表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/99

95.ダンジョン上層50層

 人間界、とある亀カフェ――。


「SS級、昇格おめでとうございまーす!」


 ミカリとクシナが盛大に、セラがやや遠慮がちにクラッカーを打ち鳴らす。


「あ、ありがとう……」


 祝われている本人のアリシアは主賓席にて、タジタジとしている。

 クガはその横で置物と化している。


「なんで私が吸血鬼女の昇格を祝わないといけないのよ……」


 ユリアはやや唇を尖らせている。


「なんでここでやんだよ……」


 イビルスレイヤーのウラカワも怪訝そうな顔をしている。


【ボス昇格祝いは流石に草】

【やばすぎるwww】


「何言ってんのよ! ユリア! アリシアさんは私達クマゼミのS級昇格も祝ってくれたじゃない!」


「まぁ、そうだけど……」


 ミカリのもっともらしい説教にユリアは言いくるめられる。

 そもそも魔物が人間のS級昇格を祝うこと自体が異常事態であるのだが。


「それにイビスレのウラカワ! 店長のカメオカは許可してくれたけど?」


 ミカリはウラカワに対して、びしっと言う。


「あん……? …………ったく、カメオカ(あいつ)、何考えてんだ? あ、何も考えてないのか……」


 ウラカワは謎の笑みを浮かべながら勝手に納得する。


「それにしても、逆にヘビオの奴は何でいないんだよ!」


 ウラカワは元メンバーであるヘビオの不在についても不満気である。


【今、クガと吸血鬼さんが不在で手薄だから、城の護衛の任についてるんじゃない?】

【すっかり城の護衛が板についてますなw】


「ちっ……、旧友との再会よりも優先ってか? 薄情な奴だ……」


 ウラカワはそんな風に毒づくが、その内容に反し、声のトーンは穏やかであった。


「さぁさぁ、リスナーの皆さん。今日の主役はもちろん、SS級ボスに昇格したアリシアさんです。どうですか? 今のお気持ちは?」


 ミカリはどこにしまっていたのか、マイクを取り出し、アリシアに向ける。


「え? えーと……嬉しいです」


「ん? それだけ?」


「あ、えーと……えーと……」


 アリシアは人間界に来ると、ダンジョンでの尊大さがどこへやら、妙にしおらしくなる。


「うーん、じゃあ、クガにセーラー服は着せられましたか?」


「え? それは着せられ……」


「着させてないわ! ってか、関係ない質問をさりげなく混ぜるの止めろ!」


 クガは流石に憤慨する。


「わかったわよー」


 ミカリはニカリとする。


「それで、アリシアさん! 今後は何をやっていく予定なのでしょうか?」


「今後の予定……? それは……」


 ◇


「クガ……いよいよだな……!」


「あぁ……」


 アリシアは居ても立っても居られないのかソワソワした様子であった。


 クガとアリシアの二人はダンジョン上層49層に来ていた。

 SS級ボスを倒したことで、アリシアは49層へのワープ権限を獲得しており、48層への入場料を払う必要はなくなっていた。


 そして、二人はドラゴンの神殿の奥にある50層へとつながる階段から、今、まさに未知の領域へ足を踏み入れようとしていたのだ。


 アリシアはSS級ボスになり、城の移転などをするのかと思いきや、最初にやりたかったことは未知の領域への進行であったのだ。


【うぉおお、ついに謎に包まれていた50層の様子が明かされるのか】

【やべえ、ワクワクが止まらない】

【サムライみたいにお預けするのは勘弁してくれよ】


 50層への到達はかつて伝説のパーティ〝サムライ〟が達成しているが、そのサムライはなぜか50層到達直前から、ぱたりと配信を止めてしまい、その後、消息不明となっていたのだ。


「よし……行くぞ……!」


 アリシアとクガはドキドキしながら50層への階段を昇っていく。


「ぬ……? なにかあるぞ……!」


 二人がしばらく階段を昇っていくと階段の途中で踊り場があり、そこでアリシアが立て看板のようなものを発見する。

 看板は下階側から見ると、裏側であり、二人は表側に周り込み、内容を確認する。


 立て看板に書かれていた内容は〝スタッフ専用〟。


「……は?」


 わけが分からなかった。


 その時であった。踊り場の反対側、階段の上方からドスンドスンと大きな足音が聞こえてくる。


【なんだなんだ!?】

【門番的な奴か!?】


「……クガ、警戒しろ」


「あぁ……」


 二人は身構える。


 階段上方から降りてきた巨大な何かもクガとアリシアの存在に気が付き、そして……大層驚く。


「えぇ!? 吸血鬼ちゃん!? なんでこんなところに!?」


「「……!?」」


 二人は猛々しい見た目と可愛らしい声を持つその魔物を知っていた。


「み、ミノちゃん!? な、なんでこんなところに!?」


「え、えーと……これはその……べ、別にヘビーユーザーってわけじゃ……」


 ミノちゃんはなぜか少し恥ずかしそうにしている。


「ヘビーユーザー……? 何の……?」


 クガは何かが引っ掛かり、ミノちゃんが降りてきた方の階段にも設置されていた立て看板を確認する。


〝会員様専用〟。


 つまり、地下へとつながる階段前に〝スタッフ専用〟の立て看板があり、上階へとつながる階段前に〝会員様専用〟の立て看板がある。


【おいおい嘘だろ……】

【あ……そういえば、人狼兄が初めてミノちゃんを見かけた店って言ってたよな】

【え……? どういうこと……?】


 リスナーの一部も気づき始め、まだ気付いていないリスナーは困惑している。


「え……? ここってまさか……?」


「どうもーーいらっしゃいませーー」


「「っ……!」」


 横から第三者の声が聞こえてくる。

 そこには、和装で仮面をした者がいた。


「〝守護ゴーレム専門店〟へようこそ、クガくん。待ちわびたぜ」


【え……? え……? え……?】

【どういうこと? 守護ゴーレム専門店の店長じゃん】


 そして、仮面店長はおもむろにその仮面を外し、にかっと微笑む。


【ふぁ……? 嘘だろ……?】

【伝説のSS級パーティ……サムライの刀聖……サナダ……?】

【魔物の街に初めて入った人間はクガじゃなかったってことかよ……】


 ダンジョン上層50層……そこは〝魔物の街〟であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
【作者新作】

<新作のリンク>

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ