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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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80.シャイガイ

「ところで、セラ、そいつはひょっとして……」


 クガは、妙に清々しい表情をしているセラの足元に、なにやらプニュプニュしたものが付着していることがずっと気になっていた。


「あ、あぁ、こいつは〝スライム〟だな」


「おぉ、やっぱりそうか」


 クマゼミはスライムに勝利したわけだが、実は討伐ではなく、眷属化に成功していたのだ。


「きゅぅうん」


「……!」


 クガが視線を送るとスライムは愛くるしい鳴き声をあげる。


 か、かわいい……。


「せ、セラ……ど、どうやって眷属化に成功したんだ?」


「え……? えーと……」


 セラは当時の状況を教えてくれた。


 結論から言うと、スライムはクシナの眷属になったらしい。


 当時、スライムとの激戦を繰り広げていたクマゼミであったが、途中でクシナが〝ギブアップ〟してしまったらしい。


「ごめんなさい、可愛すぎて無理です! 他のS級にしましょう!」


 と……。


 仕方ないねということで、クマゼミは戦闘を止め、そして、クシナはスライムに治癒(ヒール)を施したそうだ。

 そうして去ろうとした際にそれは起こった。

 なんと、スライムが仲間になりたそうにこちら(クマゼミ)を見ていたそうだ。


「な、なるほど……」


 色々とざっくりとした説明であったが、クガはひとまず納得する。


 しかし同時に、なんで今は主であるクシナじゃなくて、セラの方にくっついているのだろう? と思う。


「ん? な、なんだ? その奇天烈な物体は?」


 突如、アリシアが現れ、スライムに興味を持つ。


「元S級ボスのスライムだそうだ」


「へぇー、S級ボスか!? それにしても可愛らしいなぁ」


 アリシアはかがんで、セラの足にまとわりついているスライムに手を出す。すると……、


「きゅぅう゛うう!」


 スライムは這うようにして、セラの背中側に逃げてしまう。


「えっ!? どうして?」


 アリシアはスライムから拒絶され、ショックを受けている。


「やっぱりダメか……アリシアさん、あまりお気になさらずに……」


「セラ、どういうことだ?」


 クガがセラに尋ねる。


「実はこのスライム、極度のシャイガイみたいでな」


「しゃ、シャイ……?」


【要するに恥ずかしくて女性と接するのが苦手ってことやろ】

【悲しいかな、俺と同じで草……草……】

【類まれなる親近感を覚える】


「まぁ、そんなわけで俺にくっついているというわけだ。別に俺のことが好きというわけではないと思われる」


「そ、そんな……」


 悲しいこと言うなよ……とクガは思ったが、口に出すのはやめておいた。


「しかし、まぁ、S級ボスを眷属にできたのはすごいな」


「そうだな。ただ、眷属もパーティの一名にカウントされるみたいだから、現状だと、一緒に戦うとかは難しいみたいだな」


「なるほど」


 ダンジョンの不可思議な制約により、四人以上で構成すると、四を超えたメンバーが行動不能となるのだ。


【だったら、セラが抜ければよくね?】


「当然、このような意見が出てくる」


 セラはどこか達観した表情だ。


【でも、セラが抜けると、女性のみとなりシャイスライムも役に立たないというジレンマw】


「はは……」


 クガは割と自分と同じく辛辣なコメントを受けるセラに親近感を抱きつつ苦笑いする。


「あ、セラ、ちなみにスライムに名前などはあるのか?」


「名前……? そういえばわからないな。スライムは言葉はしゃべらないし……あ、ちょうどいいところに、クシナだ。クシナ、スライムの名前とかってあるんだっけ?」


 セラはほろ酔い気味に漂っていたクシナに尋ねる。


「へ……? 名前……えーと…………クマ〝ゼ〟……だから……ゼリーちゃん!」


 クシナは即興で、元気よくスライムの名前を決めるのであった。


「おい、クシナ、お前、今、将来的な俺……〝セ〟ラとの交代を考慮した上で命名しただろ……」


「そ、そ、そ、そんなわけ、ないじゃないですかーー!」


 そうしてクシナは再びどこかへ漂って行ってしまう。


 その後、クマゼミS級昇格祝賀会配信は大いに盛り上がったのであった。


 ◇


 クマゼミS級昇格祝賀会からしばらく経った頃、

 ダンジョン上層47層、上階への間にて――。


「クガ、再確認だ」


「あぁ……」


 クガとアリシアは空間ディスプレイに刻まれた数字を確認する。


 刻まれた数字は15230010円。

 つまるところクガとアリシアが48層へ入場するために必要な1500万円を超え、今、まさに48層へ足を踏み入れようとしているのである。

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