軍と海軍)400人、海兵隊350人である。


 第1艦隊司令官である()天命(チャンミョン)少將は、[階伯]の艦橋横のウィングに出て、海上を眺める。


[階伯]の真横を航行する[ひゅうが]の艦影を眺めた。


「なかなかの光景では無いか。一昔前なら、このような光景を拝む事もできなかった。隣国同士である以上は、民族的価値観や双方の異なる歴史認識で対立する事もあるが、だいたいはこうなるし、こうなるべきだ」


 水は、日本と共同作戦をとる事を、とても誇りにしているような口調だった。


「ですが、提督。彼らは、我が空母機動部隊を単なるお荷物としか思っていません。どうにかして、それを解消しなくては・・・」


 水の副官である麻壱(マイル)小領は、先ほど[階伯]艦長から手渡された、艦の報告書を片手につぶやいた。


「その辺は、今後挽回していく事だ。第一、我々をお荷物と思っているのは、日本だけでは無い。ニューワールド連合軍や、同じ朱蒙軍陸軍と空軍からも思われている」


 水は、少し不愉快そうな顔でつぶやいた。


 朱蒙軍海軍の艦艇は、どれも問題を抱えた欠陥艦艇や、不名誉な名をつけられた艦ばかりだ。


 この[階伯]も、韓国本国に入港した時は、韓国国民から絶賛された。


 しかし、建造時の問題点が運用段階で次々と発生し、何度もトラブルが相次いだ。


 その度にドック入りし、問題点の改善やその他の改修が行われた。


 そして、いつの日か[階伯]は、税金吸取り艦という不名誉な名で呼ばれる事になった。


 タイムスリップした時も、トラブルが相次ぎ、肝心な時にいつも事故が発生し、出港できない事が何度も起きた。


 大韓共和国の非独立派の一部勢力が、日本の先島諸島のY島を占拠した時、本艦も出撃したが、出撃から数時間後に機関室で火災が発生した。


 すぐに消火活動を行ったが、消火班が誤って無事な機関部にも水をかけてしまい、エンジンそのものが停止した。


 曳航艦が来るまでの間、[階伯]は漂流する羽目に・・・


 そして、幾度と無くトラブルを乗り越えて、ようやく名誉挽回のチャンスが与えられた。





 沖縄県那覇市にある、菊水総隊航空自衛隊が管理する那覇基地では、菊水総隊陸海空自衛隊の統合作戦部隊と、陸海軍と航空予備軍の沖縄方面の防衛と警備を任されている司令部から派遣された、連絡将校たちが南東諸島への陸上部隊投入について、最終的な打ち合わせを行っていた。


 第3航空艦隊が、空母2隻を損失してまで守った第4高速輸送戦隊は、無事に大魚島近海に接近中である。


 小規模な敵艦載機群から航空攻撃を受けたが、一号型高速輸送艦は水上戦と対潜戦を犠牲にして、防空戦闘に特化させているから、護衛駆逐艦の支援が無くても、自艦の防空戦は可能だ。


 菊水総隊陸海空自衛隊の前線統合運用部隊の指揮官は、階級上では先任となる第15旅団長の上田(かみた)椿(つばき)陸将補である。


「佐世保軍港から出港した[さつま]型輸送艦[もとぶ]と、一時的に呉基地に入港した[おおすみ]型輸送艦[くにさき]に、第8機動師団の戦車部隊と特科部隊を乗せ、南東諸島に向かっています」


 第15旅団第2部長が、報告する。


「第12普通科連隊を乗せたC-1輸送機が、那覇基地に着陸。燃料補給中です」


 空自の幕僚が、報告する。


「第51普通科連隊と、第54普通科連隊の出撃準備は?」


 上田が、問う。


「はい。第54普通科連隊は輸送舟艇隊に乗り込み、大魚島に接近中です。フィリピンから出撃した連合空挺部隊が、幸島飛行場に降下する前に、島に隠密上陸ができます。その後、同島でゲリラ戦を行っている守備隊と、上陸した増援部隊と合流し、島の奪還をする事になっています。第51普通科連隊は、第15ヘリコプター隊第2飛行隊のCH-47JAに搭乗し、出動準備を整えています」


 菊水総隊陸海空自衛隊と、陸海軍及び航空予備軍との議論が始まり、上陸地点と海上、航空支援について対策案を練る。





 菊水総隊海上自衛隊輸送艦[くにさき]では、第1特科団に所属する予備部隊兼コア部隊的な位置づけの、第11特科隊第111特科大隊第3中隊に所属するMLRS(多連装ロケットシステム自走発射器)が、1輛[くにさき]上甲板で発射準備を行っていた。


「やれやれ。本当に、この日が来るとはな・・・」


 MLRSの車長である陸曹は、そうつぶやきながら、MLRSを見上げる。


 このMLRSは、[くにさき]の甲板上から幸島に上陸した英蘭印連合軍上陸部隊に、ロケット弾を撃ち込むのである。


 MLRSを自衛艦([おおすみ]型輸送艦)の洋上の発射基地として、離島上陸した敵上陸部隊への攻撃は、離島奪還作戦では正式に採用され、今まで何度も、洋上発射試験を行った。


[くにさき]は、第2沿海護衛隊の旗艦である護衛艦に護衛された状態で、南東諸島に向かっている。


 作戦開始時刻は、どんどん迫っている。


 第1空挺団、第21空輸特殊作戦旅団、第2外人落下傘連隊の3部隊共同で行われる空挺降下作戦と同時刻に、陽動作戦と空挺降下支援作戦が実施される。


 第2次世界大戦で学んだ、離島防衛戦と奪還戦が、本格的に実施される事になる。


 北海道では激戦が繰り広げられているが、ここでも激戦が繰り広げられようとしている。


「だが、人生には経験しなくていいものがある」


 陸曹は、つぶやいた。





 幸島飛行場を制圧したイギリス陸軍第42空中強襲旅団は、上陸した英蘭印連合軍上陸部隊から補給部隊が到着し、武器、弾薬、医薬品、糧食が補給され、さらに戦車部隊等の戦闘車輌部隊の増援が到着した。


 飛行場周辺では、装甲付き連装対空機銃が設置され、さらに対空砲の設置も行われた。


 飛行場の警備勤務に着いたマコーリーの小隊は、夜間警備を行った。


 司令部がある飛行場に隣接する陸軍の駐屯地に旅団司令部が置かれており、もうじき、後続部隊と交替し、幸島攻略の主力部隊になる。


 マコーリーの小隊に与えられている任務は、飛行場周辺に設置されている連装対空機銃陣地を、日本軍の突撃戦法から守る事だ。


 連装対空機銃防衛陣地で、マコーリーはクロムウェル・カービンを持った状態で空を眺めた。


「?」


 その時、かすかに聞き慣れない爆音が耳に響いた。


 それと同時に、飛行場全域に戦闘配置を知らせる警報アラームが鳴り響いた。


「総員警戒態勢!」


 マコーリーが叫び、彼の部下たちは、防衛陣地に設置されている重機関銃や、軽機関銃の安全装置を解除する。


 だが、マコーリーの部隊が戦闘配置についたと同時に、轟音がさらに迫っていた。


 対空砲や対空高射砲が火を噴き、上空を照らす。


 照らされた空から、無数のロケット群が飛行場に迫ってきた。


「総員、伏せろ!!!」


 マコーリーは、部下たちに塹壕に潜む指示を出す。


 そのロケット群は、正確に対空砲や対空高射砲陣地に突っ込み、吹き飛ばす。


 爆発と爆音が、塹壕内に響く。


 焦げた土や、粉々に吹き飛んだ装甲板の破片が、塹壕に降り注ぐ。


 マコーリーは、上空を見上げる。


 すると、恐るべきスピードで上空を飛翔する、ジェット戦闘機が見えた。


 無事な対空砲から発射された対空砲弾が、その機を明るく照らす。


 銀色の機体に日の丸では無い丸いマーク(韓国空軍のマークであるが、それがわかるイギリス兵たちはいない)が、一瞬だけ見えた。


「日本軍とスペース・アグレッサーは、俺たちと同じ事をするつもりだ!どこかに敵の輸送機群がいるぞ!!」


 マコーリーが叫ぶと、夜目が効く部下が叫ぶ。


「隊長!空を!!」


 マコーリーは、部下が指差す方向を睨む。


 その上空には、無数の輸送機群の影が見えた。


「補給兵!ここに弾薬の予備をできるだけ持ってくるのだ!急げ!!」


 マコーリーが、叫ぶ。


 その輸送機から、落下傘を開傘した空挺兵たちが、次々と降下を開始した。


 奇跡的にスペース・アグレッサーのジェット戦闘機の爆撃から、無事に生き残った連装対空機銃が対空射撃を行うが、ほとんどが破壊されているから、その対空射撃は、申し訳程度だ。


「撃て!!撃て!!」


 マコーリーは部下たちに命じ、自動小銃や半自動小銃が空に向けられ、射撃が開始された。


 マコーリーも、クロムウェル・カービンを構えて、引き金を引く。


 連発音と共に、落下傘で降下する空挺兵に撃ち込まれる。


 しかし、空挺兵の降下と共に、明らかに榴弾砲から発射された榴弾や、迫撃砲弾が飛行場に飛来するため、うまく射撃ができない。


「隊長!飛行場外の防衛についている部隊から緊急連絡です!スペース・アグレッサーからの攻撃を受けています!」


「本格的な攻勢が始まった・・・」


 敵の空挺兵たちが、地面に着地した。


 彼らは恐るべき火力の高い自動小銃で、マコーリーたちイギリス兵に攻撃を仕掛けてきた。

 矛と盾 第7章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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