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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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94/99

94.愛?

【魂の救済……か……?】


 堕勇者の特性〝魂の救済〟。

 魂を救済することで、能力が跳ね上がる……というもの。

 救済とは聞こえはいいが、魂を救うとは〝無〟にすることを意味する。

 つまるところ〝殺すと能力が飛躍的に上昇する〟。


【……! な、なるほど……でもあれって、強化されるのは人殺した時だけじゃないの?】


「……」


 正直に言うと、クガも人を殺した時だけだと思っていた。

 これまで、魔物を倒してもその効果を実感することができていなかったからだ。


 だが、この戦闘において、龍娘が死ぬたびに自身の力が少しずつ強くなるのを感じていた。

 同時に、人間を殺した時のように大幅に強化されることはなく、効果も時間の経過と共に減衰していくということも感じていた。


 だから、クガは龍娘を〝殺し続ける〟ことにした。

 大剣に串刺しにして。

 龍娘は死んでは再生、再生しては死んでを繰り返す。


 それは、少々、惨いやり方だと思った。

 だが、クガにとってはそれよりも確実に大切な何か……いや、〝何者か〟があった。


「ちくしょうがぁああああ!!」


 そんなクガの強さの理由など知る由もないドラゴンは明らかな劣勢に困惑し、怒り狂い、尻尾を激しく振り回す。


 その尻尾がクガに直撃する。


「ははっ……くたばれ……人間が……!」


【クガぁ……!】

【うわぁあああああ!】


 だが……、


「な、なに……!?」


 ドラゴンの渾身の一撃はクガの左手一本に止められていた。


 そして、クガはドラゴンの頭部へと走る。


「っっ……! や、やめ……」


「あ……しまった……」


 クガは普段の癖で、ついつい大剣を振りかぶるようなモーションを取ってしまう。


「……!」


 だが、その手中には、なぜか大剣が収まっていた。


 クガは一瞬であったが、大剣に触手が絡まっているのが確認できた。


「ありがとな……アリシア……」


「ぐぎゃあぁああああ゛あああああ゛あああ…………」


 両断されたドラゴンの頭部が地に落ちる。


「あっ……あ゛っ……あっ……まさか……この……私が…………」


 一瞬の静寂が流れ、そしてドラゴンの巨体も脱力し、大きな音を立てて、崩れ落ちる。


【うぉおおおおおおおおおおおおおお!!】

【やりやがった】

【SS級ドラゴン、討伐成功ぉお】

【最後、ナイス、連携プレイ】


「クガ、油断してすまなかった……」


「い、いや……気にするな……」


 軽く言葉をかわしたクガとアリシアであったが、二人はまだ勝利の余韻には浸っていなかった。もう一人の強敵、龍娘のところへ向かう。


「母上……負けてしまったのですね……」


 腹部に穴が空き、ぐったりと倒れている龍娘が振り絞るように言う。


「母上が死に、無限の蘇生アンリミテッド・ライフの効果が切れる……私の命も費えるだろう……」


 そう言うと、龍娘は目を瞑る。


【龍娘ちゃん……】

【致し方ないとはいえ、悲しいな……】

【違う出会い方をしていたなら……】


 リスナー達も惜別の思いを口にする。


 が……、


「え……?」


 命の灯が消えたように思われた龍娘の身体が蘇生していく。


「え? え? え!?」


 龍娘は傷一つない状態となり、自分でも困惑している。


「クガ、これはどういうことだ?」


「う、うーん……」


無限の蘇生アンリミテッド・ライフとやらが、死後も続く永続効果だったってこと?】

【そんな都合のいい効果があるかいな。自動蘇生(リライブ)でさえ、再生士が亡くなったらかけ直さないといけないのに……】


「母上の愛の力……」


 龍娘がぽつりとつぶやく。


【えぇ……!?】

【母の愛の奇跡的な……!?】

【いや、冷静に考えて、あのクズドラゴンにそんな真実の愛みたいなもんがあるわけないだろ】

【ひでえw】

【えらい辛辣だなw】

【うーん、もしかして無限の蘇生アンリミテッド・ライフが元々、龍娘ちゃんの能力だったとか……】

【……あ】

【それだ】

【あのクズドラゴン、それなのに、都合よく利用して……】


「な、なるほど……ど、どうする? クガ……」


 アリシアは、リスナーの無限の蘇生アンリミテッド・ライフが元々、龍娘の能力だった説が、ほぼ正であると考える。

 だが、現時点でリスナーの声は龍娘に届いていない。それを伝えるべきかわからなかった。


「……」


 クガも悩む。だが、一つの結論を出す。


「龍娘さん、無限の蘇生アンリミテッド・ライフは本来の君の能力である可能性がある」


 それは〝恐らく〟真実である説を伝えることであった。


「え……!?」


 それを伝えられた龍娘の表情は曇る。


「く、クガ……もしかしたら……」


「あぁ……」


 もしかしたらドラゴンの能力が奇跡的に残った可能性もあった。

 だが、それを第一候補としたとして、いつか龍娘が自身の力であることに、自分で気づいてしまったら……

 そのショックは計り知れないだろう。

 と……、


「…………ひょっとしたら……」


 龍娘が口を開く。


「ひょっとしたら……そうなのかもしれないですね……認めたくないけれど、本当は自分でもそうかもしれないと思ったんです。愛の力なんかじゃないって……」


「……」


 クガとアリシアは黙って龍娘の話に耳を傾ける。


「でも……愛の力なんかじゃないかもしれないって……気付いてしまったのは貴方達のせいなんですよ?」


「「え……?」」


 クガとアリシアはきょとんとする。


「だって、愛って貴方達みたいな関係を指す言葉でしょ?」


 龍娘はほんのわずかに微笑む。


「「ん…………!? んんんんんんん!?」」


 だが、龍娘の言葉に、クガとアリシアはシンクロしてしまうのであった。



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