45.城完成
「さーて、いつまでもうじうじしていても仕方がない……! ミノちゃぁああああん!」
アリシアは少々、居心地悪そうにしていたミノタウロスの元へ走っていく。
「ミノちゃぁああああん……!」
「ふぁ、吸血鬼ちゃん……!」
アリシアが現れ、ミノタウロスは満面の笑みで出迎える。
なにしろ大きな身体で、一人きりになっており、ちょっと帰りたいなぁとまで思い始めていたからだ。
そんなミノタウロスにアリシアは謝罪しようとする。
「ミノちゃん、今回の件は本当にすまなかった。ミノちゃんを巻き込んでしま……」
「ストップ! 吸血鬼ちゃん!」
「へ……?」
「それはなしだよ?」
「え……?」
「だって、私もこう見えて、S級ボスなんだよ?」
「……!」
「人間と闘って、そして滅ぶ覚悟はできてるよ! もちろん、ただで負けるつもりはないけどね!」
「……ミノちゃん」
「それに吸血鬼ちゃん、私達、友達でしょ?」
「……!」
「私、吸血鬼ちゃんのために戦えて、光栄だったよ!」
「…………ミノちゃぁあああん」
アリシアは目頭に涙を浮かべ、ミノちゃんの大きな胸筋に飛び込む。
「いい子、いい子……」
ミノちゃんはアリシアの頭をなでなでするのであった。
そうして宴の夜は更けていく。
◇
イビルスレイヤーの襲撃事件から数日後――。
上層43層、湖畔エリア付近。
「できたぞーー!」
「「「わんわんおー!」」」
「「「うぉおおおおお」」」
アリシアは柴犬コボルト、狼男達と共に両手を上げて、万歳する。
【おぉー、ついにできたか】
【おめでとうー!】
【城の完成、おめでとうございます】
柴犬コボルト達の今は無くなってしまった城を思わせる和風の作りの立派な城である。
【すごい立派……】
【行ってみたいなー、このお城……】
【行ってもいいんですか!?】
「おぉー、入場歓迎だぞー! 入場料はあなたの命一つだがな」
【ひぇ……】
アリシアはニカリとする。
と、隣で少々、ぼうっとした様子で佇んでいたクガに視線を向ける。
「どうした? クガ、嬉しくないのか? 私達の新居だぞ?」
「え!? 俺も住むの!?」
「……? 当たり前だろ? お前は私の何だ?」
「……何者か」
「そうだ!」
アリシアはニンマリと笑う。
「さてさて、これで晴れて、SS級ボスになるための条件"ボスの城を構える"をクリアだな」
アリシアはメモ帳に書き込んでいく。
そして……
「どうだ!」
クガに殴り書きのメモを見せつける。
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【SS級ボスになるには】
【済】侵略者を30人狩る
【済】A級パーティを狩る
【済】S級パーティを狩る ← NEW
【済?】眷属を従える(S級ボス)
【済】ボスの城を構える ← NEW
・SS級ボスの枠を空ける
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「お、おう……」
クガにはこれらの条件を満たすのかいくつか懸念点があったが、S級眷属の方も大雑把であったし、まぁ、いいかと思う。
「これで満を持して、SS級ボスに挑むというわけだ」
「……あぁ」
「クガ、頼りにしてる」
「…………こちらもな」
「え……!? あ、うん……」
アリシアはちょっぴりはっとして、そして少し呆然とした様子で返事する。
なにしろ、それは彼が初めて口にした何者かへの信頼を示す言葉だったから。




