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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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79/99

79.お祝い

 ポーションの生産が軌道に乗った頃――。


 クガの元にニュースが舞い込んでくる。


 それは新たなS級パーティ誕生の報せであった。


 =========================

【S級パーティ】

 ①ルユージョン……正統派

 ②あいうえ王……ソロダンジョン籠もり

 ③デュエリスト……プレイヤー間の決闘を好む

 ④ジャスティス人間 ← NEW

 ⑤クマゼミ ← NEW

 =========================


 まずイビルスレイヤーについてはクガ、アリシアによりダンジョンから退場に追いやられており、しばらくの間、S級パーティは3組となっていた。

 しかし、今回、新たに〝ジャスティス人間〟と〝クマゼミ〟という二組のパーティがS級ボスを打ち破り、S級パーティ入りを果たしたのである。


「えっ!? いつの間に!?」


 ニュースを知った時のクガの反応である。


 クマゼミはクガの知らぬ間に、S級ボスの一体、〝スライム〟に勝利していたのであった。


 更に、ジャスティス人間というパーティもバジリスクに勝利し、S級昇格を果たしていた。


 =========================

【S級ボスリスト】

 ・バジリスク ← ジャスティス人間が撃破

 ・アラクネ ← イビルスレイヤーが撃破

 ・スライム ← クマゼミが撃破

 ・人狼 ← クガ・アリシアが撃破?

 ・ミノタウロス ・アンデッド ・妖狐 ・機械兵

 =========================


 バジリスク、アラクネ、スライム、人狼は撃破され、現在、空席扱いとなっている。

 ただし、S級ボスは減った分は追加されるようになっているため、いずれ補充されることとなるだろう。


 なお、ジャスティス人間は私人逮捕系最高峰と噂されるパーティであった。

 クガはよく私人逮捕系パーティに絡まれていたので、ジャスティス人間の昇格については、微妙な気持ちとなるのであった。


 ◇


 ダンジョン上層43層、アリシアの城――。


「クマゼミ、S級昇格、おめでとぅー!」


 アリシアの掛け声と共に、柴犬コボルト達、狼男達が太鼓を叩き、拍手などをする。


「あ、どうも、ありがとうございます。ありがとうございます」


 祝福された付与術師のミカリ、再生士のクシナは照れ臭そうにペコペコしている。


「なんで魔物に祝われてるのよ」


 透明感のある青みを帯びた瞳と肩くらいまでの髪にヘッドドレスをつけ、深い青を基調とした修道服をドレス調にアレンジした服装。少し眠そうな半眼気味の表情をしているが、非常に整った顔立ちの女性は少々、不機嫌そうに眉間にしわを寄せている。クマゼミの聖女、ゴリア……もといユリアである。


【確かにw】

【ボスの城で探索者のS級昇格祝いとか前代未聞にも程があるだろw】

【ってか、吸血鬼さん的にはこれはOKなのか?】


「うむ、ミカリには人間界で世話になったし、クシナは実質、眷属みたいなものだしな」


「うむうむ」


 ミカリは満足そうに頷いている。


「実質、眷属!? 違います! 違うからね! お母さん!」


 クシナはなぜか勝手に眷属扱いされ、焦って、配信を観ているかもしれない母親に弁明している。


「全く……まさかこんなことになるとは流石に想像していなかった」


 騎士風の衣装に身を包んだ金髪の男……クマゼミの剣聖セラは感慨深げに呟く。


「そうだな」


 隣にいたクガもセラに同調する。


 クガも思う。追放されたあの時は想像もしなかった。

 戻らずの隠し部屋のボス〝吸血鬼〟に、自分が抜けたパーティの昇格を祝われるなんて。


「……クマゼミがS級か……」


 クガはぽつりと呟く。


 かつて自分が人生を賭けていたといっても過言ではないパーティが成り上がっていく。それは当然、嬉しいのだが、自分がそこにいないのは、不思議な気分ではあった。

 クマゼミによると、クガはクマゼミの他メンバーとは吊り合わない程の実力を持っているということらしい。

 だが、実際にはクガが抜け、代わりにクシナが加入したことで、クガがいるときには成し得なかったS級昇格を成し遂げたのだ。

 そんなことを考えると、クガは少しだけ複雑な気分となる。と……、


「……クガ、お前はもうすぐSS級挑戦だろ?」


「……!」


 セラが突然、そんなことを言う。


「お前は先に行けよ。俺達は必死こいてそれを追いかけるからよ」


 セラは気障ったらしくウィンクする。


「……やるだけやってみる」


 クガも静かに応える。


【おいおいおい、なんだお前ら】

【アッー!】

【痒い! 痒いぃいい!!】


 そんな二人の様子をリスナー達は愛情溢れる様子(?)で、茶化してくる。


【おい、セラ、そんなこと言って、お前、実はいいところどりしてないか!?】


「ん……? いいところどり?」


【クマゼミの現メンバー……ユリア(女性)、ミカリ(女性)、クシナ(女性)】

【おいおいおいおい】

【まさか……】

【よく見ると、ハーレム状態じゃねえか! てめぇ、これが狙いか!!】


「お、おう……」


 そんな陰謀論にもセラは極めて冷静である。


「じゃあ、聞いてみろよ。その方々によ……」


【上等だ! ミカリンーー! セラについてどう思う?】


「え? セラ? 興味ないね」


【っ……! ゆ、ユリアーー!】


「特に……」


【っっ……! く、クシナちゃん……】


「せ、セラさん……? い、いい人ですよね」


【出たーー! いい人……(どうでも)いい人ぉおおお!!】

【それ、俺もフられた時に言われたわw……泣】

【や、やめろ、それは俺にも刺さる】


「な……? これほど自分に矢印が向いていないハーレムがかつてあっただろうか」


【なんかごめんな……セラ……】


「気にするな」


【俺、今日からセラのファンになるよ】

【俺も……共に頑張ろう】


「あぁ、ありがとう」


 こうして、セラは数名のファンを獲得するのであった。



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