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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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46.正義

「本日、我々は正義を遂行する」


 戦隊モノのヒーローのような全身赤のコスチュームに身を包んだ男が浮遊する撮影ドローンに向かって宣言する。


 およそ五十年前。突如、地球にダンジョンが現れた。

 ダンジョンには強力な魔物が存在する一方で、人間が一度、足を踏み入れるとジョブや魔法が覚醒する不思議な空間であった。

 そのダンジョンの一つ、日本の有明付近に出現した空と地下の両方に向かってのびるダンジョンは〝双頭ダンジョン〟と呼ばれていた。


 双頭ダンジョンにおける上層43層、湖畔エリア付近で、正義の遂行を宣言したのはA級パーティ〝アドベンジャー〟のリーダーであるアドレッドであった。


【レッドさん、かっけぇ!!】

【ついにやるんですね……ごくり……】

【大丈夫! 最後に正義は必ず勝つ……!】


「うむ……ダンジョンの治安維持は我々に任せてくれ」


 アドレッドは、リスナーからの応援コメントに対し、静かに応える。

 アドレッド率いるアドベンジャーの面々は、現在、絶賛、〝ダンジョン配信〟中である。


 特殊なジョブに目覚めた者が使える自動蘇生魔法〝リライブ〟をかけられた人間はダンジョン内で死亡しても一度だけ蘇生することができる。

 自動蘇生(リライブ)の普及により、ダンジョンの探索が政府から認可されて以降、ダンジョン配信がエンターテイメントとして急速に普及した。


 このアドベンジャーもそのダンジョン配信者のパーティの一つであり、配信を視聴してくれているリスナーを楽しませるために、彼らのパーティコンセプトでもある〝悪の排除〟を今日も元気に遂行中である。


【自治厨うぜぇ】

【余計な事すんなよ】

【正義気取りが!】


「……」


 アドレッドは少々、目障りなコメントに接し、沈黙する。

 リスナーは誰もがいつも味方というわけではない。時にはこういった心ないアンチや誹謗中傷コメントがつくことだってある。

 リスナーとは大概、本音でコメントするものだからだ。


 だが、そんな時は〝ユーザーブロック〟すれば大丈夫。


【何を言っているんだ、君達はレッドさんが負けるわけないじゃなイカ】

【正義は勝つ(笑)】

【楽しみ(ゲス顔)】


 ユーザーブロック機能を使えば、このように和やかで温かなコメントに溢れかえる。


【でも大丈夫なの? S級パーティのイビルスレイヤーも簡単にやられちゃったのに】


 中には、本気でアドベンジャーを心配するコメントも見受けられる。


「問題ない。そもそもイビルスレイヤーは過大評価だ。イビルスレイヤーは再生数稼ぎの猟奇的なプレイングに終始しており、実際にはS級の実力はなかったと見ている」


 アドレッドはリスナーの疑念に対し、毅然とした態度で応える。


「流石ね……レッド」


「そうそう、イビルスレイヤーについては、そろそろ我々が直々に手を下そうかと検討しているところだったからな。悪同士で潰しあってくれたのは滑稽以外のなにものでもないね」


 アドレッドと似たようなコスチュームに身を包んだアドピンクとアドブルーも自信ありげだ。


「これから我々は人間を30人以上も狩った凶悪な魔物と、あろうことかその魔物に手を貸す人間を……」


 アドレッドが高らかに宣言しようとしていたその時……。


「なんでもいい……早く戦わせろ」


 一人、他の三名とは異なり戦隊コスチュームも身に着けず、ワイルドな革ジャン姿にサングラス、筋骨隆々な男が不機嫌そうに言う。


「お、おう……ブラック。今から行くからな」


 アドレッドは萎縮するようにブラックをなだめる。


「ブラック……貴方がいるから安心ね」

「ブラックさん、今日も素敵っす!」


 アドピンクはいくらか艶のある声で囁き、アドブルーはおだてるように言う。

 その二人の姿をアドレッドが少し恨めしそうに見つめる。


【ブラックさんは今日もワイルドだなぁ】

【初見だが、こいつだけキャラ違い過ぎて草】

【さっきからワイルドな人が映り込んでるなぁとは思ってたけど、まさかパーティメンバーだったとは笑】

【ブラックさんはアドベンジャーのエース】

【ワイルドさん、エースかよwww】


「ふん……そんなことはどうでもいい……俺はさっさと行くぞ」


 ブラックはコメントにも意に介さない様子で、戦隊コスチュームを身にまとった他の三人を置いて、さっさと前に行ってしまう。


「あっ、ちょっと待て、ブラック! 単独行動は許さぬぞ!」


 アドレッドが先に行ってしまったブラックを追うようについていく。


「またやってるよ、あの二人……」


「そうね……」


 そんなアドレッドとブラックの後ろ姿を見送りながらアドブルーとアドピンクは苦笑いする。


 アドレッドはずんずんと進んでしまうブラックに忠告する。


「ブラック、気を引き締めろよ。この先の城には凶悪な吸血鬼が……」


「ふん……凶悪な吸血鬼だかなんだか知らねえが……この俺が……」


「ワワン!」


「「「「……!?」」」」


 ブラックがクールに決め台詞を宣言しようとした時であった。


 アドベンジャーの後方から、可愛らしい犬の鳴き声がする。

 アドベンジャーの四人は鳴き声のする方向へ振りかえる。

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