63.コラボ
数日後――。
時刻にして15時頃。
「どうも! クマゼミのミカリです! ということで、本日のゲストは、最近、超HOTな二人組、吸血鬼のアリシアさんと、あとクガでーす」
淡い桃色のジャケットにへそ出しのショートパンツ。オレンジのボリュームのある髪を両サイドで結った少々、派手なスタイル……クマゼミの付与術師ことミカリがドローンの前で、ニコニコと微笑みながら、本日のゲストであるアリシアとクガを紹介する。
「ど、どうも……アリシアです」
紹介されたアリシアは初めてのゲスト側での出演ということで、なぜか少し萎縮気味だ。
人間界に来てからは、ダンジョン内で見せていた尊大さが、ややなりを潜めているアリシアであった。
「こんにちは、皆さん! クマゼミのクシナです!」
と、割り込んできたのは、もう一人のクマゼミのメンバーである再生士のクシナだ。
ボブスタイルの黒髪に明るい瞳、やや童顔で背は160センチくらい。深緑の制服のような衣装は再生士の定番の装いである。
クシナはクマゼミを抜けたクガの代わりに、現在、回復役を務めている新メンバーである。
「クガさん、観ましたよ! なんですか!? アリシアさんの初めてだというのに、あのロマンスの欠片もない企画は!?」
クシナは眉を吊り上げて、クガを問い詰める。
「す、すみません……」
クガは弱々しく謝罪する。
「まぁまぁ、クシナ。クガに期待する方が間違ってるって」
ミカリが地味にひどいことを言う。
【ちなみにクマゼミの他の二人は?】
リスナーがクマゼミの四人のうち、聖女のユリアと剣聖のセラがいないことに疑問を持つ。
「あー、ユリアとセラは今日は大事な用事があるということで欠席です」
ミカリはにこやかに答える。
【あー、そうなんだ……】
【残念だね】
【大事な用事なら仕方ない】
「はい、ということで、今日は私ことミカリとクシナがアリシアさんを人間界の街に連れ出していこうと……思いまーす。では、移動中は配信停止しまーす。また後ほど!」
【はーい】
【お疲れ様】
【楽しみに待っております】
そうして、ミカリはドローンを停止した。
「……と、さぁ、行きましょうか」
「ひ……!」
配信が停止した瞬間、顔面から笑みが消失したミカリに、アリシアが一瞬、引きつる。
「な、なぁ、ミカリ……ユリアとセラは本当に用事なのか?」
クガがミカリに尋ねる。
「え? いや、違うけど?」
ミカリは、さも当然であるかのように答える。
「ユリアはどちらかというとクガみたいなタイプで、戦闘以外で、まともな企画なんてできないし、セラは絵面的に邪魔でしょ? 今日はアリシアさんを出汁にチャンネ……じゃなかった、アリシアさんを引き立てるための企画なんだから」
「ですね! ミカリ先輩! チャンネル登録者、爆増しちゃいますよー!!」
クシナはミカリが一応、キャンセルした本音を無邪気に思いっきりぶちまける。
クシナは新加入メンバーながら、クマゼミにおける処世術をわきまえているようだ。
「見てください、ミカリ先輩、リアルタイムでチャンネル登録者数が爆増しております!」
「ふふ……計画通りね……」
クシナとミカリはディスプレイを見ながらニタニタしている。
「あ、あのミカリ……少し怖い……ぞ……」
アリシアがぼそりとクガに告げる。
クガは、アリシアにも怖いモノがあるのだなぁと思いつつ、怖いモノを正しく嗅ぎ分ける力は、魔物の本能かなぁとも思う。
そう、クマゼミがそこそこ知名度のあるパーティにまで駆け上った裏の立役者は、このミカリであった。
ミカリが他メンバーのキャラクターを引き出しながら、うまくバランスを取り、プロデュースしたおかげで、今のクマゼミがあるのだ。
「さぁ、アリシアさん、今日は人間界をたっぷり楽しみましょう?」
ミカリがニコリと微笑む。
……
「付与術師ミカリのMayPayポイント付与術講座~~♪」
「いえーい!」
配信再開と同時に、ミカリが企画を宣言し、クシナがニコニコしながら合の手を入れる。




