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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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77.ハチミツ

 ヘビオが提案した触媒……それは〝ハチミツ〟であった。


「ヘビオ、ハチミツに詳しいのか!?」


 とクガが尋ねると、


「なんで僕が対ハチ用防護服(こんな格好)を着てると思ってるの?」


 と返され、クガは返す言葉もなかった。


 その後、ヘビオの案内でダンジョン内の秘密の養蜂所に行くことになった。

 道中はオフレコであったが、到着後は撮影OKということで、クガ、アリシア、アイエの三人はヘビオから対ハチ用防護服を借りて、ヘビオにやり方を教わりながら採蜜を実施した。


【人間界の蜂蜜じゃダメなの?】


 作業中、リスナーが素朴な質問をする。


「人間界の蜂蜜も美味しいけど、やっぱりダンジョンのキラーハニービーのハチミツは性能が全然違う」


 現実世界のミツバチはハチの中では比較的、穏やかな性格であるが……、


【キラーハニービーか……】

【あの凶暴なハチね】

【何を隠そう……俺、キラーハニービーでリライブ消費したんだよな……ブルブル……】

【なんと……ご愁傷様です】


 と、ヘビオは被害者も出るほど凶暴で殺し屋蜂の異名を持つキラーハニービーを用いた養蜂をしているようであった。


 だが、養蜂所のキラーハニービーはとても殺し屋の異名を有しているとは思えない程に、穏やかであった。


 それはまるで飼い犬のように、ヘビオに懐いているようにさえ思えた。


 ……


「はぁー、終わったー」


 無事に採蜜の作業を終え、配信を停止すると、アリシアはくたびれた様子で背伸びをする。


「ふぁー、この防護服はどうにも暑い……早くシャワーを浴びたい……ヘビオくん、シャワーはないのかい?」


「あるよ。ほら、あそこに」


「おお、あんなところに! 早速、使わせてもらう!」


 ヘビオが小屋の方を指差すと、アリシアはさっさと行ってしまい、三人はその後を追う。


 小屋にはシャワー室二つと浴場が一つあり、すでにシャワー室をアリシアが一つ使っていた。


「……えーと」


 クガはここで少し思考する。そして……、


「あ、アイエさん、つかぬことをお伺いしますが、アイエさんの性別の方は?」


「え……?」


 クガの質問に、アイエは戸惑ったように目を見開く。


「やっぱり、すみません! アイエさんはシャワー室を使ってください!」


「あぁああああ!」


 クガはアイエを半ば強引に空いていたシャワー室に押し込む。


「これで、よし! ヘビオ、行くぞ」


 そう言って、クガはヘビオを浴場へと誘う。


「え……えーと……」


 少々、強引なクガにヘビオは少し戸惑っているようだった。


 ……


「別に僕は入らなくてもいいんだけど」


 脱衣所に入ると、ヘビオがそんなことを言う。


「まぁ、そう言うなって、ヘビオも汗だくだろ?」


「それはそうだけど……」


「って、おいおい、ヘビオ、お前、その恰好のまま風呂に入るのか!?」


 ヘビオが防護服を着たままテクテクと脱衣所から浴場へ行こうとしていたので、クガが引き止める。


「え……? そうだけど……」


「あ……、ひょっとしてヘビオ、素顔を見せるのが恥ずかしいのか。そうだとしたら配慮が足りなかったな」


「いや、それは別にいいんだけどさ」


「いいのか!?」


「うん」


「じゃあ、遠慮するなよ」


「……うん」


 ヘビオはそう応えると、防護服を脱ぎ始める。


 クガはそれまで何とも思っていなかったのだが、いざ素顔を見れると思うと、少しドキドキしてしまう。

 ヘビオは案外、淡々としており、あっさりと防護服の頭部を取り外してしまい、ヘビオの素顔が露わになる。


 ……




「え……!」


「なに……?」


「い、いや……なんでその顔で隠すのだろうなと……」


「……!?」


 クガが素直な感想をこぼすと、ヘビオは少し視線を逸らす。


 ヘビオの素顔は一言でいえば、めちゃくちゃ美形であった。


 やや現実離れした翡翠のような色のサラサラしたショートヘアに、まつ毛の長い大きな目。

 色白で、高い鼻に薄い唇というなんとも均整の取れた顔立ちである。


「なんで隠すのか? って……? まぁ、ウラカワにその顔は、イビルスレイヤーのコンセプトに合わないって言われたからさ」


「あー……なるほどね」


 少し納得してしまうクガがいた。


「そ、それじゃあ、先に入ってるわ」


 ヘビオのあまりの美形っぷりに、クガはなぜか少し恥ずかしくなり、さっさと素っ裸になり、浴場へと向かう。

 そして、洗い場のシャワーで汗を流し始める。


 ヘビオはしばらく浴場に入って来なかった。


 だが、クガが髪を洗っていると、隣に人の気配を感じた。


「お、ヘビオ来たのか」


「うん」


 どうやらヘビオのようだ。


 クガはチラリとヘビオの方を確認する。


「…………ん?」


 ヘビオはなぜか脇の下からタオルで身を包んでいる。

 男ならば、腰の下から、あるいは素っ裸が一般的ではある。


 いやいやいや、そんなベタな……。


 クガは現実逃避気味に苦笑いしてしまうが……。


「っっ……!」


 膨らみがあった。決して大きくはないが、確かな膨らみだ。


「えぇえ゛え!?」


「……」


 クガの動揺に、ヘビオも視線を逸らして黙り込む。


「え? え? えーと……ヘビオって……」


「堕勇者。君も苗字で活動してるよね? 僕も同じ」


「その……ぼ、僕という一人称は……」


「ウラカワからそういうキャラ付けをしろって言われた」


「え、えーと……つまり……」


「堕勇者。君、さっき、ダンジョン籠りに、〝つかぬことをお伺いしますが、アイエさんの性別の方は?〟 って訊いてたよね?」


「っっ……! ……はい」


「僕にもつかぬことを訊け……!」


 ヘビオは頬を桃色に染めながら、キッとクガを睨みつけるのであった。


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