54.支援金
「何を言っているのだ? 私が目指しているのはSS級ボスの先のラスボスだ! ならば、まずは一番、強そうな奴と戦いたいのは当たり前であろう。まずはドラゴン! ケルベロスはその後で可愛げのある奴なら眷属にしてやろうと思う!」
アリシアは機嫌良さそうに宣言する。
【なるほど、かっけぇええええ】
【おぉおおおおおお!】
【ケルベロス、眷属候補にされてて草】
【頑張れ、吸血鬼さん、応援してるよ!】
などと、リスナーもアリシアを煽る。
熱くなるコメントの中で、冷静なコメントが一つ。
【ところで、吸血鬼さん、その間の城の防衛はどうするの?】
「おっ? いや、その間は一時的に、コボルト達や守護ゴーレム達に……」
【一時的って、SS級ボスのいる49層へ向かうための48層って滅茶苦茶、広いことで有名なんだけど……】
「えっ?」
【そうだね。どんなに早くても攻略に一週間はかかるかと……】
「な、なんだと……?」
【その間、ずっと留守にしちゃって大丈夫なの?】
「…………しまった。考えてなかった」
アリシアは素直に自分の無計画を認める。
【というか、吸血鬼さんとクガ……それ以前に〝お金〟はあるの?】
「お、お金? お金とは一体……」
理由不明の金銭に関する話題に、アリシアは眉をひそませる。
【この様子では御存じないご様子で……】
【まぁ、知らなくても無理はないよね】
【っていうか、吸血鬼さんは魔物だから例外だったりするのかな】
「え、えーと、お前たちは何の話をしているのだ?」
【SS級ボスのいる49層へ向かうための48層って、入場料一人1000万円かかるよ】
「っっっ……!!」
アリシアは突然知らされた事実に唖然とする。
「い、1000万円……!? く、クガ……知っていたのか!?」
「え、まぁ……」
クガは視線を逸らす。
48層に向かう際、入口に設置された謎のゲートを通る際に、所持金を吸い取られるのである。
もちろん所持金が少なければゲートにはじき返されてしまう。
「アリシア、お金はあるのか?」
「う…………この間……守護ゴーレムくじでほとんど使った……」
「……だろうな」
仮に、使ってなかったとしても、全然、足りないわけであるが。
「い、1000万円で二人ということは……に、2000万円……私のお小遣いが一日、5000円だから……えーと……」
アリシアは指を数え出す。
「仮に全額貯金したとして、4000日だな。約11年かかる」
「11年……!? そんなに待ったら退屈すぎて枯れてしまうぞ……!」
【あ、吸血鬼さん、朗報! 割引があるみたい】
【そうそう! パーティの場合は二人目からは半額の500万円になるよ】
「な、なんと……!」
アリシアの表情は晴れる。
「そんなピザ屋のキャンペーンみたいなのあったのか……」
「ピザ屋? と、ところで、クガ、そうするとどれくらい期間が縮まるのだ?」
クガの呟きの意味はよくわかっていなそうなアリシアは自身での計算を放棄して、クガに尋ねる。
「約8年に縮まる……」
「……」
アリシアの表情は再び曇る。
その時であった。
【アイエ:どうぞ(¥15000000)】
「っっ……!!」
突然、支援金付きのコメントが投下され、クガは絶句する。
支援金付きコメントとは、コメントと一緒に、配信者に向けてお金をプレゼントすることができる機能である。
【ちょ、アイエwww】
【豪快すぎる支援金】
【一括、1500万円www】
【やwばwすwぎwるw】
「な、なにがどうしたのだ?」
アリシアはよくわかっていないようで、クガに尋ねる。
「あ、アイエさんが……1500万円くれた」




