矛と盾 序章 2 長官の独語
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。
東南アジア某諸島から出港し、厳重な無線封鎖下で北上するアメリカ海軍、自由フランス政府軍(ドイツ第3帝国国防軍の電撃戦でフランス本国を守れず、ドイツ第3帝国の寛容でドイツ第3帝国寄りの国家になったフランスから脱退し、アメリカに亡命した、自由フランス政府を設立した亡命政権)。
その傘下の自由フランス海軍の連合艦隊は、米仏連合軍上陸部隊と共に日本本土空襲作戦を確実な物にするため、もう1つの陽動作戦を実施しようとしていた。
米仏連合艦隊は戦艦、空母を基幹とする機動部隊であり、アメリカ海軍から参加する戦艦や空母は現在、ハワイ奪還のために投入される新鋭空母、新鋭戦艦以外の戦艦、空母であり、開戦前に残存する艦艇だ。
目的地は、パラオ諸島ペリリュー島である。
上陸部隊は、米仏両軍合わせて6万を超える程度である。
北海道に侵攻したソ連軍上陸部隊や、南東諸島に上陸した英蘭印連合軍上陸部隊と比べると規模はかなり少ないが、島の規模等からこのぐらいの兵力で十分であろう。
大日本帝国の統治下であるパラオ諸島には、フィリピン攻略作戦開始前までには精鋭1個師団が存在していたいが、現在では次期作戦への新編成のために、駐留部隊は縮小されている。
ペリリュー島には、陸軍から1個歩兵大隊を基幹とした連隊強の部隊と航空予備軍航空基地警備のために、基地警備や準憲兵業務を行う航空予備軍保安隊の1個隊(中隊編成)が駐屯するだけだ。
しかし、マレー半島攻略作戦やシンガポール攻略作戦にも投入される部隊でもあるから、小火器は64式7.62ミリ小銃改や62式7.62ミリ汎用機関銃改等の強力な小火器から重火器で武装している。
ペリリュー島守備隊司令部は、日本帝国本土が空襲された報告を受けると、すぐに守備隊司令官の判断で地下陣地に移動し、全部隊も地下陣地への移動が命じられた。
ペリリュー航空基地では偵察機と連絡機のみを残し、戦闘機等はすべてフィリピンに移動させた。
それらの下準備が完了した状態で、ペリリュー島海岸線で監視活動を行っていた偵察兵がアメリカの星条旗やフランス国旗を掲げている戦闘艦群を確認した。
「司令部に緊急連絡!アメリカ軍とフランス軍の連合軍が上陸を開始!」
偵察小隊の報告後、アメリカ海軍空母[ホーネット]と[レンジャー]から発艦した攻撃隊は、ペリリュー島の飛行場や軍事施設を空襲した。
しかし、飛行場には戦闘機等は1機も無く、連絡機や偵察機が存在するだけだった。
さらに、軍施設にも駐屯部隊等も無い。
戦艦[ノースカロライナ]や重巡洋艦等からの艦砲射撃による援護を受けながら、米仏連合軍上陸部隊は上陸舟艇で上陸した。
パラオ諸島ペリリュー島守備隊司令部から米仏連合軍が侵攻してきた報告は、すぐに東南アジア方面軍と大日本帝国海軍聯合艦隊旗艦である戦艦[大和]にも届いた。
「ふむ・・・」
聯合艦隊司令長官の山本五十六大将は、戦艦[大和]の作戦室で、大本営や各方面軍からの報告書に目を通しながら、落ち着いていた。
「連合軍は、巧妙な同時多発的侵攻作戦を行いましたね・・・」
参謀長の宇垣纏少将がつぶやいた。
「石垣中尉が我々に教えてくれた、史実のレイテ沖海戦の聯合艦隊の作戦をさらに拡大した規模と命令系統を1つにせず、各個軍の指揮の下で展開してきました。これなら、複雑な作戦計画で現場が混乱する事もありません」
先任参謀の黒島亀人大佐が、慎重に敵の作戦を評価した。
「しかもこれでは、敵がどのように動くかわからないから、他の方面に展開する我が海軍も陸軍も身動きができない。たとえ、敵にそんな戦力が無くとも、各地方の防衛態勢を維持しなくてはならない」
宇垣が奥歯を噛みしめながら、悔しそうにつぶやく。
アメリカの反攻作戦には、陸海軍を問わず様々な予測が立てられ、それなりの対処法は構築されていたが、その十重二十重の防衛網を食い破る勢いの猛撃だ。
「これが、アメリカの底力と言う事か・・・一発殴れば十発殴り返す、十発殴れば百発殴り返される・・・大義名分をかなぐり捨てても本気で我々を潰しにかかるつもりか。これからの戦闘はさらに厳しさを増すだろう・・・」
山本は小さくつぶやいた。
矛と盾 序章2をお読みいただきありがとうございます。
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次回の投稿は10月3日を予定しています。




