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追放された器用貧乏、隠しボスと配信始めたら徐々に万能とバレ始める~闇堕ち勇者の背信配信~(WEB版)  作者: 広路なゆる


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27.立地

「クガ……悪かったな……」


「え……?」


「その……お前をあんなやり方で追放しちまってよ」


「あぁ……悲しかった」


「っ……! そうだよな……本当すまん……」


「だがよ……クガ……よかったな……」


「えっ……?」


「ユリアは裏でクガが背信者になったーー!って、ぎゃーぎゃー騒いでたけどよ、いいんじゃないか? 吸血鬼と堕勇者」


「……」


「確かに俺達が思い描いていたものとは少し違ったけども……ダークヒーローみたいで少し憧れる……」


「……」


「そういえば、剣聖も人殺したら、堕剣聖になれるんかな……なんて、ははは……」


「っ……」


セラは久しぶりに笑顔を見せる。

高校時代、クガに初めて声を掛けてくれた笑顔そののままに……



クマゼミと別れ、クガは帰途につく。

魔物の街のアリシアの仮住まいへ……


その道中、アリシアはやっとクガに話し掛けることができた。


「なぁ、クガ……結局のところ、(セラ)の思いを受け入れることにしたのか?」


セラの思い。すなわち、クガをクマゼミから解放するということ。


「…………いや、微妙だな……」


「え……?」


「……」


クガは少し沈黙する。


だが……口を開く。


「……そうだな……何者かが何者でもないと感じていたなら、あっちに戻っていたかもな」


「……? っ……! ……~~~」


アリシアは結局、またしばらくクガに話し掛けられなくなってしまった。





「クガよ! そろそろ現場視察に行こうか」


 吸血鬼の切り替えは早い――。

 翌日、アリシアはクガにそんなことを言う。


「現場視察ってなんだ?」


「なにって、忘れたのか? これを……!」


 そう言って、アリシアはクガに例のメモを見せる。

 それはSS級ボスになるための条件が列挙されたメモである。

 クガはその内容を今一度、確認し……。


「ひょっとして……これか……?」


「あぁ! そうだ」


 どうやら二者の認識が一致したようだ。


 =========================

【SS級ボスになるには】

【済】侵略者を三〇人狩る

【済】A級パーティを狩る

 ・S級パーティを狩る

【済?】眷属を従える(S級ボス)

 ・ボスの城を構える         ← これ

 ・SS級ボスの枠を空ける

 =========================


「うーん、どこにしようかなー」


 アリシアは何かを考えるように目線を天井に向ける。


「ちなみに築城場所の指定はあるのか?」


 クガはアリシアに質問を投げかける。


「特にないな。どうせSS級ボスになったら城ごと移転するから、まぁ、結局、仮住まいみたいなものだ」


「そうなのだな」


「ちなみに、クガはどういう場所がいい?」


「え……? まぁ、基本的にはどこでもいいが……」


「まぁまぁ、そう言わずに君の希望を聞かせてくれよ」


「うーむ……」


 クガはしばし考える。


「そうだな……あえて言うなら、こういう空が見える穏やかな場所がいいな」


「なるほどなるほど……」


 アリシアはうむうむと頷いている。そこで、クガは少し疑問に思う。


「アリシアは……」


「ん……?」


「アリシアは吸血鬼だよな?」


「ん……? あ、あぁ、そのようだ」


「そのようだ……って……まぁ、それはいいとして、やはり日の光や十字架が苦手だったりするのか?」


 魔物の街に関していえば、割と日の光の下も普通に歩いているがとクガは思う。


「確かに×(バツ)はあまり好きではない。どちらかというと(マル)の方が好きだ」


「……?」


「それに、日焼けするのは好きではない。将来、シミになるというしな。だから、外出時はこの日焼け止めクリームをくまなく塗っている」


 アリシアはどこから取り出したのか……チューブ状の物体を見せながら言う。


「……」


 いや、そういう問題ではないのだが、とクガは思う。


「まぁ、クガが明るい場所がいいというならば、ひとまず上層ダンジョンに行ってみるか……」


 アリシアは呟くように言う。


「ちなみに、イビルスレイヤーの件は気にしなくていいのか?」


「イビルスレイヤー……?」


「あのアラクネを討伐していた奴らのことだ……」


「あぁ! あいつらね……。あいつらが来たときに、気持ちよく返り討ちにするためにも、すんごい城を建てないとな!」


「……そうか」


 それから、アリシアとクガは上層ダンジョンへと向かい、いくつかの階層を視察する。


「ここなんていいんじゃないか?」


 アリシアがそう言ったのは上層43層、湖畔エリアだった。

 そこは湖があり、周囲を森で囲まれた静かな雰囲気のエリアであった。


「……いいと思う。……とても」


 クガもその静かで趣がある雰囲気をとても良いと感じていた。


「……!」


 アリシアは意見が合ったことが嬉しかったのか、自然と目が細くなり、口角が上がる。


「よし! じゃあ、ちょっと他の者達にも意見を聞いてみるか!」


「え……?」


 アリシアはクガの反応を気にすることなく、指輪をはめた右手を前に出す。

 そして、その中指の契約の指輪がぼんやりと光り出す。


「「「「「「わんおわんおー」」」」」」


 ワープエフェクトの中から、きりっとした表情の柴犬コボルト達が現れる。


「よく来てくれたな!」


 アリシアは機嫌がいいのかにこりと微笑む。


「ほら、クガも……」


「え……?」


 そうか……俺も呼ぶのか……とクガ。

 アリシアが促してくるとは少し意外であったが……。


「わかった」


 ……こんな感じか……?

 クガもアリシアを真似て、右手を前に出す。

 アリシアのしなやかな指とは異なり、ごつごつした中指の指輪であるが、ぼんやりと光るのは同じである。


「えぇええ? そっちぃい? 出してほしかったのは、ドローンの方だよぉ!」


 と、アリシアが素っ頓狂な声をあげる。


「……!?」


 そっちか……! とクガは思うが、もう遅い。

 ふわっとした白銀の髪の少女が(ひざまず)いた状態で現れる。前回、ひどく傷んでいた薄着のワンピースであったが、今回は綺麗な状態であった。


「……クガさま」


 人狼のグレイは第一声、俯き気味にぼそりとクガの名前を口にする。


「え……?」


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