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日本本土防衛戦 終章 未来を変える男

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 201X年3月下旬、東アフリカに位置するジブチ共和国。


 ジブチ国際空港では、日本国海上自衛隊ソマリア海賊対処行動派遣隊の航空部隊と支援部隊が配備された。


 自衛隊創設以来初めてである、国外での施設が開設された。


 それから数年後、北アフリカ地域での民主化運動が事実上失敗し、北アフリカ史上最大の動乱が発生した。


 動乱はウイルスのように各地域に広がり、アフリカ大陸の2割が大規模内乱に発展した。


 水不足、食料不足、医薬品不足、医療水準の低下、治安の悪化等さまざまな問題が不安を募らせ、ついに火薬庫に火についてしまった。


 国際世論が動き、アメリカ、NATO、日本等が支援物資の無償提供を行った。


 そのため、物資輸送の護衛と配給センターの安全確保を目的として、アメリカ海兵隊2000人、NATO軍1200人、陸上自衛隊600人が派遣された。


 派遣された陸上自衛隊はジブチ国際空港に拠点を置く自衛隊の施設を使用し、そこを拠点に担当地域に普通科部隊を主力とした警備部隊を出動させた。


 指揮官は、國仙(こくせん)正春(まさはる)陸将である。


 ジブチ駐屯地東アフリカ派遣隊司令部で、砂色を基調した迷彩服を着込んだ國仙は、通信室で首相とのTV通信を行っていた。


「國仙陸将。どうかね?」


「配給センター警備部隊や、支援物資を積んだ輸送車両の護衛部隊からは、武装勢力からの本格的な攻撃は報告されていません」


「そうか、それならいい。国連は国際医師団を現地に派遣している。医師団の中には武装勢力と現地軍の戦闘地域内で医療活動を行っている団体もある。駆け付け警護の態勢は大丈夫か?」


「その点に付きましては、報告書を出しましたが?」


「報告書には目を通したが、君の口から直接聞きたい」


 首相の言葉に、國仙は苦笑した。


「駆け付け警護に関しましては、V-22B[オスプレイ]2機を使用した緊急展開部隊を派遣し、警護部隊は普通科、衛生科の隊員で編成しています。その訓練も絶やさず行っています」


「そうか・・・」


「首相。お時間です」


 そのTV通信に、官房長官が割り込んだ。


「國仙君。すまないが、この続きは次の定時連絡の時にしよう」


「はい、首相」


 テレビモニターが消えた。


 國仙が通信室を出ると、副官が血相を変えて、國仙に緊急報告した。


「司令官。東アフリカ某国の某地域で武装勢力が動き出しました!」


 副官から渡された報告書に目を通す。


「300人規模の武装グループ・・・旧式の戦車や装甲車まであるのか?」


「はい、この国の反政府勢力の武装勢力の武器兵器の情報の中に、戦車がある事は報告されていません」


 副官からの報告に、國仙は資料に目を通しながら、司令室に向かった。


「それはそうだろう。防衛省情報本部も外務省も、完全には把握できていない。現地軍は?」


「はい、すでに出動しています」


 副官から報告を聞きながら、國仙は司令室に入った。


「司令官!緊急通信です!東アフリカ某国の医療センターが攻撃を受けています!」


「なんだと!?」


 國仙は叫んだ。


 医療センターには、國仙の息子である正月(まさつき)と、その嫁の雪乃(ゆきの)がいる。


 2人は、国立大学付属病院の外科医と内科医であり、国際医師団の医療スタッフとして派遣されていた。


「救助要請は?」


 副官が聞く。


「医療センターより、我々に救援要請を確認しました」


 通信隊の3等陸尉が報告した。


「司令官。駆け付け警護隊を、出動させましょう!」


 幕僚長が具申する。


「いつ出撃できる?」


 國仙は、司令部に顔を出している駆け付け警護隊の指揮官である、佐築(さつき)(えい)(どう)3等陸佐に聞いた。


「今すぐにでも!命令があればいつでも出撃できます!」


 國仙は幕僚長に顔を向けて、うなずいた。


 幕僚長は、受話器を耳に当てて叫んだ。


「駆け付け警護隊は出撃の準備をしろ!」


「至急!陸上総隊司令部に緊急連絡!」


 國仙と幕僚長の声が重なる。


 佐築も司令室を飛び出す。


 ジブチ国際空港の自衛隊が使用するエプロンで、2機のV-22Bがエンジンを始動していた。


 89式5.56ミリ小銃を装備した完全装備の陸上自衛隊員たちは、砂色の迷彩服姿でV-22Bに乗り込む。


 だが、2機のV-22Bが管制塔から離陸許可要請すると、ジブチ国際空港に置かれている多国籍外交団本部にいる日本国外務省から派遣された外交官が離陸を不許可にした。


 國仙は、すぐに管制塔に回線を繋いだ。


「なぜ、出撃を却下する!?」


 國仙が説明を求めると、外交官はすぐに返答した。


「駆け付け警護要請している医療センターの某国政府が、自衛隊機の領空侵入を拒否しました。このまま出動させましたら、領空侵犯並びに無許可軍事行動になってしまいます」


 外交官の説明に、國仙は受話器を落とした。





「かん・・・司令官」


 自分を呼ぶ声がして、國仙は目蓋を開けた。


 國仙は、破軍集団航空自衛隊が司令官クラスの人員輸送用として購入された、アメリカ海兵隊予備機として保管されていた、新品のCH-46Eの兵員室の座席に腰掛けていた。


「どうやら、居眠りをしていたようだ」


「お疲れのところ、申し訳ありません」


 高級副官兼特別監察監である石垣達彦1等陸佐が頭を下げた。


「気にする事は無い」


 國仙は迷彩服姿では無く、濃い緑色の制服姿だ。


「ところで、何か報告でもあるのか?」


 國仙が石垣(兄)に顔を向けた。


「まもなく、大韓市国国務最高委員会国防委員会、榴璃(ユリ)軍司令部に到着します」


「そうか」


 國仙はうなずいた。


 CH-46Eが着陸態勢に入り、ゆっくりと高度を下げる。


 着陸すると、右側のドアが解放され、國仙と石垣が朝鮮半島の地面に足をつけた。


「破軍集団司令官の職務は、いかがかね?」


 朝鮮半島の防衛と、重要都市叉は施設の警備を任されている、朱蒙軍とは別に独立した統合軍である榴璃(ユリ)軍司令官がそう言いながら、手を差し出す。


「そう言う閣下は、お疲れのようだ」


 國仙は、榴璃軍司令官の差し出した手を握る。


 だが、彼が着ている服装は、韓国軍の軍服では無い。


「元朝鮮人民軍陸軍、(ムン)南基(ナムギ)上将閣下」


「昔の肩書きにあまり興味は無いが、その呼び方の方がしっくり来るのは、やはり歳のせいか?」


 國仙と同じ歳である朝鮮人民軍の高級士官は、2年前に自身が率いる統合軍で韓国に亡命した(正確にはアメリカである)。


 現在は、大韓市国国務最高委員会国防委員会榴璃軍司令官として、朝鮮半島防衛の最高責任者である文南基上将(韓国軍から大将の階級が与えられている)である。


 榴璃軍の7割は、朝鮮人民軍叉は予備軍で編成されており、武器兵器はすべて朝鮮人民軍の物が使用されている。


 なぜ北の軍が?と誰しも思うかも知れない。


 文は、愛する祖国に裏切られた。


 愛する祖国は、文のもっとも愛する家族を奪った。


 残酷な方法で・・・


 國仙以上に悲しい過去を文は抱えている。


 それを変えるために、彼もまた1つの選択をしたのだった。

 日本本土防衛戦 終章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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