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日本本土防衛戦 第14章 総攻撃

 みなさん、おはようございます、こんにちは、お疲れさまです。

 ニューワールド連合軍連合陸軍総軍アメリカ太平洋陸軍第1緊急展開師団第11機甲旅団戦闘団司令部では、連合陸軍で臨時編成された、北海道防衛派遣軍司令官からの命令を受け、北海道北端部に上陸したソ連軍に攻撃準備を整えていた。


 旅団戦闘団は、アメリカ陸軍が陸軍再編計画で基本展開を目的とした機動部隊だ。


 これまでは、旅団、師団、軍団、軍という軍編成で国内外展開していたが、即応展開という戦略面で見ると、これはかなり不具合をもたらした。


 わかりやすく言えば、連隊を基幹とする連隊戦闘団を発展した物だと思われるが、そうでも無い。


 連隊戦闘団のように単純な戦闘部隊と後方支援部隊の統合編成では無く、司令部、戦闘部隊、後方支援部隊で編成され、旅団戦闘団は独立した戦闘行動等のさまざま軍事行動と準軍事行動が可能になった。


 旅団戦闘団は機械化歩兵、空中機動歩兵、空挺歩兵で編成された歩兵旅団戦闘団と、戦車や歩兵戦闘車を主力とした機甲戦力重視の機甲旅団戦闘団がある。


 これとは別に、歩兵旅団戦闘団と機甲旅団戦闘団とも異なる旅団戦闘団として、ストライカー旅団戦闘団がある。


 第11機甲旅団戦闘団長のハドリー・ケネス・ムラカミ大佐は、アメリカ陸軍が新しく採用した新型ACUである緑色を基調したOCP姿で、司令部テントのパイプ椅子に腰掛けた。


 旅団戦闘団の指揮官は、基本的には大佐が任命される(希に准将が任命される事もある)。


「師団長より、進撃中のソ連軍戦車師団への正面攻撃の命令を受けた。連合軍最高委員長は徹底的に叩け、という事だ」


 作戦地図を見下ろしながら、ムラカミは告げる。


「第1諸兵科連合大隊を予定通り前進させ、ソ連軍戦車師団に攻撃を開始します」


 作戦担当をする参謀が言った。


「すでに航空隊と、連合支援軍陸軍第101騎兵戦闘団の精鋭部隊が、進撃中のソ連軍戦車師団司令部を襲撃し、師団の指揮系統を混乱させています。さらに、[フロンティア]から発艦したF/A-18F[スーパー・ホーネット]がソ連軍上陸軍通信施設と物資集積所を航空攻撃しました。敵はかなり混乱しています」


 情報担当の参謀が戦況を伝える。


「第1機甲偵察騎兵大隊B偵察騎兵中隊はソ連軍戦車師団の動向を常に監視しろ。司令部機能が停止したから、どういう事態になるか予想できない。威力偵察を行い敵の行動を見る」


 ムラカミの言葉に、幕僚たちはうなずいた。





 第11機甲旅団戦闘団第1機甲偵察騎兵大隊B偵察騎兵中隊に所属する偵察騎兵小隊はM3A3[ブラッドレー]でソ連軍1個戦車師団の動向を見張っていた。


 M3は歩兵戦闘車であるM2の偵察仕様である。


 車長、砲手、操縦手の3名の固有乗員と偵察チーム2名が搭乗し、元が歩兵戦闘車であるため、追加の無線機器、偵察機器や予備の弾薬と対戦車ミサイルを搭載する事も可能だ。


 そのため、偵察任務以外にもさまざまな作戦に参加できる。


 武装はM2と同様ではあるが、軽装甲車両を破壊可能な25ミリ機関砲と主力戦車を撃破可能なTOW対戦車ミサイルを装備している。


 初めて実戦に投入された時、M1[エイブラムス]より、敵国軍の主力戦車を撃破した(この時、撃破されたのはソ連製戦車である)。


 師団司令部との通信途絶により、前衛の戦車部隊は全車停車した。


 司令部との通信が途絶し、判断が仰げない以上はその上の司令部の判断を仰ぐ事になっているが、そこも通信施設は破壊されたから、交信が可能になるまではかなりの時間がかかる。


 ソ連軍の規定では、司令部及びその上との交信が途絶えた場合は、現地指揮官と政治将校の判断で作戦行動が行える。


 しばらく停車していた、戦車群が再び前進を開始した。


 どうやら、作戦変更はせず、そのまま作戦通りの行動をするようだ。


 後方には機械化歩兵師団2個あり、さらに予備部隊もさらに後方で待機している。


 十分な戦力を有しているから、考え方は間違っていない。





 第11機甲旅団戦闘団第1諸兵科連合大隊第1戦車中隊C小隊に所属のM1A3[エイブラムス]戦車車長のオレグ・ジョージ・ペレス2等軍曹は、北の大地で初春の雪が振る空を見上げていた。


 車長席から身体を乗り出し、冷気を肌に感じていた。


「ペレス軍曹。まもなく、自由発砲地域内だ。車内に戻れ」


 小隊軍曹である1等軍曹からそのような指示が出る。


「サー」


 ペレスは車長席に座り、車長用ハッチを閉めた。


 M1A3はM1シリーズの最新型であり、C4Iシステム等の電子機器や火器管制システムを最新型に更新し、M1A2SMPは63トンの重量であったが、新型の軽量化複合装甲と軽量化戦車砲の搭載等のさまざまな改良が行われたまったく新しいM1戦車である。


 重量55トンまで軽量化し、自動装填装置の搭載と装填手が不要になったため、その分、乗員の負担を軽減するため、副武装の12.7ミリ重機関銃はすべて車長席から射撃可能であり、人間による肉弾攻撃に備えて対人制圧火力向上のためにM134連装機関銃を搭載している。


 第11機甲旅団戦闘団の戦車部隊はすべてM1A3であり、これが緊急展開師団に所属している理由だ。


 M1A3は軽量化により、C-5MB[スーパー・ギャラクシー]を使えば1個戦車小隊4輛と整備部品と予備部品を積載した状態で小隊要員と整備要員の空輸が可能だ。


 そのため、第11機甲旅団戦闘団は命令が出れば96時間以内に空輸で4500名の兵員と武器、兵器、装備、整備器具、予備部品を派遣先に緊急展開ができる。


 ペレスは車長席に設置されているディスプレイをタッチ操作する。


 1つのディスプレイには第11機甲旅団戦闘団が保有する無人偵察機から送信されている画像が映し出され、もう1つは自車が装備する360度旋回可能な高性能カメラの映像が映し出されている。


「第1戦車中隊に所属する各車へ、まもなく敵の戦車部隊と接敵する。まず、連合空軍より、無人攻撃機[プレデター]が敵の戦車師団に対して、ヘルファイア・ミサイル攻撃を行う。第1波攻撃で敵はかなり混乱する。その隙をついて、我々が攻撃を行う。以上だ」


 大隊長から、再度作戦の説明がされる。





 北海道中部地方の某地区では連合空軍航空総軍アメリカ太平洋空軍第3航空軍第31航空団第311飛行隊が、無人航空機の操縦等を行うために展開していた。


 第3航空軍は、無人航空機の運用のみに特化した空軍であり、偵察、捜索、攻撃等幅広い作戦に参加する。


 そのため、第3空軍は多国籍特殊作戦軍司令部の指揮下に入り、特殊航空作戦も遂行する事もある。


 GPS衛星や通信衛星がまったく存在しないこの時代では、運用スタッフ(軍人と文民)も戦場に出向く必要があり、中継機や中継車等の展開も作戦展開空域の地上の地形等で念入りに検討する必要がある。


 第311飛行隊は無人航空機の操縦、攻撃等を行う操縦設備を搭載したコントロール車、作戦空域及び作戦地域叉は海域の部隊や艦隊と情報をリアルタイムで交換する前線通信車、司令部との交信や情報処理等の幅広い作戦支援と作戦遂行に必要な命令の中継等を行う指揮車に搭乗して運用される。


 敵のコマンド攻撃に対しては、PMCの社員が対処する。


「了解しました。これより、作戦行動に入ります」


 指揮車と直通の通信回線を繋いでいる通信機の受話器を耳に当てた、灰色系を基調したベトナム戦争時にアメリカ軍が採用していたタイガーストラップ迷彩服を思わせるデジタル迷彩服を着た空軍少佐がうなずきながら、受話器を置いた。


「攻撃命令が出た。目標まで何分だ?」


 少佐が問うと、文民技官である男が報告する。


「攻撃ポイントまで3分!」


「ヘルファイア・ミサイル発射準備!」


 少佐が叫ぶと、兵装システムの管理を行う空軍のデジタル迷彩服であるABCを着込んだ下士官がコンピューターを操作する。


「ヘルファイア・ミサイル発射準備完了!」


「高度そのまま、攻撃ポイントでヘルファイア・ミサイルを発射せよ!」


「ラジャ!」


 文民技官の隣で、攻撃担当の空軍士官が叫んだ。


 操縦を担当する文民技官は、RQ-1を低空で高速飛行させるように操作し、目標まで急行させる。


 その操縦技術は、エリートパイロットを凌ぐレベルだ。


「攻撃ポイントまで、5秒!4、3、2、1」


「ファイア!」


 少佐が叫ぶと、攻撃担当の士官が発射ボタンを押す。


 RQ-1[プレデター]の主翼下に搭載された4発のヘルファイア・ミサイルを発射する。


 もちろん、他の機からもヘルファイア・ミサイルが一斉に発射される。


 実際、RQ-1が飛行する作戦空域は、第311飛行隊が展開する地域からかなりの距離が離れている。


 そのため、RQ-1が発射した対戦車ミサイルや精密誘導爆弾の爆音や衝撃波を、運用要員たちは感じる事は無い。


 あくまでも、その空域にいる無人偵察機から送信された映像を受信して、モニターで見るだけだ。


 もちろん、公開演習で大日本帝国軍人や捕虜となったが、ニューワールド連合軍に協力する事を表明したマッカーサーを含むアメリカ、イギリス軍の士官たちも無人航空機の作戦を見た。


 しかし、そんな戦法を賞賛する軍人は、1人もいなかった。


 確かに、無人航空機は操縦者が搭乗しないため、撃墜されても、事故等で墜落しても操縦者は死亡しない。


 だが、その使い方に問題がある。


 無人航空機の運用スタッフは、基本的には戦場には出向かない。


 本国か、爆弾やミサイルが絶対に落ちてこない安全地域にいる。


 そして、彼らはそんな状況下で無人航空機を使って、ミサイルや爆弾を使用して、作戦終了する。


 その後、運用スタッフは勤務時間が終了すればそのまま自宅に帰り、家族との団欒を過ごす。


 自分が1時間前に100人以上の人命を奪った状態で・・・これが、どんな悲惨な状況に人間を追い込む事になるか、経験者と彼らを治療した医師、カウンセラーでしか理解できないだろう。


 運用要員たちは1時間前にボタンを押して、ミサイルを発射、叉は爆弾を投下して100人以上の敵勢力を倒した。


 そして、定時になり、家族がいる自宅に戻る。


 翌朝、自分が攻撃した敵勢力の拠点がニュースで流れる。そして・・・


「某テロ集団の拠点をアメリカ軍が攻撃したとアメリカ国防総省が発表しました。少なくとも100人のテロリストを倒しましたが、その攻撃は過剰であり、近隣地域の住民にも多数の被害を出し、少なくとも10人以上の子供が死亡叉は負傷しました」


 と放送される。


 戦場であれば、周りの同僚たちは慰めの言葉をかけるが、戦争をニュースの映像しか見ず、詳しい経緯も聞かされていない住民が自分の周りに大勢いる。


 たとえ、彼らに悪意が無くても、その事について語る。


 それが彼らの精神にとって、どれほどの暴力であるか・・・


 実際、無人航空機の運用スタッフの中には重度のシェル・ショックを発症した者もいる。


 それだけでは無く、無人航空機の運用スタッフは、仮に敵勢力の捕虜になっても、捕虜の待遇は一切受けず、残忍な方法で処刑される。


 しかし、これは仕方の無い事であろうとしか言えない。


 わかりやすく例を出すと、今日の勤務日では、無人航空機を使って、敵勢力圏内の敵勢力の拠点等に対して、ミサイル攻撃と精密誘導爆弾による爆撃を行う。


 そして、勤務時間が終わると・・・


「おい、明日の休日はどうするんだ?」


 と、同僚に言われる。


「ああ、明日は息子の学校で運動会がある。応援に行かないと」である。

 

 ソ連軍戦車師団に対し、撃ち込んだヘルファイア・ミサイル群は進撃中のソ連軍戦車を次々に撃破し、ソ連軍進撃部隊をさらに混乱させた。





 ソ連軍進撃部隊の動向を逐次報告している偵察部隊は、無人攻撃機群による対地攻撃で混乱したソ連軍について報告する。


 その後、新世界連合軍連合陸軍と連合支援軍の機甲部隊が正面戦闘を行い、敵の後背に回り込んだ菊水総隊陸上自衛隊第2機動師団の普通科連隊、大日本帝国陸軍北部方面軍司令部直轄部隊として編成された、挺身隊と北部方面軍に所属する各歩兵師団から派遣された挺身隊を統合した挺身団、連合支援軍の軽歩兵部隊が奇襲攻撃の準備を整える。





「自由発砲地域内に侵入した。攻撃を許可する!」


 中隊長からの命令を受けて、ペレスはヘッドセットで砲手と操縦手に指示を出した。


「射撃開始!後方にソ連軍歩兵師団がいる。指揮系統が途絶しているから、無計画な人海戦術が行われるかもしれない。いつでも重機関銃、連装機関銃、汎用機関銃の遠隔操作射撃と自動射撃ができるようにしておけ」


「サー!」


 砲手の声が、ヘッドセットから聞こえる。


 ペレスは車長用高性能カメラを、熱線映像装置に切り替えた。


 人工霧発生装置を装備した4機のRQ-1が、作戦地域内に人工霧を発生させるための霧を散布した。


 これにより、人工霧がしばらくの間だけだが発生し、熱線映像装置とそれと連動する照準装置を装備する第3世代戦車以降の主力戦車はまったく問題無いが、そんな装備等が皆無のこの時代の戦車は突然の人工霧により、敵味方の識別がつきにくいため、射撃は困難である。


 つまり、M1A3等のニューワールド連合軍のほとんどの戦車と菊水総隊、破軍集団の陸上自衛隊の戦車は撃ち放題であるが、ソ連軍等のこの時代の戦車は見えない方向から攻撃される。


 熱線映像装置により、ディスプレイではソ連戦車群がはっきりと確認できる。


「目標補足!」


「ファイア!」


 ペレスが搭乗するM1A3の44口径120ミリ滑腔砲が吼え、装填された装弾筒付翼安定徹甲弾であるM829A3が撃ち出され、前進中のIS-2の正面装甲を貫き、砲塔を吹き飛ばす。


 ちなみに使用されているM829A3の弾頭は通常弾であり、劣化ウラン弾では無い。


 装備としてはあるが、第2次世界大戦時の戦車や戦後に開発された第1世代戦車レベルなら、通常弾でもオーバー過ぎるレベルだ。


 M1戦車はM1A1にバージョンアップした時に、1991年に勃発した湾岸戦争では、イラク陸軍のT-72戦車をほとんど一方的に撃破し、M1A1の損失はT-72と比べれば軽微だった。


 あの時も、戦車大国であるソ連の輸出戦車であるT-72を撃破した。


 今回は、M1A1をはるかに上回るA3がソ連製戦車を撃破する。


 自動装填装置により、すぐに次弾が装填され、味方戦車とリアルタイムにデータを共有しているため、同じ戦車を攻撃する事も無いし、コンピューターが上空にいる無人航空機から送信される敵戦車の規模と位置が受信し、味方戦車から送信される敵戦車の状況を瞬時に計算し、攻撃優先目標が査定される。


 砲撃した時点で、コンピューターは次の目標の査定を行い、命中し、撃破を確認した時には砲手は次の攻撃目標である敵戦車を査定している。


 砲塔が旋回し、次の攻撃目標となったソ連軍戦車に砲口を向ける。


「ファイア!」


 砲手が発射ボタンを押し、M829A3を撃ち出す。


「ん?」


 ペレスは、前方にいるソ連軍戦車群の砲口から発射光を確認した。


 だが、ソ連軍戦車群の砲撃は当たるどころかまったく明後日の方向に着弾した。


「アカどもは闇雲に砲撃している。恐らく、このまま、何もしなくてもやられると考えて、とにかく砲撃する事を考えたようだ」


 ペレスが部下2人に告げた。


 ソ連軍戦車師団の戦車部隊と戦端を開いた、第1諸兵科連合大隊の2個戦車中隊36輛のM1A3(1個戦車中隊は18輛で編成されている)は1個大隊以上のソ連軍重戦車、中戦車、軽戦車を撃破した。


 すると、前衛戦車部隊の前進速度が低下した。


 しかし、砲撃は先ほどよりも激しさを出している。


「あれは?」


 T-34やIS-2等の後方から、この時代ではまだ開発されていない戦車が現れた。


 第2次世界大戦中に開発されたT-44の発展型であるT-54を思わせる戦車だった。


 無人航空機からの情報では単に、T-44の可能性あり、となっていたが、あきらかに100ミリ砲を搭載している。


 T-54は1946年に制式量産体制に入っていたから、あまり不思議に思う事でも無い。


 アメリカがBー29をすでに実戦投入してきたのだ。


 ソ連で同じ事が起こったとしても、驚くに値いしないだろう。


 さらに歩兵部隊が、半自動小銃や短機関銃等を武装して現れた。


 無人偵察機からの情報では、後方の機械化歩兵師団が合流し、その兵力は拡大した。


「作戦を第2段階に移行する」


 中隊長からの指示が出る。


 これまで後方で援護と支援を行っていた機械化歩兵中隊が前進し、戦車中隊と肩を並べた。


 M2A3から機械化歩兵小隊歩兵分隊が吐き出され、展開する。


 M4アサルトカービンを武装したライフル兵が、伏せ撃ち叉は膝撃ちの姿勢で射撃姿勢をとる。


 M4アサルトカービンは、セミオートモードと3点バーストモードの射撃機能を有するアサルトカービンである。


フルオートモードとセミオートモードがあるM4A1アサルトカービンとは違う。


 主にM4A1は、通常の戦闘部隊のライフル小隊では、分隊長以上の下士官と小隊長のみが装備し、他はレンジャー部隊、特殊部隊叉は特別な作戦行動を行う特定の常設部隊や臨時部隊が装備する。


 ほとんどの兵士の装備はM4である。


 これは熟練兵では無い新兵や一般兵では、フルオート射撃を行うとすぐに弾を使い切るからだ。


 5.56ミリライフル弾は反動が小さく、誰でもフルオート射撃が可能であるため、熟練兵以外では使いこなせない。


 そこで3点バーストモードの採用により、この問題を克服したのだ。


 M3MAAWSを武装した砲手が構え、装填手が榴弾を装填する。これはカールグスタフ(対戦車無反動砲)だ。


 M2A3は25ミリ機関砲と副武装の7.62ミリNATO弾を使用するM240汎用機関銃があるため、歩兵部隊の火力支援は十分行える。


 T-54と思われる戦車群に対し、M1A3はM829A3を発射し、M2A3は25ミリ機関砲弾を使用するM242機関砲砲塔側面に搭載されている2連装TOW対戦車ミサイル発射器が起動し、約4000メートルの射程距離を有する重装甲車両等を撃破可能な対戦車ミサイルが発射される。


 人工霧の効果が切れ、視界が確保できるようになるとT-54を含む残存するソ連軍戦車が砲撃を開始する。


 壮絶な戦車対戦車の戦闘が繰り広げられる。





 第2機動師団第26普通科連隊は、全部隊が第11機甲旅団戦闘団と戦闘中のソ連軍1個戦車師団と2個機械科歩兵師団の背後に展開した。


「中隊長。連隊指揮所より、攻撃準備指令です」


 中隊本部の無線員が報告する。


 中隊長がうなずくと、各小隊長に指示を出した。


「着剣!」


 中隊長の指示で、各小隊長が自分の小隊に伝達する。


 普通科隊員たちが89式5.56ミリ小銃の先端に89式多用途銃剣を装着する。


 相手はソ連兵であるため、近接戦闘の可能性が極めて高いからだ。


 別の場所では一式半自動小銃を武装した大日本帝国陸軍北部軍挺身隊が銃剣を装着して突入するし、新世界連合軍連合支援軍陸軍森林戦を得意とする部隊も突入する。


 基本的に銃剣戦闘になった場合は彼らが主力であり、第26普通科連隊は補助という立場になる。


 これは銃剣戦闘が極めて精神的な苦痛を与えるため、それなりの精神力が無ければ不可能だからだ。


 そもそも自衛隊での銃剣戦闘は弾薬を使い切った場合か、味方への被害が予想される接近戦を想定しているだけで、最初から銃剣戦闘を行う事を前提にした戦闘行動はしない。


「各小隊長へ、第2機動師団第2特科連隊と第1緊急展開師団砲兵部隊からの第1波攻撃の砲弾弾着が突撃の合図だ」


 中隊長が念を押す。


「弾着まで10秒前!」


 その報告に、空から無数の榴弾の飛来音と対地ロケット弾のジェット音が耳に入る。


「5、4、3、2、1、弾着、今!」


 その瞬間、無数の爆発音と衝撃波が第26普通科連隊の隊員たちを襲った。


「突撃!」


 第26普通科連隊から2個普通科中隊の普通科隊員たちが飛び出す。


 もちろん、偽装を施した軽装甲機動車や防弾仕様の高機動車等も飛び出す。


 5.56ミリ機関銃NIMINIに防弾板を装備している、軽装甲機動車がNIMINIを撃ちまくりながら、ソ連軍後方を襲撃する。


 そして、第26普通科連隊重迫撃砲中隊から120ミリ迫撃砲による火力支援を行っている。


 同時に第2戦車連隊から派遣された74式戦車2個小隊も突撃し、戦車砲による砲撃と12.7ミリ重機関銃の機銃掃射を行う。


 もちろん、この攻撃は地上部隊による奇襲攻撃だけでは無い。


 菊水総隊陸上自衛隊対戦車ヘリコプター隊1個飛行隊から派遣された1個小隊のAH-1S[コブラ]、新世界連合軍連合陸軍航空軍対戦車ヘリコプター隊から派遣されたAH-64D[アパッチ・ロングボウ]、EC665[ティーガ]が匍匐飛行しながら、攻撃を開始する。


 この攻撃に、戦意を完全に喪失したソ連兵たちは、政治将校等の制止を振り切り、あらゆる方向に敗走した。

 日本本土防衛戦 第14章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。

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