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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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04.人間とは魔物よりなおひどい

「く、くそ……。どうして……? どうしてこんなことに……」


 通りすがりのパーティのリーダー、ケンゾウは脚を負傷し、うつ伏せの状態で唇を噛み締める。


「ケンゾウく……ん……」


 同じく脚に傷を負い、倒れているパーティメンバーのアキナがケンゾウの方を見る。

 四人のパーティのうち二人はすでに身体を貫かれ、消滅し、残っているのはケンゾウとアキナの二人だ。


「アキナぁ……」


 ケンゾウは這いつくばるようにして、アキナの方へ必死に進む。

 これまでもいくつかの死線もくぐり抜けてきた。慢心はなかったはずだ。

 今日も皆で楽しく魔物狩りをしていただけなのに……。


「アキナ……」


 ケンゾウはアキナに手の届くもう一歩のところまで辿り着く。

 この手さえ届けば……。

 他のメンバーやリスナーには黙っていたが、ケンゾウはアキナと付き合っていた。

 せめて最後に君にかっこいいところを見せたい……。


「ケンゾウく……」


 サクッ


「っっっ……!?」


 ケンゾウの目の前のアキナの脳天に紅の刃が刺さっている。


「お疲れ様でしたぁ」


 紅の眼の妖艶な女が不敵に微笑む。

 その後方では、一人の男が困ったように片手で顔を覆っている。


「あぁああ゙あああ゙あああ…………な、な、な、な、なんなんだお前らは……!?」


 ケンゾウは女に怒りをぶつけるように言う。


「ん……? ただ、人間を狩ってるだけだけど……」


「なっ……!? ふざけやがって……」


「何をそんなに憤慨しているのか、理解に苦しむ。君達が普段やってることと全く同じでしょ?」


「っ……!」


「君達がさ、ダンジョン配信する理由って何?」


「……」


「金か……あるいは承認欲求だろ?」


「っっ……」


「その気持ち、わからなくもないのだが……こちとらお前らの道楽で命狙われてるのに付き合ってやっているんだ。感謝したまえよ」


「っっっ……こ、このちくし」


 サクッ


 ケンゾウがあっけなく消滅する。


「ん……? あ、ごめん。なんか言おうとしてたかな?」


「……」


 この女(アリシア)、なかなか派手にやりやがった……

 クガは思う。

 若手のホープらしいB級のなんたらというパーティを無慈悲に惨殺……リアルタイム修正システムのおかげでグロさはだいぶマイルドになっているのが救いだ。吸血鬼アリシアはこの階層にふらっといていい強さじゃない。完全に事故……可哀相に……。


「なぁー、クガ、この内容、そこそこの人間が観ているのだろう?」


「あ、あぁ……」


「よし」


 アリシアはニヤリと微笑む。


「どうだ? 引いただろ? 人間共!」


【最悪……】【胸糞悪い】【可哀相】

【くたばれ、モンスターが……!】


「うむうむ、そうだろそうだろ」


 アリシアはどこか満足気だ。


「これに懲りたら……」


 が、しかし……


【いやー、なんだろう……】

【うん、なぜかはわからないが今、高揚感がある自分がいる】

【この気持ちはなんだろう】


「えっ?」


【脳から変な汁出てる】

【そもそもそいつらも魔物使って実験とかしてた奴らだしな】

【そうそう、スライムスライスしていつまで再生するかとかな。元から胸糞ではあった】

【うーん、とりあえず継続かな……】


「待て待て、落ち着け、人間共……魔物は残虐非道であってだな……」


【ありがとうございます。おかげ様で何かに目覚めました】


「はぁああ!?」


 想定外の反応にアリシアは動揺し始める。


「く、クガよ……に、人間とは魔物なのか!?」


「そ、そうかもな……」


「いや、魔物よりなおひどくないか?」


「……」


 否定できぬクガがいた。

 いずれにしても人間リスナー達の予測不能な思考によりアリシアの思惑は大きく外される。


 ◇


「では手を繋いで」


「あ、あぁ……」


 クガはアリシアが差し出す小さな手を握り返す。


「なんだ? 恥ずかしいのか?」


 アリシアは少々、意地の悪い微笑みでクガの顔を覗き込む。


「まぁ、多少はな……」


「ふふ……意外と小心者なのだな」


「……」


 否定できないクガがいた。


「では、行くぞ」


 アリシアがそう言うと、二人の周りにワープエフェクトが発生する。


 ◇


「どうだ? ここが魔物の街だ!」


 アリシアに連れられて、飛んだ先……そこは〝魔物の街〟なる場所であった。

魔物の街……その名のとおり、通常は魔物しか入ることができない街。一部の特権を持つ魔物は任意の場所からワープすることができる。ただし、ワープするためには時間を要するため緊急的な逃亡の用途では使えない。


「……」


 その光景にクガは言葉を失う。

 石造りの建物が並び、少し古めかしい雰囲気の街が広がっていた。街はそれなりに賑わっており、住人達は確かに魔物だらけであった。


【すげー、魔物の街なんて存在したんだなー】

【情緒があって結構、素敵かもしれない】

【あかん、ちょっと魔物に感情移入してしまいそう】


「うむうむ」


 アリシアはコメント群に満足げに頷いている。


「おそらく君が魔物の街に足を踏み入れた初めての人間じゃないかな?」


「そうだとは思うが、いいのか?」


「別に禁止されていないし、いいんじゃないか?」


「禁止されてないのはいいとして、俺は人間だけど大丈夫なのだろうか?」


「大丈夫でしょ。だって君は私の……」


「……」


「あれ? 君は私の何だろう……」


 アリシアは首を傾げるような仕草をする。


「まぁ、いいや。ひとまず君は私の〝何者か〟であろう?」


「そ、そうだな……」


 こうしてクガは無事にアリシアの〝何者か〟に就任するのであった。


「俺のこともそうだが、配信をしてしまってもいいのか?」


「別に禁止されていないし、いいんじゃないか?」


 アリシアはあっけらかんとしたものだ。


【吸血鬼さん、フリーダムすぎ】

【魔物の街の配信なんて史上初だろ】

【なんなら存在自体が初めて知られたのでは?】

【おかげですごく興味深い映像を目の当たりにしている】


 流れる驚嘆のコメント群に接し、クガは思う。

 アリシアの目的はラスボスになること。だが、それと同時にサブ目的がある。

〝人間達に恐怖を植えつけ、ダンジョン配信などという悪趣味なことを自粛させる〟

 正直、魔物達にもこのような日常があると知ったらば、考え方に変化が起こる者も少なくはないだろう。アリシアの行動がそれを計算してのことかはわからないが……。


「さぁさぁ、私の仮住まいに行くぞ」


「あ、あぁ……」


 そうして、アリシアは歩き始め、クガはそれについていく。


 アリシアとクガは街のメインストリートを歩く。


「……」


 その間、クガは非常に居心地が悪かった。当然のことだ。魔物達がクガのことをジロジロと見ているのだから。前を歩くアリシアは堂々としたものだ。


吸血鬼ヴァンパイアちゃ……」


「ん……?」


 歩いていると、一体の魔物にアリシアが声をかけられる。


「っ……!」


 その相手にクガは度肝を抜かれる。


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